『在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針』(平成10年一部改訂)

更新日:2014年2月13日

在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針

 

(昭和63年策定、平成10年一部改正)

大阪府の教育は、憲法及び教育基本法をはじめとする教育関係諸法令に基づき、人格の完成を目指し平和的な国家・社会の形成者として、心身ともに健康な国民の育成を期して行われてきた。

 人権尊重の教育の推進については、かねてから「市町村教育委員会に対する要望事項」、「府立高等学校に対する指示事項」、「府立養護教育諸学校に対する指示事項」に府教育委員会としての基本的な考え方を示しているように、世界人権宣言や国際人権規約及び女子差別撤廃条約等に示されている人権保障の国際的な趨勢についての理解を深め、同和問題、在日外国人問題、障害者問題、男女平等の問題等に関する教育を充実させ、差別をしない、差別を許さない実践力を身につけた児童・生徒の育成が図られるよう努めてきた。

 しかしながら、在日韓国・朝鮮人問題については、日本と韓国・朝鮮をめぐる近代以降の歴史的経緯や社会的背景のもとで生み出されてきた偏見や差別が、日本人の児童・生徒の在日韓国・朝鮮人に対する意識形成や行動様式に影響を与えるとともに、在日韓国・朝鮮人児童・生徒にとっても自らの誇りや自覚を身につけることが困難な状況を生み出してきたと考えられる。

 これらの問題を解決するためには、日本人児童・生徒に在日韓国・朝鮮人問題を正しく理解させ、差別や偏見をなくすよう努めるとともに、在日韓国・朝鮮人児童・生徒が強く生きぬこうとする態度を育てることが大切である。

 そのため、府下の各学校において、下記の諸点に留意しながら教職員が人権尊重の精神に徹し、在日韓国・朝鮮人問題に関する指導内容、指導方法について共通理解を深め、すべての児童・生徒に対し一層適切な教育を推進する必要がある。

 なお、指導に当たっては、教育の主体性を保ち、保護者・地域住民にも十分理解を得るよう配慮することが大切である。

 

 

1 すべての児童・生徒に対し、在日韓国・朝鮮人児童・生徒が在籍している歴史的経緯や社会的背景を正しく認識させるとともに、朝鮮半島の文化や歴史についての理解を深めさせるよう努めること。

2 在日韓国・朝鮮人児童・生徒が本名を使用することは、本人のアイデンティティの確立にかかわることがらである。
 学校においては、すべての人間が互いに違いを認めあい、ともに生きる社会を築くことを目標として、在日韓国・朝鮮人児童・生徒の実態把握に努め、これらの児童・生徒が自らの誇りと自覚を高め、本名を使用できるよう指導に努めること。

3 在日韓国・朝鮮人児童・生徒が将来の進路を自ら選択し、自己を実現し得るよう、進路指導の充実を図るとともに、関係諸機関との連携を密にし適切な指導に努めること。

4 在日韓国・朝鮮人問題の指導の推進を図るため、教職員研修の充実に努めること。


在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針(解説)

 

1 すべての児童・生徒に対し、在日韓国・朝鮮人児童・生徒が在籍している歴史的経緯や社会的背景を正しく認識させるとともに、朝鮮半島の文化や歴史についての理解を深めさせるよう努めること。

 

 すべての児童・生徒に在日韓国・朝鮮人問題について正しい知識を身につけさせ、理解を深めさせることにより、偏見や差別をなくしていくことが極めて重要である。

そのためには、日本と朝鮮半島との関係について古代から現代までの歴史を理解させるとともに、文化の共通点や相違点についても理解を深めさせ、それぞれの文化を尊重する態度を育成することが大切である。

 1910年の日韓併合以後、日本が朝鮮を植民地として支配した過程において多くの人々が朝鮮半島から日本への移住を余儀なくされ、我が国に居住する韓国・朝鮮人の人口は、併合前に比べ著しく増加した。また、その居住地域は全国各地に及んだが、特に大阪など大都市圏に集中する傾向がみられた。平成8年末現在、大阪府に在住している在日韓国・朝鮮人は約17万1千人といわれている(全国約65万7千人のほぼ26%を占める。「法務省入国管理局登録課調べ」による)が、これらの人々の多くは前記移住者の子孫であると考えられる。

 日本は地理的に朝鮮半島に近いこともあって、古くから文化的に強い結びつきがあり、水稲農業や青銅器等の技術のほか漢字、仏教なども朝鮮半島から伝えられたところであるが、大阪においても地名や古墳、さらには、治水技術などにその影響がみられるところである。これらのことはもとより、中世や近・現代における両民族の政治、経済、文化等の関係についても、正しく理解させることが大切である。

 

2 在日韓国・朝鮮人児童・生徒が本名を使用することは、本人のアイデンティティの確立にかかわることがらである。
 学校においては、すべての人間が互いに違いを認めあい、ともに生きる社会を築くことを目標として、在日韓国・朝鮮人児童・生徒の実態把握に努め、これらの児童・生徒が自らの誇りと自覚を高め、本名を使用できるよう指導に努めること。

 

 府内公立小・中学校及び府立高等学校に在籍している在日外国人児童・生徒は平成9年度約2万人であり(平成9年5月1日現在「学校基本調査」)、そのうちの大部分が韓国・朝鮮人児童・生徒である。

 学校においては、このことを踏まえ、これらの児童・生徒の実態について理解を深めるとともに、すべての人間が互いに違いを認めあい、ともに生きる社会を築くことをめざして、温かい人間関係を育むことが必要である。また、他の子どもたちにも本名使用の重要性が理解されるようきめ細かい指導を行うとともに、在日韓国・朝鮮人児童・生徒が自らの誇りと自覚を高め、本名を使用できるよう指導に努めることが重要である。その際、当該児童・生徒の保護者と本名使用の意義について十分話し合い、本名を使用できる環境の醸成に努めることが大切である。

3 在日韓国・朝鮮人児童・生徒が将来の進路を自ら選択し、自己を実現し得るよう、進路指導の充実を図るとともに、関係諸機関との連携を密にし適切な指導に努めること。

 

 各学校においては、在日外国人児童・生徒が自己を実現し得る能力を身につけ、将来にわたって主体性をもって強く生きぬくことができるよう学習指導、進路指導の充実に努めることが大切である。

 今日、在日外国人、とりわけ在日韓国・朝鮮人の就業状況、雇用条件等については、国際人権規約などに基づく平等の精神にのっとった人権意識の高揚や社会の国際化の進展等を反映して改善されている面もみられるが、依然として厳しい状況がある。

 特に、最近、大阪府内で「韓国・朝鮮人は採用しない」などという就職差別事件が生起している。これは、在日韓国・朝鮮人に対し就職の機会均等や職業選択の自由を奪う重大な問題である。

 府教育委員会は関係諸機関と共に「近畿統一応募用紙」の趣旨の徹底を図るとともに、採用選考を受けた生徒からの報告にも留意しつつ、企業等の採用選考等が合理的なものとなるよう強く要請してきたところである。各学校においては、進路指導担当教員を中心に在日韓国・朝鮮人の雇用、就職問題等についての研修を深めるとともに、公共職業安定所や企業との連携を密にして、進路選択の機会均等が保障されるよう努めることが重要である。

4 在日韓国・朝鮮人問題の指導の推進を図るため、教職員研修の充実に努めること。

 

 在日外国人に関する教育を推進するためには、児童・生徒を指導する教職員自らが諸外国や諸民族の歴史、文化等を正しく理解するとともに、人権尊重の精神を基盤に在日外国人に対する差別を許さない態度を形成していくことが大切である。

 在日韓国・朝鮮人問題に関する指導を適切に行うため、校内において指導内容、指導方法等について教職員が共通理解を深めるとともに、必要な資料の収集や教材の研究等、教職員研修の充実に努めることが肝要である。

 

このページの作成所属
教育庁 教育振興室高等学校課 生徒指導グループ

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