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6.N1/N2事件(令和6年(不)第1号事件)命令要旨
1 事件の概要
本件は、(1)N2社及びその代表者が、組合の抗議宣伝活動について、組合員を刑事告訴したこと、(2)N1社とN2社(以下「会社ら」という。)の関係者が組合の集会を撮影するなどしたこと、(3)団体交渉申入れに対する会社らの対応、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
2 判断要旨
(1)組合の抗議宣伝活動に係る刑事告訴について
ア 労働組合法第27条第2項は、不当労働行為救済申立てが、行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から1年を経過した事件に係るものであるときは、労働委員会はこれを受けることができない旨規定しているところ、本件申立ては、本件告訴から1年を経過してなされており、仮に、不起訴処分に対する不服申立てを行った日からみたとしても、1年を経過していることは明らかである。
イ したがって、この点に係る申立ては、法定申立期間経過後の申立てであるので、労働組合法第27条第2項及び労働委員会規則第33条第1項第3号の規定により、その余を判断するまでもなく、却下する。
(2)組合の集会の撮影について
ア 組合の街頭宣伝活動に関する仮処分命令申立事件について会社らの申立てが認容されており、本件集会はN1社に近接する本件公園において、労働組合の旗や幟を立てて、マイクを用いて行われたことが認められる。そうすると、会社関係者が証拠保全として必要な域を超えて、本件集会の進行を殊更妨害し、組合活動を弱体化させるような行為を行えば、組合の運営に介入したとして支配介入に該当するというべきであるから、以下、そのような行為を行ったといえるかについて、検討する。
イ 本件において、会社関係者は本件集会を本件公園の入口付近から短時間撮影したにとどまり、この撮影により、組合員のあいさつが妨害され、本件集会の進行に支障を来したとみることはできない。また、この撮影が、本件集会のその後の進行に影響を及ぼしたとみることもできない。
ウ 以上のとおりであるから、会社関係者が証拠保全として必要な域を超えて、本件集会の進行を妨害し、組合活動を弱体化させるような行為を行ったということはできず、この点に係る申立てを棄却する。
(3)団交申入れへの対応について
ア 会社らは本件団交申入れに応じていないが、このことが労働組合法第7条第2号の団交拒否に該当すると判断されるには、本件団交申入れの議題が義務的団交事項であることを要する。
イ そこで、本件団交申入れに係る文書の内容をみると、会社関係者が本件集会に対する妨害行為を行ったとし、会社らがこれに関与しているとした上で、抗議し、説明や謝罪を求めるものというのが相当である。したがって、本件団交申入れの議題が、組合員の労働条件その他の待遇に当たらないことは明らかである。
また、本件集会においては、他の会社との紛争等も取り上げられており、様々な使用者との紛争についての組合の姿勢を示すものというべきであって、組合自身も、労働争議勝利に向けての決意を示し、当該組合員や支援者のそれぞれが思いを発信していく場であって、会社らに対して抗議宣伝活動を行っているものではないとしているところである。そうすると、本件集会を組合と会社らの間の争議行為に類するものとみることはできず、本件集会に関連する問題を会社らと組合との間における団体的労使関係の運営に関するものということもできない。
ウ したがって、本件団交申入れの議題は義務的団交事項に当たるということはできないのであるから、これに応じない会社らの対応を正当な理由のない団交拒否に該当するということはできず、この点に係る申立てを棄却する。
3 命令内容
(1)組合の抗議宣伝活動についての刑事告訴に係る申立ての却下
(2)その他の申立ての棄却
※ なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てた。