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更新日:2024年5月24日

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6.H事件(令和3年(不)第3号事件)命令要旨

  1. 事件の概要
    本件は、会社が、申立外労働組合の組合専従者2名を昇等級させたことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
  2. 判断要旨
    • (1)申立外労働組合の組合員である申立人個人は、後記(3)に係る不当労働行為の救済を求める申立適格を有するといえるかについて
      • ア 不当労働行為救済制度は、労働者の団結権及び団体行動権の保護を目的とし、これらの権利を侵害する使用者の一定の行為を不当労働行為として禁止した労働組合法第7条の規定の実効性を担保するために設けられたものである。この趣旨に照らせば、使用者が同条第3号の不当労働行為を行ったことを理由として救済申立てをすることについては、当該労働組合のほか、その組合員も申立適格を有すると解される。
      • イ 確かに、申立人個人と組合専従者2名の昇等級との間には、直接的な利害関係は認められない。しかしながら、申立人個人は、まさに会社が申立外労働組合の専従者に対する人事優遇により申立外労働組合の懐柔が行われたとして支配介入を主張しているのであるから、このような事案については、申立外労働組合自身が支配介入を主張して救済申立てをすることは期待できない以上、その点からしても申立外労働組合の組合員である申立人個人にも個人として申立適格を認めるべきといえる。
      • ウ 以上のとおりであるから、後記(3)に係る不当労働行為の救済を求める申立適格について、申立外労働組合だけではなく、申立外労働組合の組合員である申立人個人も申立適格を有すると解するのが相当である。
    • (2)本件申立てが、労働委員会規則第33条第1項第1号若しくは同項第6号又はその両方に該当するといえるかについて
      • ア 申立書の「不当労働行為を構成する具体的事実」の記載においては、多少不明確な点があったとしても、「専従者への人事優遇」が支配介入である旨の記載及び「請求する救済の内容」として組合専従者2名に対する昇等級辞令の取消し等を求める記載があったことが認められ、このことからすれば、「不当労働行為を構成する具体的事実」が、本件申立てを却下しなければならないほど不明確であったとはいえない。
      • イ 既に実施されている昇等級の撤回ないし取消しは、少なくとも当該労働者の同意があればできるのであり、また、本件申立てに理由がある場合には、労働委員会は、昇等級の撤回ないし取消しに限定せず、事情等を考慮したうえで適切な救済方法を定めることができるのであるから、本件申立ての請求する救済の内容は、必ずしも法令上又は事実上実現することが不可能ではないというべきである。
      • ウ 以上のとおりであるから、本件申立ては、労働委員会規則第33条第1項第1号にも、同項第6号にも該当するとはいえない。
    • (3)会社が、組合専従者2名の昇等級辞令を発令したことが、支配介入に当たるかについて
      • ア 組合専従者2名の昇等級が基本労働協約違反ではなく、人事処遇制度に反しているともいえず、その他不合理な事情も認められないことから、その余を判断するまでもなく、同人らの昇等級を支配介入の不当労働行為ということはできない。
        なお、申立人は、申立外労働組合の役員の懐柔が行われているとして、申立外労働組合の組合員が受けた不利益について複数の事実を主張しているが、それらについては、正確な事実関係や背景事情、申立外労働組合の意思決定の理由などが不明であり、また、会社が当該組合専従者2名に昇等級辞令を発令することによって組合の自主性を消失させ、ひいては会社が組合を御用組合化している旨の主張については、申立人の具体的な事実の疎明はないといわざるを得ない。
      • イ 以上のとおりであるから、会社が、組合専従者2名の昇等級辞令を発令したことは、組合に対する支配介入には当たらず、本件申立ては棄却する。
  3. 命令内容
    本件申立ての棄却

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