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大阪府保険医協会 要望書
| 要望受理日 | 令和8年9月11日(金曜日) |
|---|---|
| 団体名 | 大阪府保険医協会 |
| 取りまとめ担当課 | 府民文化部府政情報室広報広聴課 |
| 表題 | 2026年 大阪府への要望 |
要望書
2026年 大阪府への要望
2026年9月11日
大阪府保険医協会
1.医療提供体制の強化
(1)物価高騰対策として診療報酬の期中改定や医療機関への財政支援を国に求めること
この間の物価高騰による医療機関経営への影響は大きく、帝国データバンクの全国企業倒産集計によると、26年1月から6月の医療機関の倒産は全国で累計39件となり、上半期として過去最多を記録している。2年に1度の診療報酬改定では追い付かない急激な物価高騰に対して、診療報酬による経営の安定化を医療界が一致して求めた結果、26年度診療報酬改定では「物価対応料」が新設された。しかし、26年2月からの中東情勢の不安定化により医療材料の価格高騰に拍車がかかり、一部は入手困難となるなど医療機関経営はさらに困難な状況に置かれていることから、物価高騰対策として診療報酬の期中改定や医療機関への財政支援を国に求めること
(2)府民への医療提供を維持するため、大阪府の備蓄医療材料を医療機関や介護・福祉事業所に放出すること
大阪府保険医協会が会員医療機関を対象に実施したアンケートでは、多くの医療機関から医療材料の入手困難、納期遅延、数量制限、価格上昇が報告された。特に感染対策用品、注射・穿刺関連材料、輸血・投与関連材料について深刻な影響が確認されている。こうした状況が長期化すれば、地域医療の安定的な提供に重大な支障を来すことが危惧されることから、府民が安心して医療を受けられる体制を維持するため、医療材料・医薬品の供給状況を継続的に把握し、府内医療機関へ迅速かつ継続的に情報を提供すること。供給不足や出荷調整が見込まれる医療材料・医薬品については、医療機関への安定供給が確保されるよう、国・メーカー・卸業者との連携を強化し、必要な対策を講じること。今後の国際情勢や物流停滞、災害時などによる供給不足に備え、国、自治体、関係団体が連携した医療材料の安定供給体制を構築すること。
(3)大阪府としても医療機関への独自の財政支援を行うこと
府はこの間、物価上昇に対する医療機関への支援事業などを行っているが、国の重点支援地方交付金の範囲に留まっている。府内の医療提供体制への責任は府にあることから、大阪府独自での医療機関への支援金を創設または増額すること。
(4)新たな地域医療構想作成の際には地域の医療ニーズを踏まえた丁寧な協議を行うこと
2040年に向けた新たな地域医療構想では、急性期症例や医療資源の集約、医療機関のダウンサイズ、構想区域の広域化などを具体的な協議事項とし、病院・医療機関そのものが地域で担う役割分担を制度上明確化することを目的としている。また、新たな地域医療構想は、病院だけでなく、外来医療・在宅医療、介護との連携・人材確保まで対象を広げており、府内全ての医療機関が関わる内容となる。これまで以上に地域実態を掴んだ上での構想作成が重要となることから、必要病床数との差による機械的な病床削減などは行わず、関係医療機関への聞き取りを行うなど丁寧な協議を行うこと。
(5)医師・看護師不足解消を
- 不足分の医師確保について現時点での進捗状況や評価を示してほしい。また、看護師についても、訪問看護の拡充に向けた取組の進捗状況や評価を示してほしい。府としても訪問看護ステーションの人員確保につながるよう補助を創設すること。
- 訪問診療及び往診の拡充に向けた取組の進捗状況や評価・課題を示してほしい。また、大阪府下ではこれまで、志を同じくする一人開業医が「機能強化型在宅療養支援診療所」として連携体制を構築し、互いに顔の見える関係の中で、質の高い在宅医療が提供されてきた。しかし、26年度診療報酬改定で評価形態が大きく変更され、これまでの地域で築き上げてきた連携体制の意義を根底から覆す内容となっており、これまでの枠組みからの転換を余儀なくされている。在宅医療実施医療機関の更なる減少が加速する恐れもあり、今後増える見込みの在宅医療が十分に提供できなくなる可能性が高まっている。国に対し、診療報酬の改善を要望すること。
- 特に病院では、民間の人材紹介サービスを活用しなければ看護師の確保が難しく、人材紹介企業への支払が医療機関の財政を大きく圧迫している。大阪府独自で紹介・斡旋業への規制を検討してほしい。また、ハローワークが医療機関・求職者双方に積極的に利用されるようハローワークの機能・体制の強化を行うこと。
(6)生活保護の医療扶助に関する医療機関の負担を軽減すること
- 当会にはこの間、生活保護医療受給者証を確認して診療したにもかかわらず、ケースワーカーが「月途中で対象でなくなったため医療機関から実費の請求を」と言われた、との相談が様々な地域の会員医療機関から寄せられています。医療機関としては、患者から提出された生活保護医療受給者証の有効期間内であれば、その記載内容を信用して診療を行います。それを後になって資格変更があったと言われ、医療機関から患者さんに実費請求を後日しなければならないとなれば、医療機関側の事務的負担は大きくなります。ルールに基づいた運用の徹底を自治体に指導すること。
- 要否意見書の郵送料について、自治体によって取扱いにばらつきがあり、郵送料が医療機関負担となっている自治体もある。郵送料は値上げが続いており医療機関の負担感が増していることから、要否意見書の郵送料は自治体が負担するよう、府内全自治体に働きかけること
2.すべての人が安心して受けられる医療制度の構築
(1)健康保険証の復活を国に、全国保加入者への「資格確認書」発行を自治体に要望すること
25年12月に全ての健康保険証の有効期限が失効し、救済措置の特例も終了したが医療現場ではシステム障害で数時間にわたって「マイナ保険証」でのオンライン資格確認が行えないなど診療に大きな影響が出る深刻なトラブルが発生している。他にも資格情報がシステムに適切に反映されていないなどのトラブルが現時点でも続いており、「無保険扱い」となるケースも後を絶たないうえに、マイナンバーカードの電子証明書の期限切れなど「マイナ保険証」が使用できないケースも増加している。このままでは国民・患者の医療を受ける権利が守られないため、従来の健康保険証の復活を国に求めること。また、府は統一国保であることから、全国保加入者に対し「資格確認書」を発行するよう自治体に働きかけること。大阪府広域連合では後期高齢者に「資格確認書」を一律交付しているが、来年度も継続を求めること。
(2)一部医薬品の保険外併用療養化の撤回を国に求めること
24年10月から実施されている長期収載品の選定療養化による保険外割合が、26年6月から4分の1から2分の1に倍増となった。また、政府は、保険収載されている医薬品の一部について、薬剤費の一部を保険外として患者負担に上乗せする制度(「一部保険外療養」制度)創設を特別国会にて決定し、27年3月からの実施を予定している。
これらの制度改定は、治療に必要な医薬品の患者負担を大幅に増加させ、患者から適切な治療を遠ざけるものであり、ひいては住民の健康を守るために自治体の努力で実施している医療費助成制度を形骸化させるものである。「一部保険外療養」制度創設や長期収載品の選定療養化を撤回し、医薬品の保険給付を維持するよう府として意見書を出すなどして国に求めること。
(3)子ども医療費助成制度の拡充を
25年度から高槻市が子ども医療費助成制度の一部自己負担額と入院時食事療養費の自己負担額を無償化した。全国でも完全無償化を実施する自治体が増えており、国における無償化自治体への国庫負担金の減額のペナルティは廃止され、子ども医療費助成制度の更なる拡充を行う素地は出来てきている。大阪府も所得制限なしや対象年齢を小学校卒業までとするなど制度を拡充すること。
(4)妊産婦医療費助成制度の創設を
全国の合計特殊出生率が1.14に対し大阪府は1.13と低く、2015年から再度減少傾向に転じ、26年は全国ワースト12位である。出生率の低下に金銭的なハードルが高くなっていることが影響している可能性も指摘されており、子育て世代への支援は差し迫った課題であり、全国では23道県、市町村独自を含めると240を超える自治体で妊産婦医療費助成制度が実施され広がりをみせている。医療的側面の少子化対策として、子ども医療費助成制度の拡充とともに妊娠期~産後の全ての疾病を対象とした妊産婦医療費助成制度の創設を求める。
(5)75歳以上の患者負担軽減のための医療費助成の構築を
22年10月より75歳以上の医療費が2割化され、26年8月から高額療養費制度の負担上限の引き上げ、更に70歳以上の窓口負担3割化も狙われている。全国保険医団体連合会が実施したアンケート調査では、「経済的理由による受診控え」が「あった」との回答が、75歳以上で医療費窓口負担2割の人で17.2%あった。強行された「2割化」の影響による「受診控え」がすでに起きている。直近の全国保険医団体連合会の調査では高額療養費制度を利用したことのあるがん患者らの66%が引き上げにより「受診間隔を延ばす・見送る」と回答しており、窓口負担増で受診控えが懸念される。大阪府の高齢者の命と健康を守る上で、高齢者を広く対象にした助成制度の構築を強く求める。
(6)「重度障がい者医療制度」の拡充を
重度障がい者医療費助成制度を見直し、難病患者・中軽度の障がい者にも対象を広げること。また、患者負担についても、2018年の制度改定以前の内容(1医療機関上限1000円、薬局での負担なし)に戻すこと。また、65歳以上の介護保険と障がい福祉サービスは本人が利用しやすい方を選択できるようにすること。薬の選定療養化など更なる患者負担増も危惧される中で、府民の健康を守るために制度の拡充を求める。
(7)生活困窮者が速やかに医療機関に受診できる施策の強化を
大阪府で独自に府民の暮らしに関する調査を実施して実態をつかみ、生活困窮者への支援強化を強く求めるとともに、失業等で無保険状態の方が医療を受けられるような対策を求める。また無料低額診療を実施している医療機関を積極的に広報するため市役所窓口、学校、福祉施設などに案内を開示し、国保の減免制度についても啓発に努めること。また、無料低額診療事業を保険調剤薬局へも適用するように国に強く求めること。大阪府においても府内の薬局で調剤処方された場合、調剤費の全部または一部を府が助成することを検討すること。
(8)国民健康保険料の軽減を
2026年度大阪府統一国保料は、一人当統一保険料でみると2018年度132,687円から2026年度163,911円へと23.5%(前年度より1.1%)ものアップとなっている。そのため各自治体の国保料の収納率も年々下がっており、納付金分を集めきれない状況となり、2023年度各市町村単年度赤字は37自治体にも及んでいる。物価高騰の影響を受けている自営業者・フリーランス・非正規労働者はすべて国民健康保険(国保)に加入しており、暮らしが逼迫している方にとって保険料は大きな負担となっていることから、市町村の裁量に応じた軽減対策を認めること。
また昨年発覚した地方議員らの国保逃れ問題は国民健康保険料の算定にも影響し保険料高騰に繋がりかねない悪質な脱法行為であるが、背景には全国一高い府の保険料も関係していると思われる。統一国保を見直し、国民健康保険料を引き下げる措置をとること。
(9)帯状疱疹ワクチンの任意接種の助成を
2025年度から65歳以上の方への帯状疱疹ワクチンが定期接種となり、接種費用の助成が始まった。兵庫県では50歳以上の方等の任意接種を助成対象とするなど独自の助成制度を実施しており、全国的にも独自助成をする自治体が広がっている。昨年の府の回答では財政支援は考えていないとのことだったが、現在、長野県では接種率が25%を超え、大阪府では14から15%、助成制度の有無により都道府県間で最大2.5倍もの接種率の格差が生じている。50歳以上で罹患率が増加し帯状疱疹後神経痛(PHN)罹患率も高くなるがワクチン接種により発症や重症化リスクを大幅に軽減し府民の生活の質を守ることに繋がる。大阪府としても任意接種となる帯状疱疹ワクチンの助成制度を導入すること。
(10)予防接種を住民票のある市町村以外で接種する場合の「実施依頼書」提出について、府内全ての自治体間で依頼書を不要とすることを府内全市町村に働きかけること
予防接種を住民票のある市町村以外で接種する場合の「実施依頼書」提出について、接種前の依頼書発行が原則となっているが、一部の自治体間では依頼書不要で助成対象としている。住民サービス向上にも資するため、大阪府内全ての自治体間で依頼書不要又は接種後の「実施依頼書」提出でも助成対象とするよう府内全市町村に働きかけること
3.安心して住み続けられる大阪府の実現を目指して
(1)ギャンブル依存症を生むカジノ誘致を直ちに撤回すること
ギャンブル依存症の新たな原因であるカジノIRを誘致することに府民の命と健康を守る医師の団体として認めるわけにはいかない。ギャンブル依存症を生むカジノ誘致を直ちに撤回すること。
25年の当会の要望に対し、府は「IR誘致を契機に、既存のギャンブル等を含む依存症問題に正面から取り組み、依存症対策のトップランナーをめざし、万全の対策を講じていきます」と回答している。大阪府市は2030年秋ごろのIR開業を目指しており、それほど時間は残されていない。「万全の対策」とは具体的にどういったものか示してほしい。また、「(仮称)大阪依存症センター」の進捗状況についても示してほしい。
(2)老朽ライフライン対策の強化
高度経済成長期に整備された水道・下水道などのライフラインの老朽化が深刻化している。断水や道路陥没などは住民生活だけでなく、医療提供体制にも重大な影響を及ぼすことから、老朽施設の計画的な更新と耐震化は急務である。
国及び自治体に対し、ライフライン更新に必要な財政措置を拡充するとともに、医療機関が災害時にも診療を継続できるよう、水道・電力・通信など社会インフラを強靱化すること。
(3)保健所、公衆衛生行政の強化
大阪府の保健師数は依然として全国最低水準にある。新型コロナウイルス感染症での教訓を踏まえ、新興感染症への対策を進めるためにも、保健所の増設、保健師の増員、保健所機能の強化を強く求める。
(4)介護保険料の是正、介護事業所の支援を
高額な介護保険料の是正、強引な介護保険外しを許さず、安心して利用できる介護保険制度への再建を求める。
介護報酬の低さや人材不足により介護事業所の倒産・廃業が相次いでいる。
利用者負担増や介護保険給付削減に反対するとともに、介護従事者の処遇改善と介護事業所への財政支援を求める。
(5)有機フッ素化合物(PFAS)対策
環境省からPFASの全国調査結果が発表され、摂津市は基準値の520倍と全国ワーストとなり、ダイキン工業と住民との間で、PFAS汚染をめぐっての公害調停も始まった。住民の要望である健康調査や環境調査について、大阪府としても実施すること
(6)大規模災害時の避難所対応・整備について
大阪府の避難所運営マニュアル作成指針ではスフィア基準を踏まえ、1人最低3.5平方メートルの居住スペースやトイレの設置数など具体的な水準を示している。
府は府内の指定避難所がこうした水準を満たせる状況にあるか把握した上で、未達の市町村に対し、必要な整備を促進・支援すること。
一方で、日本と同じく災害が多いイタリアや台湾では、体育館で雑魚寝の日本に比べ、簡易ベッドやシャワーなど入浴施設や適温食の供給を短時間に実施する法整備をし、実行している。イタリアや台湾と同水準を目指し、避難所運営マニュアルの見直しをすること。
(7)災害関連死の防止対策について
熊本地震などでは避難生活の長期化や医療・介護、生活環境の悪化による災害関連死が大きな問題となっている。府として避難所だけでなく在宅・車中泊避難者も含め、支援が必要な人を早期に把握し、医療・保健・福祉につなぐ体制が府内すべての市町村で確保されているか把握すること。また、不十分な市町村に対し、府が人的支援や広域調整を行う体制を整備すること。
(8)平時・災害時のドクターヘリの安定的運航について
大阪府ドクターヘリは運航事業者の確保が困難となり、現在も月10日程度の限定的な運航となっている。大規模災害時には多数の傷病者の発生や道路寸断などにより、ドクターヘリによる搬送の重要性が高まると共に周辺府県も同時に被災し、他府県ヘリによる応援が困難になることも想定される。
府として、平時・災害時を通じて安定的にドクターヘリを運航できる体制を早急に確保すること。