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21.N事件(令和6年(不)第4号事件)命令要旨
1 事件の概要
本件は、組合と法人との間で、直接雇用スタッフであった組合員1名と同種業務を行っていた一般職員との間の待遇格差等に関して団体交渉を行っていたところ、法人は、組合が回答を求めた「職務評価比較表」への同組合員1名の評価及び数値の記入を拒否し、団交に誠実に対応しなかったことが、不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。
2 判断要旨
(1)組合は、不誠実団交に当たる法人の対応として、(ア)組合が提案した「職務評価比較表」のうち、組合員に関する職務評価の記入を拒んだこと、(イ)「職務評価比較表」に数値を記入しなくとも他の手法によって目的を達成できることについて説明や提案がないこと、(ウ)待遇差の比較をすることを無意味であると繰り返し述べたこと、を挙げるので、以下、それぞれについてみる。
ア 組合主張(ア)について
組合は、団交申入書により、賃金、賞与、退職金等について組合員と職員との待遇差を是正すること等を要求事項とする団交を申し入れ、以降、第1回団交から第12回団交である本件団交までの間、この要求事項について協議がなされていた。また、法人は、団交申入書の要求事項には応じられない旨回答をしている。そうすると、法人は、団交申入書の要求事項に応じられない理由について、具体的に説明すべきであるといえる。
そこで、法人が、団交申入書の要求事項に応じられない理由について、どのような説明をしていたかについてみると、法人は、職務評価比較表に職務評価を記入しなくとも、本件団交より前の団交において、既に、団交申入書の要求事項に応じられない理由を具体的に説明しているのだから、本件団交において、組合が提案した「職務評価比較表」のうち、組合員に関する職務評価表を記入しない旨回答したことをもって、不誠実団交に当たるとはいえない。
以上のとおりであるから、組合主張(ア)は採用できない。
イ 組合主張(イ)について
前記ア判断のとおり、法人は、組合の団交申入書の要求事項に対して、本件団交より前の団交において具体的に説明しているのだから、本件団交において、職務評価比較対象表に数値を記入しなくとも他の手法によって目的を達成できることについて説明や提案をしなかったからといって、不誠実団交に当たるとはいえない。
したがって、組合主張(イ)は採用できない。
ウ 組合主張(ウ)について
組合が指摘する本件団交での法人の発言及び当該発言に至るやり取りについてみると、組合が指摘する法人の発言は、待遇差の比較をすることを無意味であるとする態度を取り続けたとみるべきではなく、職務評価比較表の組合員の職務評価を記入できない理由について説明したものとみるべきであるから、不誠実団交に当たるとはいえない。
したがって、組合主張(ウ)は採用できない。
(2)以上のとおり、組合の主張はいずれも採用できないのであるから、本件団交における法人の対応は、不誠実団交に当たらない。
3 命令内容
本件申立ての棄却
※ なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てた。