4 契約の際には、こんな注意を

更新日:2016年9月15日

業者のペースにはまるな

 「住宅の契約というものは、十分検討してからでないと…」と思っていても、今、住んでいる住宅より広くキレイに見える住宅や、予想以上に条件の良い物件に案内されたり、「この物件は人気があるから早く契約しないと…」などと言われると、ついつい業者のペースにのせられ、契約書に印鑑を押したり、安易にお金を渡したりしてしまうことがあるようです。
 しかし、落ちついてください。本当にその物件でいいのでしょうか。
 入居の条件を十分に確認しないまま安易に契約をすると、後で後悔するかもしれません。後になって「しまった・・・」と思うような契約をしないためにも、業者の強引な勧誘を断れるだけの勇気も必要です。もし自信がないときは、あなたの身近で経験がある友人などに付き添ってもらって、慎重でゆとりのある取引をしてください。

契約の前に必ず重要事項説明書をもらい、その説明を受けよう


 借りたい物件が決まったからといっても、いきなり契約をするわけではありません。物件にまつわる色々な条件を知り、納得してから契約する必要があります。
 宅地建物取引業者は、取引する物件についての権利関係や法令上の制限等の重要な事項について、これから物件を借りようとする人に対し、賃貸借契約が成立するまでに、「宅地建物取引士」に重要事項説明書をもって説明させなければならない、と法律で義務付けられています。この「宅地建物取引士」とは、都道府県知事が行う試験に合格した不動産取引の専門家です。
 また、この説明にあたっては、「宅地建物取引士証」を提示して説明することになっていますので、説明を受ける際には必ず提示を求め、確認してください。
 なお、物件の説明で、重要事項の説明を受ける際には、その重要事項説明書の内容はもちろん、記載されていないことがあっても、取引について疑問に思うこと、わかりにくいことは必ず質問し、その内容を重要事項説明書に記載してもらいましょう。例えば、内覧や店舗での案内の際に、「管理規約ではペット不可となっていますが、実際は飼っても大丈夫です」という説明を口頭で受けたなら、必ず重要事項説明書にもそのことについての記載をしてもらい、契約書にも入れてもらうようにしましょう。
 この重要事項説明書とはどういうものか、国土交通省HP(外部サイト)を参考にしてください。

お金を払う前に契約書をよく読み理解する


 トラブル防止のため、必ず賃貸借契約書を取り交わしましょう。
 賃貸借契約書は、入居にあたっての貸主と借主の約束を記載したものです。後になって「こんな不利な契約内容なら契約しなかったのに…」と悔やむことのないように、事前に業者から契約書の見本を入手するなどして、その内容をよく確認しておくことが大切です。
 また、賃貸借契約書の内容は大まかには、(1)入居にあたっての条件、(2)入居中の条件、(3)退去時の条件の3つに分けることができます。ですから、契約書を作成した後でも、契約書をよく読み、その内容をよく理解しておかなくてはなりません。

賃貸借契約の条件内容 適用される法令
1.入居にあたっての条件

家賃、共益費、敷金等の額、

建物の種類・構造、

登記記録(登記簿)の記載事項、

飲用水・電気・ガスの供給設備及び排水施設、建物設備の整備の状況、

管理の委託先など

借地借家法、民法、宅地建物取引業法、消費者契約法など

2.入居中の条件

契約の期間、更新に関する事項、

家賃改定、修繕義務など

借地借家法、民法、消費者契約法など

3.退去時の条件

原状回復義務の範囲

敷金(保証金)の清算など

借地借家法、民法、消費者契約法など

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わからないなら、わかるまで契約しない

 不動産の契約にはある程度の専門知識が必要ですから、契約書で意味のわからない言葉や納得のいかない言葉があるときは、十分理解できるまで契約しないようにしましょう。
 また、契約に際しては、不動産取引に詳しい知人等に同伴してもらうのも一つの方法です。
不動産の契約というものは、一般府民にはあまりなじみがないものです。ですから、わからないことがたくさんあると思います。
わからないことは恥ずかしいことではありません。わからないことを確認しないまま取引を進めることは後々のトラブルの種となります。

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大切な約束は全て契約書に入れる


 口約束では、トラブルになった時に立証することが難しくなります。
 後になって「そんな約束はしていない」と言われないよう、大切な約束は、全て契約書の中に入れることが重要です。
 例えば、「ペット飼育可」、「ピアノ使用可」のほか、入居者の駐輪場や駐車場の利用の条件についても書面で残すようにしましょう。

印鑑は必ず自分で押すこと


 「印鑑を貸してください」といわれて渡したところ、自分の知らない書類を作られ、損害を被った事例もあります。また、「仮押さえだから・・・」といわれ、軽い気持ちで拇印や署名に応じて、その後キャンセルを申し出ても、契約は成立したとして違約金を請求された事例もあります。
 印鑑は不用意に預けないことはもちろんですが、ご自身で署名・押印する際にも、その書類の内容を理解するよう注意を払ってください。

手付金を支払うことは、契約することと同じ 


 『預り金』にも要注意!
 賃貸借契約は、貸主と同席の上で締結をするということが非常に少なく、仲介業者を通じての取引をなされることがほとんどです。このために、借主の入居意思の確認と貸主に入居審査をしてもらうことを理由に仲介業者から金銭の支払いを求められることがよくあります。このお金は、預り金(申込証拠金)と呼ばれ、多くは、1万円くらいから家賃の1ヵ月分以内の金額であるようです。
 預り金(申込証拠金)は、家賃や保証金と比べて比較的容易に用意できる金額であることが多く、申し込む側から見れば、「まだ契約書は交わしていない」という安心感から、気軽に支払いを済ませていることが考えられます。
 しかし、このお金は、貸主の入居審査合格後、契約した証(あかし)としての手付金にあてられ、入居していない状態でキャンセルを申し出ても、既に契約が成立しているとして返金してもらえない場合があります。申込みの段階で、預り金(申込証拠金)を支払う場合は、事前に重要事項説明書の説明と交付を受け、予定されている契約書(案)のコピーをもらい、よく読んで納得したうえで、支払うようにしましょう。また、そのお金の性格や支払い後のお金の処理などをよく確認し、預り証にその旨を記載してもらうようにしてください。
 また、手付金とは、契約した証拠として支払われるお金です。通常私たちは、「契約」というものはきちんとした契約書があって、それに署名・押印しないと契約したことにはならない、と考えがちですが、契約にあたっては、必ずしも契約書が必要とは限りません。ですから、手付金の持つ意味から考えると、「手付金を支払うことは、契約することと同じ」ということを覚えておいてください。

契約はどの時点で成立するか


 では、いつ賃貸借の契約は成立するのでしょうか。契約書に家主・借主の双方がサインした時でしょうか。いいえ、必ずしもそうではありません。厳密に言うと、賃貸借の契約は“双方の合意があれば成立するもの”であり、「契約書がなければ契約は成立しない」という考え方はされていません。
 例えば、申込者が重要事項説明を受け、入居希望の意思表示として預り金(申込証拠金)を支払い、それを受けた貸主が入居を承諾したという場合などは、貸主と借主の双方の意思が一致したとして契約成立とみなされる可能性は大きいでしょう。
 また、契約後、気が変わりキャンセルを申し出たところ、入居前なのに申込時に支払ったお金が返金されない、または違約金を請求されているといった相談が寄せられることがあります。しかし、一旦契約をしたからには、何もなかったことにはできないと考えなければなりません。入居前だからといって、いつでもキャンセルできるというのは大間違いです。安易な契約が、トラブルの元となり、精神的にも経済的にもダメージを受けることにつながります。慎重な行動を心がけましょう。

☆こんなケース(Aさんからの相談)
 「契約をしましたが、その後に、もっと気に入った別の物件が見つかりました。入居前だったのでキャンセルを申し出ましたが、既に払ったお金(敷金、家賃、仲介手数料など)は返ってくるでしょうか。」

 一旦契約を締結した以上、白紙撤回はできないと考えなければなりません。契約書に入居前解除や、中途解約の定めがある場合は、その規定に基づいて解約することになります。また、仲介手数料についても契約成立に対する報酬ですので、返金は難しいでしょう。

 

契約の一般的な流れ(申込から退去まで)

1.物件の確認

 

 ↓環境、設備の整備状況など確認。できれば夜間、休日、雨天時など条件を変えて確認しましょう。

2.重要事項説明書・書面の提示

 

 ↓宅建業法に基づく、仲介(媒介)・代理業者の義務です。わからないことがあれば質問し、記載のない内容があれば記入してもらいましょう。 

3.入居申込

  

 ↓ここで申込金を支払う場合は、そのお金の目的を確認し、返金の有無も預り証に記載してもらいましょう。 

4.家主の承諾

 

 ↓一般的には家主が仲介(媒介)業者に承諾の意思表示をした時点で契約は成立すると考えられます。 

5.契約書の作成

   

 ↓賃貸借契約書の作成・交付や仲介(媒介)業者に対する仲介手数料(媒介報酬)の支払いがあります。 

6.入居

  

 ↓入居時の部屋のチェックを貸主や管理会社の立会いのもと行いましょう。 

7.契約の終了

  

 ↓借主からの解約等(契約書の退去予告の期間を確認しましょう)。 

8.物件の明渡し・清算(原状回復)

 

  契約書及び原状回復のガイドライン(→退去の際には、こんな注意を

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決済の時の注意点


 賃貸借契約の決済では、敷金(保証金)・日割り家賃などが必要になりますが、その他に、「町会費」や「設備協力金(共益費)」などを請求される場合があります。基本的に諸費用を支払う場合は、その目的をハッキリ書面で説明してもらい、説明のつじつまが合わない場合は、そのお金を支払う相手先(町会費であればその町会)に確認するよう心がけ、必要のないお金は支払わないようにしましょう。

契約書が交付されたら


 契約書の交付を受けたときは、すぐにその内容を確認し、重要事項説明と違っているところがあれば、そのことを仲介業者や貸主に伝え、訂正するなどの対応をとってもらうようにしましょう。なぜなら、実際の契約内容は、重要事項説明の内容よりも、契約書に記載された内容が優先されるからです。また、そのためにも事前に予定される契約書(案)のコピーを入手しておくとともに、契約書の交付が遅れている場合は催促をしましょう。

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鍵の引渡しを受ける際には


 鍵の引渡しを受ける際には、できるかぎり業者又は貸主の立会いのもとで、物件の現状確認を行いましょう。
これには、入居時における破損やリフォーム、クリーンアップの確認をする意味も含まれています。
後日になって、破損やリフォーム、クリーンアップの苦情を申し出ても対応してもらえないケースもありますので、入居時点での確認リストの作成や物件の写真撮影を行っておけば、退去時などのトラブル予防に役立つと考えられます。

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仲介(媒介)手数料とは


 賃貸借契約における仲介手数料とは、仲介の依頼を受けた宅地建物取引業者が、依頼者のために奔走して契約の締結が実現した場合に、依頼者が宅地建物取引業者へ支払う成功報酬です。
 宅地建物取引業者が、賃貸借契約の仲介に際して受け取ることができる報酬=仲介手数料の上限額は、宅地建物取引業法において、次のように定められています。

(居住用の場合)

○借賃の1ヵ月分の2分の1に相当する金額以内の手数料を、貸主と借主の双方がそれぞれ媒介業者に支払います。
○ただし、媒介業者は、契約の前に貸主又は借主の承諾を得ている場合に、借主又は貸主のどちらか一方から、借賃の1ヵ月分に相当する金額以内の手数料を受け取ることができます。
○宅地建物取引業者は上記の額を超えて、媒介その他の手数料を受け取ることは、禁止されています。 

                         ※別途消費税を支払う必要があります。

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更新料とは


 賃貸借契約の更新に際して、賃貸借契約を更新することに対する費用として、「更新料」が、貸主側から請求される場合があります。
賃貸借契約の更新業務は宅地建物取引業ではありませんが、入居の際の賃貸借契約の締結に際して、契約の更新について定めがあるときは、その賃貸借契約の仲介又は代理業者は、重要事項説明にて、借主に説明するよう法律で義務づけられています。
 重要事項説明を受けるときには、この点にも注意するようにしましょう。

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このページの作成所属
都市整備部 住宅建築局建築指導室建築振興課 宅建業指導グループ

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