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3.K事件(令和6年(不)第15号事件)命令要旨
1 事件の概要
本件は、会社が、(1)団体交渉での副分会長の発言を理由に、組合に対し、発言者の処分を示唆する通告を行ったこと、(2)分会長を組合組織率100%で組合活動の中心的事業所から組合加入者のいない事業所へ異動させたこと、(3)組合員である所属長が、分会長の異動に異議を申し立てる行動をとったところ、当該所属長に対し降格の懲戒処分を行ったこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
2 判断要旨
(1)会社が団交での発言者の処分を示唆する通告を行ったことについて
ア 団交で、副分会長は、会社が社員を奴隷としか思っていないような感触をここ数年もっている旨発言し、当該発言に対し、会社は、後日、組合に、断じて看過できるものでも容認できるものでもなく、法令諸規則に抵触すると思われる行為については、今後厳正に対処する旨の通告を文書で行った。
イ しかし、団交での副分会長の発言を全体としてみれば、会社に対し、昇給や一時金について決定する際の従業員への説明を求める趣旨と解される。そこから通告の対象発言のみを取り出して問題視する通告の内容は、適当とは言い難い。
ウ また、会社が「奴隷」という言葉に強い違和感を覚えたのであれば、その場で発言の趣旨を確認し、反論、撤回を求めるなどの対応を行うことができたにもかかわらず、団交後に文書で一方的に通告したことは、方法としても適当とは言い難い。
なお、会社は、他の会社従業員及び顧客等への影響をいうが、貸会議室における団交上の発言を、それら第三者が内容を知り、それにより社内の秩序が乱れたり、会社の社会的評価・信用が著しく低下するとは考えにくい。
エ そして、当該通告は、組合員の活動を萎縮させ、労働組合の基本的活動である団交を不当に牽制するものであり、組合の運営に影響を及ぼすと認められる。
オ 以上のとおりであるから、当該通告を行ったことは、組合員に対し威嚇的効果を与え、組合の組識、運営に影響を及ぼすものであり、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
(2)会社が分会長を異動させたことについて
ア 会社は、分会長を組合組織率100%で組合活動の中心的事業所から組合加入者のいない事業所へ異動させた。
イ 当時、組合は、春闘交渉が妥結しなかったとしてストライキを実施し、また、会社は組合に対し、団交での副分会長の発言について、処分を示唆する通告を行ったことが、労働組合の活動を牽制する不当労働行為であることは、前記(1)判断のとおりである。
以上のことから、労使関係は対立状況にあり、会社が反組合的意思を有していたと推認される。
ウ 本件の分会長の異動により、組合は春闘のストを実行できず、分会長が労使協議会や団交の日程調整に苦慮するなど、組合活動に影響が生じていたといえる。
エ 会社は、分会長の異動先である事業所は業務量が多く、分会長の前任者は高齢で負担が重かったため、比較的若い分会長が後任に適していた旨主張する。しかし、会社は、会社が契約する物件の中で最大規模のビルであり、分会長の従前の勤務先である事業所に、高齢の従業員を着任させるなどしており、会社の主張には一貫性がなく、信憑性に欠けるといわざるを得ず、分会長の異動に業務上の合理性は認められない。
オ 以上を総合的に勘案すれば、分会長の異動は、組合の弱体化を企図した支配介入行為に当たり、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
(3)会社が組合員である所属長に対し降格の懲戒処分を行ったことについて
ア 分会長の異動に当たり、分会長が所属していた事業所の有志一同は、分会長の異動撤回を求める署名の依頼文書を、組合員らが手分けしてコンビニエンスストア等からファクシミリで会社の複数の事業所へ送信した。会社は、このファクシミリ送信等を受けて、組合員であるこの事業所の所属長を降格処分とした。
イ 不利益取扱いについて
(ア)所属長は、当該処分により降格となり、これに伴い、給与が減給となったのであるから、経済的な不利益があるといえる。
(イ)会社は、当該ファクシミリの文書の名義が組合の名義ではなく、内容も組合活動について一切触れられていないことから、当該ファクシミリ送信は組合活動でない旨主張する。
しかしながら、当該事業所は組合組織率が100%であり、組合活動の中心的事業所であったこと、ファクシミリ送信直前に組合と会社の協議で、組合が分会長の異動に同意できない旨伝えていたことに鑑みれば、ファクシミリ送信が組合活動と無関係と捉える方が不合理であり、会社は、ファクシミリ送信が組合活動と強く関連した行為であると認識しうる状況にあったといわざるを得ない。
(ウ)また、前記(2)イ記載のとおり、労使関係は、対立状況にあったといえる。
(エ)降格処分の懲戒処分通知書には、懲戒該当事項として、会社の就業規則の条項に違反する旨、懲戒規程の条項に該当する旨が記載されているが、違反しているとはいえない条項、懲戒該当事項として合理性があるか否か判然としない条項等がある。当該降格処分は、同処分の根拠となった所属長の行為に比して、著しく過重で相当性を欠くものであり、当該処分の合理性は認められない。
(オ)以上を総合すると、会社が所属長を降格処分としたことは、組合員であるが故になされた不利益取扱いであるといえ、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為と認められる。
ウ 当該ファクシミリの送信は、当該事業所における組合員の共同作業的な活動であったといえる。
そうすると、ファクシミリ送信のリーダーシップを執った組合員である所属長に対する降格処分は、他の組合員を萎縮させ、組合の団結力、組織力を損なうおそれがあることから、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
3 命令内容
(1)降格処分がなかったものとしての取扱い及びバックペイ
(2)誓約文の手交
※ なお、本件命令に対して、会社は、中央労働委員会に再審査を申し立てた。