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更新日:2025年9月29日

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大阪府保険医協会 要望書

要望受理日

令和7年9月5日(金曜日)

団体名 大阪府保険医協会
取りまとめ担当課 府民文化部府政情報室広報広聴課
表題 2025年 大阪府への要望書

 

要望書

2025年 大阪府への要望書

2025年9月5日
大阪府保険医協会

1.医療提供体制の強化

(1)診療報酬の大幅引き上げや消費税減税を国に求めること
 2024年度診療報酬改定により、多くの医療機関が大幅な収入減に見舞われ、医院・病院を維持することさえ厳しい状況に陥っている。日常診療の質は診療報酬で担保するしかなく、診療報酬が下がれば医療の質は必ず下がる。地域医療を発展させるためには、診療報酬の「初・再診料を中心とした技術料の大幅引き上げ」しかないことから、地域の医療提供体制を維持・強化するためにも診療報酬の大幅引き上げを国に要求すること。
 また、この間の物価高騰による医院経営への影響は大きく、医療機関にも消費税の負担が重くのしかかっている。保険診療は非課税取引であり薬や医療機器を仕入れた際に支払った消費税は医療機関が負担していることから、消費税の速やかな減税と医療のゼロ税率化を国に求めること。
 あわせて、全国知事会が「社会経済情勢を適切に反映した診療報酬改定等に関する緊急要望」を5月15日に国へ提出し、「地域の医療提供体制を将来にわたって維持・確保するため、社会経済情勢を適切に反映した診療報酬となるよう改定を行うこと」、「物価や賃金の上昇に応じて適時適切に診療報酬をスライドさせる仕組みを導入するとともに、保険医療機関の危機的な経営状況にしっかりと対応できるよう、臨時的な診療報酬の改定や緊急的な財政支援を行うこと」を求めていること、日本病院会などが「このままでは、ある日突然、病院がなくなる」と強い危機感をもって訴えていることを受け、大阪府の今後の医療提供体制(第8次医療計画)への影響を踏まえた診療報酬改定の動向への評価を示してほしい。

(2)大阪府としても医療機関への財政支援を行うこと
 病床を減らす病院に給付金を支給する「病床数適正化支援事業」(削減1床につき410万4千円)の医療機関からの申請数が、大阪府内で2,514床にのぼっており、そのうち厚労省が示した「算定方法」に当てはまる338床・13億8714万8千円(第1次・2次の合計)が内示された。同事業に全国で5万超もの申請があった背景には、上記の診療報酬引き下げや物価高騰の他に、医師・看護師などの人員確保が困難になっていることなど病院の厳しい経営状況がある。病床削減を要件としない医療機関支援策の早急な実施を国に求めること。
 また、国の令和6年度補正予算による重点支援地方交付金を活用して医療機関への支援が全国で実施されているが、大阪府の支援金は病院・有床診療所で1.5万円/床、無床診療所等は3万円と最低レベルの金額となっている。福島県では無床診療所へ33.3万円、東京都でも15万円支給されており、10万円を超える額を給付している自治体は少なくないことから、大阪府の「医療機関等物価高騰対策一時支援金」や「食材料費高騰対策一時支援金」を増額すること。
 帝国データバンクは病院の経営状況について、建設費高騰や資金難で新たな施設を建設できず、事業存続が困難になる「建物の老朽化」も課題に挙げている。第8次大阪府医療計画において、府内の「病院全体の耐震化率は全国平均を下回っている」と指摘しているが、具体的な取組としては国補助制度の周知や活用を図りながら耐震化向上などの取組を支援するとしか書かれていません。府内の医療提供体制への責任は府にあることから、大阪府独自での医療機関への支援金を創設すること。

(3)病床再編の際には地域の医療ニーズを踏まえた丁寧な協議を行うこと
 自民党、公明党、日本維新の会による協議で、新たな地域医療構想が始まる2027年度までに全国の病床約11万床(○必要病床数を超える一般・療養病床(約5万6千床)○基準病床数を超える精神病床(約5万3千床))を削減する方針が合意され、「骨太の方針2025」(経済財政運営と改革の基本方針2025)にも「病床削減」や「病床数の適正化」を進めることが盛り込まれた。しかし、病床ひっ迫はコロナ禍以降も全国各地で起こっており、必要な医療提供体制が確保できていないのが実態である。また、在宅医療や訪問介護などの地域の受け皿も整備されているとは到底言えず、大阪府の地域医療構想で医療需要のピークを2030年と予測していることからみても、現時点で病床削減を進めるべきではない。
 病床機能の転換や収斂は、地域の医療ニーズを踏まえた丁寧な協議の下で行うべきであることから、機械的な推計による病床削減を都道府県や医療機関に強いることがないよう、国に強く要望すること。
 また、地域医療構想等に用いられている計算方法には、経済的理由などで受診できていない潜在的医療需要は含まれていないという大きな欠点があることから、地域住民の医療アクセスや医療を受ける権利が阻害されることがないよう、大阪府においても各2次医療圏の協議会で地域の実情を踏まえた丁寧な協議を行い、十分な医療提供体制を確保すること。

(4)医師・看護師不足解消を
 医師確保計画(24年3月)で「国が示す必要医師数は、医師偏在の解消に重点を置いて算出したものであり、医師の時間外労働時間の上限規制による影響等も反映しておらず、地域の実態に即した必要医師数ではない」と指摘し、府の試算では2,058人不足としている。不足分の医師確保について現時点での進捗状況や評価を示してほしい。また、第8次大阪府医療計画・第6章「在宅医療」(143ページから)において、訪問診療に対応する医療機関は増加しているものの「今後の在宅医療需要の増加を見据え、訪問診療を実施する医療機関の拡充が必要」、「医師の高齢化や一人経営の診療所が多いこと、小児や看取り等の専門性のある分野で在宅医療が不足すること、地理的に医療機関が不足する地域があること等の課題がある」と指摘している。第8次医療計画で示されている、訪問診療及び往診の拡充に向けた取組の進捗状況や評価・課題を示してほしい。
 看護師について、大阪府の2020年の人口10万対の看護師数は全国平均を下回っているが、第8次医療計画で示されている、訪問看護の拡充に向けた取組の進捗状況や評価を示してほしい。また、訪問看護ステーションの廃止・休業が増加している他、夜間対応への診療報酬が低く設定されている為に夜間のスタッフが確保できない状況となっていることから、訪問看護に対する診療報酬についても引上げを国に対して要求すること。また、府としても訪問看護ステーションの人員確保につながるよう補助を創設すること。

(5)薬不足の解消を国に求め、災害時等に備えて府としても十分な備蓄を行うこと
 医師が処方する医薬品の供給不足は解消の目途がたたず、深刻化している。薬不足により個々の患者あわせた適正な投薬治療ができず、「代替薬品では効果が出ない」などの声が寄せられている。保険薬局に薬がなく、市販薬での対応を余儀なくされたケースも報告されており、国民皆保険制度のもとであってはならない事態となっている。国に対し早急な対応を府として求めること。
 また、災害、新興感染症の流行、新型インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症の再燃対策のために大阪府としても十分な備蓄を行うこと。

2.すべての人が安心して受けられる医療制度の構築

(1)健康保険証の復活を国に、全国保加入者へ「資格確認書」発行を自治体に要望すること
 24年12月に健康保険証の新規発行が停止されたが、医療現場ではシステム障害で数時間にわたって「マイナ保険証」でのオンライン資格確認が行えないなど診療に大きな影響が出る深刻なトラブルが発生している。他にも資格情報がシステムに適切に反映されていないなどのトラブルが現時点でも続いており、「無保険扱い」となるケースも後を絶たないうえに、今後はマイナンバーカードの電子証明書の期限切れなど「マイナ保険証」が使用できないケースの増加が危惧されている。このままでは国民・患者の医療を受ける権利が守られないため、従来の健康保険証の復活を国に求めること。また、大阪府は統一国保であることから、全国保加入者に対し「資格確認書」を発行するよう自治体に働きかけること。

(2)医薬品の保険給付を維持するよう国に求めること
 自治体の努力で実施している医療費助成制度を形骸化させる、医薬品の保険はずし(例:24年10から実施された長期収載品の選定療養化、現在議論されているOTC類似薬の保険はずしなど)に反対し、医薬品の保険給付を維持するよう国に求めること。

(3)子ども医療費助成制度の拡充を
 25年度から高槻市が子ども医療費助成制度の一部自己負担額と入院時食事療養費の自己負担額を無償化し、千早赤阪村も来年度の無償化実現に向けて準備が進められている。全国でも完全無償化を実施してる自治体が増えており、国においても国保でのペナルティを廃止する方針を打ち出しており、子ども医療費助成制度の更なる拡充を行う素地は出来てきている。大阪府も所得制限なしや対象年齢を小学校卒業までとするなど制度を拡充すること。

(4)妊産婦医療費助成制度の創設を
 大阪府では合計特殊出生率が2015年から再度減少傾向に転じ、全国ワースト10位に入っている。出生率の低下に、金銭的なハードルが高くなっていることが影響している可能性も指摘されており、子育て世代への支援は差し迫った課題である。医療的側面の少子化対策として、子ども医療費助成制度の拡充とともに妊娠期から産後の全ての疾病を対象とした妊産婦医療費助成制度の創設を求める。全国では20道県、市町村独自を含めると240を超える自治体で妊産婦医療費助成制度が実施されている。また、大阪府の児童虐待件数は全国に比べて特に多く、その6割が実母によるものである。妊娠中の上の子への虐待の実態調査と予防のため協議会などで調査、研究をすること。

(5)75歳以上の患者負担軽減のために老人医療費助成の再構築を
 2022年10月より75歳以上の医療費が2割化された。全国保険医団体連合会が実施したアンケート調査では、「経済的理由による受診控え」が「あった」との回答が、75歳以上で医療費窓口負担2割の人で17.2%あった。強行された「2割化」の影響による「受診控え」がすでに起きていると考えられる。大阪府は2021年3月をもって老人医療費助成制度を廃止したが、大阪府の高齢者の命と健康を守る上で、高齢者を広く対象にした助成制度の再構築を強く求める。

(6)「重度障がい者医療制度」の拡充を
 重度障がい者医療費助成制度を見直し、難病患者・中軽度の障がい者にも対象を広げること。また、患者負担についても、2018年の制度改定以前の内容(1医療機関上限1000円、薬局での負担なし)に戻すこと。また、65歳以上の介護保険と障がい福祉サービスは本人が利用しやすい方を選択できるようにすること。

(7)かかりつけ医機能報告制度の事務負担軽減と丁寧な協議を
 4月から施行された「かかりつけ医機能報告制度」について、厚労省からガイドラインが示された。報告方法について、G-MISの他に、紙調査票は地域の実情も踏まえて運用するとしている。会員医療機関からはG-MISによる報告に対応できないとの声も寄せられており、紙調査票による報告も行うとともに、医療機関に過度な事務的負担がかからないように配慮すること。また、来年7月から外来医療に関する地域の協議の場を開催し、地域に必要なかかりつけ医機能を確保するための方策を検討するとしている。協議の場では開業医をはじめ医療関係者による丁寧な協議のもと、医療機関の規制やフリーアクセスの阻害等にならないようにすること。

(8)生活困窮者が速やかに医療機関に受診できる施策の強化を
 大阪府で独自に府民の暮らしに関する調査を実施して実態をつかみ、生活困窮者への支援強化を強く求めるとともに、失業等で無保険状態の方が医療を受けられるような対策を求める。また無料低額診療を実施している医療機関を積極的に広報するため市役所窓口、学校、福祉施設などに案内を開示し、国保の減免制度についても啓発に努めること。また、無料低額診療事業を保険調剤薬局へも適用するように国に強く求めること。大阪府においても府内の薬局で調剤処方された場合、調剤費の全部または一部を府が助成することを検討すること。

(9)国民健康保険料の軽減を
 2025年度大阪府統一国保料は2024年度より若干下がったものの2023年度統一保険料レベルでしかなく、一人当統一保険料でみると2018年度132,687円から2025年度162,164円へと22.2%ものアップとなっている。そのため各自治体の国保料の収納率も年々下がっており、納付金分を集めきれない状況となり、2023年度各市町村単年度赤字は37自治体にも及んでいる。物価高騰の影響を受けている自営業者・フリーランス・非正規労働者はすべて国民健康保険(国保)に加入しており、暮らしが逼迫している方にとって、保険料は大きな負担となっていることから、市町村の裁量に応じた軽減対策を認めること。

(10)帯状疱疹ワクチンの任意接種の助成を
 2025年度から65歳以上の方への帯状疱疹ワクチンが定期接種となり、接種費用の助成が始まった。兵庫県では50歳以上の方等の任意接種を助成対象とするなど、独自の助成制度を実施しており、全国的にも独自助成をする自治体が広がっている。大阪府としても任意接種となる帯状疱疹ワクチンの助成制度を導入すること。

3.公衆衛生分野の強化

(1)府民の命を守る公衆衛生分野の体制強化を
 今後新たな感染症への対応2009年の新型インフル、2020から2023年の新型コロナの経験を、今後の新興感染対策に活かすべきである。
 人口当たりの保健師数が少ない都道府県で新型コロナウイルス感染症の罹患率が高かったという研究結果(奈良医大2022年5月)もあり、10万人あたりの死亡者数が大阪府は全国1位であった要因と考えられる。大阪市の保健所が僅か一カ所に統廃合され、職員の大幅な人数削減が進んだ。今は保健師1人当たり1万人以上もの住民対応をしなければいけないのが現状である。こうした状況も踏まえて、以下のことを求める。
 新興感染症に備えるため、防護具と検査キット、治療薬の確保に加え、保健所の数と保健師、職員等の増員を強く求める。なお、保健師、職員を増やす計画がない場合、パンデミックの際の人員確保の手段について示してほしい。

(2)検査体制と検疫の強化を
 新型コロナ禍において、検査を担う保健所、研究所の機能充実を図るべきであった。市中無料検査場と医療機関の連携をスムーズに行うためにも保健所の役割は大きいことも明確になっている。こうした教訓を活かし、インバウンド客が増えている大阪府においては、検疫官や必要な医療処理のためにも医師、看護師、隔離、入院施設を常に確保するよう求める。

(3)新型コロナウイルス感染症の検査や投薬に関する患者への財政支援
 新型コロナ5類移行後、感染の波は断続的に起きているが、患者が検査や投薬を避ける傾向があるため、自己負担の減免を国とともに進めることを強く求める。

(4)監察医事務所の体制強化を
 2040年に超高齢多死社会となることが見込まれる中、監察対象の増加に対応できるよう専門医師の養成が重要であることから、常勤医師の配置を求める。また、次期「大阪府死因究明等推進計画」の検討において監察医事務所の老朽化対策が議論されているが、大阪府内での唯一の拠点にふさわしい設備への更新とともに監察医など人員の育成を更に進めるために、予算の増額を求める。

4.カジノ・ギャンブル依存症対策の強化

(1)ギャンブル依存症を生むカジノ誘致を直ちに撤回すること
 ギャンブル依存症の新たな原因であるカジノIRを誘致することに府民の命と健康を守る医師の団体として認めるわけにはいかない。
 精神疾患はコロナ前よりさらに増加傾向にあり、現在どこの精神科も受診まで時間を要する状態である。一旦依存症になると投薬で改善はせず医師はじめ多くのスタッフが継続的、長期に渡り、家族も含めて治療にあたる。カジノ・IR施設を作らないことが最上の疾病予防で医療費もかからない。計画の撤回を求める。また昨年度の要望で、ギャンブル依存症の専門医療機関数を令和7年度末までに60施設とする中間目標について、令和6年9月現在で31施設との回答であったが、現在の進捗状況と中間目標達成の見込みを示していただきたい。併せて専門医療機関でのギャンブル依存症の受診者数について把握していれば、示していただきたい。

5.安心して住み続けられる大阪府の実現を目指して

(1)介護保険全般の待遇改善
 介護度が実態より低く認定されることや過度な自立支援の実践、介護サービスからの「卒業」を迫るなどサービス低下を招く強引な運営については強く指導すること。介護はサービスと施設維持が困難になっている。もともと報酬が低い上にさらに引き下げられ、職員待遇を引き上げられない。デイサービスもリハビリ職員の配置は困難で、入所施設はコロナ対応を医療職以外がせざるを得ず、さらに入院調整で医療にかかれず留置き死も発生した。
 第9期介護保険料は、全国平均6,225円に対し、大阪市は9,249円と群を抜いて高い。高すぎる介護保険料を早急に引き下げること。また、介護従事者人材確保事業として、大阪市では「介護職員の宿舎施設整備助成」が、豊中市や交野市では新規資格取得者などが一定期間以上就労した場合への補助金が創設されている。こうした府内自治体の動きを後押しするためにも、府として介護職員への独自の支援策を講じつつ根本的には待遇改善を政府に要望すること。

(2)災害対策
 第8次医療計画「第7節 災害医療の現状と課題」において、病院全体の耐震化率が全国平均を下回っていること、豪雨災害により浸水する可能性がある病院182施設の浸水対策率は18.7%であるとの記載あるが、第8次医療計画策定以降、耐震化・浸水対策はどこまで進んでいるかや、耐震化率・浸水対策率、災害マニュアル・業務継続計画(BCP)作成率の向上のために府として行っている医療機関に対する支援内容について示してほしい。また、耐震化・浸水対策に関する各病院への支援ついて、国の「医療提供体制施設整備交付金」を活用しての補助が行われているが、昨今の物価高騰や医療機関の厳しい経営状況を鑑み、府独自で対象の拡大や上乗せの補助金を実施すること。

(3)有機フッ素化合物(PFAS)対策
 環境省が2023年度に実施した全国の河川や地下水の水質測定結果を公表した。22都府県の242地点で国の暫定指針値を超えており、摂津市が指針値の520倍と全国で最も高い数値となった。大阪府として、当該調査結果に対する評価や対策、今後府としての独自調査の実施予定等について示していただきたい。

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