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11.K事件(令和6年(不)第11号事件)命令要旨
1 事件の概要
本件は、会社が、組合員1名について、正社員であるにもかかわらず、パート社員であるとし、60歳定年による解雇を行ったことが、不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
2 判断要旨
(1)会社においては、正社員とパートタイム従業員のいずれであっても、満60歳で定年退職とされていたのであるから、会社が、A組合員を定年退職としたことは、就業規則に則った取扱いであるというべきである。
以上のことからすると、会社が、A組合員を定年退職としたことは、組合員であるが故になされたものといえず、また、組合活動に支障を与えるためにA組合員を定年退職としたと認めることもできない。
したがって、会社が、A組合員を定年退職としたことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらず、組合に対する支配介入にも当たらない。
(2)なお、組合は、会社がA組合員を定年後再雇用しなかったことが不当労働行為であるかについても争っていると解されるので、以下、会社がA組合員を定年後再雇用しなかったことが不当労働行為に当たるか否かについて念のため検討する。
ア まず、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについて検討する。
(ア)最初に、不利益性についてみる。
会社がA組合員に対し、定年退職通知書を手交した当時、会社においては、正社員とパートタイム従業員のいずれについても、定年後再雇用制度があったとみるのが相当である。
そして、上記の状況において、A組合員は、定年後再雇用されなかったのであるから、同人が、正社員かパートタイム従業員のいずれであったとしても、身分上の不利益及び経済的な不利益を被ったというべきである。
(イ)次に、会社が、A組合員を定年後再雇用しなかったのは、組合員であるが故になされたものであるかについてみる。
a まず、労使関係についてみる。
組合執行委員長が会社社長にA組合員が組合員であることを伝えた直後、会社社長はA組合員に対し、メッセージを送信しているところ、その内容をみると、A組合員が組合に加入したことに対する非難や、組合に対する極めて否定的な評価を前提として解雇に組合が関与することを非難するものである。これらのことからすると、会社は、組合を嫌悪していたとみるのが相当である。
b 次に、会社が、A組合員を再雇用しなかった理由についてみる。
会社においては、正社員とパートタイム従業員のいずれであっても、定年後、再雇用を希望する者について再雇用するのであって、自動的に再雇用されるものではない。そして、A組合員は、会社に対し、定年後も引き続き雇用される旨の申出をしていなかったのであるから、会社がA組合員を、定年後、再雇用しなかったのは、就業規則及び再雇用に関する規定に則ったものとみるべきである。
したがって、会社がA組合員を再雇用しなかったことには、合理的な理由があるとみるのが相当である。
また、会社における他の従業員に対する取扱いをみると、会社において、60歳定年後、再雇用の申出をせず再雇用された従業員がいたとの疎明はない。そうすると、定年後再雇用について、会社が、A組合員に対して、他の従業員と異なる取扱いをしたとみることはできない。
c 以上を総合すると、会社が、組合を嫌悪していたことは認められるものの、A組合員を再雇用しなかったのは、就業規則及び再雇用に関する規定に則ったものであって合理的な理由があると認められ、また、他の従業員と異なる取扱いをしていたと認められないことからすると、会社が、A組合員を定年後再雇用しなかったことは、組合に対する嫌悪意思に基づくものであったとはいえない。
したがって、会社が、A組合員を定年後再雇用しなかったのは、組合員であるが故になされたものとみることはできない。
(ウ)以上のとおりであるから、会社が、A組合員を定年後再雇用しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらない。
イ 次に、組合に対する支配介入に当たるかについて検討する。
前記アのとおり、会社が、A組合員を定年後再雇用しなかったことには合理的な理由があり、また、他の従業員と異なる取扱いをしたとはいえないことからすると、組合活動に支障を与えるためにA組合員を定年後再雇用しなかったと認めることはできない。
したがって、会社が、A組合員を定年後再雇用しなかったことは、組合に対する支配介入に当たらない。
(3)以上のとおり、会社が、A組合員を定年退職としたことは、同組合員を定年後再雇用しなかったことも含め、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらず、組合に対する支配介入にも当たらない。
3 命令内容
本件申立ての棄却
※ なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てた。