第8回みどりのまちづくり賞(愛称:大阪ランドスケープ賞)の受賞作品について

更新日:2018年11月9日

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 1.ランドスケープデザイン部門 (まちが美しくなるみどりづくり)

  【大阪府知事賞】 公益財団法人 日本生命済生会 日本生命病院 (大阪市西区) 

    [事業主] 日本生命保険相互会社 公益財団法人日本生命済生会
    [設計者] 株式会社大林組大阪本店一級建築士事務所

           株式会社E-DESIGN
    [施工者] 大林組・大成建設建設共同企業体  
  

        日本生命病院の写真その1   日本生命病院の写真その2 

●講評

 明治時代には大阪府庁舎が建ち、近代化のフロンティアでもあった木津川河口部の江之子島。府庁ゆかりの旧大阪府立産業技術総合研究所の跡地再開発によって、「大阪府立江之子島文化芸術センター(enoco)」と民間集合住宅2棟、そして今回受賞対象となった「日本生命病院」が連携した、アート&ライフスタイルをコンセプトとする街区として再生した。「日本生命病院」では、病院の西側1600平方メートルに及ぶ公開空地を活用した表情豊かな庭が、病院1階のコリドーやカフェ、ホール等と周囲のまちをつなぎ、包摂性に富んだパブリック空間の再生を実現。同街区のコンセプトを体現するうえで、ランドスケープデザインがなくてはならない重要な役割を果たしている。
 隔てなくまちにつながる庭を、市民とともにある日常のリハビリ空間とし、四季折々の草木の変化に触れながら、自然にトレーニングやおしゃべりや休憩など、生活行動を促す仕掛けが埋め込まれている点は高く評価できる。また、学生や市民とともに、樹木銘板をつくり愛着を育む取り組みや、enocoや集合住宅と連携したイベントの開催、ボランティアの参加、かつての府庁舎に由来する大ケヤキを残し歴史を息づかせる配慮など、庭を介した人々の交流を育む実践の数々にも、持続的にまちを育てていく協働の意志が現れている。


 (審査委員 大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所 特任研究員 弘本由香里)

 

  【一般社団法人 ランドスケープコンサルタンツ協会関西支部長賞】 Five Hills 欅 (堺市堺区)

    [事業主] 株式会社ファイブランド
    [設計者] 積水ハウス株式会社大阪南シャーメゾン支店
    [施工者] 積水ハウス株式会社大阪南シャーメゾン支店   

       Five Hills 欅の写真その1   Five Hills 欅の写真その2

●講評

 本作品は堺市の中心、急行停車駅の堺東駅にほど近い戸建て住宅を中心とする市街地の一角に位置しながら、従前の銀行の社宅跡の敷地を活かし、高さを3階に抑えた賃貸の集合住宅である。近隣のケヤキ通りを意識して、瀟洒で高級感と奥行きの感じられるファサードのランドスケープデザインとともに街にポケット的な庭を提要し、街全体のグレードアップに大きく貢献している。奥行きのある敷地を活かしてエントランスから一望できる60mの通り庭的な一本の道を中心に、色彩や大きさが連続的に変化する景石と繊細な株立ちを中心とする庭木によって庭空間がデザインされており、瀟洒で連続性のあるランドスケープが生み出されている。街の庭では近隣の高校生が談話や読書を楽しむ姿がよく見かけられるとともに、奥行き感のある通り庭の眺めは道行く人々が興味を掻き立てられるようでもある。夜の演出も大切にされ、これらの奥行き感と連続性を持った夜景も演出されている。従前の高い塀によって閉ざされていた街路景観を明るく開放的に変化させ、瀟洒で高級感と奥行き感を伴った街路景観が生み出されており、街のウレードアップに大きく貢献していることから、最優秀の一つであるCLA関西支部長賞とした。

 (審査委員長 大阪府立大学研究推進機構特認教授 植物工場研究センター長 増田 昇)

 

  【一般社団法人 ランドスケープコンサルタンツ協会関西支部長賞】 関西電力病院 (大阪市福島区)

    [事業主] 関西電力株式会社
    [設計者] 株式会社日建設計
    [施工者] 株式会社大林組   

         関西電力病院の写真その1  関西電力病院の写真その2

●講評

 大阪市中心部、中之島界隈に潤いと賑わいをもたらしてきた堂島川のほとりに、建物と融合した新たな緑の風景が加わり、従来の水と緑の軸に立体的な広がりをもたらしている。川沿いの緑地とのつながりを意識し、建物の随所に重層的に配された緑は、敷地内外を一体的に捉えるランドスケープのまなざしの産物である。同様のまなざしは、このような全体構造のみならず、敷地内の個々の場所のデザインにも巧みに反映されている。特に3階の屋上庭園は、眼前に圧倒的な存在感と共に広がる堂島川の風景を主役に捉え、潔いまでに無駄を排したデザインで構築されている。庭園の植栽や構造物は、この主景の享受を決して邪魔することなく、人々に光や風や水音を味わいながらゆっくりと逍遥・滞留する行動を促し、むしろこの場所固有の風景体験をより豊かにする相乗効果を生んでいる。さらに特筆すべきは、広がりのある視座と細部へのこだわりが同居している点である。玄関脇やポケットパークのアイストップ等敷地内の要所には、いずれも株立ちの、軽やかで独特の存在感を放つ樹木が選ばれている。花壇も緻密な計算のもと、丁寧な管理と相俟って、非常に美しい姿を呈している。そして、そのいずれもがさりげなく、この場に集う人々を包み込んでいる。土地と自然、そして人に対する静かな優しさに満ちた、優れたランドスケープデザインである。

 (審査委員 奈良県立大学地域創造学部地域創造学科 准教授 井原 縁)

 

  【審査委員長特別賞】 FOREST SATAKEDAI (吹田市)

    [事業主] 梅本憲史
    [設計者] 積水ハウス株式会社大阪北シャーメゾン支店
    [施工者] 積水ハウス株式会社大阪北シャーメゾン支店

         FOREST SATAKEDAIの写真その1  FOREST SATAKEDAIの写真その2

●講評

 本作品は阪急南千里駅にほど近い閑静な戸建て住宅地の一角に位置し、緑豊かな佐竹公園に面している。約1,400平方メートルの屋敷跡に6棟の2階建ての戸建て賃貸住宅が、既存の屋敷林や高低差約2.5mの石積みを継承して、巧みに配されている。エントランスはすべてオープンな造りとなっており、公園の緑を取り込みながら、既存の屋敷林と新規に植栽された樹木が調和され、開放的で一体的な豊かなイな自然美を形成している。千里ニュータウンは建設後50年以上が経過し更新時期を迎えているが、本作品のように形成されてきた貴重な景観資源を継承し、次の時代へと繋げていくことが意図されており、ニュータウン再生の格好の事例として審査委委員長特別賞とした。

 (審査委員長 大阪府立大学研究推進機構特認教授 植物工場研究センター長 増田 昇)

 

  【奨励賞】 プロムナーデ関目 (大阪市城東区)

    [事業主] 独立行政法人都市再生機構
    [設計者] 基本設計:株式会社都市環境ランドスケープ
           実施設計:株式会社現代ランドスケープ
    [施工者] 株式会社タイキ 他

         プロムナーデ関目の写真その1  プロムナーデ関目の写真その2

●講評

 高度成長期に多く建設された集合住宅団地は、計画的に配された住棟と共用空間の緑が豊かな住環境を形成してきました。しかし多様なライフスタイルや高齢化への対応、育児環境の充実等が社会的課題となる中で、団地もそれに応じた空間再編が求められています。
 本事例では、こうした動きの先駆けとして90年代中頃の建替に際し、コミュニティ継承や既存樹木活用等の先進的取り組みが行われました。今回の受賞内容はさらに20年が経過したなかでの屋外環境の再整備であり、稼働率の低下した駐車場の芝生広場への変更などライフスタイルの変化に応じた整備や、既存樹木の保全による緑量の確保、並木の移植など団地の資産を受け継ぐ試みが高く評価できるものです。

 (審査委員 大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻 助教 松本邦彦)

 

  【奨励賞】 山田池公園川原広場 (枚方市)

    [事業主] 大阪府枚方土木事務所(表彰対象外)
    [設計者] 株式会社地球号
    [施工者] 株式会社田中造園 他   

         山田池公園川原広場の写真その1  山田池公園川原広場の写真その2

●講評

 都市圏に暮らす人が必要とする「のんびりとした無駄な時空間」「社会の煩雑さからこころをときほぐす自然に繋がるなにか」を提供する、というコンセプトのもと、インターロッキングやフェンス・園路沿いの排水溝等、街中で使われている素材や工法を極力使わず、石や木など自然素材を多用する努力をされている。広場シェルターの設計もコンセプトに従い吟味されている。公園設計はついつい造りすぎることや既製品に頼ってしまいがちなところがあるが、一貫した計画指針とミニマムなデザインは高く評価できる。 
 台風被害への対処に追われ、芝生等の管理が行き届かない状態であったこと、また桜など多くの樹木が枯れてしまっていたことはとても残念であった。今後の維持管理の充実に期待したい。

 (審査委員 株式会社庭樹園 代表取締役 當内 匡)

 

   

 2.ランドスケープマネジメント部門 (まちが笑顔になるみどりづくり)

 【大阪府知事賞】 アドプト・ロード・万博北 (茨木市、吹田市)

    [活動者] アドプト・ロード・万博北  

     アドプト・ロード・万博北の写真その1   アドプト・ロード・万博北の写真その2

●講評

 私たちが毎日あるく道路。沿道や中央分離帯に美しい緑が生き生きと息づいていると、日々の暮らしも楽しく潤いあるものとなります。一方で、ごみが無造作に投げ捨てられていたり、地面が荒れていると、心も落ち着きません。美しく潤いある道路を住民の手で!という思いから、2005年に4名のメンバーが万博記念公園の外周道路(府道茨木摂津線)の清掃活動をはじめました。やがて仲間も増え、大阪府とアドプトロード協定を結び、現在はほぼ毎日、平均年齢約70歳の老若男女が22名、植樹帯の管理、除草・清掃に汗を流して活動されています。清掃で集めた落ち葉はごみとして捨てるのではなくマルチングや土壌改良材として活用するなど工夫し、宿根草や球根、こぼれ種によって花を咲かせて彩ることによって美しくなった分離帯には、ごみを捨てる人も減ってきました。またマツバギクの再生に成功するなど、種の多様性にも貢献しています。活動の幅は道路植樹帯のほかにも府有地や児童遊園の除草・清掃、花壇づくりにもひろがり、また大阪大学医学部附属病院にもボランティア登録し、ホスピタルガーデンにも多くの種類の花を咲かせています。
 長年にわたる地道で着実な活動は知事賞にふさわしい活動であり、今後も大阪の道路を彩ってくださることでしょう。

 (審査委員 京都造形芸術大学芸術学部歴史遺産学科 教授 仲 隆裕)

 

  【公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞】 北加賀屋みんなのうえん(大阪市住之江区)

    [活動者] NPO法人Co.to.hana

      北加賀屋みんなのうえんの写真その1  北加賀屋みんなのうえんの写真その2  

●講評

 人口減少社会への転換とともに都市が縮退の局面を迎えています。その際、外縁部から徐々に都市域が縮小せず、市街地内部に穴あき状に空き地等が多く発生する「都市のスポンジ化現象」が指摘され、その対応が求められています。しかし開発等による収益が見込めない土地での空き地活用の方法や管理の仕組が確立されておらず、そのスキームの構築は社会的な課題となっています。 
 本事例は、農園運営のためのチームでの役割分担や課題解決に向けた会議の実施など文字通り「みんな」で緑地空間を育てる仕組みを有し、また隣接スペースでの収穫物を活用したイベントの開催など地域に拡がるコミュニティの核ともなっています。こうした空き地活用の新たな形の提示、都市における農を介したコミュニティ創造の場の提供といった点で、本賞の趣旨である「都市における緑と人間との新たな共生の形」を示す高く評価できる事例だと感じました。
 さらに農園では水稲栽培に挑戦する利用者もいるなど各区画に個人の楽しみが感じられ、またデザイン性の高い倉庫や看板なども相まって、多くの人に魅力的に映る、他地域でも真似をしたいと思わせる発信機能の高さも評価できるポイントだと感じました。

 (審査委員 大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻 助教 松本邦彦)

 

 【一般社団法人 ランドスケープコンサルタンツ協会関西支部長賞】 ばら庭園の品質向上と活性化 (堺市西区(浜寺公園内))

    [活動者] 浜寺公園指定管理グループ

     ばら庭園の品質向上と活性化の写真その1   ばら庭園の品質向上と活性化の写真その2        

●講評

 種類が豊富で手入れの行き届いたバラ園として評価が高い「浜寺公園ばら庭園」は、面積約2.7haの敷地に約300種6500本が栽培される府内最大規模のバラ園である。その取り組みはバラを美しく咲かせるだけには止まらない。利用者が安心してバラの花に触れ、香りを楽しめるようにと、物理的、科学的、生物的な様々な手法を用いて、薬剤使用を制限しながら病害虫が防除されている。また絶滅危惧種となっている日本の野生種を管理者の許可を得て採取し、園内で育成栽培して種の保存にも取り組んでいる。「ばら庭園案内倶楽部」というボランティア組織を作り、運営をサポートするボランティアを積極的に養成、バラ文化や育成技術の普及に貢献している。
 指定管理者制度での厳しいコスト管理が要求される中、長年にわたり熱心にたゆまぬ努力を続けるそれらの取り組みは、模範とすべきものであり高く評価できる。台風による大きな被害を受け現地審査時(平成30年9月)は閉園となっていたことが大変残念である。1日も早い復旧を祈念している。 

 (審査委員 株式会社庭樹園 代表取締役 當内 匡)

 

  【審査委員長特別賞】 えびえにし防災広場 (大阪市福島区)

    [活動者] えびえにし防災広場管理運営会

     えびえにし防災広場の写真その1   えびえにし防災広場の写真その2

●講評

 2018年もまた、大型台風が襲来するなど、自然災害が数多く発生いたしました。いざというとき、命を守るには地域住民のネットワークと事前の備えが欠かせません。この広場は密集住宅市街地にあり、津波や火災などの災害を想定し、地域住民が計画段階から深くかかわり、完成後も地域住民が維持管理・運営に努めている防災公園です。地上部がステージとなっている雨水貯水槽、防災トイレ、かまどベンチ、ソ−ラー照明、情報周知設備などどいった防災資機材を備えていますが、この広場のユニークな点は隣接する保育園と一体となって花づくりや野菜の栽培、焼き芋といった緑を楽しむ活動が行われている点です。また、福島区にゆかりのあるノダフジの藤棚は、雨天時のシェードとなるものですが、市内の藤めぐりの名所にもなっており、より広域のネットワークの拠点ともなりつつあります。定期的に行われる防災訓練では手漕ぎポンプを用いるなど、楽しみながら安全安心のコミュニティ活動にとりくんでいることは、今後の他地域における取組の参考となると思われることから、このたび審査委員長特別賞といたします。

 (審査委員 京都造形芸術大学芸術学部歴史遺産学科 教授 仲 隆裕)

 

  【奨励賞】 樹木再生プロジェクト(さいプロ) (岬町(せんなん里海公園内))

    [活動者] せんなん里海公園指定管理者 さとうみプロジェクト

     樹木再生プロジェクトの写真その1   樹木再生プロジェクトの写真その2

●講評

 地味な取り組みである。しかし、この場所の風景の根幹を支える、貴重な取り組みである。海辺に沿って東西に開けた敷地は、南部が樹林地に覆われ、その北側、海との間には開けたスペースが比較的多く、心地よく視線が抜ける風景が随所に広がっている。ゆえに、この風景に一本一本の樹木が与える影響は非常に大きい。その影響を考えつつ、個々の樹木と根気強く対話し、見守り、相応しい姿に蘇らせていくこの取り組みは、まさに風景を、時間をかけて丁寧に紡いでいくランドスケープマネジメントである。惜しむらくは、その地味さに埋没気味なところである。カルテの電子化をはじめとする管理システムの充実や、環境学習としての活用等、より積極的に展開していくことで、本公園に冠された「里海」という、人と自然の共存を示す言葉を体現する、代表駅な事業になっていくことを大いに期待したい。

 (審査委員 奈良県立大学地域創造学部地域創造学科 准教授 井原 縁)

 

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都市整備部 公園課 企画推進グループ

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