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更新日:2024年5月24日

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10.N事件(令和4年(不)第56号事件)命令要旨

1 事件の概要

本件は、65歳に達した組合員の雇用を継続しなかったことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

  • (1)会社の就業規則は、定年は満60歳とすると定めているところ、当該組合員は60歳に達してから、正社員として雇用され、これに係る雇用契約書は作成されなかったことが認められる。また、仮に、会社の就業規則が当該組合員に準用されるとみても、65歳以上の社員は、会社が必要と認める場合に改めて雇用されるものと解される。
    当該組合員の雇用契約の終了時期についての双方の認識について検討すると、(a)65歳に達する数か月前に当該組合員は組合に対し、65歳に達した後も、会社で就労することを希望すると申し出、組合は会社に対し、65歳以降の雇用について団体交渉を申し入れ、団交が開催されたこと、(b)当該組合員と同時に、63歳で正社員として雇用された別の組合員は、65歳に達したことにより会社を退職し、退職後、会社でアルバイトや日々雇用として就労したこと、(c)この組合員の退職にあたって、組合と会社との間で、退職後の雇用について協議が行われたこと、がそれぞれ認められる。そうすると、組合自体、60歳に達した後に雇用された正社員については、65歳で雇用は終了し、その後の処遇は改めて協議することを前提に申入れを行っていたとみるのが相当で、かかる対応からすると、当事者双方の認識においては、60歳を過ぎた従業員の雇用期間は65歳までとするというのが相当である。
    したがって、当該組合員が、65歳に達した後も会社に継続して雇用されるものと期待することについて合理的な理由があったとはいえず、継続雇用に係る期待権を有していたとはいえない。なお、65歳に達した後も雇用された従業員がいること等は認められるが、このような例があることを勘案しても、上記の結論は変わらない。
    以上のとおり、当該組合員が、65歳に達した後も会社に継続して雇用されることについて期待権を有していたとはいえない以上、当該組合員が不利益を被ったとはいえない。したがって、その余を判断するまでもなく、会社が、65歳に達した後、当該組合員の雇用を継続しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとはいえない。
  • (2)支配介入に関しては、会社の行為により組合員が不利益を被ったとはいえない場合でも、組合活動を弱体化したというべき特段の事情があれば、支配介入に該当する可能性はある。しかし、本件において、このことを認めるに足る疎明はなく、当該組合員の雇用を継続しなかったことを組合活動に対する支配介入とはいえない。
  • (3)以上のとおりであるから、会社が、65歳に達した後、当該組合員の雇用を継続しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらず、組合活動に支配介入したものともいえないのであるから、この点に関する申立てを棄却する。

3 命令内容

本件申立ての棄却

なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てた。

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