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更新日:2024年5月24日

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7.T事件(平成31年(不)第4号事件)命令要旨

  1. 事件の概要
    本件は、(1)会社が、A組合の労働者供給事業により供給される組合員の就労の保証を約した旨の協定書及び覚書きを遵守せず、A組合との労働者供給契約を解約し、組合員を就労させなかったこと、(2)申立外C社及び同D社とA組合との間でそれぞれ締結した労働者供給契約に基づき、組合員を同2社に供給し、会社が製造する生コンクリートの輸送業務に従事させてきたところ、会社が、同2社との運送委託契約を解除したこと、(3)B組合が、会社に対し、労働者供給契約解約の撤回及び申立外上記2社との運送委託契約解除の撤回等について団体交渉を申し入れたところ、会社がこれに応じなかったこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
  2. 判断要旨
    • (1)会社が、A組合の労働者供給事業により就労する組合員の労働組合法上の使用者に当たるかについて
      会社からA組合に対する労供組合員の供給依頼は、組合員の基本的な労働条件等に係る事項であり、A組合と会社とは、労働者供給契約を締結し、少なくとも30年以上にわたり継続し恒常化した労働者供給の実態がある中で、労供組合員にとっても、近い将来において会社での就労の機会を得ることについて、いずれの労供組合員であるかは特定できないものの、集団として、労働者供給契約に基づく会社における就労への期待権が発生していたといえる。そして、会社が労供組合員の供給の依頼をしなくなったことにより、A組合は、自らが運営する労働者供給事業に影響を受け、これら労供組合員はB組合の組合員でもあることから、B組合も組合活動に影響を受け、そのことについてB組合も団交を申し入れているのであるから、職業安定法により、労働組合、職員団体等に限り労働者供給事業が認められているという法の趣旨も踏まえると、本件の状況下においては、組合ら及びその構成員である労供組合員と会社との間に、労働者供給事業の実施に関わる限りにおいて、労使関係が成立しているといえ、その範囲内において、会社は、労供組合員の労働組合法上の使用者に当たるといえる。
    • (2)会社が、A組合の労働者供給事業により申立外C社又は同D社で就労する組合員の労働組合法上の使用者に当たるかについて
      会社が、労働者供給事業により申立外C社又は同D社で就労する労供組合員と、直接の雇用関係がないことに争いはない。
      そして、会社と申立外C社又は同D社との間でそれぞれ交わしていた書面の記載等をもって、会社が労働者供給事業により申立外C社又は同D社で就労する組合員の雇用を保証していたとみることはできず、会社が、A組合の労働者供給事業により申立外C社又は同D社で就労する組合員の労働組合法上の使用者に当たるとはいえない。
    • (3)会社が、A組合に対し、日々雇用労働者の供給を依頼しなかったことについて
      • ア まず、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについてみる。
        個々の労供組合員に、会社に対して将来にわたり雇用継続を期待できる特段の事情があったとはいえず、また、労働者供給事業による就労は、会社のみに限定されたものではないことも踏まえると、会社がA組合に対し、労供組合員の供給を依頼しなかったことにより、労供組合員が不利益を被ったとはいえない。
        したがって、その余を判断するまでもなく、会社がA組合に対し、日々雇用労働者の供給を依頼しなかったことは、組合員に対する不利益取扱いには当たらない。
      • イ 次に、支配介入に当たるかについてみる。
        • (ア)会社とA組合は労働者供給契約を締結し、これに沿って労供組合員が供給されていたが、会社はA組合に対し、労供組合員の供給依頼を行っていないことが認められるところ、その理由や組合活動に与える影響によっては、支配介入に当たるというべきである。
          会社の、組合らに労働者供給契約を継続しがたい信頼関係破壊行為があったとの主張には疎明がなく、その他に労働者供給契約を解約した理由はない。また、会社がA組合に対し労供組合員の供給依頼を行わなかったことが、A組合の組合活動に影響を与えたことはいうまでもない。
          したがって会社は、A組合との労働者供給契約を合理的な理由なく一方的に解約して、労働者供給契約に基づき労供組合員の供給を依頼しなかったといえ、かかる会社の対応は、A組合が運営している労働者供給事業に影響を与え、組合を弱体化させるものといえるのであるから、A組合に対する支配介入に当たる。
        • (イ)次に、B組合に対する支配介入に当たるかについてみると、会社に供給されていた労供組合員は、A組合に組織加盟しているB組合の組合員でもあることからすると、会社とA組合との労働者供給契約に基づく労供組合員の依頼が行われなくなれば、B組合の組合活動にも影響を与えることは明らかであり、また、依頼しなかったことにつき、合理的な理由が認められないことは前記(ア)のとおりであるから、会社が、A組合に対し労働者供給契約に基づく労供組合員の供給を依頼しなかったことは、会社による、B組合に対する支配介入に当たる。
    • (4)会社が、申立外C社及び同D社との運送委託契約を解除したことについて
      会社は、A組合の労働者供給事業により申立外C社及び同D社で就労する組合員の労働組合法上の使用者に当たらないことは前記(2)判断のとおりであるから、これらの点に係る組合らの申立ては、その余を判断するまでもなく、いずれも棄却する。
    • (5)B組合による団交申入れに対する会社の対応について
      B組合と会社との間で、労働者供給事業の実施に関わる限りにおいて、労使関係が成立しており、その範囲内において、会社は、労供組合員の労働組合法上の使用者に当たることは前記(1)判断のとおりである。
      B組合が申し入れた要求事項は、集団的労使関係の運営に関するものであり、義務的団交事項に当たることから、会社は、団交に応じる義務があるにもかかわらず、正当な理由なく団交申入れに応じておらず、かかる会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
  3. 命令内容
    • (1)誓約文の交付
    • (2)その他の申立ての棄却
      ※なお、本件命令に対して、組合ら及び会社は、それぞれ、中央労働委員会に再審査を申し立てた。

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