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大阪湾に流入するプラスチックごみ量の推計結果について
大阪府では、2021(令和3)年3月に「おおさか海ごみゼロプラン(大阪府海岸漂着物等対策推進地域計画)」を策定し、大阪湾に流入するプラスチックごみの量を、現状を100として、2030年度に半減するという目標を掲げ、ごみを出さないライフスタイルの定着など発生抑制対策や地域団体等による美化活動の活性化等の取組みを推進しているところです。
このたび、令和3年度に算定した「大阪府域から大阪湾に流入するプラスチックごみ量(暫定値)」について、モデル河川を追加し、また、市街化区域とその他を区分して推計する等の精査を行い、2021年度の流入量を推計しました。また、淀川(桂川・宇治川・木津川)、大和川の府県境付近において、プラスチックごみの流下状況を調査しました。
1.大阪府域から大阪湾に流入するプラスチックごみ量の推計結果
1)推計の基本的な考え方
- 大阪湾に流入するプラスチックごみの大半は、陸域で発生したごみが河川や水路等を通じて流入するため、河川を流下するプラスチックごみの量を推計することを基本としました。
- 河川におけるごみの流下量は流域における人口の集中度で異なると考えられるため、府域の市町村を市街化区域の人口密度別で3区分し、各区分に流域を有する河川をモデル河川として選定しました。
- モデル河川に設置されている防災用の河川カメラの画像から、モデル河川ごとに降雨日※と非降雨日に分けて、流下するごみの個数をカウントし、年間の降雨日数と非降雨日数を乗じて、年間ごみ流出個数を算定しました。
- ごみ量のカウントは、ごみが少ない河川は目視で、ごみが多い河川はAIを活用しました。
- 各モデル河川の年間ごみ流出個数を「市街化区域」と「その他の地域」の流域人口で按分するとともに、流域面積で除して、各モデル河川の面積あたりの年間ごみ流出量を推計しました。
- この推計値を人口密度別の各区分ごとに平均し、各区分の府域の総面積を乗じて積算することにより、府域から大阪湾に流入するごみ量としました。
降雨日:日降雨量10mm以上または時間最大降雨量5mm以上の日をいう。
2)モデル河川の選定
府域の市町村を市街化区域の人口密度別で3区分し、それぞれの区分に流域を有する河川を選定しました(表1・図1)。
選定にあたっては、川幅がカメラ画像内に納まっていること、ごみをカメラ画像で確認できることを条件としました。
区分 | モデル河川 | 河川カメラ所在地 |
---|---|---|
区分1 (高) |
平野川 | 大阪市(剣橋) |
寝屋川 | 大東市(寝屋川治水緑地) | |
古川 | 門真市(桑才) | |
恩智川 | 東大阪市(恩智川治水緑地) | |
区分2 (中) |
西除川 | 大阪狭山市(草沢歩道橋) |
津田川 | 貝塚市(南海本線) | |
住吉川 | 熊取町(大久保中) | |
区分3 (低) |
梅川 | 河南町(寺田橋) |
大川 | 岬町(南海橋) | |
一庫・大路次川 | 能勢町(深田橋) |
図1 府域のモデル河川及びカメラ設置場所
3)モデル河川における流下プラスチックごみ量のAIを活用した推計
ごみが多い河川はAIを活用してごみのカウントを行いました。
AIによるカウントは、大阪大学大学院工学系研究科 地球総合工学専攻 社会システム学講座(中谷祐介准教授)にご協力いただきました。
【AIの活用方法】
教師ありの深層学習※1モデルであるセマンティックセグメンテーションモデル※2をベースに開発
水面を流れる人工的なごみを判別できるように学習
人工的なごみと判別された部分の面積をカウントすることで、ごみの量を算出。
1:機械学習の手法の1つ。正解ラベルの付いたデータ(例:「ごみの画像」+「(これはごみ)という情報」をAIに学習させる。
※2:画像認識技術の一種で、カテゴリ分類(人工的なごみか、そうでないかを画素単位で判別する手法)の1つ。
図2 元画像(左)とAIによりごみと判別された部分を色付けした画像(右)(地点:恩智川上流(カメラ設置箇所:恩智川治水緑地))
4)大阪府域から大阪湾に流入するプラスチックごみ量の推計結果
大阪府域から大阪湾に流入するプラスチックごみ量(暫定値)は、容積:年間1,032立方メートル/年、重量:58.8t/年と推計されました。この容量は、標準的な小学校用の25mプール(幅12m×長さ25m×深さ1.2m)と比較すると、約3杯分に相当します。なお、昨年度に算定しました暫定値(容積:1,102立方メートル)と比較したところ、差は約6%となり、ほぼ同等の結果でした。(※)
※昨年度とは推計式等を一部変更している箇所があります。
人口密度別区分 | モデル河川 | 大阪府総面積 (㎢) |
総流出個数 (個/年) |
総流出容積 (立方メートル/年 |
総重量 (t/年) |
|||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
河川名 |
年間流出個数 | 1㎢あたり流出個数 | ||||||||||
市街化区域 | その他 | 市街化区域 | その他 | 市街化区域 | その他 | 市街化区域 | その他 | 市街化区域 | その他 | |||
区分1 (高) |
平野川 (大阪市) |
58,384 | 3,110 | 193 | 524 | 173 | 1,631,067 | 33,333 | 848 | 17 | 48.3 | 1.0 |
寝屋川 (大東市) |
17,809 | |||||||||||
古川 (門真市) |
63,263 | |||||||||||
恩智川 (東大阪市) |
32,569 | |||||||||||
区分2 (中) |
西除川 (大阪狭山市) |
6,105 | 594 | 100 | 369 | 477 | 219,384 | 47,579 | 114 | 25 | 6.5 | 1.4 |
津田川 (貝塚市) |
1,559 | |||||||||||
住吉川 (熊取町) |
1,372 | |||||||||||
区分3 (低) |
梅川 (河南町) |
1,084 | 586 | 53 | 65 | 297 | 37,904 | 15,835 | 20 | 8 | 1.1 | 0.5 |
大川 (岬町) |
1,731 | |||||||||||
一庫・大路次川 (能勢町) |
63 | |||||||||||
1,985,101 | 1,032 | 58.8 |
*1 令和3年度に本府が実施した河川等のごみ組成調査結果におけるプラスチックごみ1個あたりの容量(0.52L/個)を用いて算定
*2 令和3年度に本府が実施した河川等のごみ組成調査結果におけるプラスチックごみの密度(0.057kg/L)を用いて算定
※四捨五入の関係で合計値が合わない場合があります。
2.淀川、大和川の府県境付近におけるプラスチックごみの流下状況調査
- 淀川、大和川の府県境付近にある橋梁や道路敷に計4個のカメラを設置し、令和4年10月1日から31日の間に流下するごみをカウントしました。
- 調査結果を上流府県に情報提供し、連携してプラスチックごみ対策を推進していきます。
河川区分 | 河川名 | カメラ設置期間 | カメラ設置箇所 | 非降雨日流下個数 平均値(個/日) |
降雨日※流下個数 平均値(個/日) |
---|---|---|---|---|---|
淀川 | 桂川 | 令和4年10月1日 から 10月31日 |
京都市伏見区 (宮前橋) |
16.5 | 75.0 |
宇治川 | 八幡市 (淀川御幸橋) |
21.1 | 124.2 | ||
木津川 | 八幡市 (木津川御幸橋) |
10.8 | 21.6 | ||
大和川 | 王寺町 (元町道路敷) |
36.3 | 354.4 |
降雨日:日降雨量10mm以上または時間最大降雨量5mm以上の日をいう。
3.まとめ
- 大阪府域から大阪湾に流入するプラスチックごみ量(2021年度)を推計しました。
⇒年間1,032立方メートル、58,8tとなりました。 - 淀川、大和川の府県境付近におけるプラスチックごみの流下状況調査を実施しました。
⇒非降雨日よりも降雨日の流下個数平均値の方が多い結果となり、約2から10倍の差が見られました。 - 本推計結果を現状として2030年度の大阪湾に流入するプラスチックごみ量の半減に向け、効果的な発生抑制対策等を推進していきます。
本件に関する詳細は大阪湾に流入するプラスチックごみ量の推計について(PDF:496KB)の資料をご参照ください。
【参考】令和3年度の算定結果
令和3年度の推計結果は⼤阪湾に流⼊するプラスチックごみ量の推計結果(暫定値)についてをご参照ください。