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平成21年7月定例教育委員会会議会議録
1 会議開催の日時
平成21年7月17日(金曜日)
午前9時30分開会
午前11時30分閉会
2 会議の場所
大阪府教育委員会委員会議室
3 会議に出席した者
- 委員長 生野 照子
- 委員 小河 勝
- 委員 友田 泰正
- 委員 隂山 英男
- 教育長 中西 正人
- 教育監 田中 保和
- 教育次長 向井 正博
- 教育総務企画課長 藤井 睦子
- 教育振興室長 楠野 宣孝
- 支援教育課長 村上 慶太郎
- 市町村教育室長 藤村 裕爾
- 小中学校課長 角野 茂樹
- 児童生徒支援課長 梶谷 尚義
- 教職員室長 角 善啓教
- 職員人事課長 橋本 正司
4 会議に付した案件
- 第1号議案 全国学力・学習状況調査の結果公開に係る異議申立てに対する決定について
- 第2号議案 大阪府公立学校事務職員の懲戒処分について
- 第3号議案 大阪府公立学校教員の懲戒処分について
- 第4号議案 大阪府公立学校教員の懲戒処分について
- 第5号議案 大阪府公立学校教員の懲戒処分について
- 第6号議案 大阪府公立学校教員等の懲戒処分について
- 急施議案 大阪府公立学校教員の懲戒処分について
5 議事等の要旨
(1)会議録署名委員の指定
友田委員を指定した。
(2)議案の審議等
第1号議案 全国学力・学習状況調査の結果公開に係る異議申立てに対する決定について
議案の趣旨説明(小中学校課長)
全国学力・学習状況調査の結果公開に係る異議申立てについて、大阪府情報公開審査会答申を尊重するとともに、各市町村及び各学校の教育活動や今後の調査の円滑な実施に与える影響を勘案した上で、学校別平均正答数(率)及び一部の市町村別平均正答数(率)を除き、公開決定をするに当たっての方針を定める件である。
委員の質問及び意見
- 中西教育長
調査結果の公開については、府教育委員会議での検討状況を市町村にご理解いただくとともに、市町村の意向を十分にお伺いする必要があると考え、この間、いくつかの市町村を訪問し、市町村教育長と意見交換を行った。各市町村では、「府情報公開条例の答申への対応については、基本的には府教委が判断すべきもの。調査結果の公開について、市町村としての考え方はあるが、府教委の判断として受け止める。」とのご意見が総じて多かった。 - 友田委員
学力調査の実施要領では公表は市町村の自主性によるとなっているのではないか。 - 中西教育長
実施要領では、調査結果の公表については、市町村が自主的な判断に基づき公表することになっている。昨年来、市町村において公表を行い、教育への支障や大きな問題は生じていないことや、府教育委員会がリサーチした範囲でも大きな混乱は生じていないと判断している。実施要領の趣旨は、教育活動や今後の調査の円滑な実施に支障を及ぼさないこと。その点で、大阪府教育委員会が公開しても実施要領の趣旨を損なわないと考えている。 - 隂山委員
保護者が子の学校の結果の公表を要求した場合はどういう対応を取るのか。 - 角野小中学校課長
基本的には各学校長の判断であるが、学力調査結果については、各学校でプロジェクトチーム等を作って分析・検討等を行ない、平均正答率を出すかどうかはともかく、分析結果を保護者への説明会やホームページ、リーフレット等で周知している。そういう意味では、保護者からの求めに対しては、十分対応していると考えている。 - 隂山委員
学力・学習状況調査の出発点には、学校への不信感がある。公表できないものなのかという疑いを持たれてはいけない。そのために、重要なのは結果についての原因や対策の説明責任。各学校の教育委員会、校長、先生はジャンプアップのための信頼の土台を築くことを旨としてやっていくことが重要。 - 生野委員長
学校別の詳細な結果は、各学校の先生方はどの程度知っているのか。 - 角野小中学校課長
授業改善につながることから、調査対象である6年生だけの問題ととらえるのではなく、その学年に至るまでにどう学力が積み上げてきたか、各学校で結果を分析後、次年度に向けた対策を考え、それらを全教職員で共通理解している。 - 生野委員長
結果を公表していなくても、実質的には結果を受けて対応しているということか。 - 角野小中学校課長
そのとおりである。 - 小河委員長職務代理者
しかし、地域的な違いがあるため、それを一括りにして、テスト結果だけで成績評価を行なうことには問題がある。市区町村が自らの判断で公表するのは尊重されるべきと思うが、結局は全ての市町村が公表せざるを得ないような状況に追い込まれてしまっている。教職員自らの取組の検証という意味はあるにせよ、悉皆調査を行ないながら、結果は公表せず、後は現場判断というのは問題がある。悉皆調査の意味は何なのか、なぜ抽出調査ではいけないのか、政府に反論を言っていくべきではないのか。こんなに予算を使い、大騒動をしているが、いったい何なのか。大阪ではつまづき調査をしているが、その調査では何をなすべきかはっきりとしたデータが出てくる。国の調査ではそういう狙いがあるわけでもない。調査本来の意義に立ち返り、政府にもう一度考えてもらいたい。 - 隂山委員
悉皆調査の背景には、信頼とかよりももっとその奥に、日本全体の教育の土台をしっかりさせるということがある。これは国際的な流れでもある。教育というものの社会における価値や意味が上がってきている。ドイツやフランスでも同様に教育への意識や捉え方が変わってきている。とりわけ数学と英語をしっかりやることが社会の安定にも繋がるという認識が社会的に広がっている。よって、国内だけでなく、国際的な視点から国際調査との関わりも意識すべき。 - 小河委員長職務代理者
ただ、政府に対して、大阪府教育委員会として悉皆調査への意見を言っていくべき。実態として調査結果の公開に向かっているが、順位付けだけに意識を持っていくべきではない。そういう面で悉皆調査には問題がある。 - 中西教育長
悉皆調査と序列化は必ずしも結びつかないのではないか。 - 小河委員長職務代理者
悉皆調査によって、各市区町村、学校単位の問題が浮かび上がっている。従来の抽出型の地域ごとの違いを配慮した到達度調査であれば、今回のような問題は生じないと考える。 - 生野委員長
大阪府教育委員会として、前回調査までの検証結果はどうなっているか。 - 角野小中学校課長
4月に実施した調査の結果がこの夏に出る。今までも様々な検証をし、取組をしてきたが、3回目でもあるので、さらに検証をし、必要な改善をしていく。 - 生野委員長
国としてはどういう検証をしているのか。 - 角野小中学校課長
全体的な傾向等都道府県の行う分析の下地になるような基礎的な分析をしている。 - 隂山委員
分析ということで言うと、学力調査の結果が出るまでは、私学へ行かなければだめだという意識があったが、調査結果により、そうではないことがわかった。また、学力と生活習慣との関連を分析し、勉強させれば学力が上がるという、そんな単純なものではないということが明らかになってきた。だから、早寝・早起き・朝ごはんの運動も全国展開を見せ、3年間で劇的に効果が出ている。やったことの成果はきちんと出ている。その一方で、序列化の話は、そこまで話題になってはいない。保護者・国民・府民は冷静で、懸念していた序列化の問題は出ていない。本当に序列主義を恐れているのは誰なのか。教師ではないのか。現実を直視し、事実に即して対応すべき。私はどんどん公表するべきと考えている。ただし、あまりにも加熱していくのであれば、公表しないようにしてもよい。アクセルとブレーキを使うことが必要。 - 小河委員長職務代理者
序列に関し話題になっていないのは事実だし、そういうものだと思う。しかし、公表して打撃を受けるのは出来ない子供であり、丁寧に対応するべき。口には出さないけれど、公表されることで子どもたちが傷ついているということはある。悉皆調査は、税金を使ってやるからには全部公開すべきという論理が当然出てくる。教育長の仰ったことへの反論になるが、そうなるから日本ではこういう悉皆調査を行ってこなかった。だからこそ、そもそも悉皆調査をすべきなのか、狙いは何かということを、文科省には考えてもらいたい。 - 友田委員
序列主義になるのは平均点を見るから。本当は分布を見ることが大事。10数年前までは、日本の国際学力テストは平均が高く、散らばりが少なかった。それが、分布が大きくなった。下位の層を上げていくことが大事であり、そこを高めることを文科省に行なってもらいたい。 - 小河委員長職務代理者
大阪府がやろうとしていることは2つで、つまづいている子を助け、自力でできるようにすることと、基本的な力をつけ全体を底上げし、飛躍していくこと。 - 生野委員長
同感である。国際的に見ると日本は地域差が小さいが、例えば大阪だけを見ると地域差は大きいと感じる。そういう中で、底上げとは何かをよく考えていく必要がある。結果を公表することで、検証することが可能となる。 - 中西教育長
日本は、都市部と郡部と僻地とでばらつきは少ないと言われている。しかし、大阪府においては、都市部内での学力に大きな差がある。その背景には経済格差がある。 - 生野委員長
そのことがこれから大きな問題となる。学力を一面的でなく、多面的に検討する必要がある。経済的な差が背景にあるというのも、印象論だけではなく、その具体的なスケールを測る数値が必要。 - 小河委員長職務代理者
日本の教育について、外国と比較すると日本の教師や教育組織は本当に優れており、均質で熱意があると感じる。これは世界にも誇れる。 - 隂山委員
学力の均一性の最大の理由は指導要領。ここまで統一的なカリキュラムを持つ国は他にない。地域差がある中でも、教師は努力している。しかし、経済悪化を背景に、生活習慣の悪化が著しいのも事実。子供が夜型化している点では、日本は諸外国と比べてもおかしい。そういうことが、学力調査と生活習慣の実態調査を比べれば分かるのではないか。この生活習慣の異常さを、学校や教育委員会が地域や社会へ訴えていくべき。 - 生野委員長
数字だけではなく、実質的なメッセージを社会へ提供し、訴えていくべき。どう訴えていくかは、府教委の公表姿勢にかかっている。それも含めて、数字を出していくということ。一部市町村による結果公表による混乱は少なかったということだが、公表後に府教委が取った対応について説明をお願いする。 - 角野小中学校課長
様々な学力向上方策を打ち出してきた。各学校ならではの課題があるが、市町村支援プログラムでは、授業改善を大きな柱に取り組んでいる。各学校自らの企画、提案による学校ごとのニーズに合った対応をしている。 - 生野委員長
学校だけでなく、地域も一緒に考えていくシステム作りが進んできた。藤原特別顧問の活動も含めて、地域が一緒にやっていく機運が出てきたことが大きな変化。そこを今後伸ばしていくことが大事。具体的な数字が出ることのプラス面はそういうところにある。 - 中西教育長
国にどういう意見を言っていくのかについては、よく議論していく。 - 生野委員長
いろいろな問題が関係しての学力なので、包括的によく考えていくことが大事。 - 小河委員長職務代理者
税金を使って調査をしているので全部公開すべきという知事の考えは非常にシンプルで、その通りなのだが、一方で教育の条理として出来ない子への配慮も必要。知事と我々はぶつかっているわけではなく、こういう状況で袋小路に追いつめられていることが腹立たしいのである。そもそも悉皆調査をしながら結果は公表しないという考え方、全体の組立てが間違っていると思っている。 - 生野委員長
公表するかしないかでこれだけ議論があるのは、プラス・マイナスともにある。我々としては、どちらであっても総体としてプラス面を伸ばすことが大事。
採決の結果
異議申立てに対する決定書については、この方針案に沿って作成することを教育長に一任するということで、原案どおり決定した。
(傍聴人及び報道関係者、関係者以外の者退席)
以下非公開の審議に係る部分につき省略