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原発ゼロの会・大阪 要望書
要望書受理日 |
令和6年12月5日 |
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団体名 | 原発ゼロの会・大阪 |
取りまとめ担当課 | 環境農林水産部脱炭素・エネルギー政策課 |
表題 | エネルギー・環境分野についての2024年度要望書 |
要望書
2024年12月5日
大阪府知事 吉村洋文 様
原発ゼロの会・大阪
エネルギー部会
エネルギー・環境分野についての2024年度要望書
大阪府のエネルギー・環境政策について、以下の点を要望しますので、ご検討よろしくお願いします。
(1)自然エネルギー・再生可能エネルギーの推進について
1)情勢との関係で自然エネ・再エネの推進が最大の課題となっているという認識を示すこと
本年1月の能登半島地震の発生、8月の「巨大地震注意」の発出は、改めて日本が地震国である実態を痛感させました。世界の巨大地震の2割、火山の1割が集中する日本には、原発は余りにも危険であること、また、原発事故と自然災害が重なる複合災害となった場合、「避難計画」などほとんど機能しないことも明らかになりました。
また、気候変動・地球温暖化の問題は、国内外で大洪水や巨大台風、大規模な山火事など様々な大災害を発生させ、ますます深刻な問題になってきています。その原因が人間の活動によるもので、中でも化石燃料の使用による温室効果ガス・CO2の排出にあることが明白となり、温室効果ガス・CO2の削減は待ったなしの課題となってきていることも明らかになってきています。
こうした情勢を考えると、持続可能な社会を実現するためには、「脱原発」と「脱炭素」が必要であり、それらに対置するエネルギー・環境政策として、自然エネルギー・再生可能エネルギーの推進が喫緊の課題として求められていると考えます。
昨今のエネルギーや地球環境をめぐる情勢と課題について、改めて大阪府としての最新の認識を示してください。
2)原発ゼロへの道と自然エネルギー・再生可能エネルギーの推進について
こうした中、大阪府は「原発への依存度を減らし、将来的にはゼロに」という見解を取っています。「原発への回帰」の動きが強まる中で、現行『エネルギー基本計画』の中の「原発への依存度を減らす」という文言を削除せよという要求が出ている情勢の下では大事な姿勢であり、引き続きこの見解を堅持してもらいたいと考えます。
私たちは、「原発をゼロ」にするカギは、徹底した省エネ・エコな生活への転換と自然エネ・再生エネの推進にあり、原発をゼロにする条件は十分あると考えています。何故なら、現在の電源構成比率で原発はわずか5.6%に過ぎず、実際、北海道・東北・関東・中部・中国・沖縄の6圏は2011年以来ずっと原発ゼロで来ています。九州地方をはじめ多くの地域で自然エネ・再エネ電気を使わずに捨ててしまう「出力抑制」が行われる事態になっています。従って、私たちは、国や自治体、国民が決断すれば、原発はいつでもゼロに出来る情勢にあると考えています。
大阪府として原発をゼロにする「期限」や「条件」についてどう考えているか明らかにして下さい。
(2)おおさかスマートエネルギープランについて
1)プランの自立・分散型エネルギー導入量について
区分 | 実現手段 | 2020年度目標(2014年3月策定) | 2030年度目標(2021年3月策定) | |||
目標値 | 目標内訳 | 目標値 | 到達点 | |||
2019年度 | 2022年度 | |||||
増加 | 太陽光 | 125万キロワット | 90万キロワット | 250万キロワット | 185.1万キロワット | 200.7万キロワット |
分散型電源 | 30万キロワット | |||||
廃棄物発電 | 5万キロワット | |||||
削減 | ガス冷暖房等 | 25万キロワット | 20万キロワット | |||
BEMS等 | 5万キロワット | |||||
合計 | 150万キロワット | 150万キロワット | 250万キロワット | 185.1万キロワット | 200.7万キロワット |
2014年策定の『おおさかエネルギー地産地消推進プラン』、2021年策定の『おおさかスマートエネルギープラン』のエネルギーの「供給力の増加目標」、「需要削減目標」は表のようになっています。
ところで『エネルギー地産地消推進プラン』では、150万キロワットの目標を実現するために、表の「実現手段」「目標内訳」のように内容を明らかにしています(太陽光についてはさらに住宅用で62万キロワット、非住宅用で28万キロワットと細かい目標を具体的に掲げている)。ところが『スマートエネルギープラン』では「目標値」を250万キロワットと大雑把に表示しているだけです。
それで、「目標値」の250万キロワットおよび「到達点」の2019年度185.1万キロワット、2022年度200.7万キロワットの内訳を詳しく明らかにしてください。また、それは大阪府全体のエネルギー事情の中でどんな比率を占めるのかも示してください。
2)再エネ利用率について
2030年度目標 | 到達点 | |||
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||
再エネ利用率(再エネ/電力需要量) | 35%以上 | 22.7% | 23.0% | 20.1% |
2021年策定の『スマートエネルギープラン』では「2030年までに再エネ利用率35%以上」を掲げています。結構なことですが、その目標を実現するための方法・手段をどのように考えているか示して下さい。また、2022年度の大阪府の到達点20.1%という内容について、詳しい内容を明らかにしてください。
なお、ここで掲げる「電力需要量」とは、イコール「消費電力量」と理解していますがそれでよろしいでしょうか。また、大阪府の消費電力量は、資源エネルギー庁の報告書によると、2016年度で産業部門116億4100万キロワットアワー、家庭部門198億8300万キロワットアワー、業務部門285億5300万キロワットアワー、合計600億7700万キロワットアワーとなっていますが、大阪府は再エネ利用率の基礎数値としてどのデータを採用し、その数値の最新データはどうなっているか教えてください。
3)エネルギー利用効率について
2030年度目標 | 到達点 | |||
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | ||
エネルギー利用効率 | 40%以上 | 約14%改善 | 約16%改善 | 約15%改善 |
エネルギー利用効率は、「府内総生産当たりのエネルギー消費量」と説明されていますが、ピンときません。それで、エネルギー利用効率を求める計算式と実際の数値を、「目標の2012年度比で40%以上改善」、「2020年度の到達点約15%改善」を例に示してください。また、目標として掲げたエネルギー利用効率「40%以上改善」が実現した場合どんな状態になるのか、エネルギー利用効率を高める要素は何か、さらに府民・事業者はどんな取り組みをしたら良いのかも明らかにしてください。
(3)大阪府の脱炭素化事業について
1)以下の事業について、廃止した理由を説明してください。
- 中小事業者LED導入促進事業(2023年度15億7334万円→2024年度0円)
- 運輸事業振興助成補助金(2023年度8億9061万円→2024年度0円)
- 公共交通事業者(バス・タクシー)への支援(2023年度3億4860万円→2024年度0円)
2)2024年度計画で掲載されている以下の事業についてその内容を詳しく説明してください。
- ESCOノウハウを活用した既存府有建築物のZEB化事業(新規で予算はまだゼロ)
- 中小事業者の高効率空調機への導入支援(7億323万円)
- 中小事業者の脱炭素重点対策促進事業(4000万円)
- 脱炭素型農業推進事業(447万円)
- 住宅省エネ改修促進事業(アクションプログラムに1億5516万円)
- 万博を契機とした環境・エネルギー先進技術普及事業(423万円)
- カーボンニュートラル技術開発・実証事業(8億15万円)
3)府の事業として復活してください
- 廃止した中小事業者LED導入促進事業を府の単独事業として復活すること。
(4)自然エネ・再エネを飛躍的に進めるために
自然エネ・再エネを、情勢が求めるレベルにまで飛躍的に進めるために以下の点をご検討ください。
1)『おおさかスマートエネルギープラン』の構成について補強を
2021年策定の『おおさかスマートエネルギープラン』の構成は、1.エネルギー効率の向上、2.再エネの普及拡大、3.レジリエンスと電力需給調整力の強化、4.エネルギー関連産業の振興と全分野の企業の持続的成長、の4つを柱にしています。これは、私たちの要求の柱となっている1.省エネ・エコな生活への転換、2.自然エネ・再エネの推進、3.送配電問題と優先電源問題、4.自然エネ・再エネによる地元経済の活性化、域内経済の循環型確立といった項目と、内容は別にしても重なり合うものです。
但し、『スマートエネルギープラン』には、次のような大事な視点が欠落しており、エネルギー施策の取り組みを正しく、総合的に発展させるために、次の点の補強を検討してください。
- CO2の吸収源として樹木、森林・山林等の保全育成を
CO2の吸収源の保全と育成は、「脱炭素化事業」の方で述べられていますが、都市における公園樹や街路樹、郊外における里山や森林、山林などの保全と育成は、地球温暖化の原因ともなるCO2を吸収する大事な資源であるとともに、国内産の木材を活用した木質バイオ発電の燃料供給源ともなる大切な資源です。そうした樹木や森林、山林の保全とそれらを活用した木質バイオ発電が循環型に働き合う社会を実現するといった視点からも、一つの柱としてきっちり位置づけるべきだと考えます。 - 国民、特に若い人たちへの啓蒙・普及活動の強化を
アクションプログラムでは「啓蒙啓発事業」として様々な事業が列挙されていますが、『おおさかスマートエネルギープラン』では啓蒙啓発事業が柱にはなっていません。府民・市民への啓発、特に若い人たちへの現在の環境問題の深刻さ、その解決方向としての自然エネルギー・再生可能エネルギーの推進について具体的、体系的に理解してもらうことが大切であり、これも一つの柱とすべきと考えます。 - 情勢との関係でいま何が大事かの強い打ち出しを
先にも述べたように、エネルギー問題、地球環境問題で目の前に展開する事象を見ても「省エネとエコな生活への転換」「自然エネルギー・再生可能エネルギーの推進」が喫緊の課題として求められています。そうした情勢にあるという認識に立って、財政と人を最大限投入して、自然エネ・再エネを最優先の課題として推進するのだという強い姿勢を打ち出し、府民にも呼びかけるべきと考えます。
2)「2050年実質ゼロ」から逆算した期限と目標の設定を
『おおさかスマートエネルギープラン』では2030年の再エネ利用率の目標を「約35%以上」としていますが、2022年度の到達点は20.1%に過ぎません。今後6年間で「約35%以上」という目標を達成するためには、大阪府はもとより各市町村、府民・市民、事業者が総力を挙げて取り組む必要があります。
しかもこれはゴールではなく単なる通過点であって、2050年の「CO2排出の実質ゼロ」に見合う再エネ利用率まで高めていくことが求められています。COP等で確認された国際合意を基にすれば、2030年までに2013年度比で46%、2035年までに60%、さらに2050年には100%にまで高めるスピードが求められています。大阪だけで100%の達成が無理な場合は、近畿をはじめ他府県からの自然エネ・再エネ電源の導入も検討されるべきです。
大阪府として、「2050年CO2排出の実質ゼロ」を実現するための再エネ利用率の目標を2030年、2035年、2040年、2050年の時系列で示してください。
(5)省エネと自然エネ・再エネを具体的に進めるために
1)推進に当たっての基本的な考え方
自然エネ・再エネの推進に当たっては、次のような点を基本にして進めてください。
- 新しい技術の開発も大事ですが、先ずは今ある技術を最大限活用して省エネとエコな生活への転換、自然エネルギー・再生可能エネルギーの推進を大いに進めるという立場に立つこと。
- 太陽光発電や風力発電、小水力発電、木質・食品バイオ発電、地熱発電など、それぞれの地域に存在する資源を活かし、小規模分散・地産地消・住民参加を基本に進めること。
- 一部企業への開発補助・援助ではなく、自然エネ・再エネの推進が府民全体の取り組みになるよう、言わば取り組みの裾野が広がるような施策を進めること。
2)市町村の補助・助成制度を府の制度に格上げして全府的な取り組みにすること。
府内の市町村では、省エネ、自然エネ・再エネの推進のために、次のような施策が実施され、成果を上げています。これらの施策を府の制度(事業)に格上げし、大阪府と各市町村が連携・協力し合って全府的な取り組みにし、自然エネ・再エネの取り組みが大阪全体として大きく前進するようにして下さい。
A.太陽光発電の推進事業
- 住宅用太陽光発電等設置事業補助(豊中市、茨木市、寝屋川市、東大阪市、富田林市、河内長野市、河南町、堺市、和泉市、泉大津市の10市町)
- 家庭用燃料電池システム、リチウムイオン蓄電池、蓄電池などの設置への一部補助(茨木市、東大阪市、松原市、富田林市、大阪狭山市、堺市、和泉市、貝塚市の8市)
- 太陽光パネル+蓄電池または自立運転機能付きのエネファームを設置した個人に設置費の一部を補助する制度(貝塚市)
B.住宅や事業者の省エネ・エコ化への補助・助成事業
- 家庭用燃料電池やコージェネレーションシステム設置補助事業(松原市、大阪狭山市、和泉市)
- 事業者向け省エネ・省CO2設備導入事業補助(茨木市)
- 戸建てや集合住宅でのエネファーム設置費用の補助(堺市、河内長野市、貝塚市)
- HEMS(ヘムス。home energy management system)やZEH(ゼッチ。Net Zero Energy House)への一部補助(東大阪市、堺市、貝塚市)
C.電気製品の節電タイプ化や自動車のEV化への補助・助成
- 省エネタイプのエアコンへの切り換えの補助(岡山県西粟倉村)
- 高効率給湯器購入補助金事業(泉大津市)
- 事業者の高効率コンプレッサー機への切り換えの援助(堺市)
- EV車(電気自動車)用充電スタンド設置補助金事業(泉大津市)
3)大阪府が取り組んできた施策の復活を
- 2019年度まで実施していた府民共同発電補助事業を復活すること
4)国に対しては次のような要望を大阪府としても行って下さい
国に対しては次のような事項を大阪府としても要望してください。
- 発電・送電部門を資本含めて完全分離し、送電部門は公営にすること。
- 自然エネ電力生産者が系統連系に接続する際に要求される送電線設置費用に国が補助すること。
- 原発や石炭火発をベースロード電源と位置づける現行のルールを改め、ドイツの様に自然エネ・再エネ電力を優先電源に位置づける制度に改め、自然エネ・再エネの「出力抑制」を止めること。
(6)CO2の吸収源として樹木や山林の保全育成、ソーラーシェアリングの普及を
- 都市における公園樹や街路樹、郊外における里山や森林・山林は、CO2を吸収する大切な資源であるという認識に立って、その保全育成と拡充に努めること。
- 森林・山林を保全育成するためにも、国内産木材を活用した木質バイオ発電の推進を森林組合等と協力して積極的に進めること
- 農家の営農が成り立つための方策として、農地でのソーラーシェアリングの実施を積極的に推進すること。ソーラーシェアリングを進めやすくするための条件整備を行うこと。
(7)大阪府立の「環境・エネルギー資料館」(仮称)」の設置を
大阪市は、大阪市立科学館のモデルチェンジを行い、これまでにあった原発や核燃料サイクル構想、石炭火力発電の無批判的な展示をなくしましたが、今度は余りにもコンパクトな展示となって、逆に自然エネルギーや再生可能エネルギーについて、その推進の必要性や原理の説明、実物・模型の展示のほとんどない貧相な展示会場になっています。これでは、自然エネルギー、再生可能エネルギー推進の必要性もイメージも、意欲もわいて来ません。
改めて、現在の気候危機・地球温暖化問題の深刻さと国際会議や世界各国でとられている対応策、そして、国民が安心して暮らせる持続可能な社会のエネルギーのあり方、太陽光や風力、小水力、バイオ、地熱など自然エネルギー・再生可能エネルギーとはどんなものかの実物や模型を展示する「環境・エネルギー資料館」(仮称)のような常設施設を、府立の施設として設置することを強く要求します。
以上