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更新日:2024年5月24日

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8.T事件(令和5年(不)第16号事件)命令要旨

1 事件の概要

本件は、組合が、会社に対し、A組合員に対する休職命令通知等について団体交渉を申し入れたところ、会社は、回答せず、団交にも応じないことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

  • (1)本件団交申入れに対し、本件申立てに至るまでの間、団交が開催されていないことについて、当事者間で争いはない。
  • (2)そこで、まず、本件団交申入れにおける要求事項が義務的団交事項に当たるかについてみる。
    本件団交申入れの要求事項は、組合員の労働条件に関する事項や団体的労使関係の運営に関する事項を含んでいるから、いずれも使用者に処分可能なものであるので、義務的団交事項に当たる。
  • (3)次に、会社が本件団交申入れに応じないことに正当な理由があるかについてみる。
    • ア 会社は、本件団交申入れ事項である本件休職命令はA組合員の組合加入前に発令されており、事後的に組合に加入したと言われても、休職命令及びこれに基づく退職扱いの有効性には疑いはなく、譲歩の余地はない旨主張する。
      確かに、本件組合加入通知及び本件団交申入れは、本件休職命令後に行われたものであるといえるが、その要求事項は義務的団交事項であるから、本件団交申入れの有効性には何ら問題はない。また、たとえ、会社が、本件休職命令及びこれに基づく退職扱いの有効性に疑いはなく、譲歩の余地はないと考えたとしても、会社は、団交の場で、組合に対し自らの見解を明らかにし、これに関する組合からの質問があれば回答するなどして協議を行うべき立場にあるといえる。
      したがって、この点に係る会社主張は、本件団交申入れに応じない正当な理由には当たらない。
    • イ 次に、会社は、同業種の協同組合から加入各個社に対して、組合との個別の接触・交渉等を控えるよう指示がなされており、会社としては、個社の判断により休職命令を撤回することは事実上困難というほかなく、仮に団交を開催しても譲歩・合意の余地はないことが明らかである旨主張する。
      会社は同業種の協同組合に加入していることが認められるが、仮に、当該協同組合から、組合との個別の接触・交渉等を控えるよう指示がなされていたとしても、同指示に従ったからといって不当労働行為責任が免ぜられるわけではない。加えて、前記ア判断と同様、会社が団交を開催しても譲歩・合意の余地はないと考えたとしても、会社は団交の場で協議を行うべき立場にある。
      したがって、この点に係る会社主張も本件団交申入れに応じない正当な理由には当たらない。
  • (4)以上のとおりであるから、本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

3 命令内容

  • (1)団交応諾
  • (2)誓約文の交付

なお、本件命令に対して、会社は中央労働委員会に再審査を申し立てた。

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