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11.K事件(令和6年(不)第35号事件)命令要旨
1 事件の概要
本件は、社会福祉法人が、団体交渉申入書にある組合員に対する暴行事件は虚偽であるとして、団交申入れに応じないこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
2 判断要旨
(1)組合は、業務に関連したやり取りにおいて当該組合員に対する本件暴行行為が起こったとして、このことに関して団交を申し入れ、その次の申入書により、本件暴行行為を虚偽であるとする社会福祉法人に対し抗議するとともに、団交において、社会福祉法人が行ったとする本件暴行行為に関する調査の詳細についての説明を求めているところ、本件暴行行為に係る問題は、労働環境に関連するものとして当該組合員の労働条件その他の待遇に関するものに当たるというべきである。また、申入書には要求事項として当該組合員の配置転換理由についても記載されており、このことも当該組合員の労働条件その他の待遇に関するものに当たるというべきである。
したがって、本件団交申入れの要求事項は、義務的団交事項に該当すると判断される。
(2)社会福祉法人は、本件暴行行為は虚偽であるとし、ありもしない暴行事件をでっちあげ、団交申入れをし、交渉を有利に進めようとする方法自体が、団体交渉権の濫用に当たり、濫用ではない具体的な根拠が示されない限り、団交を拒否する正当な理由が存在する旨主張する。
しかし、仮に、本件暴行行為について社会福祉法人が自ら調査を行っていたとしても、社会福祉法人が本件暴行行為は虚偽であると結論付けたことが団交に応じない正当な理由に当たるとはいえず、かかる主張は採用できない。社会福祉法人には、団交において、組合からの要求事項について、自らの見解を具体的に説明し協議に応じる義務があることは明らかである。
(3)以上のとおりであるから、社会福祉法人は、本件団交申入れに正当な理由なく応じなかったと判断され、かかる行為は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
3 命令内容
(1)団交応諾
(2)誓約文の手交及び掲示
※ なお、本件命令に対して、社会福祉法人は中央労働委員会に再審査を申し立てた。