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平成24年度環境調査結果
平成24年度 干潟環境現況調査結果抜粋
調査地点
水質調査
- 11月調査(実施は12/5)では、干潟外(St.1)において表層の塩分が低い状況(18.1‰:室内分析)が認められ、調査日前日の降雨から大和川の河川水の影響を受けたと考えられる。しかし、この際の干潟内の塩分は比較的高い値(27.1‰:室内分析)であり、河川水の影響は低いことが伺えた。その要因は、現在干潟形成のために干潟北側の開口部が工事用進入路として閉塞、残る南側開口部は濁水防止膜で遮蔽されており、周辺との水の交換・循環が進まない(閉鎖)状況になっているためと推定される。
- 6月や8月調査では、干潟外(St.1)および干潟内(St.2)ともに底層の溶存酸素量が極めて低い値(1.1から4.4mg/L)を示し、強い貧酸素状態であった。特に8月は表層でも低い値(5.2mg/L)が見られ、貧酸素水塊の発達が伺えた。一方、11月調査(実施は12/5)では表層および底層ともに7.4mg/L以上に回復しており、貧酸素状態の解消が認められた。
- 溶存酸素量の過年度からの変遷で見ると、平成17年度以降に夏季の溶存酸素量がより低い値で推移している傾向が認められた(図1)。干潟内(St.2)では、特に顕著であり、上記で示したように、工事に伴い干潟内が閉鎖状態となり、水塊の成層化が進んだことによる可能性がある。しかし、一方では干潟外(St.1)でも同様の傾向が見られ、広域的な規模での変化の可能性も示唆される。このため、より早期に干潟を造成し、モニタリングを継続することで要因を解明していくことが望ましいと考えられる。
図1:干潟内(St.2)の底層における溶存酸素の推移
付着生物調査
目視観察
目視観察による出現種数は、植物で既設護岸(St.C)と周辺の石積堤(St.A、B)で大きな差はなく、動物では石積堤よりも既設護岸で多くなる傾向が見られた。この傾向は平成20年度あるいは平成22年度から平成23年度の間(既設護岸で出現種数が少ない)と異なり、昨年行われた消波ブロックの撤去に応じて変動した可能性が考えられる(図2)。調査時期別の出現種数は、植物が2月調査で、動物が6月調査で最も多く確認された。
図2:目視観察における付着生物の経年変化
枠取り調査
- 枠取り調査の植物は、8月調査で大きく減少したが、その後は回復が見られ、2月調査の湿重量は104.30g/0.25 m2とこれまでの調査で最も多い値を示した。優占種については、各調査時期で最も優占する種は異なるが、6月調査を除き紅色植物であるイトグサ属が優占的であった。
- 植物の過年度からの変遷は、年変動および季節変動は大きいものであったが、平成14年度以降は周年を通してハネグサ属やイギス科(イトグサ属、ヨツガサネ属)等の遷移初期に見られる小型紅色植物が多く、本年の調査もその傾向に変化は無かった。これらの植物は発生期の着生環境が群落形成に反映されやすく、変動が大きい特性を有するため、今後も同様の変動が続く可能性が考えられる。
- 枠取り調査の動物は、8月から11月に種数が大きく減少し、11月はこれまでの調査で最も少ない値となった。個体数と湿重量については、6月の個体数で平成18年度以降の最大値となったが、それ以外は概ね過年度の変動範囲内で推移した。優占種については、エゾカサネカンザシゴカイやウスカラシオツガイが個体数、湿重量共に優占していたほか、Corophium属やコウロエンカワヒバリガイ、ミドリイガイが個体数で、マガキやフジツボ類、アシナガゴカイが湿重量で優占していた。
- 付着生物は、植物と動物で季節的ごとの傾向が一部異なり、動物の出現種数は11月や2月にこれまでに比べて少ない値が見られたものの、それ以外では平成22年度以降に増加傾向あるいは比較的高い水準で推移している。このため、石積堤が付着生物の生息基盤として有用であることが伺えるが、特有の種が突出して優占しており、多様性に乏しく変動の大きい生物相と考えられるため、今後の推移に留意が必要である。
- 動物で11月や2月に少ない値が見られた要因について、例年は11月調査頃には回復傾向が見られるものの、本年の調査では11月調査まで減少が続いた。周辺海域で連続測定された海水温を基に本年度の調査期間と過去2年間の海水温を比較すると、7月頃まで同程度の値であることが認められる。しかし、その後8月中旬以降は底層を中心に本年度の海水温が高くなり、10月上旬頃までやや高い状況が続く。このことから、本年度調査の期間は、例年に比べて高水温が長期に渡ったことが伺え、これにより生物相の回復が遅れたと推測される。
図3:枠取り調査における付着植物の経年変化
図4:枠取り調査における付着動物の経年変化(個体数)
魚介類調査
- 6月調査ではトリガイ、ケブカエンコウガニ、キヒトデなど10種22個体が採取されたが、8月および11月に採取された魚介類は極めて少なく、その後2月に回復が見られた。この傾向は平成23年度と同様であったが、8月および11月に採取された魚介類は本年度でより少ない。その要因として、上記付着生物で述べたように、高水温の影響を受けたことが考えられる。
- 魚介類が少ない傾向は平成21年度より続いており、その要因として、干潟形成のために実施される土砂搬入が、その場に生息する生物に一時的なインパクトを及ぼしたことが考える。
- 出現種で見ると、年度毎に出現状況は異なるものの、概ね内湾の砂泥底で普通に見られるイシガニ、サルボウガイ等が優先的であり、本年度もその傾向に顕著な変化は見られなかった。
図5:魚介類の経年変化
注)St.E(干潟内)は干潟整備によって浅場となったため、平成23年度の8月以降は調査を行っていない。