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更新日:2012年3月29日

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平成24年2月委員会会議会議録

大阪府教育委員会会議会議録

1 会議開催の日時

平成24年2月22日(水曜日)午前10時00分開会
午後12時20分閉会

2 会議の場所

大阪府教育委員会委員会議室

3 会議に出席した者

  • 委員長 生野 照子
  • 委員長職務代理者 小河 勝
  • 委員 隂山 英男
  • 委員 中尾 直史
  • 教育長 中西 正人
  • 教育監 川村 幸治
  • 教育次長 藤井 睦子
  • 教育総務企画課長 見浪 陽一
  • 教育振興室長 津田 仁
  • 高等学校課長 和田 良彦
  • 支援教育課長 三ツ石 浩幸
  • 副理事兼保健体育課長 北川 憲一郎
  • 市町村教育室長 角野 茂樹
  • 小中学校課長 箸尾谷 知也
  • 児童生徒支援課長 吉美 学
  • 地域教育振興課長 吉原 孝教
  • 職員室長 大西 弘之
  • 教職員企画課長 秦 光広
  • 教職員人事課長 中野 伸一
  • 施設財務課長 福本 芳次
  • 文化財保護課長 野口 雅昭

4 会議に付した案件等

5 議事等の要旨

(1)会議録署名委員の指定

隂山委員を指定した。

(2)前回の会議録について

全員異議なく承認した。

(3)議案の審議等

第1号議案 知事からの意見聴取について
議案の趣旨説明(教育次長・教育総務企画課長)

地方教育行政の組織及び運営に関する法律第29条の規定により知事から意見を求められた平成24年2月定例会に提出される次の議案については、異議がないものとする件である。

  1. 予算案
    • (1)平成24年度大阪府一般会計予算の件(教育委員会関係分)
    • (2)平成23年度大阪府一般会計補正予算の件(教育委員会関係分)
  2. 事件議決案
    指定管理者の指定の件(大阪府立弥生文化博物館)
  3. 条例案
    • (1)大阪府教育行政基本条例制定の件
    • (2)大阪府立学校条例制定の件
    • (3)職員基本条例制定の件
    • (4)職員基本条例の施行に伴う関係条例の整備に関する条例制定の件
    • (5)府費負担教職員定数条例一部改正の件
    • (6)大阪府立図書館協議会条例一部改正の件
    • (7)大阪府文化財保護法に基づく事務に係る事務処理の特例に関する条例一部改正の件
    • (8)知事及び副知事の給料、手当及び旅費に関する条例等一部改正の件
    • (9)大阪府附属機関条例一部改正の件
    • (10)大阪府高校生修学等支援基金条例一部改正の件
    • (11)大阪府認定こども園の認定の基準に関する条例一部改正の件
委員の質問及び意見
  • (隂山委員) いろいろと議論があったが、おそらく今日が最終的な議論になると思う。最近の報道等を見ていて、府市統合本部以外のところでの報道等については、少し違和感を覚える。まず、維新の会が提起された教育基本条例と今回最終案となっている条例案は、原理原則はまったく異質であることを多くの方々に知っておいていただきたい。特に、昨年、我々も、あれだけのことをしなければならなかった大きなポイントは、知事が学校目標を設定するという、政治と教育の一体化というものであり、根本的にありえないものであった。人事評価の問題や校長公募の問題などは私たち自身も問題だとは思っていたが、そういうもの以外は、本質的に教育の根本的なあり方を問うものであった。それが今回は、原理原則というものがそういうことではなくて、住民の方々の意向が教育行政に反映されるという方向のものだという点は、私もその通りだと思う。つまり、根本的に違っているということを多くの人に知っておいていただきたい。そういう点で、私たちがこれまできちんと申し上げてきたことは意義があったし、かなり真摯に松井知事や橋下市長も受け止めていただいている感じがする。ただ、そういう基本的、肯定的なところもあるが、日本の法体系の中で、維新の会が提起をされた政治がどこまで教育に関わるのかということについては、やはり今までの制度を乗り越えようとしている部分もある。具体的には教育委員の罷免に関わる部分等である。ただ、これも、法規、法令を意識した内容に変わっているので、最終的には私たちもよしとしなければいけないと思う。ただ、いくつかの教育的な目標が提起され、政治の責任で決定していくということだが、最終的にそれがうまくいかなかったら、結局教育委員の働きが悪かったということになるわけである。私自身は、こういう枠組の中で、安心して教育委員という役職ができるのか、まさしく教育委員会の存在を問うものになっている。これができたからといってこの問題が終わりということではなく、むしろここから先をどうこうしようと思うと、国をあげて、法令や原理原則の変更を視野に入れないと決着しない問題だと思う。つまりこの条例というのは、ゴールではなく、スタートラインに日本の教育を置いたという感じがする。そうした点で私自身が心配しているのは、教育委員の腹の据え方が難しくなったと感じている。例えば、通学区域の撤廃問題は、条例に入っているのでよしとしないといけないわけだが、ただ、本当に通学区域を撤廃していいかどうかについて、教育委員会会議でも議論していないし、知事部局の方で議論したのか、問題点は全部精査されたのかということを考えると、非常に心もとないところがある。私たちの感覚からすると、混乱が起きるんじゃないかと不安に思う。混乱が起きなければいいが、実際に混乱が起きたときに誰が責任をとるのかということが気になる。2年間で撤廃ということだが、うまくいかなかったら、戻したいと思う。ただこれは条例に定められているので、これを変えたいと思えばまた議会に通さないといけない。相当にハードルが上がっていると思う。まだまだ課題は大きいと感じる。
  • (小河委員長職務代理者) 通学区域の撤廃が具体的な問題として出てきている。教育委員会会議で全然議論をしないで、府市統合本部でいきなり出された。しかも、当初は来年から撤廃ということで、いきなり押し通そうとされた。そこで、私が反論し説明をしたにもかかわらず、何故できないのかとまた問い直された。全然教育現場の実際をご存知ない。通学区域を撤廃するということは、内申や教育評価の根底を変えないといけないということで、現場サイドにとっては、地面を変える、大黒柱を取り替えるほどの問題になる。よしんば撤廃するとしても、それに対する周到な準備が必要で、それだけで相当なものがある。そもそも、現実的にそのような要求があるのか、本当に撤廃しないといけないのかというと、調査も何もしていない。こんな状況で結論だけ押し切ろうとされたわけである。これだけ教育委員会がないがしろにされるという事態に、私は我慢ならなかった。今の法制度をどう捉えているのか、教育委員会の現行の法制度における役割は実に奥深く、うまく作られている構造だと思う。確かに不備な部分はたくさんある。その改革は重要だと思うが、改革をすべきなのであって、不備があるから捨てようというのは話が逆だと思う。2年後撤廃と決められている状況で、条例案をどう運用するかということに私自身すごく苦しんでいる。例えば、ここでの討議や展開されている意見の内容を記録として保存し、すんなり了承したわけではないという何らかの歯止めをつけておかないと、後で混乱した時に、誰がどう責任をとるのか、教育委員会で決めたのだから責任を教育委員会に持ってくるなどとされたら、やりきれない。
  • (中尾委員) 条例案については、今まで紆余曲折があってここまできた。私は教育行政基本条例と府立学校条例、2つを分けて最終的にこういう形になったということはある程度評価できると思う。小河委員からも指摘があったが、我々は現場を預かっているわけであり、私も10年間公立と私立の校長をやっている。この10年間、私自身非常に大きな経験をさせてもらった。その中でもいろいろ問題はあり、学校現場には少なくともどういう課題があるかは体験している。そういうことについて、今までいろいろ指摘や議論をしてきた内容は、議事録に記録しておくべきだろうと思う。私は長期間企業に在籍していたが、議論する時は徹底的に議論をした。激論を交わし、トップに対しても言う。だが、最終的に決まったことに反対し、決まってからもいろいろなことを言っていたら、何も前に進まない。これから前向きにどうやっていくかを考えるべき。これが最終の着地ではなくて、スタート。大変な課題を抱えながらスタートしていくと思っている。いずれにせよ、最終的に大阪の教育が良くなったというふうに持って行かないと、あんなことを決めたからうまくいかなかったと後になって言っても、それで被害を受けるのは子どもたちである。その点をしっかりと考えないといけない。私は府市統合本部の会議に参加することができなかったが、このように仕組を変える時や大きな問題を提起する時は、議論を尽くすべきだと思っている。小河委員も言われたが、通学区域の撤廃についてはあまり議論していなかったのに、府市統合本部でこれでいくと決まったというやり方は非常に乱暴だと思う。あと、任期付校長の問題とか評価の問題とかいろんな問題については、かなり議論も尽くされ、ある程度は学校現場に合った形になったと思う。
  • (生野委員長) 前文の修正した部分について、「選挙を通じて民意を代表する」とあるが、これは首長と議員にかかる文言だと思うが、教育委員は、首長の任命と議会の同意を得て就任しているわけである。だから、間接的に民意を得ているという立場だと思う。つまり、教育委員がまったく民意を得ていないわけではない。そういうことがここには出ていない。民意を得ているのが首長と議員だけと受け取られがちだが、実はそうではない。
  • (隂山委員) そこに関連するが、通学区域撤廃についても、何か決定するときの価値判断の物差しはどこにあるのかということである。教育委員会が決定する場合には、レイマンコントロールとは言いながら、一方で、教育委員会事務局でいろいろ情報を持っていて、最終的には教育的判断、教育行政的判断と言ってもいいが、これをやった結果どういう教育効果があるかということを一応念頭に置いて判断する。ところが、今回の条例もそうだが、その時々の民意という政治的判断によって決定されていく。通学区域の撤廃については、非常に分かりやすいので言うが、府市統合本部の時も、「本当に民意なのか」と聞いたら、「タウンミーティングで6、7割の方が要望されている」と言っていた。それで子どもたちが良くなるとか、大阪の教育が良くなるという話は一切なかった。私たちは、通学区域撤廃が定められた瞬間に、学校現場でどういう阿鼻叫喚が起きるかイメージできてしまう。そういうことがまったく共有されていない。自分自身の経験を振り返っても、ゆとり教育が始まった頃はそれがバラ色のように語られていて、それこそ漢字や計算問題をやる時には保護者から批判された。逆に、教育委員会からはそれほど批判されたわけではなかった。むしろメディアを通じて、「勉強、勉強と子どもたちを追いまくるのはおかしい」と言う保護者が多く、意外に保護者からの批判が強かった。しかし、我々はこれは絶対に必要なことだとして、ある意味、民意に逆らって子どもたちを伸ばしてきた。そうすると、ものの2、3年も経たないうちに子どもが伸びるので、地域の民意が変わってきた。民意というのは、選挙結果がいつも1、2年でころころと変わることに象徴されるように、非常に移ろいやすいものである。そういう移ろいやすいものを基準にして政治的判断が行われ、教育行政が行われるのはいかがなものかと思う。教育行政で一番重要で必要なのは、やはり正しい教育的判断である。一方、これは逆もある。一切民意を入れることなく、「ゆとり」と言って、突っ走って行った教育界の問題点は我々もものすごく感じている。最初は保護者の批判もあったが、一番我々を批判したのは教師だった。なぜかと言うと、教育界とか学校界という閉ざされた社会の中でこれが善だと言って突っ走ってしまうように、教育界というのは非常に閉鎖的で危ないものだと思う。そういう意味では、今回の維新の会から提起された問題は、真摯に受け止めなければいけない。どちらか一方が絶対的に正しいというわけではないが、最終的に民意というのが非常に強く出てくるのは、不安に思う。
  • (小河委員長職務代理者) 民意にしても、例えば、この通学区域撤廃について本当に民意を調べたのか、撤廃の要望がどれだけあるのか、そういうデータはどこにもない。タウンミーティングで6、7割の人が要望していると言うが、それは言った人のイメージが残っているだけではないのか。大阪全体を一つの通学区域にと誰が言っているのか。撤廃の必要性が認められない。私は以前も言ったが、平成25年度から撤廃すると言われても、そんなことをしたら、現場ではこの4月から3年生を指導しないといけない、進路指導主事等がそれまでに決まっていないといけない。それを聞いて、知事が1年延ばして、平成26年度からということで決まったということだが、我々は一言も賛成はしていない。教育長が「それはできない」と言ったのを今も覚えているが、重大な問題が教育現場で起こる。教員は振り回される。私には、要望もない問題で現場の教員たちがキリキリ舞いさせられて、子どもたちもまともな進路指導を受けられないという事態が目に見える。
  • (中西教育長) 小河委員の意見は非常によく分かる。私自身も統合本部の会議で、その点の議論が尽くされていないと繰り返し言ってきた。また、この問題に対するスタンスが一番悩んだところでもある。我々なりに、進路指導の先生や校長にはリサーチをしてきた。不安の声がないわけではないが、一方で、決定的にできないという声がないのも事実。それと、生徒の進路選択という意味ではメリットがあるのも事実。特にこの間、東京が平成15年に通学区域を撤廃し、その状況もリサーチしているが、東京では逆にメリットも出ている。1年で撤廃ということであれば、これはもう徹底抗戦せざるを得ないと思うが、平成26年度までの2年間なら、我々は、中学校の進路指導、進路選択に混乱が出ないような努力は絶対にしなければならないし、そこは万全の準備で、この2年間周知徹底し、特に広報をしっかりして、何とか問題が出ないように臨んで行きたい。それと、隂山委員ご指摘の全体的な話で言うと、今回維新の会から提起された前向きな問題提起と、学校現場の現実、そこのぎりぎりの接点をどう見出すかということだと思う。今回のこの修正案も、ぎりぎりの接点と受け止めて、前向きな努力をしていきたい。
  • (隂山委員) 通学区域の撤廃というのは、ある意味で象徴的なものである。これまでも進学指導特色校等いろいろなことを実施し、それがほぼ定着して非常にいい形になってきている。府民は誤解されているかもしれないが、確かに小中学校については全国学力テストはまだまだのレベルかもしれないが、私はかなり良くなってきていると思う。ただ、高校は、全国トップというように評価されている。橋下知事のときにもよく話合いをして、非常にいい形になってきている。それをなぜ変えるのかという点が、私たちからするとよく分からない。私たちとしても、「日本一の教育委員会である」と言われ、これでいいと思っていたら、急に「形骸化している」と言われ、維新の会の条例案が示された。それと似たようなものを感じる。府立高校の方は非常にうまくいっているし、それをさらに安定させるために、例えば、校長人事についてはうまくいっている高校の教頭をそのまま校長にするとか、いい指導体制を維持できる人事体制を検討してきた。条例だから最終的にはよしとするが、急に変えられると、今までやってきたことは何だったのかということになる。例えば、仮にこれから選挙があり、アンチ維新みたいな人が出て来て、この条例を廃止する等また似たようなことが起きるのではないかと思う。通学区域撤廃の話は分かりやすい事例なので言うのだが、そんなに政治判断でころころ変えていいのかと思う。特に今回の条例によって、学校評価、教員の評価のかなりの部分を保護者に託すことになる。いわゆるクレーマーみたいな人が出てきて、いい教員を叩くこともありえない話ではない。保護者の評価を入れればいい教員が評価されるとは限らないということは、我々は肌で知っている。今回の条例というのは、やはり重大な責任が保護者一人一人にかかってきたということで、ある意味、裁判員制度とよく似ている。重大な責任を負うということを全府民的に共有しておいてもらいたい。
  • (中西教育長) 保護者の声を反映させるというのはリスクもあると思うが、保護者、住民の声を反映させるというプラスの面を生かしながら、それをプラスにできるかどうかは、校長と教育委員会との連携にかかっている。保護者の声もしっかり取捨選択して、聞くべき声に耳を傾け、クレーマー的なものは許さないという毅然とした対応をする。
  • (小河委員長職務代理者) 現場の教員もこの問題に対する構えをしっかりしておかないといけない。生徒にとって厳しいことも、きちっと指導していかなければならない。そういう意識がないと、教育そのものを潰す方向にいく。実際の運用や執行がこれからまさに始まる。すごく難しい問題を我々は抱えたということを踏まえないといけない。ただ、教育的な考えからいうと、保護者、子どもの評価、感想というものはちゃんと受け止めていくということが非常に大事である。その両面を踏まえて、しっかり処理していく覚悟がないといけない。
  • (中尾委員) 現場、現物、現実という3つをしっかり押さえないと、何もできない。通学区域についても、専門学科、総合学科、進学指導特色校など全体の3分の1ぐらいは大阪府全域から生徒が来ている。4学区制にしたのが平成19年で、徐々に定着してきているが、そこで現場から上がってきた課題を解決することが必要である。課題があるかどうかも分からずに実施すると、非常に混乱するのではないかと思う。通学区域の問題は、学校の再編整備の問題であり、特色づくりと絡めて考えないといけない。なぜ生徒が遠くの学校に行きたいかというと、身近に行きたい学校がないからということになる。特色づくりを進めるということなしに、単に通学区域のことだけを議論すると、中学校の進路指導にも影響が生じる。保護者の評価については、我々にもよくクレームが入ってくる。声の大きい人の意見というのは優先される可能性があるが、評価は多面的、客観的に行うということが大事である。このようにいろいろやるべきことがあり、それをするために、いつまでに誰が何をするかというロードマップを作っていかなければならない。
  • (小河委員長職務代理者) 例えば、議事録を踏まえるなどの附帯条件みたいなものはできないか。
  • (隂山委員) 通学区域の再編は条例で決めたのだから、責任は議会にある。知事、議会が関わるようになってきて、ますます責任が分散したと考えられる。通学区域撤廃の問題は、今回の改革で一番の象徴的な事例になる。教職員の評価等については、我々もかなり審議、議論をして、最終的には我々自身も評価が甘かったことに反省もした。議論してよかったと思うが、通学区域の撤廃は降ってわいたような感じであり、それがこういう形で決着しつつあるというのは、今後の大阪の教育行政を占う意味で試金石になる。
  • (中尾委員) 学校教育を樽に例えると、樽にいっぱい穴が開いていれば、一番下の穴のところまでしか水はたまらない。一番下の穴が生徒への生活指導であれば、それは教職員全員で埋めに行かないと水はたまらない。学校現場は教職員の連携、協力体制でもっている。私の学校でも、全教職員が学校について自己評価したところ、一番評価の低い項目は教職員の連携ということであった。今の学校現場で教職員の連携が崩れたら、穴は埋められない。教職員が互いに反発したり、協力しないような体制であれば、生徒は絶対育たない。
  • (隂山委員) 相対評価が外れたのはよかった。保護者による評価はあるが、学校現場に直接的な害悪は出なくなったとは思う。
  • (小河委員長職務代理者) 学校現場の経験者としては、身の細る思いである。相対評価が実施されたら大変なことになる。今までは、課題のあるところは自分が担当するとか、ベテランの教員が新任の経験の浅い教員を指導するとか、配慮して学校運営がされてきたが、それが出来なくなると思っていた。これはギリギリの選択だった。相対評価になっていたら教育現場はめちゃくちゃになる。
  • (隂山委員) 学校現場では、子どもたちにダメなことをダメと言いにくくなってきた感じがある。特に女子生徒から嫌われるタイプの叱り役の定番みたいな先生で、振り返ると結局あの先生が一番いい先生だったというような教員が減り、その一方で保護者におもねる教員が増えてきた。そういうことが、逆説的に、学校の指導力を弱め、保護者の批判を招くような感じがする。
  • (中尾委員) 「友達先生」になってはいけない。人気があっても、生徒の育成となるとうまくいかない。例えば、懇切丁寧に教える教員と、自分で考えさせる教員。どっちの先生が人気あるか、授業を見て評価すると、ゆっくりと丁寧に教える先生の授業はいいということになる。ところが、実際、結果を出してみると、生徒の成績が上がっていないということがある。多面的な評価でないと、いろんな問題が出てくる。もう一つ大事なことは、校長のマネジメントの問題になるが、学校現場ではOJT(On the Job Training)が足りない。何か問題があったときにピシッと指導する体制がない。これが民間企業であれば、ピラミッド型になっているので、何かあれば上司が指導する。学校現場はあまりこういうことがない。評価も、あの先生はよくやっているからA、あの先生はあまりやっていないからB、こういう感覚では駄目である。学校の方針をその教員の目標に客観的、具体的に落とし込み、結果はどうだったかというところに持っていかないといけない。学校全体のPDCAと教職員の評価を連動させないと、全部形骸化してしまう。
  • (隂山委員) 全教職員がゆっくり丁寧に教えるということをすれば、子どもはダメになる。子ども時代にゆっくり丁寧に教えてもらうということを当然のように思っていても、世の中に出たらそういう所はどこにもないからである。丁寧に教える教員もいればそうでない教員もいて、多様な教員と巡り会うことで、子どもは学習する。そのような価値観が保護者の側にあるかが問題。学校と地域の保護者の雰囲気にかなり差がある。朝食を摂るべきだというところから指導しないといけないときに、朝食を食べさせられない家庭はどうするのかと居直られた場合、その教員の評価はどうなるのか。保護者の評価が入り、そこから生まれた教育成果というのは、保護者の評価に基づくものでもある。評価の共有という価値観まで含まないといけないと思う。
  • (小河委員長職務代理者) 学力向上を学校全体でやっていく取組は、目立たない作業である。調査をし、分析をし、分析したことをデータに残していく、その流れを整理していくことが大事であるが、そういう教員の姿は見えにくいし、そういう系統性は保護者の目からは見えない。地道で、隠れた教員の営みであって、それを保護者に理解してもらうのは困難である。そこは、慎重にやっていかなければならない。「先生を軽く評価できない」という保護者もいる。ずっと付いて見ているわけではないからである。保護者受けのいい教員が高評価になるような制度の危険性を十分踏まえた教育委員会側のコントロールが必要である。
  • (隂山委員) 来年度の新規採用辞退者が12%となっているが、事務局としてはどのような評価をしているか。
  • (中野教職員人事課長) 辞退者からは理由を聞いているが、大きく2点ある。1点は、他府県、おそらく地元の教員採用試験に合格したという理由。もう1点は、大学院に進学という理由。なぜ大阪でなく他府県なのかの分析まではできていない。傾向としては、例年9%程度で推移していたが、今年だけ去年より上がっている。
  • (隂山委員) 条例案の議論の時期が悪かった。特に採用の意思確認の最終段階でこの議論があった。ダブル選挙の時期でもあり、維新の会が悪いと言う気はないが、やはり影響は大きかった。給料も他府県に比べて数万円少なく、生涯賃金にしたら大きな違いになる。にもかかわらず、最終的には90%近くの人が採用に応じてくれてありがたいと知事や市長も言っていた。しかし、やはり辞退された大きさ、しかも、他府県に行ける人、大学院に行ける人というのは、両方行ける力をもった人であり、大阪の教育の将来を担う人、校長候補の人だったかもしれないと思うと、辞退されたのはやはり残念である。こういう大きな議論をするときにはこういうこともあるということを、維新の会というよりは府民に知っておいていただきたい。この条件の悪いところを指導主事が採用のため大学を回っているなど、他府県では考えられない。現場はそういう努力をしていると言わないと、府民には伝わらない。教育委員会は形骸化していない。
  • (中尾委員) 現職教員がどういう形で退職されているか。私の見ている範囲では、私学などは優秀な教員を引き抜く動きもあるので、注意しておかないと大阪府としても立派な教員が流れていく。
  • (隂山委員) 校長公募になったので、私たちもいい先生を育て、大阪に送り込みたい。プラス、マイナスあるが、プラス面を最大限にしていきたい。
  • (生野委員長) いよいよ議会に提出という段階になってきた。印象に残るのは、今までの決定のプロセスで、教育を考えるに不適切なスピードであったように思う。長期的な視点で計画を立てるべき教育行政に対して、このスピードはどうだったか。通学区域についても何の討論もなく府市統合本部で話題に出て、決定されていくという状況が続いている。教育というものは、大ナタをふるうことが必要なときもあるが、大ナタを振るえばいいというものではない。どこにどういう形で振るうのか。子どもたちをいかに大切にしていくかという基本的な議論なしに、こういうことが拙速に決まっていくことに私たちは非常に抵抗感を持つ。もう一つは、政治が一点トップになって教育を変えていくということが、当初の維新の会の条例案に極めて顕著に出ていたことである。このことに関しては私たちが最大限努力や討論を重ね、これだけは絶対譲れない、守りたいという部分については、ぎりぎりのところで守ることができたのではないかと感じている。議会には、維新の会の条例案とここで議論している条例案の二つが並行して出されていくが、しっかりと討論されることを願う。今回の条例案の議論の中で私たちが心掛けてきたのは、目の前の条例案に対してどうあるべきかという態度ではなく、大阪が大きな曲がり角を迎えているというときに、我々自身が今後の大阪の教育に対してどういう考え、姿勢で臨んでいくのか、どう具体的に進めていくのか、我々の姿勢と責務が問われているということである。私が心のよりどころにしてきたことは二つある。日本全体が曲がり角を迎えている今日、次世代の子どもたちを育てていくという、真の教育を模索すべき時期に来ているということ。模索というのは、教育の中にある普遍性であり、決して変わることない教育が持つべき信念と方向性、基本に据えるべき教育に対する姿勢である。それと、時節によって変わる流動性という二つである。教育においてこの二つのバランスが非常に重要であるということを念頭に置いて進めてきたつもりである。これで終わりということでなく、議会で可決されたとしても、今からが出発点だということである。これから現場、現実がどう動いていくかということが問われていく。今まで以上に、教育委員会としても全力で教育改革を進めていきたい。この条例が決してマイナスにならず、大阪の教育にとってプラスがどんどん伸びていくように、学校現場と教育委員会がしっかり連携して、議論してきたことを足場にして方向づけていく必要がある。条例が可決されれば、教育振興基本計画の策定に着手することになる。知事ともしっかりと協議していきたい。我々も意見をしっかり申し上げていくということを確認する必要があると考える。これまでの議論も踏まえて、次の段階に進んでいくということになると考えている。
  • (隂山委員) 予算に関してだが、教育費全般について基準財政需要額を満たしているのか。
  • (藤井教育次長) 府の教育費の主なものは人件費であり、小中学校、府立学校の教員については全額交付税措置がされており、国の定数を満たしているということで、人件費については基準以上の配置となっている。義務教育でも、図書館費等の品目については、基準財政需要額より支出額は低い。
  • (隂山委員) 国庫補助についてはどうか。
  • (藤井教育次長) 支援学校についてはかなり補助が入るが、府立高校については国庫補助は少ない。
  • (隂山委員) 府はさまざまな支出があるが、教育についてはちゃんと予算措置されていると言えるかどうか。財政状況の厳しい他府県に比べても、府は継続的にしっかり予算措置されるというものでなければならない。私学助成でも、ある時期は出て、ある時期は出ないというのでは、受験者が右往左往して困った問題になる。
  • (中西教育長) 東京都などは財政力があるし、一概に比較はできない。府は人件費カットも一番厳しく、他府県との比較は難しい。
  • (藤井教育次長) 全体の中で、人件費については新陳代謝で94%になっている。事業費については、支援学校の整備や給食等で前年度より68億円の増となっている。府全体が圧縮予算の中で、教育委員会については重点配分されている。
  • (中尾委員) 人件費のことも問題である。先に人件費が決まるということにメスを入れないと、いつまでもこの状態である。定員割れをしているのに、人件費にまわしていないか、それだけの予算があるなら、他の教育費に持っていくなどしないといけない。私学ではそうする。
  • (隂山委員) 人件費については公務員制度改革でも議論になっており、それと教育費を一緒にすると話はややこしくなるが、施設や教材費についてはしっかりと予算措置されているのか。
  • (中西教育長) 人件費カットも含め、他府県とのトータル評価での比較というのは非常に難しい。ただ、学力向上等をはじめとして、耐震化等のハード整備、給食等きめ細かく予算措置がされている。
  • (隂山委員) 日本は、OECD諸国でも教育費の占める割合が低い。こういうことを国民的議論にしていかないといけない。教材費や給食費にしてもこれだけ投資したらこれだけの成果が出るということを発信していく必要がある。
  • (中西教育長) 府の財政状況の悪さは、他府県に比べても非常に長く続いている。そのため、学校経費等も低く抑えてきたが、その部分などは他府県より厳しかった。
  • (隂山委員) 財政努力はしているということで、理解しておく。
  • (小河委員長職務代理者) 一つの教育政策の結論が出るのには10年はかかる。アメリカの教育改革についても10年かかっている。この間、アメリカは、競争主義と成果主義という教育の破たんにより、国の根幹を揺るがしていると思う。この教訓をしっかりと踏まえて、今回の改革を考えていかないと、大きな禍根を残しかねない。影響は子どもたちを直撃するということについて、我々は自覚を求められている。非常に大きな責任を教育委員として感じている。我々の思いを十分に踏まえた議決をしておく必要がある。
  • (生野委員長) これまでの討論の中でいろいろ考えて、工夫もし、これでギリギリいけるというところまで持ってくることができた。これは確実なことであり、今この時点でここまでできたということに、悔いを残す必要はないと考えている。ただこれですべてではない。これから現場や教育委員会がどのように細かく実施していくかということが課題である。私たちが府民に伝えていかないといけないのは「私たちもしっかり努力してここまで持ってきたが、今からだ」ということ、「府民にもよろしくお願いする」ということ、「保護者の方々も一緒になって考えてほしい」ということだと思う。
  • (小河委員長職務代理者) アメリカの教育改革を進めた教授自身が、失敗を認めている。日本はこの過ちを繰り返してはいけない、この教訓を生かしてほしいと述べていること、これは敬服に値する。この言葉を軽視してはいけない。
  • (生野委員長) そういうことをしっかりと踏まえてやっていかないといけない。アメリカの二の舞を踏まないように努力していかないといけないと思う。
  • (隂山委員) 事実に基づいてやっていかないといけない。「教師が悪い」という声が上がった瞬間に、思考停止になるのが日本の問題である。ゆとり教育のせいで子どもたちの学力が低下したと思っている人も多いが、子どもたちの生活が壊れてしまっているということの認識が大事である。事実に基づかない対策は崩壊を加速させてしまうことがあり、条例の扱いについても事実に基づいて冷静にやっていくことが大事である。それと、教育振興基本計画に議会や知事、住民が入ることになった。これは、教育再生会議でも提起された社会総がかりの教育改革である。メディアにも認識してもらいたいことだが、事実に基づかない報道をされてしまうと、我々の努力が無になってしまう。社会総がかりと事実に基づくということ、これが条例がいい方向に向かっていくための最低条件である。
  • (生野委員長) 本日の我々の意見を付記するということではないが、関係者皆がしっかり留意していただき、これから進めていただきたい。議事録にもこのことはしっかりと残すこととする。これを採決ということにさせていただきたい。
採決の結果

原案どおり決定した。

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第2号議案 平成24年度公立小・中学校、高等学校及び特別支援学校教職員定数配分方針について
議案の趣旨説明(教職員人事課長)

平成24年度公立小・中学校、高等学校及び特別支援学校教職員定数配分方針を次のように定める件である。

〔趣旨〕
府内の公立小・中学校、高等学校及び特別支援学校の教職員を適正に配置し、もって教育水準の維持向上を図るため、平成24年度の教職員定数配分方針を定める件。

〔前年度からの改正点〕
公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の改正に伴い、小学校において専科指導を行う場合の加配事由を追加する。

委員の質問及び意見

なし

採決の結果

原案どおり決定した。

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報告事項1 平成23年度優秀教職員等表彰の被表彰者について
報告の趣旨説明(教育総務企画課長)

平成23年度優秀教職員等表彰の被表彰者について、次のとおり教育長が専決したことを委員会に報告する件である。

  1. 個人 139名
  2. 団体 21団体
委員の質問及び意見

(隂山委員) 要望だが、保護者による評価が始まる以上は保護者推薦のような仕組を作っていただきたい。学校の閉鎖社会の中だけで実施すると、それだけで突っ走りがちだからである。保護者の目から見ていい教職員というのも表彰できるようにしてほしい。

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報告事項2 平成25年度大阪府公立高等学校入学者選抜について
報告の趣旨説明(高等学校課長)

入学者選抜制度の改善に関する検討会議の検討状況について、報告する件である。

委員の質問及び意見
  • (中尾委員) 私立よりも入試の時期が遅いから生徒に逃げられるという発想はやめたほうがいい。公立に特色や魅力がないからこうなったのである。入試時期を早める競争に持ち込んではいけない。私立では中学校でプレ入試を実施しているが、高校もそういうことになりかねない。いろんな意味で歯止めをかけるため、私学・大学課とも話し合う必要がある。公立の復権は特色づくりにかかっている。選抜についても、特色ある学校は前期にするなどすべきであり、単に2回に分けて前期でも選抜機会を設けることなどはすべきでない。
  • (生野委員長) 検討会議のほか、どういうところから意見を聴いているか。
  • (和田高等学校課長) 検討会議が行われているので、私学団体に対して、意見があれば文書提出を求めている。検討会議は、中学校やPTA、学識者等で構成されている。最終結論という形式になるかどうかわからないが、3月にはまとめる。
  • (生野委員長) PTA協議会の人と話をし、意見を聴いたが、いい意見が多い。耳を傾けるべきである。子どもの心情まで考えてくれている。
  • (小河委員長職務代理者) PTA協議会はよく考えておられるし、感心させられる。そういう方々の意見を基盤にしていくべきである。子どもと学校との中間的な位置で判断されている。

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