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更新日:2026年6月5日

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8.Kほか2者事件(令和3年(不)第57号、同4年(不)第10号及び同年(不)第11号併合事件)命令要旨

1 事件の概要

本件は、組合が、K社らに対し、組合員の労働条件等について団体交渉を申し入れたところ、K社らが団交を拒否したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1-1)K社は、組合員Dの労働組合法上の使用者に当たるか

 ア 労働契約上の雇用主といえるかについて

 (ア)D組合員の採用の経緯をみると、D組合員は、(1)Cの面接を受け、(2)廃棄物収集運搬業務に従事するようになり、(3)採用した会社が定めた諸規則を遵守することを内容とするK社、M及びQ社宛ての誓約書をCに提出し、(4)KグループのQ社勤務を命じられたこと、(5)Q社が、大阪市環境局一般廃棄物指導課に対し、一般廃棄物収集運搬許可申請書に関して、D組合員を採用した旨届け出たこと等が認められ、さらに、D組合員が裁判所に提出した労働審判手続の申立書に、自らQ社に正社員として雇用されて勤務することになった旨の記載があることが認められる。

また、団交申入れの時点においてD組合員とQ社との間に雇用関係があることについて、当事者間に争いはない。

これらのことからすると、D組合員は、Q社との間で雇用関係にあったものとみられる一方、K社との間で雇用関係が成立していたことをうかがわせる事実は認められない。

 (イ)組合は、K社らの物件の業務を遂行すること及びK社らとの間に指揮命令関係が存在することがD組合員とK社らとの雇用関係の証明となる旨主張するが、指揮命令関係が存在することだけから雇用関係が存在するということはできない。

(ウ)組合は、Kグループ5社が実質的同一会社であるからD組合員は5社の全てと雇用関係にあり、したがってK社とも雇用関係にある旨主張する。

確かに、K社、C及びQ社は、従業員の採用及び残業申請手続並びに一般廃棄物及び産業廃棄物の収集運搬業務を3者で協力して行っていたものと推認されるが、Kグループ5社が、実質的同一会社であるとまで認めるに足る事実の疎明はないし、3者の協力関係を根拠にD組合員が同5社の全てと雇用関係にあるということはできない。

(エ)以上のとおりであるから、K社はD組合員の雇用主であるとはいえない。

 イ 労働組合法上の使用者に当たるかについて

(ア)D組合員の就労形態の是正に関する事項について

 a 就労形態は雇用主が決定するのが原則である。本件の場合、D組合員の雇用主がQ社であり、かつ、K社が雇用主であるQ社に代わってD組合員の雇用形態を決定し得る立場にあったとみるべき事情はない。

 b 念のため、D組合員に対して廃棄物収集運搬業務について指示又は連絡をしていたのはF事務員及びCであることが認められるので、K社がこの両名を通じて指揮命令をしていたといえるかについてみる。

 (a)F事務員について

 F事務員の勤務するK社の本社事務所にはQ社の支店事務所も同居しているとみられ、F事務員がいずれの会社の事務員であるのかは明らかでないし、F事務員がD組合員に指示又は連絡をしていた時期がいつであるのかも明らかでない。したがって、F事務員がD組合員に指示又は連絡をしていた事実をもって、K社団交申入れの時点において、K社が、F事務員を通じて、D組合員に対して廃棄物処理業務における指揮命令をしていたとはいえない。

 (b)Cについて

 平成30年7月までは、CがD組合員に対して廃棄物収集運搬業務に関する連絡をしていたものとみられるが、その後、K社団交申入れまでの3年間に、CがD組合員に対して廃棄物収集運搬業務に関する指揮命令をしていたと認めるに足る事実の疎明はない。そうすると、K社団交申入れの時点においては、CはD組合員に対して廃棄物処理業務に係る指揮命令はしていなかったものとみざるを得ない。

 しかも、Cの電子メール及びSMSでのD組合員とのやり取りの内容をみると、CからD組合員への業務の依頼に加えて、D組合員からCへの依頼もみられるのであって、CとD組合員のこれらのやり取りは、CからD組合員への一方的な業務指示又は業務命令というよりは、現場担当者相互間の業務上の連絡とみるのが相当である。

 (c)以上のとおりであるから、K社は、K社団交申入れの時点において、D組合員に対して廃棄物収集運搬業務について指揮命令をしていたとはいえず、したがって、同指揮命令に関して、D組合員の基本的労働条件等について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいえない。

 c 以上のとおりであるから、K社は、D組合員の就労形態の是正について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとはいえない。

 (イ)未払賃金の支払について

 Q社は、D組合員に対して賃金を支払い、D組合員の未払賃金に係る本件労働審判手続において当事者として調停に参与して、D組合員との間で令和2年1月以降の基準内賃金及び時間外手当の具体的な在り方について合意し、組合との団交においては一時金に係る組合の要求に回答し、その後も、救済申立て後に至るまで組合との団交に応じている。

これらのことからすると、D組合員の賃金については、救済申立ての時点において支配・決定していたのはQ社であったというべきであるから、K社が、D組合員の未払賃金について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあったとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、K社は、K社団交申入れの要求事項について、D組合員の労働組合法上の使用者に当たるとはいえない。

(1-2)正当な理由のない団交拒否に当たるかについて

 K社が、団交申入れの要求事項についてD組合員の労働組合法上の使用者に当たらないことから、K社に団交応諾義務はない。

したがって、団交申入れに対する会社の対応は正当な理由のない団交拒否に当たるといえないから、この点に係る組合の申立ては棄却する。

 (2-1)Mは、被申立人適格を有するかについて

 Cの死亡後に税務署に提出されたCの個人事業の廃業届及びBの個人事業の開業届のいずれにも、Cの個人事業をBが引き継いだことが明記されていたことが認められる。加えて、B自身が取引先や従業員も同一であることを前提に個人事業の開業届を税務署に提出したことを認めており、かつ、BがCの個人事業を引き継いだ後、同事業の取引先や従業員が変わったと認めるに足る事情もない。

 以上のことに、Bが、K社、P社及びR社の代表取締役の地位をCから引き継いだことを併せ考えると、個人事業としてのMは、相続によってBに承継され、同一性をもって継続し、労働関係も承継されたものとみるのが相当である。

(2-2)Mは、D組合員の労働組合法上の使用者に当たるかについて

 ア 雇用主に当たるかについて

CがD組合員の雇用主といえないことは、前記判断に同じである。

 イ 労働組合法上の使用者に当たるかについて

 (ア)業務命令について

Cが、D組合員に対し、産業廃棄物収集運搬業務に係る連絡又は指示の電子メールを8件送信したことが認められ、この点で、業務命令をしていたとみる余地はあるが、団交申入れよりも2か月前になされたK社団交申入れの時点において、CがD組合員に対して廃棄物処理業務に係る指揮命令はしていなかったとみざるを得ないことは、前記判断のとおりであるから、Cが、団交申入れの時点においてD組合員に対して指揮命令をしていたとはいえない。

したがって、Cは、業務命令について、雇用主であるQ社と同視できる程度に現実的かつ具体的にD組合員の基本的労働条件等を支配、決定することができる地位にあったとはいえない。

(イ) D組合員の賃金については、救済申立ての時点において支配・決定していたのはQ社であったことは前記判断に同じであるから、Cが、雇用主であるQ社と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあったとはいえない。

 ウ 以上のとおりであるから、Cは、団交申入れの要求事項について、D組合員の労働組合法上の使用者に当たるとはいえない。

(2-3)正当な理由のない団交拒否に当たるかについて

Cが、団交申入れの要求事項についてD組合員の労働組合法上の使用者に当たらないことは前記判断のとおりであるから、Cに団交応諾義務はない。

したがって、団交申入れに対するCの対応は正当な理由のない団交拒否に当たるといえないから、この点に係る組合の申立ては棄却する。

(3-1)P社は、D及びE組合員(以下「両組合員」という。)の労働組合法上の使用者に当たるかについて

 ア 雇用主といえるかについて

(ア)D組合員については、前記判断のとおり、Q社と雇用関係にあると認められる。

(イ)E組合員についてみると、平成24年6月分から同年12月分までの賃金をK社から支払われ、同23年1月に事業所をK社として健康保険に加入したことが認められる。

さらに、組合がE組合員に係る要求事項として団交申入れをしたのに対し、K社が団交に応じる旨連絡しており、E組合員はK社との間に雇用関係があると推認される。

以上のことからすると、P社は、E組合員の雇用主とはいえない。

 イ 労働組合法上の使用者に当たるかについて

 (ア)D組合員についてみると、救済申立ての時点において賃金の支払について支配・決定していたのがQ社であることは前記判断に同じであるから、P社が、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあったとはいえない。

 (イ)E組合員についてみると、前記のとおり、K社がE組合員に対し賃金を支払っていたことが認められ、団交申入れの時点においても、E組合員に賃金を支払っていたのはK社であると推認される。さらに、P社が、E組合員の賃金について決定をしていたと認めるに足る事実の疎明もないことから、P社は、E組合員の賃金の支払について、雇用主と同視できる程度に具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいえない。

(ウ)以上のことから、P社は両組合員の労働組合法上の使用者に当たるとはいえない。

(3-2)正当な理由のない団交拒否に当たるかについて

 団交申入れの要求事項についてP社が両組合員の労働組合法上の使用者に当たらないことは前記判断のとおりであるから、P社に団交応諾義務はない。

 したがって、本件団交申入れに対するP社の対応は正当な理由のない団交拒否に当たるといえないから、この点に係る組合の申立ては、棄却する。

3 命令内容

本件申立ての棄却

※ なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てた。

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