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大阪府歯科保険医協会 要望書
要望受理日 | 令和7年5月30日(金曜日) |
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団体名 | 大阪府歯科保険医協会 |
取りまとめ担当課 | 府民文化部府政情報室広報広聴課 |
表題 | 口腔保健事業の充実等を求める要望書 |
要望書
2025年5月30日
大阪府知事
吉村 洋文 殿
大阪府歯科保険医協会
理事長
口腔保健事業の充実等を求める要望書
応接項目
1.口腔保健事業、患者の受診抑制対策
- 失業や廃業、減収及び物価高騰等により経済的理由から受診抑制がおこらないよう、府民に対して医療費の一部負担金を減免する制度を充実させること。
要望趣旨:大阪社保協の調べでは2023年度に府下で一部負担金減免の制度利用はわずか1414件で、国保の加入世帯約112万に占める割合は0.13%と低い現状を改善すべきである。 - 福祉医療費助成制度において、乳幼児医療、ひとり親家庭医療、障がい者医療の対象者を抜本的に拡充し、窓口負担をなくすこと。老人医療費助成制度を復活させること。これら4医療費助成に加え、妊産婦医療費助成を新設すること。
要望趣旨:子ども医療費助成制度への府の適応年齢は全国でも最低ラインで、1日500円の負担金は他府県と比べても最低水準である。ひとり親や障害者への助成制度も手厚くすべきである。2022年度に全廃されたお年寄りの医療費助成制度も物価高騰や年金切り下げによる実態に照らして復活すべきである。 - 成人歯科健診は毎年受けられるよう拡充し、障害者、施設入所者、在宅患者等の健診の機会を保障すること。また患者が希望する歯科医療機関で受けられるようにすること。
要望趣旨:国の予算では、歯科口腔保健・歯科医療提供体制の推進などに57億円が計上されている。成人歯科健診は、18歳以上から高齢者になるまでの間にいつでも無料で各自治体で受診できるよう、施策を講じ補助を行うべきである。自ら健診に赴くことが困難な者に対する機会の拡充も必要である。また、歯科健診が委託事業となることで、患者が希望する歯科医療機関で受診できないケースがあることから、受診者本意の制度運用をするよう市町村に注意を促すべきである。
2.国保料、介護保険料の問題
- 高額な保険料の原因である、府内統一保険料化を止めること。高くなった大阪府の保険料を下げるため、大阪府一般会計法定外繰り入れを行うこと。大阪府が市町村独自の基金に口を出すことは地方財政法違反であることを認識すること。
要望趣旨:2024年度から統一保険料によって、際限なき国保料の引き上げが起こっている。各自治体が永年積み重ねてきた「払える保険料」にするための独自減免がなくなり、被保険者は大きな被害を受けている。また、自治体が積み上げてきた基金を各自治体が保険料引き下げに活用することを妨げる行為は止めるべきである。 - 府独自の介護保険料軽減策の手立てを早急に講じること。
要望趣旨:大阪市をはじめ、大阪府内自治体の介護保険料が高額になっており、全国でも最悪水準となっている。
3.歯科医療提供体制、公衆衛生
- 歯科を標榜する地域の基幹病院への財政支援を強め高次の歯科医療提供体制を整備すること。
要望趣旨:歯科を標榜する病院は全国の約2割程度にとどまっている。日本歯科医師会が全国の病院にとったアンケートでは、歯科を設置する意向があるものの躊躇している要因のトップに「不採算だから」と53.3%が答えている。診療報酬上の問題に解消せず、府として積極的に助成措置を講ずるべきである。 - 新興感染症が発生した際に歯科治療にかかわる体制を医療圏ごとに整備すること。新興感染症に対応できる保健所職員の増員、体制を強化すること。
要望趣旨:新興感染症が発生した場合は、病床や看護師の配置、感染予防策に必要な医療資源の配分が病院単位で検討されるため、歯科医師会と連携するだけでは、新興感染症発生時に対応することは困難である。また、広域の医療圏ごとの体制確保を含む、二次医療圏ごとに、外感染4の届出医療機関が増えるよう支援することから始めること。人口当たりの保健師数とコロナ死数との関連をレポートした奈良県立医科大学のデータを重く受け止め、保健師数を増やすべきである。大都市を抱える他県と比べて、「保健師の数は少なくない」などの指標は的外れである。 - 歯科口腔外科を実施している公的医療機関や歯科口腔外科の認定医・専門医が配置されている医療機関を把握し、府民に分かりやすく周知すること。
要望趣旨:歯科口腔外科の認定医・専門医が配置されている歯科診療所や病院歯科を府民に知らせることによって、悪性腫瘍の鑑別診断が必要な口腔粘膜疾患や腫瘍手術への対応が迅速に実施でき、医療資源の効率的運用にもつながり有用である。 - 地域での歯科医療の提供体制を拡充する観点から、地域歯科診療支援病院および在宅療養支援歯科病院などが医療圏ごとに配置されるよう支援し整備を進めること。
要望趣旨:地域歯科診療支援病院および在宅療養支援歯科病院は、周術期および回復期の口腔機能管理や超高齢化社会の中でニーズが高まっている在宅歯科医療の後方支援機能を担っており、その整備は国が進める地域包括ケアシステムの大きな柱となっている。 - 障がい者(児)歯科医療に対応する一次医療機関を把握し増やすとともに、入院下、全身管理下で歯科治療が受診できるよう高次連携を進めること。当該医療機関を対象とする財政支援策および高次歯科医療機関との相互連携を支援すること。
要望趣旨:まずはかかりやすい一次医療機関の中に障害者歯科を増やす必要がある。現状では、二次医療圏内に障害者歯科診療所が設置されていても、週末など曜日によっては各診療所の休診が重なっている曜日もある。さらに全身管理下で高度な歯科治療が必要な場合には、病院歯科で医科と連携しながら進める必要がある。現状では、全国の病院で歯科を設置しているのは2割程度だが、それらの病院歯科でも行われているのは施設内の医科入院患者の口腔管理が9割超で、近隣の歯科診療所の後方支援は4割程度である。高度な歯科治療を障害者も含めて安心して受けられるよう、対応できる病院歯科を増やすこと、対応できる病院歯科を府が掴んでおき、マップ化されたものを開業医が見て、すぐに紹介できるような体制が必要である。 - 個人歯科技工所に対して、高度な医療用機器の取得を支える補助金を創設し申請手続きの簡素化や申請書補助の窓口を設置すること。
要望趣旨:口腔内スキャナや歯科用CAD/CAM装置、3Dプリンターなど、電子機器の歯科医療技術への応用が進化している。一方、歯科技工所の大半は小規模の個人事業主であり、これらに対応するための設備投資が困難である。経済産業省の「中小企業生産性向上促進事業費補助金」制度も活用し、高度化する歯科医療技術に対応するための補助制度が必要である。補助金申請書類が複雑で専門家に依頼すると2割が手数料になるとの声があるため、書類の簡素化や申請が気軽にできる相談窓口を設けることが必要である。なお、その際、歯科医療機関も補助の対象にすること。 - 歯科医療機関が安心して水が使えるよう、計画的に水道管の点検・補修をし到達点を可視化すること
要望趣旨:歯科医療機関は水がなくては診療できない。埼玉県で起こった水道管破損で大事故が発生しないよう、計画的に水道管を点検してほしい。事故が起こって数カ月単位で休診させられるようなことがあれば、地域医療にも支障をきたす。行政区やエリアごとに点検の実施予定や点検終了の現況が確認できるよう情報公開してほしい。 - PFASの実態を把握すること。そのために各市町村の住民の血液検査、土壌検査の実施を財政面でも支援すること。
要望趣旨:2024年8月、京都大学と市民団体「大阪PFAS汚染と健康を考える会」が、大阪府内でのPFASの検出が摂津市にあるダイキン工業淀川製作所付近に留まらず、広く大阪府、兵庫県に住む1190人の血液検査を実施、結果を発表している。PFASのうち代表的なPFOAやPFOSなど4種の合計値において、米科学アカデミーの基準(1ミリリットル当たり20ナノグラム)を超えた人が31%に当たる364人に上った。ダイキン工業淀川製作所では2012年までPFASの一種であるPFOAを製造していたが、調査対象に加わっていた3人のダイキン元従業員はいずれもPFAS4種の合計が100ナノグラムを超え、1人は今回の調査で最も高い610ナノグラムに達したことも分かっている。住民の命と健康に関わる問題であり、国と府は民間・市民団体任せにせず、PFAS汚染の可能性のある地域住民の健康調査を実施する必要がある。汚染地域の懸念のある場所の水質・土壌の検査、対策を実施し公表する必要がある。住民の血液検査に関わる費用やその後の費用は公費で行う必要がある。
4.歯科医院経営等への支援
- 新興感染症対策費を補償すること。
要望趣旨:昨今、大流行した新型コロナ感染症のように突如として新興感染症が蔓延し、歯科医療機関では感染症防止に多大なる費用を要することが明らかとなった。今後、さまざまな新興感染症が流行しても平時から歯科医療機関が安心して医療を提供していくため、府として緊急時に補償体制の要綱を策定し運用できるようにすること。 - 国の交付金だけでなく、府の独自予算でさらなる物価高騰対策支援を講じること。
要望趣旨:2024年度も高槻市、島本町では市町の独自支援があった。2024年度の国の補正予算で医療機関への3万円支援はあったものの、交付金の範囲内に過ぎない。他の都道府県との比較でも非常に貧弱である。 - 支援金などの申請手続きはオンラインに限定せず、柔軟に対応すること。
要望趣旨:ウェブ対応の可否を給付要件にすることは公平性を欠いている。また、控えが残らないなどのシステム上の信頼性などから紙申請を希望する場合もあるため、申請方法は柔軟にすべきである。 - 歯科医療機関に対する情報は府内すべての歯科医療機関にいきわたるよう徹底すること。
要望趣旨:歯科医療関係団体の中に全員加盟制の組織はないため、委託契約などで伝達すると不平等が生じる。同じタイミングで全ての医療機関に情報提供すべきである。
5.審査・指導
- 弁護士帯同や録音の申し出を妨げないこと。録音の申し出に対して同意書の提出を求めて取り下げるよう促すなど、指導大綱から逸脱する事例が大阪で起こっている。当該技官・事務官を厳正に処分するとともに再発防止策を示すこと。
要望趣旨:大阪府のベテランの事務官と技官が実施した新規個別指導において、要望内容の事件が近畿厚生局の調べで明らかになった。重く受け止め再発防止に努めるべきである。 - 改定時集団指導は、質疑応答の機会を設けるなど、改定された内容が開業医にわかりやすいものとなるよう工夫すること。
要望趣旨:診療報酬改定後の集団指導には質疑・応答の機会がなく、実態として概要の伝達の場となっている。臨床現場に混乱が起こらないよう懇切丁寧な指導の場として位置付ける必要がある。 - 保険医療機関に対する指導にあたっては、近畿厚生局との連携を前提にしつつも、選定委員会への積極的な参画と公正で民主的な運営のために独自性と主体性を持つこと。
要望趣旨:国保法に基づき個別指導する立場から、厚生局とは対等に指導現場で起こっている問題の改善に当たられたい。 - 指導大綱に定められている「懇切丁寧」な指導を徹底すること。
要望趣旨:当会に寄せられたアンケートでも、例えば、「厚労省の留意通知や日本歯科医学会の基本的な考え方に記載されていない技官独自の解釈を理由に自主返還を求められた」などの声が寄せられている。技官の心証を害したら再指導になるのではとの理由などから抗弁できない雰囲気が醸し出されており、改善が必要である。 - 技官や事務官の質の向上に努めること。被指導者が相談できる苦情申し立ての窓口や第三者機関を設けること。
要望趣旨:指導にあたる職員に対する教育の場を定期的にもち、人権の尊重をはじめ、犯罪捜査のごとき権限は与えられていないなどの法的位置づけ、および指導目的と趣旨を周知することが必要である。また、前述のとおり「技官の心証を害したら再指導になるのでは」との思いから、担当技官及び事務官には言えないことから苦情が表面化しにくいのが実状である。第三者機関が必要な所以である。 - 立合い人の選択の自由を認めること。
要望趣旨:保険診療の質的向上及び適正化を図ることを達成するため、被指導者に指導時の助言や指摘が正確に伝わる必要がある。被指導者の理解を深めるためにも、立合い人を被指導者の自由選択とすること。
文書回答項目
1.大阪府政
- 大阪・関西万博は、大阪湾の埋め立て地、夢洲を開催地としているため、開催前からガス爆発・ヒアリ・熱中症・救急や災害時の医療体制、アクセスなど様々な懸念を抱えたまま開催が強行されている。来場者の命と安全が何より優先されるべきであり、これらの問題に関して至急対応策をとること。対応が取れられるまでは開催を中止すべきである。
- 大阪・関西万博にかける会場建設費等のさらなる負担増加は許されない。府民の医療費助成、高額な国保料、介護保険料の高騰抑制に向き合い、不要不急の大型開発ではなく府民生活の改善に財源を使うこと。
- ギャンブル依存症の懸念をもたらすカジノ建設は中止すること。
- 大阪府基礎自治機能の充実及び強化に関する条例(2024年4月施行)による市町村合併などの上からの押し付けをしないこと。
- 保健所・保健センターの配置や有無、人員規模がどのように感染症対策等に影響したかを検証すること。コロナ禍でコロナ感染による全国最悪水準の死亡者数を出したにもかかわらず、2024年度の保健所職員等に関わる予算はほぼ取られていない。保健所等の施設(設備)や専門職を含む人員を拡充し、非常時に備えた保健所機能を整備すること。
2.国民健康保険事業
- 国保の資格証明書、短期保険証を発行せず、通常証を発行するよう市町村を指導すること。また18歳未満のすべて子どもの保険証は1年以上とするよう市町村を指導すること。
- マイナ保険証はいまだに別人情報の紐づけや負担割合の誤りなどのトラブルが起こっている。災害時、電源喪失時のオンライン資格確認も不可能となり、医療アクセスの阻害・受療権が奪われる懸念がある。現行の健康保険証で対応できることを府民に知らせること。
3.口腔保健事業
- 学校歯科健診で「要受診(要精検)」と診断された児童・生徒の受診状況と、「口腔崩壊」状態になっている児童・生徒の実態を調査すること。児童・生徒が確実に治療を受けられるよう教育委員会や学校への援助を強めること。医療ネグレクトの早期発見と早期対応のために、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーの配置を進めること。
- 府下の全小中学校で給食後の歯みがきに取り組めるよう、自治体・小中学校へ必要な援助をすること。
- 小中学校でのフッ化物洗口の取り組みを進めるため、「フッ化物洗口マニュアル」並びに「市町村教育委員会のためのフッ化物洗口導入の手引き」を策定すること。フッ化物応用事業に取り組む市町村への補助金制度を創設すること。
- 「児童虐待チェックシート」を改定し、子どもの身体的特徴の項目に「多数のむし歯がある」を、保護者・家庭の特徴等の項目に「歯みがき習慣がない」をそれぞれ追記すること。
- 大阪府内の児童相談所、保健所に嘱託歯科医を配置し、一時保護児童の口腔の健康状態をチェックする仕組みを整えること。
- 歯科口腔保健の推進に関する法律(口腔保健法)に基づき予算化し、理念にとどまらない実効性を担保する条例を制定すること。
- 障がい者(児)が身近な地域で安心して健診や治療を受けられるよう、一次医療圏に所在する障がい者歯科診療施設を案内するリーフレットなどを作成すること。
- 中小事業所や共同作業所などで就労する障がい者を対象に、歯科健診の機会を増やすなどの口腔保健事業を推進し、障がい者の口腔衛生の向上を図ること。
- 府内歯科診療所に対して、障がい者(児)への歯科保健医療サービスの提供状況を調査し、「東京都医療機関案内サービス ひまわり」のように、府民に対し障がい者の歯科診療に対応する医療機関を案内すること。
4.歯科医療の供給体制・人材育成支援について
- すべての感染症患者の歯科医療受診システムを確立すること。感染者が安心して受診できるよう周知すること。
- 大阪府内の歯科衛生士養成施設に通い将来府内で働こうとしている人で、経済的理由による就学困難者を対象にした無利子の奨学金制度を創設すること。また、卒業後、大阪府内で歯科衛生士として5年間継続して働いた場合には、返済を免除すること。
- 大阪府内の歯科技工士養成施設に通い将来府内で働こうとしている人で、経済的理由による就学困難者を対象にした無利子の奨学金制度を創設すること。
5.審査・指導
- 大阪府指導監査課、近畿厚生局と大阪府歯科保険医協会、3者の懇談の場を設けること。
- 当会の会員を対象にした保険講習会に技官を派遣すること。
- 歯科初診料注1に規定する施設基準の研修会「院内感染防止対策」を大阪府が開催すること。
- 高点数を理由とした個別指導、集団的個別指導は廃止すること。
以上