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6.G事件(令和6年(不)第40号事件)命令要旨
1 事件の概要
本件は、会社が、(1)組合との事前協議同意約款を無視し、組合の理解と納得を得る努力をしないまま、組合が組織している事業部の事業を申立外A社へ譲渡することを強行しようとしたこと、(2)事業譲渡に当たり、A社に対し、組合の存続と労働協約の承継を認めさせる努力を行わなかったこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
2 判断要旨
(1)会社がA社と、事業譲渡に関連する秘密保持契約を締結したことについて
ア 労働組合法第27条第2項は、不当労働行為救済申立てが、行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から1年を経過した事件に係るものであるときは、労働委員会はこれを受けることができない旨規定している。
本件は、会社がA社と秘密保持契約を締結した日から1年以上経過して申し立てられたことは明らかである。
イ この点、組合は、本件申立ての内容は、同項で規定する「継続する行為」に当たり、「その終了した日」から1年を経過していない旨、秘密保持契約は、一体の継続した行為の一部であって、契約を締結した時点で「終了した」ということはできない旨、秘密保持契約が、会社から組合への告知以降の労使協議の妨げになっており、その効力は当該契約締結時点で終了していたものではない旨主張する。
ウ しかしながら、秘密保持契約の締結行為は法律行為であり、これに対し、会社から組合への告知以降の労使協議等は事実行為であって法的性格が異なるのであるから、継続して行われる一括して一個の行為とはいえない。
エ 以上のことから、秘密保持契約を締結したことに係る申立てについては、申立期間を徒過したものとして却下する。
(2)会社がA社と事業譲渡の交渉を進めるなどしたことについて
ア 一般に、事業所廃止や営業譲渡等の労働者の地位に影響を及ぼすような経済活動であっても原則的には使用者の営業の自由の範囲内であるといえ、それが経営判断として合理性を有する場合には、使用者が労働協約を無視して行った場合や、専ら労働組合を嫌悪し、その活動に打撃を与える目的をもってされたものであるなどの特段の事情のない限り、それ自体が不当労働行為となることはないと解すべきである。
イ 組合と会社は、事前協議同意約款を締結していることから、組合は、事業譲渡について、組合の同意なく決定、強行し、基本合意書をA社と締結したことは、事前協議同意約款を無視した不当労働行為である旨、事業譲渡には合理性がなく、専ら組合を嫌悪し、その活動に打撃を与える目的をもってされたものである旨主張する。
ウ 締結された事前協議同意約款は、組合員の雇用確保に関するものを事前協議・事前同意の対象と解すべきであるが、本件の事業譲渡は組合員の雇用確保とは関係がないことから、事前協議同意約款の規定と趣旨が異なり、同約款の対象とはならない。
エ また、会社は組合に対し、本件の事業譲渡を行う背景、理由、事業譲渡先及び事業譲渡後の状況等について説明している。この点、組合は、会社の説明は、抽象的な内容と希望的観測が述べられているだけであり、実現できる根拠は何も書かれていない旨主張するが、本件の事業譲渡については経営判断として合理性を有することが認められる。
オ さらに、組合は、会社は、A社が、組合の存続と労働協約の承継を認めていないことを知りながら、厚生労働省の「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」に反し、組合の尊重や労働協約の承継を事業譲渡の条件とすることもせず、事業譲渡を強行することで、組合の消滅と労働協約の失効を謀った、また、団体交渉においても不誠実な対応に終始したと主張する。
(ア)しかし、厚生労働省の同指針は、譲渡会社等がその雇用する労働者の理解と協力を得るよう努める事項として、労働協約の承継に関する事項等を掲げているにとどまり、譲渡会社等に譲渡先への労働協約の承継を義務付けているものではないことから、労働協約が承継されなかったとしても、それによって会社が同指針に違反するものではない。
また、会社がA社に、組合の存続と労働協約の承継を認めさせなければならない義務を課した規程・協定等の存在の疎明はない。
(イ)また、会社は、事業譲渡に関する組合からの申入れに対し、概ね数日後には、団交に応じるか、書面で回答している。
なお、組合は、団交で、会社が不誠実な対応を行った旨主張するが、団交において、双方が互いに自説を譲らず、やり取りが平行線になっており、会社が不誠実であるとはいえない。
その他、事業譲渡が、専ら組合を嫌悪し、その活動に打撃を与える目的をもってされたものであることを認めるに足る疎明はない。
カ 以上のことから、事業譲渡は事前協議同意約款に違反せず、また、事業譲渡には一定の合理性があり、専ら組合を嫌悪し、その活動に打撃を与える目的をもってされたものであるなどの特段の事情は認められない。
したがって、会社が、組合に知らせることなく事業譲渡に向けたA社との交渉の準備を進め、交渉を開始することを取締役会で決議し、公表し、A社と基本合意書を締結したことは、組合に対する支配介入とはいえず、組合の申立ては棄却する。
3 命令内容
(1)秘密保持契約を締結したことに係る申立ての却下
(2)申立人のその他の申立ての棄却
※ なお、本件命令に対して、組合は、中央労働委員会に再審査を申し立てた。