省エネ診断事例-工場9

更新日:2023年5月22日

省エネ診断事例-工場9

概要

事業者名

協立工業株式会社

業種

金属製品製造業

診断時期

平成30年5月

省エネ診断結果より想定される
エネルギー削減ポテンシャル

・年間エネルギー削減量:12.4kL/年(原油換算値)
・コスト削減額:約751千円/年

建物概要

建物用途:工場構造:−
延床面積:約1,000平方メートル建物階数:地上2階
契約電力:約130kW竣工:1970年
年間エネルギー使用量:178kL/年(原油換算値)増築:1971年

省エネ提案項目一覧

提案番号をクリックすると、提案項目の説明に移動します。

提案番号提案項目削減量(kL/年)
(原油換算)

削減率
(%/年)

削減額
(千円)

提案1

消灯の徹底

-

-

1

提案2

前処理ライン水洗ポンプのインバータ化

2.7

1.5

220

提案3

焼付乾燥炉直結ダクト等の断熱強化

1.9

1.1

123

提案4

乾燥炉開口部からのリーク防止

5.0

2.8

189

提案5

乾燥焼付炉の廃熱利用

0.9

0.5

56

提案6

工場照明のLED化

0.8

0.4

64

提案7

排水処理水の屋根散布することによる効果を試算

0.7

0.4

59

提案8

コンプレッサ吐出圧力の低減

0.2

0.1

20

提案9

コンプレッサ吸い込み温度の低減

0.2

0.1

19

提案10

(参考)乾燥炉の効率運転

-

-

-

合計

12.4

7.0

751


提案1

運用改善

 消灯の徹底

提案内容

消灯にはかなり気をつけられていますが、窓際で外光で十分得られる場所なども消灯することにより省エネの効果があります。効果は些少ですが、探せばムダの抽出はできる例として提案します。

考え方

「常時は執務者や作業者が居ない」、「作業や運転がない」、「自動運転中」、「外光が十分」などの理由で、消灯が可能と思われる執務、作業、生産、倉庫スペースでは、基準を設定して消灯を徹底する。

削減
ポテンシャル

窓際であり外光で十分な照度の場所もLED照明2台を昼3時間消灯した場合、
削減電力量:56kWh/年 (原油換算値:0.0kL/年)

削減コスト

1千円/年



提案2

投資改善

 前処理ライン水洗ポンプのインバータ化

提案内容

前処理ライン(脱脂乾燥炉)用水洗ポンプは稼働中一定速で運転されています。過剰な流量を低減するため現在はバルブで水量を調節しています。そこで電動機の回転数をインバータで調整し冷却水ポンプの電力使用量を削減します。

考え方

能力が過大で、バルブで絞って運転している系のポンプにインバータを導入し、必要水量だけ流れるようにモータの回転数を制御することにより省エネを図る。(バルブは全開とする。)

削減
ポテンシャル

水洗ポンプ3.7kW1台と冷却ポンプ1.5kW4台のインバータ化によりによりモータの回転数を調整し、送水量比を70%とした場合、
削減電力量:10,308kWh/年 (原油換算値:2.7kL/年)

削減コスト

220千円/年

イニシャルコスト
(想定)

490千円(インバータ盤+工事費:50千円/kW×定格kW)

投資回収年数

約2.2年


提案

投資改善

 焼付乾燥炉直結ダクト等の断熱強化

提案内容

焼付乾燥炉の表面は断熱されていますが、完全ではなく一部の箇所で断熱されていない箇所があります。診断時の測定では150から200℃。断熱強化により放熱損失を低減します。

考え方

断熱することにより表面から放出される熱量が低減される。その低減熱量が使用量の削減として算出する。

削減
ポテンシャル

空調機15台の冷房設定温度を27℃→28℃、暖房設定温度を21℃→20℃とした場合、
削減ガス量:1,670m3/年 (原油換算値:1.9kL/年)

削減コスト

123千円/年

イニシャルコスト
(想定)

23千円(材料費+工事費:4.6m2×5,000円/m2)

投資回収年数

約0.2年

補足

表面積(要断熱部分):0.6m2(ブロア接続部)+4m2(乾燥炉直結ダクト表面)
表面温度:175℃
周囲温度:20℃
熱貫流率:9W/m2K(現状)、1.36w/m2K(改善後)



提案

投資改善

 乾燥炉開口部からのリーク防止

提案内容

乾燥炉は構造上材料の出入り口があります。開口部があるとリークとなり、余分な空気の加熱が必要となります。開口部をエアーカーテンによりリークを防ぐことにより省エネを図ります。

考え方

燃焼炉に開口部があると、外部空気の侵入により無駄な加熱熱量が必要となる。開口部の面積や排ガス温度に応じて熱損失が発生するので開口部を小さくして省エネを図る。

削減
ポテンシャル

開口部4箇所(開口部面積合計0.9m2)にエアーカーテン(遮断割合30%)を設置した場合、
ガス削減量:10,104m3/年、電力増加量:26,147kWh/年

削減コスト

189千円/年(ガス削減コスト:746千円、電力増加コスト:-557千円)

イニシャルコスト
(想定)

3,800千円(エアーカーテン本体800千円×4台+工事費600千円)

投資回収年数

約20.1年


提案

投資改善

 乾燥炉の廃熱利用

提案内容

2階の焼付乾燥炉の排気ガスはそれほど高温ではありませんが熱利用されずに大気放出をしています。排ガス中の熱を回収し供給空気を予熱することにより燃料使用量を削減する。

考え方

乾燥炉等の排ガスの廃熱を利用して、燃焼のための供給空気を予熱することにより燃料使用量を削減する。

削減
ポテンシャル

供給空気を20℃から85℃に予熱した場合、
削減ガス量:19,246m3/年 (原油換算値:0.9kL/年)

削減コスト

56千円/年

イニシャルコスト
(想定)

750千 (空気熱交換器設置及びダクト費)

投資回収年数

約13.4年

特記事項

・空気を予熱すると体積が増加するため、空気ダクトや送風機の仕様等をチェックする必要がある。
・硫黄含有率の高い燃料の排ガスの場合は、ダストや硫黄酸化物による目詰まりや低温腐食を防止するため、空気予熱器出口の排ガス温度を酸露店以上に保つ必要がある。
・排ガス酸素濃度は不明のため推定としたが、エネルギー合理化法からも排ガスの管理は必要と明記されているので、排ガス測定器の設置を推奨する。

補足

1 熱交換機の空気側温度効率(Φ):36%(経験的に設定)、空気温度(現状)(Ta1):20℃、排ガス温度(現状)(T1):200℃)から空気温度(予熱後)(Ta2)を算出
    Φ=(Ta2-Ta1)÷(T1-Ta1) より 空気温度(予熱後)(Ta2)85℃
2 熱回収量(Q)は、次式により計算し、Q=27,907MJ/年
    Q = 燃料使用量 × 理論空気量 × 空気比 × (Ta2-Ta1) × 空気比熱
3 燃料削減率(△f)は、次式により計算し、△f=3.8%
    △f = 予熱後の燃焼空気保有熱 ÷ ( 定位発熱量 + 予熱後の燃料空気保有熱 − 排ガス持ち出し熱量)
  ここで、排ガス持ち出し熱量は、次式により計算し、5,959 KJ/kgf 
    排ガス持ち出し熱量 = (理論排ガス量 + (空気比-1) × 理論空気量 ) × 排ガス比熱 × 排ガス温度(AHの前)
4 熱交換機の排ガス温度T2の算出
    排ガス量 = 燃料使用量 × ( 理論排ガス量 + (空気比-1) × 理論空気量) より
    排ガス量 = 354,489m3/年
    熱回収量 = 排ガス量 × (排ガス温度-T2) ×排ガス比熱 より
    T2 = 143℃


提案

投資改善

 工場照明のLED化

提案内容

工場1,2階に蛍光灯があります。この蛍光灯を高効率のLED灯に器具ごと更新することで省エネを図ります。 (更新済みの事務所LED照明器具と同等機種の提案とします。)について試算します。

考え方

既設の蛍光灯器具を、LED一体型器具への更新により省エネを図る。

削減
ポテンシャル

40W2灯型蛍光灯27台を一体型LED灯(5,200Lm)に更新した場合、
削減電力量:3,004kWh/年 (原油換算値:0.8kL/年)

削減コスト

64千円/年

イニシャルコスト
(想定)

579千円 (設備費17千円/台×27台、工事費120千円)

投資回収年数

約9.0年


提案

投資改善

 排水処理水の屋根散水することによる効果を試算

提案内容

乾燥炉に使用した処理水は排水処理後放水されますが、1日当たり10m3以上になります。その排水の有効利用の手段として屋根に散水し屋根からの侵入熱を減らし空調の負荷を少なくします。(診断時にお客様より効果試算の依頼があった案件です)

考え方

夏期、屋根に散水し屋根からの入熱を少なくすることで空調電力(冷房時)の低減を図る。空調は使用されているが、金属屋根で裏張り断熱材等の設置がなく、かつ天井も設置されていないケースに適用。

削減
ポテンシャル

面積400m2の屋根に最高気温30℃以上の日73.2日に日中6時間散水した場合、
削減電力量:2,760kWh/年 (原油換算値:0.7kL/年)

削減コスト

59千円/年

イニシャルコスト
(想定)

500千円 (散水設備)

投資回収年数

約8.5年

特記事項

本試算は屋根面積全体に散水し、乾いた部分が残らないようにしたケース。

補足説明

屋根面積:400m2、形態係数:0.9(折板屋根の場合)、全店日射量:644W/m2、最高気温30℃以上の日数:73.2日/年(うち、稼働日の日数は、53.9日/年=269/365)、
年間散水時間:323.4時間/年(=6時間/日×53.9日)、散水量:3L/m2h、日射入熱の削減効果:15%(散水方式が非循環式の場合)


提案

投資改善

 コンプレッサ吐出圧力の低減

提案内容

工場の空気配管は、塗装ブースと乾燥炉出口の水切りに使用されています。エア配管は曲がりが多く細いうえに主管のルートの一部はゴムホースを使用されています。そこで配管を変更することにより損失を低減し、その損失分の吐出圧力を下げて省エネを図ります。

考え方

・コンプレッサの吐出圧力を低減することで、動力を削減する。
・動力の削減割合は、線図から算定する。

削減
ポテンシャル

主配管の変更した場合、
削減電力量:947kWh/年 (原油換算値:0.2kL/年)

削減コスト

20千円/年

イニシャルコスト

150千円 (エア配管工事費(材料費込み))

投資回収年数

約7.51年

特記事項

・末端の必要圧力の0.6Mpa-G(レシプロ塗装機)を満足する圧力を考慮した。

補足説明

配管の変更(90度エルボ:10箇所→4箇所、15Aゴムホース1m→配管25A)



提案9

投資改善

 コンプレッサ吸い込み温度の低減

提案内容

コンプレッサの排気がコンプレッサ周辺に排出されることにより、コンプレッサの吸い込み空気温度が高温になっていると想定されます。そこで、コンプレッサ吸気口を建屋外にダクトで延長設置し、吸い込み空気温度を低下させることにより、コンプレッサ動力を低減します。

考え方

容積式のコンプレッサの吸い込み温度を低減させると、密度が上がるので多くの質量の空気を処理できる。使用量は一定だから、吸い込み側で多く処理した分省エネとなる。(コンプレッサ動力は吸い込み状態の風量(m3/min)に比例する。)

削減
ポテンシャル

吸い込み温度を36℃から30℃に下げた場合、
削減電力量:915kWh/年 (原油換算値:0.2kL/年)

削減コスト

19千円/年

イニシャルコスト

100千円 (現地ダクト工事)

投資回収年数

約5.3年


提案10

投資改善

 (参考)乾燥炉の効率運転

提案内容

1階脱脂乾燥炉、2階焼付乾燥炉は以前は排気を使用して運用されていたのですが、現在はそれぞれ単独で稼働しています。今後の提案として、排気の現状の設備の有効利用を検討します。

考え方

1階脱脂乾燥炉の排気を2階焼付乾燥炉に取り込むたことにより効率運用する。

補足説明

今回の診断では確認できなかったために、今後の改善案として提案したい。

乾燥機の系統図(現状)

1.現状
 ・操業において、色々な改善点を自ら見つけて、自らで改善されている。
 ・以前は業者任せであったが、現状は自社で設備の改善を検討されている。
 ・よりよい設備、運転方法を検討されている。
2.問題点
 ・多くの燃焼エネルギーが使用されているが、使用量の把握ができていない。
 ・排気の量が把握されていない。(温度など)
 ・ダクトの系統が把握されていない。
 ・(環境面では)炉の周囲は熱の発散がとても多く、また冬期は設定温度までの安定に時間がかかる。
3.取り組む課題(提案)
 ・熱の入力、出力をデータとして把握する。
 ・排熱の有効利用できるように検討する。
 ・効率的な燃焼を検討する。



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このページの作成所属
環境農林水産部 脱炭素・エネルギー政策課 スマートエネルギーグループ

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