高圧ガス自主保安活動の基礎について説明しています。

更新日:平成24年6月20日

はじめに
第1章自主保安活動の推進に向けて
第2章自主保安活動の概要
第3章自主保安活動のすすめかた
第4章自主保安活動計画の作成や見直しのすすめかた
第5章自主保安活動を実効あるものに
おわりに
はじめに  
 今日、高圧ガスは私達の日常生活のすみずみにまで利用されています。
 住居の冷暖房や燃料、食品の保存、金属の溶接、化学製品や電子部品の生産、レジャーにとその用途は数えきれないほどあります。
 現代の私達の快適な暮らしは高圧ガスを抜きにしては考えられないといっても過言ではありません。
 一方で、高圧ガスは大きなエネルギーを持っており利便性と危険性が常に隣合わせになっています。
 そのため、高圧ガスによる事故や災害を防ぐためには国が法律や規則(法令)によって設備や取扱いの基準を細かく決めて、これを高圧ガスを取扱う者に守らせることが必要として、大正11年に「圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法」が公布され、戦後、様々な法改正を経て「高圧ガス取締法」から現在の「高圧ガス保安法」に至っています。
 しかし、前述のように、現在では高圧ガスの種類や形態、利用の方法は「圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法」はもちろん、「高圧ガス取締法」が施行されたときとは比較にならないほど多岐にわたっています。
 このような状況のもとでは、高圧ガスによる事故や災害を防ぐためには、国(行政)が一律的に細部まで規制するよりも、これを取扱う者が自らの責任と判断で必要な対策を行なう方がより効果的であるとして「高圧ガス取締法」が改正され、平成9年4月、「高圧ガス保安法」が施行されました。
 すなわち、国が基本的な基準を作り、これを基に、細部の基準は高圧ガスを取扱う者が安全の確保にとって必要で効果的な方法を自主的に判断して採用することにより、高圧ガスの事故や災害を防止するとの考え方が採用されました。
 現時点においても、この考え方に沿って引き続き、法令の改正がすすめられています。
 これまでにおいても、高圧ガスの保安は法令を守ることだけで確保されてきたものではありません。
 事業者においては、法令の基準の確保だけでなく、様々な方法で安全対策が自主的にすすめられ、高圧ガスの保安の向上が図られてきました。
 大阪府でも、事業者に対しては、法令基準の遵守を求めるだけでなく、高圧ガスを取扱う者としての自己責任を自覚した、自主的な保安活動の積極的な推進を要請してきたところです。
 この度の法改正は、自主保安活動を一層重視して、これを高圧ガスの保安を確保するうえでの中心として位置づけたものです。
 事業者においても、法改正の趣旨を踏まえ、自主保安活動の見直しや内容の充実を図ることが期待されています。
 この度、大阪府では事業者が自主保安活動の計画を作成したり、実施する場合の参考としていただくため、「高圧ガス自主保安活動の基礎」を作成しました。
 この小冊子が、高圧ガスの事業にたずさわるみなさんの自主保安活動の一層の充実、発展のための一助となれば幸いです。

第1章
 自主保安活動の推進に向けて   
1  事業者の自己責任原則と自主保安活動
 今日の社会で事業活動を営む者には、事業の形態や規模にかかわらず、その事業活動や生産物が人々の生命や健康、財産、環境を脅かすものでないということが求められます。
 特に、高圧ガスのように非常に大きな危険性を持っている物質を取扱う者は、その事業活動のすべての段階で安全に関して最大限の注意を払う必要があります。
 このため、高圧ガスを取扱う者(事業者)は高圧ガスの危険性を十分認識し、高圧ガスによる事故の発生を未然に防止するとともに、万一の事故の発生に備え、必要な対策を継続的に行なわなければなりません。
 高圧ガスの保安の分野では、このことを「高圧ガスの保安にかかる事業者の自己責任原則」として、自主保安活動の重要性を強調しています。
2  高圧ガス事業者を取りまく環境の変化と自主保安活動
 高圧ガスの安全対策はその利用目的や形態、取扱い方法の変化に応じて改善され、進歩してきましたが、一面では、発生した事故の教訓により進歩してきた歴史でもあります。
 これまで事業者がすすめてきた自主保安活動も、「事故は最大の浪費」との考えのもと、高圧ガス設備や保安設備の高度化と保安意識の高揚が図られてきました。
 近年では、多くの事業所で高圧ガスの運転の制御や管理、異常事象の早期発見、さらには保安教育や各種訓練にコンピューターが利用されるなど、保安面での高度化がすすんでいます。
 また事業者団体等が「安全冊子」を発行して、個々の事業者の自主保安活動をサポートする活動もすすめられています。
 今日の経済社会における競争の激化と長引く不況は、事業者の自主保安活動にも影響を与えつつあります。
 高圧ガス設備にかかるコスト管理の強化や保安組織のスリム化によって自主保安活動の規模や方法の見直しを余儀なくされている事業者もあります。
 また、一方では事業者のおかれている経済環境だけでなく、経営者の姿勢によっても自主保安活動の内容に格差が生じています。
 高圧ガスの事業者にとって、安全の確保は事業の健全な発展の絶対的要件です。
 厳しい経済環境のもとでも、安全対策を後退させることなく、自主保安活動の充実と事業の発展を両立させることが期待されます。
3  行政や事業者団体と自主保安活動
 高圧ガス事業者の規模、形態は種々様々です。
 専任の保安管理組織をおき自主保安活動を行なうことのできる事業者は少数で、本来の事業活動を行なう組織によって自主保安活動を行なう事業者が大多数です。
 このような事業者にとって、多くの費用や時間を使って自主保安活動を始めたり、充実することは困難です。
 既に自主保安活動を実施している事業者の情報を入手したり、計画の作成や実施の方法についてアドバイスを受けることができれば、自主保安活動に効果的に取り組むことができます。
 そのために、国や大阪府と事業者団体が協力して、自主保安活動に関するサポートを行なうことが必要です。

第2章
 自主保安活動の概要  
 高圧ガスの保安の目的は「事故を発生させないこと」、「万一、事故が発生しても被害を最小限に止めること」です。
 この目的を達成するために、事業者が高圧ガスの取扱い形態に応じ、法令の基準を守ることを基本として、様々な安全対策を自らの責任で行なうことが自主保安活動といえます。
 この章では、そのためにどのようなことを行なえば良いのかについて考えます。
 高圧ガス保安法では、高圧ガスの取扱い方法は「製造」「貯蔵」「販売」「移動」「消費」に大別されています。
 ここでは製造事業者(移動含む)と消費事業者、貯蔵事業者と販売事業者(移動含む)とに分けて記述します。
1  事故を発生させないために
(1) 製造(移動含む)、消費事業者の対策
 ここでの対策は、安全な設備を設置し、これを正しい方法で使用することです。
 これには次のようなものがあります。
使用する高圧ガスの性質や使用方法に応じた安全な設備の設置と維持管理
使用する高圧ガスの性質や設備に応じた正しい運転及び取扱い方法の採用
設備や運転条件に応じた取扱い者の配置と訓練
正常な運転状態の確保、異常事象の早期発見と正しい対応
(2) 貯蔵、販売(移動含む)事業者の対策
 ここでの対策は、設備を安全に設置し、これを正しく使用することだけでは不十分です。
 販売する高圧ガスを購入する消費者に、高圧ガスを正しく使用するための知識を提供することが必要です。これには次のようなものがあります。
貯蔵、販売する高圧ガスの性質に応じた安全な設備の設置と維持管理
貯蔵、販売する高圧ガス充てん容器の適切な管理と正確な把握
貯蔵、販売する高圧ガス充てん容器の正しい取扱い
消費者に対する正しい知識の提供
CEタンク画像
2  万一の事故に備えて
(1) 製造(移動含む)、消費事業者の対策
 ここでの対策は、事故を速やかに発見して迅速に適切な対応をとることです。
 これには次のようなものがあります。
使用する高圧ガスの性質や使用方法に応じた発見手段の採用
使用する高圧ガスの性質や使用方法に応じた防災設備の設置
事故発生時の迅速な連絡方法と防災体制の確立
(2) 貯蔵、販売(移動含む)事業者の対策

 ここでの対策は、事故を速やかに発見して迅速に適切な対応をとること、消費者への啓発です。これには次のようなものがあります。

高圧ガスの性質や管理方法に応じた発見手段の採用
消費者の使用条件を考慮した防災対策の啓発
消費者との連絡機能の維持、確保
3  安全対策をすすめるための組織
 事故の防止や万一の事故に備えての対策は、その目的を明確にして事業者が系統的に行なう必要があります。
 そのために、保安管理組織をつくり、それぞれの責任を明確にしておくことが重要です。
 この保安管理組織は高圧ガスの設備や取扱いについて必要な安全対策を行なうだけでなく、構成員の安全意識の高揚のための保安教育や万一の場合を想定して防災訓練を行います。
 
第3章 自主保安活動のすすめかた   
 第2章では、事故の発生を防止するための対策と万一の事故に備えた対策の概要を記述しましたが、この章の前半では、第2章に準じて事業所の形態を大別して、その具体的な内容をとりあげます。
 自主保安活動の責任者はもちろん事業者ですが、実際にこれをすすめるのは、事業者が組織した保安管理組織です。章の後半では、保安管理組織や保安教育について考えます。
1  事故の発生を未然に防ぐための対策
 高圧ガスを有用に利用するためには、そのエネルギー等を人為的に制御する必要があります。
 事故の発生を防止するためには、使用する高圧ガスの圧力や温度、性質に応じて適切に設計され、必要な強度をもつ機器や安全設備を設置しこれを維持するとともに、正しい取扱いを続けなければなりません。
(1) 製造(移動含む)、消費事業者
 安全な高圧ガス設備の設計、施工と保安設備の設置
 設備の仕様については、法令の基準を守るとともに、それぞれの取扱い方法に応じて安全度の高いものとすることが求められます。
 また、技術革新等の新しい知見を導入して積極的に設備の改善を図り、安全度を一層高めることも重要です。
 高圧ガス設備を設置するときは、事業の計画や設備の設計段階から、施工後の検査まで多くのことを検討しなければなりません。
 (計画から完成までの検討例)
事業計画(何を、どのように、どれくらい生産、あるいは管理するのか)
環境(周囲の状況、地盤、設備の配置、他の設備との関係等)
運転条件(内容物の性質や状態、圧力や温度等)
機器等の系列や配置、材質、強度等の検討、発注
施工業者の選定、施工
施工中及び完成時の検査
 また、異常事象を早期に発見し、事故を未然に防ぐための保安設備を設置することも必要です。
 保安設備の種類には高圧ガスの種類や設備の形態に応じて様々なものがあります。
 (保安設備の例)
異常な圧力、温度を検知し警報を発したり、正常な範囲に戻すための設備
高圧ガスの漏えいを検知し警報を発する設備
毒性ガスの除害のための設備
高圧ガスの滞留を防止するための設備
緊急時に運転を停止するための設備
 正しい運転と管理
 高圧ガス設備は製造や消費などの具体的な設備に応じた適切な運転や管理システムを採用し、これに習熟した者(グループ)が使用しなければなりません。
 設備を使用する者全員がその設備や取扱いに関しての基準や知識を習得することによって安全で安定した運転を続けることができます。
 そのために、運転マニュアルや作業標準などを文書化し、設備の運転や管理はこれに沿って行なわなければなりません。
 そして、普段から、これらの規定を目と耳で確認することを習慣づけることが大切です。
 これらの規定は曖昧さをなくして、正確かつ具体的なものとし、行なうべき手順や行為が明確に示されていることが大切です。
 また、設備の更新等に伴い適宜見直すことも必要です。
 そして、これらの規定を有効に活用するためには、適切な場所に保管し、関係者がいつでも使用できるようにしなければなりません。
 規定には、基本的な内容を定めたものから具体的な手順等を定めたものまでありますが、設備の規模や形態に応じて作成する必要があります。
 (運転・管理についての規定例)
設備運転基準(マニュアル)
設備管理基準(マニュアル)
異常事象発生時措置基準(マニュアル)
緊急停止基準(マニュアル)
運転切替え基準(マニュアル)
充てん作業基準(マニュアル)
 点検
 高圧ガスを継続して取扱うなかでは、周囲の環境の変化や運転条件の変化によって高圧ガスが正常な状態を逸脱する可能性があります。また、設備を使用しているうちに内的あるいは外的要因で機器に異常が発生したり、高圧ガスが漏えいすることもあります。これらのことを早期に発見するためには、設備の定期的な点検や運転の監視が必要です。点検には、毎日時間を決めて行なう日常点検と、一定の期間をおいて行なう定期点検があります。これらの点検は、対象や方法等を定めた規定を作成しこれに沿って実施する必要があります。
圧力計画像
(ア) 日常点検
 毎日の運転の開始時、運転中、運転終了時に設備の状況、圧力や温度の状態を点検します。運転の開始や終了時は圧力や温度の変化が生じることを念頭におき、運転中は計器による圧力や温度の監視とともに人の五感を生かして機器の状況を点検します。
 (日常点検についての規定例)
Lpガスプラント日常点検基準
酸素ガス充てん設備日常点検基準
(イ) 定期点検
 日常点検では実施しない設備の漏えい検査や保安設備の機能等について点検します。保安設備には作動テストが必要なものもあります。
 (定期点検についての規定例)
保安設備定期点検基準
防災設備定期点検基準
 設備の維持補修
 設置時には高い安全性を持っている設備であっても、継続して使用するうちに劣化したり、強度が下がる可能性があります。
 そのため、一定の期間を定めて、運転を停止して、機器等が引き続き安全に使用できるか否かを確認するための検査を行なうことが必要です。
 検査の結果、必要に応じて機器等の修理や取替えを行い、事故の発生を未然に防止します。
 この検査には機器の外部から行なう検査と内部を開放して行なう検査があります。
 これらの検査は、対象や方法、実施者等を定めた規定を作成しこれに沿って実施する必要があります。
(ア) 外部検査
 1年に1回以上、運転を停止し、外部から設備の肉厚や腐食の状況を調べたり不活性ガスを使用して気密検査を行ないます。
 また、圧力計や温度計等の計器、安全弁や緊急遮断弁の機能を検査します。
 (外部検査についての規定例)
定期自主検査実施基準
(イ) 内部検査
 開放検査と呼ばれ、機器毎に定期的な期間(3から5年)を決め、通常は、外部検査の時期と併せて行ないます。
 機器にとって有害な割れなどを目視及び検査機器を使用して検査します。
 (内部検査についての規定例)
貯槽開放検査実施基準
回転機開放検査実施基準
 工事等における安全
 設備の修理や増設の工事をするときには、工事用の機械が使用されたり、外部の関係者が工事に携わるなど、通常と異なる条件のもとで作業が行なわれます。
 このような作業は非定常作業とよばれますが、高圧ガスが工事対象部分へ流入することを防止したり、工事計画を作成する等の安全対策を定めて行なう必要があります。
 (非定常作業についての規定例)
設備工事実施基準
設備工事作業基準
溶接作業基準
工事関係入構者教育基準
(2) 貯蔵、販売(移動含む)事業者
 貯蔵設備と移動時の安全
 高圧ガスの販売所や貯蔵所では、大量の高圧ガスを貯蔵し、必要に応じてこれを移動させます。
 貯蔵する方法には貯槽によるものもありますが、その多くは容器によるものです。
 容器は、使用するガスの性質や圧力に応じその強度や材質が決められて製作されており、これを維持していくために一定の期間毎に検査することが義務づけられています。
 高圧ガスの販売者や貯蔵者は、取扱っている容器が、この検査に合格していることを確認して貯蔵、販売しなければなりません。
 そして、高圧ガスを充てんしている容器を貯蔵する場所(容器置場)は、そのガスの性質や貯蔵量に応じて、周囲の民家や危険物などから一定の距離を確保したり、障壁を設けたりすることも必要です。
 また、漏えいした場合にこれを早期に検知したり、滞留しないような措置も講じなければなりません。
 (容器置場の設置時の検討例)
貯蔵計画(何を、どれくらい貯蔵するのか)
環境(周囲の状況、容器置場の面積と配置、地盤等)
高圧ガスが漏えいしたときの対策(通風、ガス漏れ検知警報器、除害設備)
高圧ガス充てん容器の温度上昇を防止するための対策
 また、高圧ガスの容器を消費者に運ぶときは、移動中に容器が転倒したり転落しないように積載することや、万一の事故等に備えて工具や消火器、連絡先などを記載した書面を携帯することなどが必要です。
 (移動時の対策例)
車両の安全確認(車両整備、警戒標識)
安全な積載の確認(荷台の整備、転倒、転落防止)
事故防止のための対策(漏えい検知、消火器、除害剤、資材工具)
災害防止注意事項記載書面(イエローカード)の携帯
 適切な管理と点検
 高圧ガス充てん容器の管理や移動は、その高圧ガスの性質や容器の構造、取扱い方法等に習熟した者に行なわせなければなりません。
 また、仕入れや日々の販売によって、貯蔵し移動する高圧ガスの内容や数量が常に変化するため、容器が正常な状態で置かれているか、車両は安全な状態にあるか等を頻繁に点検する必要があります。
 安全な取扱いや正確な点検活動のために、容器や容器置場の管理基準、運搬の基準等を文書化することが重要です。
 (管理、点検の規定例)
容器置場管理、点検基準
充てん容器点検基準
充てん容器の移動、運搬基準
 容器の管理と消費者の安全
 高圧ガスを販売すると、販売事業者はその高圧ガスや容器を直接管理することができなくなります。
 そのため、販売した高圧ガスの全ての容器について、その所在を正確に把握するとともに、高圧ガスの消費が終了したときには速やかに回収することが必要です。
 事業者はそのための台帳を備える必要があります。
 (備え付け台帳例)
販売先の消費者台帳
容器管理台帳
 また、消費者が高圧ガスを安全な方法で使用するよう、消費者にガスの性質や使用方法を周知することが必要です。
 定期的に消費者を訪問し、容器や器具の状態を点検したり、消費者の安全意識を喚起することも重要です。
 消費者に周知するときには、わかりやすい言葉で、文書及び口頭で行なうことが大切です。
 (消費者への周知内容の例)
高圧ガスの性質と取扱い方法
高圧ガスが漏えいした場合等異常時にとるべき措置
緊急時の連絡先
 工事等における安全
 貯蔵施設の改造や増設の工事をするときには、工事用の機械が使用されたり、外部の関係者が工事に携わるなど、通常とは異なる条件のもとで作業が行なわれます。
 このような作業は非定常作業とよばれますが、充てん容器の一時的な移動や工事手順等についての安全対策を定めて行なう必要があります。
充填容器画像
(非定常作業についての規定例)
容器置場工事作業基準
充てん容器臨時置場使用基準
工事関係入構者教育基準
2  事故が発生した場合、被害を最小限にするための対策
 設備や取扱いの方法について万全と思われる対策を講じても、事故が100パーセントなくなることはありません。
 それは、これらの対策によって高圧ガスの持つ危険性そのものをなくすものではないからです。
 これまでの経験やデータでは予測できない要因や地震等の自然災害で事故が発生したり、また、人為的ミス(ヒューマンエラー)により事故が発生することもあります。
 高圧ガスの事業者は、これらのことを念頭において、万一事故が発生した場合の対策を講じる必要があります。
(1) 製造(移動含む)、消費事業者
 設備の配置と事故の早期発見等のための設備
 高圧ガスの設備を設置するときは、その設備の規模や形態を考慮して、事故が発生した場合に、人命や設備に被害が及ぶことのないような対策を講じることが必要です。
 そのためには、設備の配置を考慮するとともに、事故を早期に発見し、適切な措置を行なうための設備を設けなければなりません。
 これらの設備は高圧ガスの性質や量、設備の形態に応じたものが必要です。
 (保安設備の例)
高圧ガスの漏えいを検知し警報を発する設備
火災を検知し警報を発する設備
火災を消火したり、類焼を防止するための設備
毒性ガスを除害するための設備
保安責任者や消防署等へ連絡するための設備
従業員や周辺住民へ避難を呼びかけるための設備
 パトロールと訓練
 高圧ガスの事故は、これを感知するための設備と運転員等によるパトロールとを組み合わせることによって早期に発見することができます。
 パトロールには、時間と場所を決めて行なう通常のパトロールと、範囲を広げたり、重点箇所を設定して行なう特別なものがあります。
 そして、事故を発見したときに迅速で的確な対応ができるよう、普段から事故を想定した訓練を実施する必要があります。
 (訓練の例)
高圧ガスの漏えい時訓練
火災発生時の消火訓練
地震発生時の訓練
通報、招集訓練
避難訓練
(2) 貯蔵、販売(移動含む)事業者
 容器置場の配置と事故の早期発見等のための設備
 高圧ガスの容器置場には大量の高圧ガスが貯蔵されているため、事故が発生した場合には大きな災害になる恐れがあります。
 これを防止するためには、容器置場の配置や周囲の状況を考慮するとともに、事故を早期に発見し、適切な措置を行なうための設備を設けなければなりません。
 これらの設備は高圧ガスの性質や量、貯蔵の形態に応じたものとすることが必要です。
 (保安設備の例)
高圧ガスの漏えいを検知し警報を発する設備
火災を検知し警報を発する設備
火災を消火したり、類焼を防止するための設備
毒性ガスを除害するための設備
保安責任者や消防署等へ連絡するための設備
従業員や周辺住民へ避難を呼びかけるための設備
 パトロールと訓練
 容器置場での事故は、これを感知するための設備と従業員によるパトロールとを組み合わせることによって早期に発見できます。
 そして、事故を発見したときに迅速で的確な対応ができるよう、普段から事故を想定した訓練を実施する必要があります。
 また、移動中の事故の場合は、適切な初期対応と関係機関への速やかな連絡が必要です。
 (訓練の例)
高圧ガスの漏えい時訓練
火災発生時の消火訓練
地震発生時の訓練
通報、招集訓練
避難訓練
車両で移動中の事故対応訓練
 消費者への情報提供、容器の回収
 また、消費者に、事故発生時の初期対応や通報等についての情報提供を行なったり、未回収容器の発見、回収のための対策を講じることも必要です。
3  保安管理組織と保安教育
 これまで、自主保安活動で行なう内容について記述してきましたが、これを計画し、実施する中心となるのが保安管理組織です。
 また、自主保安活動に従業員が自覚を持って参加し、実効あるものにするために必要なのが保安教育です。
 この項では、保安管理組織のあり方や保安教育の内容や方法について記述します。
(1) 保安管理組織の性格と役割
 保安管理組織は高圧ガスの事業所の保安について全ての権限と責任を持つものとして組織されます。
 事業規模の大小や保安管理組織の名称を問わず、全ての事業者は高圧ガスの保安について、構成員(従業員)の役割と責任を明確にして事業を行なう必要があります。
 保安管理組織は、事業を統括する者を保安の最高責任者に、実際に高圧ガスを取り扱う者の中から実務上の保安責任者を選任し、規模や形態に応じて、安全委員会を設置したり、技術、教育、防災等の責任者などで構成されます。
 (保安管理組織の役割)
自主保安活動計画の作成と実施
保安意識の高揚
規定類の作成と見直し
保安教育の実施
訓練の実施
自主保安活動実施状況の把握と評価
保安に関する事業者団体や行政等との連絡調整
(2) 保安教育
 保安教育は自主保安活動の根幹となるものです。
 保安管理組織が正しく作られていても、これが有効に機能するためには、構成員の一人ひとりが高圧ガスの危険性等についての正しい知識や保安の向上心を持って、自らの役割と責任を自覚し行動することが大切です。
 また、点検やパトロール、定期検査を行なう場合でも、設備や高圧ガスの性質を正しく認識したり、その行為の目的や意義を理解することがなければ、その効果は半減します。
 保安教育には、設備の規模や形態、従業員の年令や経験等に応じ様々な内容や方法があります。
 (保安教育の例)
各種規定類の習得
設備や運転システム、管理、点検方法の習得
高圧ガスの性質、高圧ガス関係法令等の学習
ヒヤリハット活動
事故事例の学習
危険予知訓練
 また、保安教育を充実するためにはマンネリ防止のための工夫が欠かせません。
教材の工夫(事故情報、新聞記事、Tv番組等の活用)
教育媒体の工夫(ビデオ、パソコン、インターネットの活用)
教育方法の工夫(講師、事例報告者等持ち回り、体験学習等)
教育場所の工夫(外部研修、職場相互訪問)
教育結果の評価(効果測定、表彰)


第4章
 自主保安活動計画の作成や見直しのすすめかた  
 この章では自主保安活動計画を作成したり、実施する場合の方法等について記述します。
 自主保安活動計画の作成や見直しは保安管理組織が中心となって行います。自主保安活動は事業をすすめるうえでの保安の柱となるものですから、その計画は事業に不可欠の重要な要件として位置づける必要があります。
 計画を作成したり、見直すときに大切と思われることをとりあげます。
(1) 事業の規模や形態、設備等の状況に見合うものに
 高圧ガスの事業形態は取扱う高圧ガスの種類や方法、設備の規模によって様々です。また、事業規模や従業員の数、立地環境も事業者によって異なります。
 計画を作成するときは、これらの条件を反映した内容のものにしなければなりません。
 (考慮すべき条件の例)
高圧ガスの種類や取扱い量、設備の規模
高圧ガスの販売量や消費者の数
周囲の状況(住宅の立地状況、交通の状況等)
事業者の組織、従業員の数、構成、経歴
事業の現状や見通し
(2) 目的を明確に
 保安を確保することが、高圧ガスを取扱う者としての社会に対する責任であって、自主保安活動を行なうことはその具体的責任を果たすことであることを明確にします。
 そのうえで、事業の形態に応じて目的を明記します。
 (目的の例)
従業員の安全、地域住民と社会の信頼を得ること
高圧ガスの安全を確保し、事業活動の発展に寄与すること
消費者の安全を確保し、信頼を得ること
(3) 目標の設定を
 計画は、実行可能なものでなくてはなりませんが、現状をそのまま肯定するものであっては自主保安の向上は望めません。自主保安活動の達成目標とその期間を設定し、それに向けて努力することが必要です。
 この場合、全体目標と個別目標を設定することによって目標の達成度が把握しやすくなります。
 (全体目標の例)
労災ゼロ、物損ゼロ
運転中事故ゼロ、定修中事故ゼロ
積載・移動事故ゼロ
消費先事故ゼロ
 (個別目標の例)
運転管理部門漏えい事故ゼロ、緊急停止ゼロ
保安教育部門資格取得率50%、ヒヤリハット提出1人月3件
工務部門回転機器異常ゼロ
輸送部門積み込み・積みおろし事故ゼロ
販売部門消費先訪問回数の倍加
(4) 必須実施項目を明確にすること
 設備の現状等を考慮して、事故の発生を防止するために必ず実施すべきことを項目別に具体的に示します。
 (項目の例)
運転管理部門運転マニュアルの遵守、日常点検、定期点検の確実な実施
販売部門消費者への確実な周知
保安管理部門保安教育計画の作成と実施、訓練の計画と確実な実施
工務部門設備検査の計画と適切な検査の実施
輸送部門車両点検の確実な実施、積み込み・積みおろしマニュアルの遵守
(5) 計画の周知、実施状況の把握、見直しに関すること
 自主保安活動が統制のとれたものとしてバランス良く行なわれるためには、計画の内容が全ての関係者に周知されなければなりません。
 このための周知方法を計画のなかに定めることが必要です。
 (周知項目の例)
周知対象者の範囲及び周知内容
周知責任者、周知方法、周知時期
 また、計画と実際の活動が遊離しないためには、自主保安活動が計画にしたがって実施されているかどうか、目標の達成度はどうか、必須実施項目は100パーセント実施されているか等を定期的に調査し、必要に応じて計画を見直さなければなりません。
 そのための項目を計画のなかに設けることが必要です。
 (状況把握等の項目の例)
実施状況の把握期間
実施状況の把握責任者
把握結果の活用方法
見直しの方法
見直し責任者と期限

第5章
 自主保安活動を実効あるものに  
1  計画の作成は代表者のリーダーシップと現場参加で
 自主保安活動によって事業者の保安向上に効果があらわれるためには、全ての関係者がこの活動を自らのものとして参加する必要があります。
 関係者が、その役割と責任の範囲内で自主保安活動の主体となることによって、全体の自主保安活動が充実したものとなります。
 そのためには、組織の代表者がリーダーシップを発揮するとともに、計画作成、見直し、実施、点検、評価までそれぞれの段階で必要な関係者を参加させてすすめることが大切です。
(1) リーダーシップ
 事業に経営責任を有する者が「安全なくして事業の発展なし」との姿勢を明確にすることによって、関係者が安心して自主保安活動に取り組むことができます。
 そして、事業に必要なコストとして「安全」が事業者の内部で認知されれば、保安管理組織の位置づけもそれにふさわしいものとなるでしょう。
 また、高圧ガスの事業を統括する者は、その立場にふさわしいリーダーシップを発揮して、関係者に自主保安活動の意義を徹底し、その実行に責任を持つ必要があります。
(2) 現場参加で計画の作成、見直し
 計画は事業の現状をよく踏まえて、作成段階から作成者と実行者(生産現場等)の意思疎通を密にして、着実に実行できる内容のものとして下さい。
 作成者の考えるあるべき姿と現場で実際にこの活動をすすめる者が議論を深めることによって、目標を正しく設定し着実に実施することができるでしょう。
2  実施は計画の周知と理解で
 計画は関係者がこれを理解し、その意義を納得して実行に移したとき、目標に向かって前進します。
 保安管理組織は計画を作成したり見直したときは、関係者に対して、速やかにその意義や理由を知らせるとともに、その実行を指示しなければなりません。
 そして一方通行の指示ではなく、実行者が納得してこれに取り組むことができるものとすることが大切です。
(1) 周知はもれなく、速やかに
 計画が作成されたり見直されたときに関係者に速やかに周知するのは当然ですが、個人毎に周知日、内容等を記録して周知漏れがないようにする必要があります。
 また、交替制の職場では班によって周知時期にずれがないように行なわなければなりません。
(2) 実施時期はよく考慮して
 事業を始めるときは、保安に関する業務以外にも多くの業務がありますが、そのなかでも、自主保安計画やその実施方法の周知を最も重要なものとして位置づけ、保安についての関係者の習熟度が必要な水準に達していることを確認しなければなりません。
 また、計画や実施方法を変更したとき、これに関係者が習熟することは当然ですが、その切り替え時期を関係者でよく確認してから、実施に移すことが大切です。
3  自主保安活動の実施状況の的確な把握と評価を
 保安管理組織は自主保安活動の実施状況を把握し、これを定期的に評価することによって目標の達成度を確認したり、計画や実施方法の見直しの要否を判断して自主保安活動の向上に活用することができます。
 また、各部門や個人にとっても、自主保安活動の意義や重要性を再認識して、問題意識をもつ契機となります。
(1) 事業者の自己評価システム
 事業者の自己評価システムは、期間を定めて、自主保安活動の実施状況や保安の状況について自ら診断し、自主保安の着実な向上を図るためのものです。
 これを行なうことによって、自主保安活動が充実している分野と不十分な分野、積極的な部門と消極的な部門、個人毎の習熟度等を把握し、これを基にして、計画の見直しや実施方法の改善、関係者に対するアドバイスを行なうことができます。
 計画で定めた項目について、計画との比較、期間当初との比較、前回との比較等を行なって評価します。
 事業者は、保安管理組織が行なった活動と各部門及び個人が行なった活動を総合して評価します。
 (評価項目の例)
高圧ガス等に関係するトラブルの有無、件数、原因、対策
各部門、個人に対する自主保安活動の周知状況
保安教育の実施状況と効果(回数、内容、ヒヤリハット件数等)
各種訓練の状況(回数、内容、参加状況)
安全査察の状況
各部門の実状把握の状況
保安意識の向上の状況
(2) 各部門の自己評価システム
 運転部門、工務部門等各部門の自己評価は、その部門が持つ役割や責任の範囲内のものについてその部門の長が行ないます。
 各部門に共通する項目と異なる項目がありますが、保安管理組織と協議のうえ項目を決めて実施します。
 当初の状況と比較して、良くなったもの、悪くなったもの、目標の達成度、改善が必要と思われるもの、各人の取り組み状況等について評価し、その結果を保安管理組織に報告、協議して、計画の見直しや実施方法の改善に反映させます。
 (評価項目の例)
運転中、移動中のトラブルの有無、件数、原因、対策
定期修理中のトラブルの有無、件数、原因、対策
設備検査の実施状況と結果
点検、パトロールの実施状況と結果
保安教育、グループミーティングの実施状況
訓練の実施状況
部門としての保安意識の向上の状況
(3) 個人の自己評価システム
 個人の自己評価システムは、保安管理組織と各部門の長が協議して決めた項目について各人が行ない、各部門の長に報告します。
 各人は自らの活動状況や自己目標との比較等により自己評価します。
 各部門の長は、各人が提出した評価と部門の長の立場で行なう各人に対する評価を比較することにより、各人の状況に応じた適切なアドバイスを行なうことができます。
 (評価項目の例)
運転の習熟度
周囲の者との協力関係
点検やパトロールの取り組みの姿勢
訓練への参加と取り組みの姿勢
資格の取得
保安意識の向上
(4) 自己評価システムの運用はプラス思考で
 それぞれの自己評価は、実状を反映するものでなければなりませんが、その評価結果については、評価すべき点と改善すべき点を明確にすることが重要です。
 改善すべき点について必要な対策を講じるのは当然ですが、評価すべき点については、自主保安活動の成果として確信をもつことが保安の向上に結びつきます。
 特に、部門や個人の活動で評価すべき点については、他の部門や関係者に広げたり、表彰を行なうことで事業所全体の自主保安活動の向上に反映することができます。
 
おわりに  
 「はじめに」でも記述したとおり、『高圧ガスの保安は事業者の自己責任によってこれを向上させる』という考えのもと、引き続き法令の改正がすすめられています。
 高圧ガスの事故や災害の根絶はこの事業に携わる者、行政に携わる者全ての願いですが、この目標に近づくための近道はありません。
 一つひとつの高圧ガス事業者が、一人ひとりの高圧ガスを取扱う者が、そして高圧ガスを使用する全ての人が、それぞれの場所で必要なことを着実に積み重ねることによってのみ、この目標に近づくことができると思います。
 高圧ガスを取扱うみなさんが、高圧ガスの事業者として、また、一人の従業員として、安全についての感性を一層磨いていただき、事故と災害の防止に取り組んでいただくようお願いします。
 最後に、皆様方の事業の益々の発展をお祈りします。
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このページの作成所属
政策企画部 危機管理室消防保安課 保安グループ

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