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大阪府立支援学校PTA協議会 要望書
| 要望受理日 |
令和7年10月9日(木曜日) |
|---|---|
| 団体名 | 大阪府立支援学校PTA協議会 |
| 取りまとめ担当課 | 府民文化部府政情報室広報広聴課 |
| 表題 | 要望書 |
要望書
令和7年10月9日
大阪府知事 吉村 洋文 様
大阪府教育委員会教育長 水野 達朗 様
大阪府立支援学校PTA協議会
会長
要望書
はじめに
本協議会は、昭和48年の結成以来、府立支援学校に関するさまざまな課題を取り上げ、子どもたちが安心して学び育つ環境づくりのために要望を続けてまいりました。府当局におかれましては、これまで多大なるご尽力を賜り、多くの課題に真摯に取り組んでいただきましたことに、深く敬意を表し、心より感謝申しあげます。
しかしながら、府内の支援学校は依然として過密化や老朽化といった課題を抱え、通学環境の保障、医療的ケアの充実、卒業後の進学・就労・生活支援の拡充など、切実で喫緊の課題が山積しております。さらに、不登校の増加や人権・安全に関わる問題など、教育現場を取り巻く状況は一層複雑さを増しています。
子どもたち一人ひとりが安心して学校生活を送り、将来を見据えて成長できるようにするためには、教育・医療・福祉のさらなる連携と、地域全体での支え合いが不可欠です。その過程で、子どもたちが自らの可能性を信じ、将来の選択肢を広げていけるような環境整備が求められています。
また、本年ついに開催された大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、ここ大阪から世界へ希望を発信しています。この理念は、私たちがめざす「ともに学び、ともに育つ教育」や地域共生社会の実現と深く響き合うものであり、障がいのある子どもたちの未来づくりにとっても大きな指針となるものです。
本協議会では、各学校PTAの共通する切実な要望を取りまとめました。すべての子どもたちが豊かに学び、自らの未来を描き、地域社会の一員として輝けるよう、以下の要望につきまして速やかなご検討と実現を切にお願い申しあげます。
1教育庁への要望
1.【学校建設関連】
(1)大阪北視覚支援学校の校舎は築60年以上が経過し老朽化が著しく、視覚障がいのある児童生徒等にとって危険です。今後の視覚障がい教育の在り方を早急に検討するとともに、建替えを一刻も早く進めてください。
(2)泉佐野市にある佐野支援学校において、泉佐野市に居住する児童生徒や隣接する熊取町に居住する児童生徒が通学区域割によって、一人も通学できず、遠方の支援学校へ長時間のバス通学を強いられている状況があります。また、守口支援学校においては、高等部から寝屋川支援学校と同校に分かれる通学区域割となっており、小学部から高等部へ一貫して同じ学校に通うことができない状況があります。これらの状況を改善するために、新校設置等の検討をお願いします。
2.【施設・設備関連】
(1)大規模災害が発生し、児童生徒が学校に滞在している時は、外部との連絡方法の確保が必須です。防災無線や停電時にも対応できる校内放送設備の整備、安全に避難できる施設設備の改修をお願いします。
(2)多くの支援学校において、老朽化が進んでいます。子どもたちが安全かつ安心して学べる学校にするために、定期的に校舎の危険を確認する検査を行い、経年劣化が予想される箇所については早急に改修時期を定め、危険事象の未然防止を図ってもらいたいです。あわせて、施設・設備の老朽化対策(老朽化が著しい支援学校に対する調査の実施と、優先度に応じた改修計画の策定を含む)や安全・衛生面の整備(耐震性や防災設備、空調・トイレ・水回りなど、児童生徒の安全と衛生を守るための環境整備)等を早急に進めていただくようにお願いします。
(3)トイレは児童生徒が学校生活を過ごす中で日常的に使用する施設でありますが、現在、多くの知的障がい支援学校では、在籍児童生徒数に見合うだけの個室洋式トイレが整備されておらず、例えば、トイレが使用中であることにより、トイレトレーニングが必要な児童生徒に適切に対応できない現状があります。また、肢体不自由支援学校では、老朽化や障がいの状況に対応したトイレが不足していることが深刻な課題となっています。在籍者数や児童生徒の教育的課題・発達的課題や多様性(肢体不自由・知的障がい・性同一性障がいなど)に見合ったトイレ環境を早急に整備してください。特に和式便器を全て洋式トイレへ入替し、トイレ内にあるシャワー機能設備を充実し、清潔で明るい仕様へと替えることを要望するものであり、具体的な改善の計画があれば示してください。
(4)知的障がい教育支援学校においては、児童生徒数の増加による狭隘化、教室不足が深刻化しています。ホームルーム教室の不足から特別教室の転用をせざるを得ず、小学部・中学部・高等部が特別教室を共有せざるを得ない状況が常態化しています。適正人数での学習環境を早期に実現するために、ホームルーム教室・特別教室等の整備を早急に進めていただくようにお願いします。
(5)児童生徒が感情やストレスが高まった際に、パニックになる前に気持ちを落ち着かせることができるよう、校内にカームダウンエリアを整備して、障がい特性に対応した施設設備の充実を図ってください。
(6)高等支援学校及び聴覚高等支援学校、聴覚支援学校高等部における職業学科の実習は、現業に就いている卒業生もおり、子どもたちの将来の自立や社会参加に直結する重要な学びの場です。一方、学校の施設・設備・機材は就職先の企業等のものと比較すると、その更新ペースに大きな隔たりがあります。例えば、聴覚高等支援学校の工業テクノロジー科では、50年以上前の旋盤機械を使用しており、メンテナンスも困難な状況です。これでは現代の職業ニーズに対応した実習が十分に行えず、子どもたちの学びの質に影響を及ぼします。予算を確保して、時代に即した機器や教材の整備・更新を確実に行い、学習環境の改善を早急に進めていただくことを強く要望します。時代に即した機器・設備を繰り返し使用することは、在校時の支援だけでなく就職してからの心理的ストレスの軽減などに大きな意味があると考えています。学校での経験が確かな自信となり、そのまま就職先で生かせることができるような学習環境を整えてください。
(7)肢体不自由支援学校には、体温調整が難しい等の状況にある児童生徒が多く在籍しており、安全に教育活動を行うためには、天候や気温に左右されず、一定の環境下で恒常的かつ継続的に活動を進めることが必要です。全天候型プールや体育館の改善、特別教室の充実など教育環境の改善、充実を図ってください。
(8)肢体不自由児を安全に介助し、さらに教職員の腰痛など健康を守るために各学校に介護リフトやアシスト機器などを配備してください。
3.【学級認定関連】
(1)近年、小学部児童の入学者が急増しており、小学部・中学部・高等部の全学部において、いわゆる「圧縮」学級で展開していますが、在籍者数が多く、これ以上の「圧縮」は困難な状況です。アレルギーや偏食への対応、強度行動障がいに該当する児童生徒など配慮の必要な子どもが増加している中で、必要な教員数が配置されているとは言えず、安全安心な学校運営に支障があるため、教職員定数の見直し・教員の(府単費加配等による)増員を強く要望します。
4.【教育制度関連】
(1)高校進学後も入院が継続する生徒の学びの保障のために、病弱支援学校に高等部を設置してください。
(2)就職した後も長く働き続けるために、卒業後の定着支援やアフターフォローなどの相談体制構築のための人員配置や、行政(労働・福祉・教育)が一体となり、学校と連携した体制を拡充してください。
(3)全ての府立高校に自立支援コースを設ける、または通級を取り入れるなど特別支援教育の充実を図ることにより、高校進学時の選択肢を増やし、個々の発達の状況等に応じた学びの環境を整えることができると考えます。各家庭で苦労して情報収集している現状から、当たり前にたくさんの選択肢があるようにしてほしいです。
5.【教員配置・専門性関連】
(1)近年、児童生徒の障がいの多様化・重度化など、教職員の高い専門性が求められています。学校は児童生徒が安全で安心して生活を送る場所でなくてはなりません。安全安心かつ適切な支援、個々のニーズに応じた指導・支援が十分に行き届くよう、府独自で予算措置を行い、教員定数を増やしてください。また、医療的ケアに対する加配を行ってください。
(2)支援学校の子どもたちの多様な課題に対する支援において、外部の専門家との連携は必須です。また、教員の専門性向上のためにも外部の専門家との協働は有効であるため、更なる専門職の活用、とりわけ、知的障がい支援学校へのSC・SSW等の配置(もしくは派遣の拡充)を要望します。また、聴覚支援学校における言語聴覚士(ST)の常勤配置は、児童生徒への支援、教員への助言や保護者との連携に不可欠と感じていますが、現在の福祉医療関係人材の活用事業では時間数が限られ、十分な支援を受けることが困難です。補聴器対応など専門性の高い業務は、乳幼児期からの適切な対応が発達に大きく影響するため、人的配置の充実を強く要望いたします。昨年度も同様の要望を提出しておりますが、子どもたちの将来のために、改めてご検討をお願いするとともに、昨年度の回答の進捗について教えてください。
(3)支援教育においては、児童生徒の障がいの多様化・重度化等に対応し、一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援を行うための専門性が不可欠です。例えば、聴覚障がい教育においては、子どもとの適切なコミュニケーションが指導の基盤であり、子どもの障がい特性を理解し、言語力・聴力など多面的に把握できる教員の育成と継続的な配置が必要と感じています。各校で専門性が維持され、全ての教職員が児童生徒の実情に応じた適切な指導支援ができるよう、定期的で幅広い研修を実施して、教職員の育成に計画的に取り組み、あわせて、専門性の高い教員の継続的に配置することを強く望みます。専門性の高い教員育成について、どのように取り組んでいるのか具体的に示してください。
(4)点字技能士や歩行訓練士など、視覚障がい教育の高い専門性を有する教員は、視覚支援学校に継続的に配置する、視覚障がいのある子どもが通う地域の小中学校等に異動する、異動後にUターンできるなど、人事制度の見直しを進めてください。
6.【機器・ICT活用関連】
(1)病院内にある分教室のICT環境の充実のため安定した予算措置等をお願いします。
7.【安全確保関連】
(1)高度な医療的ケアを必要とする児童生徒が安全に泊行事に参加するためには、看護師はもとより、児童生徒の個別の状況に応じて、医師の同行が必要と考えます。泊行事の際には、学校の要請に基づいて医師や看護師を必要な数を配置して安全に実施できるようにしてください。
(2)南海トラフ地震等の自然災害への備えについて、府立支援学校各校のPTA活動等で積極的に取り組んでいるところが多いと思いますが、府からも防災に関する予算を増やし、各校での防災の取組みが一層進むよう後押ししてほしいです。
8.【通学バス関連】
(1)通学バスの介助員や運転手など、支援を必要とする子どもたちに関わっていただく様々な職種の方々が、正しい障がい理解に基づき、障がい特性に応じた適切な介助及び支援を行うことができるよう、支援教育や人権教育への理解を深めるための研修や具体的な取組みを実施してください。
(2)通学バスには社会自立への大切な役割があります。医療的ケアがあっても通学バスを使えるよう看護師を配置するなど環境を整備してください。
9.【医療的ケア関連】
(1)障がいの重度重複化、および高度な医療的ケアに対応するため、また、泊を伴う行事に同行する看護師を確保するためにも常勤看護師を必要としている状況ですが、定数内任用のため教員数を減らさざるを得ない現状があります。教員定数を減じて看護師を配置すれば十分な看護師が配置できないだけでなく教員の数が減り個に応じた教育ができなくなります。児童生徒の教育保障のため、定数外配置を更に進めてください。
(2)医療的ケア通学支援事業について、保護者が車両と看護師を探して確保する現システムは、保護者にとって非常に困難で負担が大きいです。同乗する看護師や車両を確保しやすいように、府教育庁が主導して車両と看護師を確保するシステムを構築するなどして、希望者全員がスムーズに利用できるよう、支援をしてください。
10.【通学区域割】
(1)知的障がい支援学校において、東大阪市在住の子どもたちは、通学区域割によって、高等部進学時に3校に分けられてしまいます。また、泉南地域や北河内地域在住の子どもたちについても、通学区域割による同様の問題や長時間のバス通学を強いられる状況などがあります。さらに、知的障がいの支援学校の増設などに伴い学部が変わると通学区域が変わり転校しなければならないなど一貫して学べない状態があります。支援学校に通う子どもたちが小中高一貫で同じ支援学校に通い続けられるよう、早急に通学区域割を再編していただきたいです。子どもたちが、適切な通学時間で通える教育環境を確保するために、通学区域割の改善を強く要望します。あわせて、本来、障がいのある児童生徒は、その居住する地域の学校に就学し、地域の資源を活用した福祉サービスや進路の提供などが必要であると考えますが、通学区域の見直しなどの具体的な改善を含め、府教育庁の見解をお示しください。
11.【人権研修】
(1)昨年度、府立支援学校において、教員による子どもの人権を踏みにじる事案が複数生起しました。多くの教職員が児童生徒等の人権を守ろうと学校等での人権研修を真面目に受講していると思いますが、受講してほしいと思うような教職員ほど研修を真面目に受講しているか不安に感じています。府立支援学校の全教職員に受講を義務付けた人権研修の実施及び、管理職の確認による徹底について要望いたします。また、障がい種別における指導の充実に向けて、適正なる指導が推進されるよう、国・府として、対策を講じていただくとともに、教職員の人権意識向上、資質向上のためにどのように取り組まれているのか具体的に示してください。
2知事部局(福祉部、商工労働部、都市整備部等)への要望
1. 【卒業後の進路、社会参加等関連】
(1)府として、障がい者の生活の場をどのようにイメージし、その人たちの生活をどう構築しサポートするのか等についての情報不足を感じており、親亡き後の子どもたちの将来について不安を感じています。障がい児・者を受け入れる施設の地域別設置数の推移ならびに今後の設置予定数をお示しいただくとともに、施設不足に対する府の認識と今後の対応策について教えてください。
(2)理療科・保健理療科の卒業生の職域拡大の一つとして、ヘルスキーパー(企業内理療師)を大阪府立の施設で雇用する制度を整えてください。
(3)肢体不自由児が卒業後を安心して生活できる生活介護施設等が不足しています。また、医療的ケアを必要とする児童生徒が全国的にも増えていますが、卒業後に利用できる施設がまだまだ少ない現状です。医療的ケアを必要とする児童生徒はもとより、すべての肢体不自由児が安心して生活できる施設を拡充するために、看護師や介護士などの施設職員の処遇を改善し、質・量ともに整備を進めてください。さらに、看護師の配置があって医療的ケアにも対応できる事業所や施設を増設してください。あわせて、平常時だけではなく、医療的ケアのある児童生徒を緊急時に預かることのできる福祉施設・病院などを増やしてください。
(4)福祉型障がい児入所施設においては、原則として満18歳をもって退所することが決められていますが、希望する地域に移行先がなかなか見つからない現状があります。入所施設から移行する人はもちろんのこと、重度視覚障がいがある人や強度行動障がいがある人、医療的ケアが必要な人等を含め、誰もが希望する地域で社会生活が送れるよう、また親なき後も安心して生活できるよう、グループホームの増設・拡充をお願いするとともに、グループホームについて、現在の各市町村の設置状況や医療的ケアが必要な障がい者を対象としたグループホームの施設数等、設置状況を教えてください。
(5)就職しても周囲の理解や適切なサポートがなく、残念ながら離職するケースが複数あります。卒業生の離職理由に「人間関係」が大きな原因の一つになっています。就職先に確実に子どもたちの特性を理解してもらい、しっかりとした人間関係を築けるように「個に応じた」丁寧な支援をしていただきたいです。
(6)卒業後の作業所等の施設では送迎を含め9時30分から16時までの事業所が多く、親の就業の継続にも影響があり不安に感じている保護者が多い
です。また、卒業後に利用できる日中一時支援や地域活動支援センターのサービス内容では利用しづらく、移動支援についても利用者が多く、契約自体できない方もおられます。現在の卒業後に利用できる福祉サービスでは保護者が求めているニーズとは大きく異なっているため、卒業後の生活を維持するためにも、子どもたちの余暇の時間を確保するためにも、卒業後も利用できる放課後等デイサービスの代わりとなるサービスを設けてほしいです。
(7)学校卒業後は、自宅で生活する時間が在学時よりも長くなります。知的障がいのある児童生徒一人ひとりの状況に応じた進路先の拡充ならびに幸せな生活を過ごせるよう余暇活動の充実を図ってください。
(8)家庭の都合等により子どもを送り出すことが困難な場合、通学のための移動支援を利用し、子どもが学校で学ぶ権利を保障できるようにしてほしいです。
2.【福祉医療制度関連】
(1)聴覚障がい児者にとって、人工内耳や補聴器は生活や学習に不可欠な機器であり、日常的な使用には定期的な修理や買い替えが必要です。しかし、これらにかかる費用は保護者にとって大きな負担であり、市町村によって対応にばらつきもあります。特に18歳以降は助成が縮小され、進学や社会参加の妨げとなっています。人工内耳の装具や高出力電池の購入・修理についても、補聴器と同様に補装具費として給付対象とすること、また補聴器については19歳以降も両耳への助成が受けられる制度の整備を求めます。さらに、ロジャー等の補助機器についても、身体障害者手帳の有無にかかわらず助成対象とし、すべての子どもが等しく学び、自立できる環境の実現をお願いいたします。
(2)令和4年5月25日に公布された『障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法』の趣旨に基づき、情報保障について進展がみられるものの、聴覚障がいのある児童生徒が公共交通機関を安全かつ安心して利用できるにはまだ心配が多い部分があります。「無人駅や券売機等における情報提供」及び「リアルタイムでの情報保障の強化」について、情報保障の充実を要望いたします。具体的に、改札口や券売機に駅員が不在となる時間帯には、インターホンだけでなく、モニターや文字・イラストなどによる表示を導入し、低学年児童にも分かりやすい情報提供を可能にすること、また、事故や遅延時の車内・駅構内での案内について、音声放送だけでなく、視覚的な表示(色分け表示といったユニバーサルデザインや電光掲示板、アプリ等)を充実させ、状況把握が困難な児童生徒への情報保障を充実させることを進めてください。
(3)令和6年に行われた児童手当に係る所得制限撤廃と同様に、障害児福祉手当と特別児童扶養手当に係る所得制限を今の社会環境を踏まえて見直し、できれば撤廃してください。