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令和3年度職員採用試験〔行政・警察行政(大学卒程度)〕の問題 論文【法律・経済分野】
※令和6年度より試験科目を変更します
詳細は大阪府職員採用試験における変更点について
※ユニバーサルデザインの観点から、体裁や符号の使い方などについて、実際の出題とは異なる表記に変更している部分があります。
憲法
次の事例を読んで、設問に答えなさい。
事例
A市のB地区には約200坪の土地(以下「本件土地」という。)があり、そこには慰霊碑(以下「本件慰霊碑」という。)が設置されている。B地区は明治末期に大火に襲われ、100名を超える住民が犠牲となった。B地区の当時の町内会は、こうした犠牲者を弔う目的で、本件慰霊碑を建立した。本件慰霊碑は、現在も引き続き、B地区の町内会が維持・管理を行い、毎年1回、町内の神社から神官を招いて、神道の方式にのっとって慰霊祭を挙行している。なお、慰霊祭の実行委員は、町内会の役員がこれを引き受けている。
本件慰霊碑の維持・管理及び慰霊祭の挙行にかかる費用は、町内会の会員から一般会費とは別に寄付金として徴収された金員によって賄われている。その一方で、本件土地は、B地区を包括するA市の市有地である。本件慰霊碑が建立されたとき、本件土地はB地区の住民Cの所有に属していたものの、固定資産税の負担を解消する目的で、住民CはA市に寄付を願い出た。
これを受けてA市は、1950年の市議会において、本件土地の採納を議決するとともに、本件慰霊碑のために無償で使用させることを議決し、現在に至っている。
設問
本件土地の無償提供に関する憲法上の問題点について論じなさい。
行政法
次の事例を読んで、(1)、(2)の問いに答えなさい。
事例
Aは、B県内に産業廃棄物処理施設(以下「本件施設」という。)を設置することを計画し、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)第15条第1項の規定に基づく設置許可の申請について、事前に相談をするために、B県の担当部署を訪れた。相談を受けたB県の担当部署は、本件施設の設置予定地の周辺住民が本件施設の設置に反対していると聞いていたので、Aに対して、設置許可の申請に当たっては周辺住民の同意書を添付するよう求めた。
その後、Aから設置許可の申請(以下「本件申請」という。)に関する書類がB県の担当部署に送付されてきたが、そこには周辺住民の同意書は添付されていなかった。
- (1)B県の担当部署が、「貴殿は、周辺住民の同意書を添付していませんので、送付された申請書類を受理することはできません。」という記載のある文書を添えて、本件申請に関する書類をAに送り返したとする。
こうしたB県の担当部署の対応は、行政手続法に違反するものと考えられるが、その理由について述べなさい。 - (2)本件申請については、法第15条第2項が定める記載事項に不備はなく、同条第3項所定の書類も添付されていた。また、本件申請は法第15条の2第1項各号のいずれにも適合しているとともに、本件施設の設置によって大気環境基準の確保が困難になるという事情もなかった。
しかし、B県知事が、本件申請に関する書類に周辺住民の同意書が添付されていないという理由で、本件申請に対して不許可処分を行ったとする。産業廃棄物処理施設の設置許可に効果裁量が認められるか否かという点を検討した上で、B県知事が行った不許可処分が違法かどうかについて論じなさい。
〔参考条文〕
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
- (目的)
- 第1条 この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
- (産業廃棄物処理施設)
- 第15条 産業廃棄物処理施設(略)を設置しようとする者は、当該産業廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。
- 2 前項の許可を受けようとする者は、環境省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を提出しなければならない。
- 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
- 二 産業廃棄物処理施設の設置の場所
- 三~九 (略)
- 3 前項の申請書には、環境省令で定めるところにより、当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類を添付しなければならない。(以下略)
- 4~6 (略)
- (許可の基準等)
- 第15条の2 都道府県知事は、前条第1項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
- 一 その産業廃棄物処理施設の設置に関する計画が環境省令で定める技術上の基準に適合していること。
- 二 その産業廃棄物処理施設の設置に関する計画及び維持管理に関する計画が当該産業廃棄物処理施設に係る周辺地域の生活環境の保全及び環境省令で定める周辺の施設について適正な配慮がなされたものであること。
- 三・四 (略)
- 2 都道府県知事は、前条第1項の許可の申請に係る産業廃棄物処理施設の設置によつて、ごみ処理施設又は産業廃棄物処理施設の過度の集中により大気環境基準の確保が困難となると認めるときは、同項の許可をしないことができる。
- 3 (略)
- 4 前条第1項の許可には、生活環境の保全上必要な条件を付することができる。
- 5 (略)
- 第15条の2 都道府県知事は、前条第1項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
- (目的)
民法
次の事例を読んで、(1)、(2)の問いに答えなさい。
事例
Aは、X市内に更地(甲)を所有し、配偶者であるBとともに、Y市内に居住している。
- (1)Aは、Cから金銭を借入れており、Cとの間において、2021年5月14日に借入金を返済することで合意されていたが、同日までに借入金を返済することができなかった。そのため、Aは、Cが甲に対して強制執行をするのではないかという危惧を抱き、その旨をBに対して相談したところ、Bは、甲の登記名義をAからBに変更して、Cによる強制執行を回避することを提案し、Aもこれを了承した。そこで、AとBは、Aが甲をBに対して贈与するという内容の契約を締結したことにして、同年6月1日、甲について、AからBへの所有権移転登記手続を行った。その後、Bは、Aに無断で、Dに対して、甲を売却し、その引渡しも行った。なお、Dは、以上のような事情を知らず、かつ、知らないことについての過失もなかった。
Aは、同月18日、Dが甲を占有していることを知り、Dに対して、甲の所有権に基づいてその明渡しを請求した。Aの請求が認められるかどうか論じなさい。 - (2)Bは、Eから金銭を借入れていたが、手持ちの資金では借入金を返済することができなかったため、甲の売買代金を借入金の返済に充てることを思い立った。そこで、Bは、Aに無断で、Aが甲をBに対して贈与するという内容の贈与契約書を偽造したうえで、2021年6月1日、甲について、AからBへの所有権移転登記手続を行った。その後、Bは、Fに対して、甲を売却し、その引渡しも行った。なお、Fは、B名義の登記事項証明書を提示されて甲の売買契約を締結しており、また、以上のような事情を知らず、かつ、知らないことについての過失もなかった。
Aは、同月18日、Fが甲を占有していることを知り、Fに対して、甲の所有権に基づいてその明渡しを請求した。Aの請求が認められるかどうか論じなさい。
経済原論
IS-LM分析に関して、次の(1)から(7)の問いに答えなさい。
- (1)IS曲線とは何か説明しなさい。
- (2)LM曲線とは何か説明しなさい。
- (3)一般的にIS曲線はどのような形状をしているか説明しなさい。また、それはなぜか説明しなさい。
- (4)一般的にLM曲線はどのような形状をしているか説明しなさい。また、それはなぜか説明しなさい。
- (5)財政政策の例を挙げ、その政策の予想される効果について、IS-LM分析を用いて説明しなさい。
- (6)金融政策の例を挙げ、その政策の予想される効果について、IS-LM分析を用いて説明しなさい。
- (7)IS-LM分析の問題点又は限界を1つ以上、挙げなさい。
財政学
次の(1)、(2)の問いに答えなさい。
- (1)公債発行には、どのような問題点があるか論じなさい。
- (2)経済力の地域間格差が地方財政に与える影響について、その問題点にもふれながら論じなさい。
経済政策
次の事例を読んで、(1)から(5)の問いに答えなさい。
事例
ある閉鎖経済の国における短期の経済活動と政策の効果を分析する。
財の需要は消費(C)、投資(I)、政府支出(G)の3つで構成され、消費と投資がそれぞれ次の式に従って決定されると仮定する。
C=6+0.5×(Y-T)
I=6-r
ただし、Yは国内総生産(GDP)、Tは税、rは実質利子率である。
また、貨幣需要Mは、以下の式で決定されるとする。
M=Y/r
なお、政府支出はG=6、租税はT=6、名目貨幣供給量はM=4とする。
- (1)財・サービス市場の均衡を表す式をY=…の形で求めなさい。
- (2)貨幣市場の均衡を表す式をY=…の形で求めなさい。
- (3)財・サービス市場と貨幣市場を同時に均衡させる国内総生産(GDP)と実質利子率の水準を求めなさい。
- (4)政府が政府支出をG=7に増やしたとする。新たな国内総生産(GDP)と実質利子率の水準を求めなさい。
- (5)中央銀行が貨幣供給量をM=7に増やしたとする。新たな国内総生産(GDP)と実質利子率の水準を求めなさい。
経営学
次の文章を読んで、(1)から(3)の問いに答えなさい。
組織のメンバーに共有された信念、価値観、行動規範、意味の総体を組織文化という。ここでいう信念とは人や社会などに対する基本的な考え方を、価値観とは物事の判断基準や評価基準を、行動規範とは具体的な場面における行動のルールを、意味とは例えば「顧客とは〇〇だ」といった言葉の対応づけを指す。
組織文化には目に見える要素と見えない要素とがある。目に見えないレベルまで浸透した適切な言動や考え方がメンバーに共有されていれば、(a)管理する側が目に見える形での規則や仕組みを通じて人を動かすよりも柔軟な管理が可能となる。
また、(b)組織が標榜する価値観はそれが共有されることで、人々を強く動機づける。例えば大阪にゆかりのある世界的企業の創業者は、1930年代に「産業人の使命は貧乏の克服である」と宣言し、多くの人々を熱狂させたといわれている。また、別の企業家も、同時期に「燃料報国」の理念を掲げ、農山漁村における新型発動機の導入によるエネルギー効率化を通じて、社会に貢献することをめざした。
他方で、組織文化の浸透には人々の考え方や行動を均質化してしまうリスクも存在する。組織文化は目に見えないレベルまで浸透すると徐々に「当たり前のもの」となってしまい、それが「自分たちの考え方が正しく絶対だ」という考え方につながりやすい。したがって、(c)ある組織文化が環境に合わなくなり変えていかざるを得ないときや、異なる組織文化をもつ人々が相互理解を深めるためには、コミュニケーションのあり方に注意する必要がある。
- (1)太字部(a)に関して、組織文化による柔軟な管理がもつメリットについて、具体例を挙げて論じなさい。
- (2)太字部(b)に関して、本文に挙げたもの以外で、組織が掲げる(あるいは、掲げた)価値観の例を挙げ、それがどのようにメンバーを動機づける(あるいは、動機づけた)と考えられるか論じなさい。
- (3)太字部(c)に関して、どのようなコミュニケーションのあり方が有効であるか論じなさい。