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『大阪維新』プログラム(案)(平成20年6月5日)概要
1.「大阪維新」とは
大阪が再び輝くために
低下し続ける相対的地位。止まらない経済中枢機能の流出。大阪府をはじめ府内自治体の財政危機。そして、増長されるマイナスイメージ。大阪をとりまくこの悪循環ともいえる流れを何とか変えていかなければなりません。
高い経済力と歴史文化の蓄積。個々の地域が持つ主体性と先見性。自主・自立の精神に裏打ちされた人々のバイタリティ。これこそが大阪本来の強みです。
再び大阪が輝くための原動力は、私たち自身がそれぞれの原点に立ち返り、大阪の力、大阪の資源、大阪の都市魅力を再認識、再発見することです。そして、思いをひとつにしながら、それぞれが役割を果たすことです。
「大阪維新」とは
まずは、大阪府から。大阪府は、民間企業でいえば破産状態にあります。自らこの現実を直視し、税金の使い道や使い方、予算編成や意思決定の仕組み、市町村や民間との関係、さらには府政の役割そのものにまで立ち返り、これまでのやり方やシステムを抜本的に改革します。過去のしがらみや経過には一切とらわれない、大阪発の“自治体経営革命”を起こします。
これは、大阪府の“内なる改革”にはとどまりません。基礎的自治体である市町村、様々な活動を担う団体や企業、地域コミュニティなど、大阪府政に関わるあらゆる立場の人たちが、それぞれの役割の原点に立ち返り、大阪のために何ができるのかを考え行動していただきたいのです。
5年後、10年後、20年後、あのとき大阪が変わったと評価されるよう、今こそ、府民の皆さんの力、大阪の民の力を結集していただきたいと考えています。
大阪の力で、大阪を笑顔にすること。再び大阪を輝かせること。そのために大阪の底力を発揮する。これが、「大阪維新」です。
2.「大阪維新」の3つのミッション
「大阪維新」プログラムには、財政再建(財政再建プログラム案)、政策創造(重点政策案)、府庁改革の3つのミッションがあります。
「財政再建(財政再建プログラム案)」
まずは、府の財政再建に確かな道筋をつけることが、大阪を笑顔にする、大阪を再び輝かせる、そのための第一歩だと考えます。今回の財政再建プログラム案では、これまでにない規模とスピードの改革に取り組むことになりますが、確実に府財政の再建に辿り着ける道だと確信しています。
ただし、そのことにより、府がこれまで実施してきた様々なサービスの水準や内容について、優先順位付けや、一定の見直しを行わざるを得なくなり、府民の皆さんには誠に申し訳ありませんが、今は、“少しずつのがまん”をお願いすることになります。どうかご理解をいただきますよう、お願い申し上げます。
そして、府職員も、自らの人件費の削減を通じて改革の痛みを分かち合う覚悟でのぞまなければなりません。
「政策創造(重点政策案)」
厳しい中にあっても、大阪の明るい未来を拓く布石を打つため、施策・事業を絞り込み、重点化や集中投資を図って取り組んでいきます。また、大阪の魅力を高め、盛り上げるため、府民の皆さんの参加をいただきながら、大阪ミュージアム構想をすすめていきます。
「府庁改革」
財政再建を通じて府民の皆さんに“がまん”をお願いする以上、何よりもまず、大阪府庁自身が変わらなければなりません。“税金を1円たりともムダにしない”、これをスローガンに終わらせないよう、コピー1枚から徹底して細部にこだわり、改革に取り組んでいきます。
3.改革の基本姿勢
「大阪維新」プログラムにおける改革の基本姿勢は、次のとおりです。
将来世代に負担を先送りしません。大阪の未来のための布石を打ちます。
将来世代に負担を先送りするくらいなら、今の世代が泥をかぶるべきだと考えます。
また、社会経済情勢や府民ニーズとズレがある新たな投資や事業の継続は、将来世代への「負の遺産」に他なりません。見直すべきは速やかに見直します。
同時に、将来の大阪の姿を描きながら、大阪の明るい未来を拓くための布石を打ちます。未来を担う世代に投資します。
「持続可能」なセーフティネットを構築します。
自らの責任に負うところなく、人生や社会の競争という土俵に上がることができない人、同じスタートラインにつけない人を支援します。そのための「持続可能」なセーフティネットを構築することが行政の最大の使命です。
広域的・大局的見地に立ちます。
大阪府は、府域全体の利益、880万府民総体の利益を守る責任をしっかりと果たします。それぞれのエリア、様々な集団の個別の利益のみに左右されることなく、将来への時間軸を持ちながら、常に広域的、大局的な見地からのバランスを重視します。
4.財政再建(「財政再建プログラム」(案)から抜粋)
財政再建の考え方
理念・目的
平成20年度から、(1)減債基金からの借入れをしない、(2)借換債の増発をしない、ことを前提に「収入の範囲内で予算を組む」ことを徹底します。
すべての事務事業、出資法人、公の施設についてゼロベースでの見直しを行うことにより、景気変動に左右されやすい税収構造の下でも、将来にわたって自律的・安定的な行財政運営を行い、財政健全化団体にならないよう、財政構造改革に着手します。
これまでの施策のあり方を再点検し、府の役割の最適化、持続可能な制度設計、施策効果の最大化という観点から、再構築します。
再構築の具体的指針
民間との役割分担
本当に行政にしかできないことなのかを精査し、民間でできることは民間に委ね、府は民間ではできないサービスを担うことを基本に施策を選択します。
公共性のあるサービスに企業やNPO、住民団体などが積極的に参画できるような条件を整えます。これら様々な主体がその力を発揮することで、最適なサービスの量と質を確保できるよう、官民協働の仕組みを構築します。
市町村との役割分担
「住民に身近なサービスはできるだけ身近な市町村で」という原則を徹底します。府は、広域的視点からの調整や補完など府域トータルで行うべき役割を果たします。
基礎自治体である市町村がその力量を発揮できるよう、補助金の交付金化をすすめるなど、広域的・専門的観点から人材やノウハウの提供等を通じてバックアップします。
団体との関係の見直し
出資法人や補助対象団体に対する人的・財政的な府の関わりについて、それぞれの団体が自律性を発揮するよう抜本的に見直します。
持続可能な施策構築
真に必要な人に、必要なとき、必要なサービスを。そのための制度・施策が持続可能なものとなるよう、所得の高い人にはその負担能力に応じた負担を求め、又は一定の所得制限を設けるなど、真に必要な範囲にセーフティネットを再構築します。
サービスの対象となる人や施設を利用する人に偏りが生じていないかを点検し、サービスを利用する人とそうでない人との負担のバランスが確保できるよう、適正な受益者負担を求めます。
施策効果の検討と説明責任
施策を実施することによる効果を検証し、効果を裏付ける根拠を府民の皆さんにきちんと説明します。施策の目的に合理性があったとしても効果を検証し、その根拠を説明できなければ一旦見直し、効果のある施策を再構築します。
5.政策創造(「重点政策」(案)から抜粋)
「笑顔があふれる大阪」〜大阪を内から元気にし、輝きを外に発信する〜
この大阪の将来像の実現に向けて、今後4年間、特に重点をおいて進める施策・事業に集中的な投資を行います。ポイントは“特徴化”です。大阪の集積・ポテンシャルを有効に活用し、他の都市を圧倒的に引き離すような“際だった特徴”を持ち、人・モノ・情報を引き寄せ、交流を促進することで、大阪の発展をめざします。
なお、「重点政策」以外の施策・事業については、「財政再建」の取組みの中で必要性や効果を精査し、真に必要なものは継承・発展させていきます。
「大阪の未来をつくる」〜未来を担う世代に集中投資〜
子育てと教育において、「大阪は日本一」と言われるような施策を重点的に推進することで、大阪の未来を担う若い世代を呼び込み、人材を育てます。
- 子育て支援日本一
- 教育日本一(公立教育の充実・強化)
「大阪を輝かせる」〜大阪を圧倒的に特徴づけるために集中投資〜
大阪のこれまでの集積やポテンシャルを活かし、その魅力に磨きをかけ、「民の力」が存分に発揮できるよう集中投資を行うことで、圧倒的な特徴づくりをすすめ、内外に発信します。
- 他都市を圧倒する景観等で人を引きつける大阪づくり(「大阪ミュージアム構想」の推進)
- 大阪経済の活性化
- 新たな国際交流の取組み
6.府庁改革
“平成20年春、大阪府庁は変わります”と宣言しました。以来、大阪府庁では、次の観点から、様々な改革に取り組んでいます。
- 仕事が変わる:民間に学ぶべき点は大いに学びます
- 組織が変わる:透明で風通しの良い組織をめざします
- 職員が変わる:府民の理解と信頼を得られるようにします
これからも、「顧客第一主義」を徹底し、たゆみなき府庁改革に取り組むことにより、「府民の良識」「民間の経営感覚」から見て、“あたりまえのことをあたりまえ”にやる大阪府庁、新たな“自治体経営”の姿を発信することをめざします。
また、この「大阪維新」プログラムを着実に推進し、府政の課題に的確に対応できるよう、組織再編、意思決定の迅速化等に取り組み、スリムでスピーディな組織体制を構築します。
7.大阪発の“地方分権改革”
地域コミュニティの充実強化やNPOとの協働など住民自治をベースとした「自己決定・自己責任」による“新しい都道府県と市町村のかたち”を発信します。
市町村は、基礎自治体として、自らの判断と責任で、福祉や教育などの住民に身近な行政サービスを総合的に担い、大阪府は、広域自治体として本来担うべき広域的機能や市町村の補完機能、連絡調整機能に一層重点化します。
大阪版“地域主権”システム
“市町村優先”の徹底と府県を越える“広域的な行政組織”の実現をめざす中で、大阪府の“発展的解消”が将来目標です。
市町村優先の徹底
- 市町村と協調しながら、条例による事務処理の特例を活用して、必要な人的支援、財源とセットで、府内の市町村に、まずは特例市並みの権限の移譲をめざします。これにより市町村・住民の自己決定と自己責任が拡大します。
- 市町村向けの府補助金を交付金化し、事業の選択や設計等は市町村に任せて、大阪府の関与は最小限に限定します。
- 市町村が住民に身近な行政サービスを総合的に実施できるよう、自主的な市町村合併や、市町村間の広域的な連携等の取組みをサポートします。
- 具体的に権限移譲を進めるために市町村との協議の場を設置します。
府県を越える広域的な行政組織の実現
- 「関西広域連合」の早期実現をめざします。
- 府県単位での部分最適から関西としての全体最適へと発想を転換し、関西各府県で実施する事業を集約するとともに、国の出先機関で実施している事業の移譲を進めます。
- これにより、将来の「関西州」へのステップを確かなものとします。
8.国への提言と働きかけ
大阪版“地域主権システム”を実践するうえで、“国のかたち”そのものの変革を強く求めていく必要があります。
そもそも、大阪府が幾度となく取り組んできた独自の行財政改革にもかかわらず、現在の「財政非常事態」に陥っている背景には、府内の行財政需要に対応できる税財源や権限が十分に確保されていないという事実があります。府内で徴収される国税が、国庫支出金や地方交付税を通じて大阪府や府内市町村に還元される割合は低く、加えて、国は、三位一体改革による地方交付税の大幅削減、さらには、税収の偏在是正のための法人事業税の一部国税化などを強行しました。
今後、自己決定・自己責任による真の地域主権を確立するため、次の点を国にしっかりと求めていかなければなりません。
大都市圏の行政需要に対応しうる自治財政権の確立
- 地方法人特別税の速やかな廃止
- 地方一般財源の総額確保
- 道路特定財源の一般財源化にあたっての地方税財源の拡充
- 国税と地方税の税収割合が少なくとも5対5となるよう、地方消費税の拡充
- 地方における税率決定の自由度を高めるなど課税自主権が一層発揮できる環境の整備
- 地方交付税の充実確保
- 国直轄事業負担金の廃止
自治行政権、自治立法権の確立
- 国・都道府県・市町村の役割分担の見直し、大幅な権限移譲
- 国による義務付け・関与の見直しと条例制定権の拡大
- 国の地方支分部局(出先機関)の整理
地方分権を進めるための制度的担保
- 「(仮)地方行財政会議」の設置
9.「大阪維新」の先にあるのも
「自己責任」と「互助」
急速に進む少子高齢化。目前に迫る人口減少社会。税などによる負担を大幅に増やすことなく、様々なサービスの水準を下げずに、これからを乗り切っていくにはどうすればよいのでしょうか。やはり、住民一人ひとりが、自らの責任と役割を自覚し、できないところは互いに助け合う。まちづくりは住民が担うもの。大阪の文化は府民が支えるもの。こうした「自己責任」と「互助」がますます大切になってくるのではないでしょうか。行政はそのための条件を整えます。
「大阪維新」プログラムは、こうしたことを府民の皆さんに呼びかけるものです。
大阪・関西の将来像
少子高齢社会を乗り切る活力を生み出すためには、基礎自治体である市町村が、適正な規模を持ちながら、これまで以上にしっかりと、地域住民の自立やコミュニティによる互助活動などを支える。そのために、府県から市町村への“分権”が必要です。また、グローバル競争を勝ち抜く活力を生み出すためには、大阪・関西が、司令塔機能を有するまとまりのある圏域として、経済や都市魅力の向上、都市インフラ整備などに取り組む。そのためには、府県や国レベルの機能の“集権”が必要です。
各々の地域や都市が輝きながら、大阪・関西が全体として自律的な発展を遂げていく。「大阪維新」プログラムは、大阪・関西の将来像として、こうした“分権と集権”による新たなシステムをもたらすことをめざします。
次の一手を
今後、大阪府は、「大阪維新」プログラムをすすめながら、府民の安全・安心を確保し、大阪の活力を支えるため、府政の各分野において、府県として必要な役割を果たします。
当面は財政再建を最優先課題として取り組みますが、その中でも、未来への投資のため、子育てや教育には重点投資します。そして、財政再建に一定の道筋がついた段階で、大阪を笑顔にするため、大阪を再び輝かせるためのグランドデザインを描き、次の一手を打つこととします。