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更新日:2024年5月24日

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6.P事件(令和4年(不)第4号事件)命令要旨

1 事件の概要

本件は、組合が、委託販売契約を締結して販売業務を行っていた組合員1名の契約内容や経費負担に関する事実関係を明確にすること等について団体交渉を申し入れたところ、会社が、同組合員が労働組合法上の労働者に該当しないとして、これを拒否したことが、不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

  • (1)本件団交申入書に対する会社の回答書には、A組合員が労働組合法上の労働者に該当しない以上、組合からの団交申入れに対しては応じかねる旨の記載があったことが認められる。
    そこで、A組合員が労働組合法上の労働者に当たるか否かについて検討する。
    • ア A組合員が労働組合法上の労働者であるかどうかについては、同組合員と会社との間で交わされた業務に関する合意内容や業務遂行の実態において、従属関係を基礎づける諸要素の有無・程度等を総合考慮して判断する必要がある。
    • イ この場合、総合考慮の対象として従属関係を基礎づける諸要素には、「基本的判断要素」として、(ア)事業組織への組み入れ、(イ)契約内容の一方的・定型的決定、(ウ)報酬の労務対価性、「補充的判断要素」として、(エ)業務の依頼に応ずべき関係、(オ)広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束、「消極的判断要素」として、(カ)顕著な事業者性、の6要素がある。
      • (ア)事業組織への組み入れについて
        A組合員は会社と委託販売契約(以下「本件契約」という。)を締結し、販売受託者となったところ、本件契約は、会社が自社商品の販売を目的として、業務に従事する人員を確保するために締結されたものであるといえる。また、販売に従事する人数において99.9%を占めるなどする販売受託者らは、会社の自社商品販売業務の遂行に不可欠ないし枢要な役割を果たす労働力として組織内に位置づけられているとみるのが相当である。
        その他販売目標や会議出席等に関する事実等は、販売受託者が組織に組み入れられていること等を示している。
        したがって、A組合員は、会社組織に組み入れられていたとみるのが相当である。
      • (イ)契約内容の一方的・定型的決定について
        会社が、販売業務の方法、報酬の算定基準、算出方法も含んだ契約の内容を、一方的かつ定型的に決定していたことは明らかである。
      • (ウ)報酬の労務対価性について
        会社からA組合員に対して支払われていた報酬は、商品の販売手数料との形式をとっているものの、実質的には、カウンセリング販売やエステ販売といった役務に対する対価であるとみるべきである。
      • (エ)業務の依頼に応ずべき関係について
        当該判断要素は、「(ア)事業組織への組み入れ」を補充する判断要素であるところ、前記(ア)判断のとおり、A組合員が会社組織に組み入れられているとみられる以上、当該判断要素については、検討の必要を認めない。
      • (オ)広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束について
        • a 広い意味での指揮監督下の労務提供について
          A組合員は、会社の商品のエステ販売やカウンセリング販売を行うに当たり、会社が作成したマニュアルによって、エステの方法やカウンセリングの方法等について、詳細な指示を会社から受けていたとみることができ、会社の指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督下において業務を行っていたといえる。
        • b 一定の時間的場所的拘束について
          A組合員がB氏の指示に従わざるを得ないことは、会社によって用意された組織構造の中の販売員同士の関係性からすれば、無理もなかったと推認できる。
          そうであれば、B氏からの指示により、A組合員は時間的場所的拘束を受けていたと言わざるを得ない。A組合員は、本件契約締結後は、B氏の指示により、働く場所や時間を決定されていたのであって、自らの自由裁量により、働く場所や時間を決定していたとはいえない。
      • (カ)顕著な事業者性について
        A組合員が顕著な事業者性を有していたと認めるに足るような事情は存在せず、したがって、A組合員が顕著な事業者性を有していたとまではいえない。
    • ウ 以上のことを総合的に判断すると、A組合員は、会社との関係において労働組合法上の労働者に該当するとみるのが相当である。
  • (2)本件団交申入書に記載の要求事項は、会社とA組合員との間の未精算の労働契約関係に係るものであるから、義務的団交事項に当たる。
    したがって、会社は、正当な理由がない限り、組合の本件団交申入れに応じるべきであるところ、会社は、A組合員が労働組合法上の労働者に当たらないとして、これに応じていないが、これが、団交拒否の正当な理由とはならないことは前記(1)判断のとおりである。
  • (3)以上のとおり、本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

3 命令内容

  • (1)団交応諾
  • (2)誓約文の手交

なお、本件命令に対して、会社は中央労働委員会に再審査を申し立てた。

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