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更新日:2026年6月5日

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1.K事件(令和6年(不)第56号事件)命令要旨

1 事件の概要

本件は、法人が、当委員会から、A組合員に対する懲戒処分に係る団体交渉申入れに応じるよう命じられているにもかかわらず、組合の申入れに応じなかったため、組合が、団交応諾等を求める内容の本件ビラを配布したところ、法人が、組合に対し、組合がビラの配布を中止する旨の誓約書を提出しない限り、A組合員個人のプライバシーに相当する事項を法人のホームページに掲載する旨の警告書を送付したことが、不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)法人が運営する学校の最寄り駅周辺及び学校付近において、組合が本件ビラを配布したことに対し、法人が警告書を送付したことが認められる。

(2)まず、本件ビラの内容について検討する。

ア 本件ビラの内容を総じてみると、A組合員に対する懲戒解雇処分に係る団交応諾命令が交付されたにもかかわらず、法人が、組合の団交申入れに応じないため、かかる法人の対応を非難するとともに、団交に応じるよう一般の人に理解や支援を呼びかけるものということができる。

そうすると、本件ビラは、労働者の労働条件の維持改善といった労働組合の活動目的に沿った言論活動の一環として配布されたものというのが相当であって、労働組合の団体行動権や表現の自由に基づくものとして、尊重されるべきものである。もちろん、労働者の労働条件の維持改善を目的とした労働組合のビラの配布であっても、事実を歪曲して使用者を非難することは許されない。しかし、労働組合は、使用者の事実認識と異なることも含めて、その立場から見た事実認識や意見を表明できるというべきであって、真実とはいえなくとも真実と信じるに足る相当な理由がある場合には、仮に名誉毀損に当たるとしても、これに基づく労働組合の言論活動も正当なものと認められ得る。また、一部に正確性を欠く表現があるにしても、そのことのみで正当ではないとされるものではなく、正確性を欠いたとされる内容や程度、ビラ全般の趣旨等を総合的に勘案した上で、労働組合の正当な言論活動の範囲内か否かは判断されるべきものである。

イ 法人は、本件ビラの内容について、具体的に本件ビラ上の複数の表現を指摘し、誤った評価や、虚偽の記載があるなど、法人の名誉を毀損するものである旨主張するが、いずれの表現も、労働組合の正当な組合活動の範囲内のものとみるのが相当である。

ウ したがって、本件ビラは、労働者の労働条件の維持改善という活動目的に沿って、組合の立場から見た評価、意見を表明したものであり、法人が問題であると主張する表現を考慮しても、労働組合の正当な組合活動の範囲内のものとみるのが相当である。

(3)次に、本件警告書の送付が支配介入に当たるかについてみる。

法人が組合に送付した警告書には、本件ビラに限らず、法人を対象とする一切のビラの配布を直ちに中止するよう警告する旨記載されていたことが認められるから、当然組合活動に影響があったといえる。

また、法人は、組合がビラの配布を中止する旨の誓約書を提出しなければ、A組合員の犯罪経歴を含む個人情報を法人のホームページに掲載すると警告している。犯罪の経歴は個人の名誉にかかわるものであり、これを公表することは、個人に対する不当な差別、偏見その他の不利益を生じさせるおそれがある。そのため、犯罪の経歴を公表する旨を告知することは、一般に人を畏怖させるに足りるものといえる。このように、本件警告は、個人情報に対する配慮も著しく欠くうえ、A組合員を畏怖させるに足りる害悪を告知するものであるといえる。さらに、法人は、組合員の犯罪経歴を含む個人情報を法人のホームページに掲載すると警告することで、組合を、本件警告に従わざるを得ない状況に追い込んだといえ、本件警告は、組合をも威嚇し、組合活動に影響を及ぼすものといえる。

したがって、本件警告は、その内容や方法及び組合に与える影響等を考慮すると、組合員及び組合に対し、威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼすものということができる。

(4)以上のとおりであるから、本件警告書の送付は、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

3 命令内容

 (1)組合が法人に提出した誓約文が提出されなかったものとしての取扱い 

 (2)誓約文の交付

※ なお、本件命令に対して、法人は中央労働委員会に再審査を申し立てた。

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