第125回 大阪府原子炉問題審議会 議事概要

更新日:2020年11月13日

第125回大阪府原子炉問題審議会の概要について

 

日  時  令和元年8月9日(金曜日)15時12分から16時05分

 

場  所  大阪府庁 本館1階 第3委員会室

 

議  題 

(1)役員の選任について

(2)京都大学複合原子力科学研究所の安全性等について

(3)京都大学複合原子力科学研究所定例報告について

(4)その他

 

出席者  審議会委員28名中21名が出席

(欠席委員:加納康至委員、鶴岡弘美委員、松本一美委員、真利一朗委員、矢野陽子委員、山口信彦委員、渡辺豊子委員)

 

事務局等  大阪府、京都大学複合原子力科学研究所、地元市町

 

 議事に先立ち、審議会事務局担当の佐田大阪府政策企画部戦略事業室参事から、議事進行と本審議会の役割について説明の後、委員の紹介が行われた。

 

議題1.役員の選任について

 

  審議会規則では、副会長2名を委員が選任することとなっているが、現在の副会長は遠藤委員(関西研究用原子炉対策民主団体協議会代表)1名のみのため、もう1名の副会長として紀田委員(大阪府議会議員)が選任された。

 

議題2.京都大学複合原子力科学研究所の安全性等について

 

 議題2に先立ち、川端所長から、挨拶と複合原子力科学研究所陪席者の紹介が行われた。

 堀准教授から「1.原子炉施設の状況等について」の「(1)京都大学研究用原子炉(KUR)について」と「(2)京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)の状況について」に関して、配付資料をもとに次のとおり説明があった。

 次いで、中島副所長から「(3)原子炉施設等の廃止措置実施方針の作成及び公表について」から「(5)個人の信頼性確認制度の導入について」までと、「2.原子炉設置変更承認申請(KURの変更)について」と「3.核セキュリティ・サミットを受けての対応について」に関して、配付資料をもとに次のとおり説明があった。

 

1.原子炉施設の状況等について

(1)京都大学研究用原子炉(KUR)の状況について

 KUR(Kyoto University Research Reactor)は、昨年度の利用運転を平成31年2月14日で終了した後、年1回の施設定期検査を7月17日に終了し、同日付けで施設定期検査の合格証が交付され、7月23日から今年度の利用運転を開始。

 今年度の利用運転では、KUR及びその周辺設備を利用した共同利用研究が来年1月末頃まで行われる予定。また、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)による医療照射については、週1回の実施を予定。なお、昨年度の医療照射の実施件数は30件。

 今後とも施設の維持管理には、ご心配をおかけすることのないよう十分に注意し、運転には慎重を期して参る。

 

(2)京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)の状況について

 KUCA(Kyoto University Critical Assembly)は、昨年度の利用運転が今年の3月9日で終了した後、年1回の施設定期検査を5月21日に終了し、同日付けで施設定期検査の合格証が交付され、5月28日より今年度の利用運転を開始。

 今年度の利用運転では、原子炉の安全性等に関する研究と原子力安全を担う人材育成の教育が来年の3月上旬頃まで行われる予定。

 

 

(3)原子炉施設等の廃止措置実施方針の作成及び公表について

 原子力規制委員会は、原子力施設の稼動停止から廃止へのより円滑な移行を図るため、廃止を実施する前の早い段階から、廃止措置を実施するための方針(以下「廃止措置実施方針」という。)を作成し公表することを、原子力事業者に対して義務付けることを決定。この決定に基づき、当研究所では、2基の原子炉施設(KUR及びKUCA)と核燃料の使用施設について、将来の廃止に向けた「廃止措置実施方針」を作成のうえ、期限内の昨年12月28日付けで当研究所のホームページにて公表。

 なお、当研究所では、これら施設の安全を十分に確保した上で今後も運転・使用を継続し、共同利用研究所として「複合原子力科学」を推進して参る。

 

(4)原子力利用における安全対策強化のための検査制度の見直しについて

 我が国の原子力損害賠償制度は、原子力損害の被害者の保護及び原子力事業者の健全な発達を図ることを目的として、原子力事業者に民間保険契約及び政府補償契約の締結を義務付けている。

 このたび、原子力事故が発生した場合における原子力損害の被害者の保護に万全を期するため、東京電力福島第一原子力発電所の事故における対応のうち、一般的に実施することが妥当なもの等について、所要の措置を講ずるよう、関係法令が改正。その改正事項の一つとして、原子力事故が発生した場合に、損害賠償の迅速かつ適切な実施を図るための備えとして、あらかじめ、原子力事業者に対して、今年度末までに損害賠償の実施のための方針の作成及び公表を義務付けることになった。

 同方針に記載する具体的な内容は、今後、省令で定められることになっているが、作成に際しては、万が一、原子力災害が発生した場合に速やかに損害賠償等の必要な対応がなされるよう、地元自治体(熊取町・泉佐野市・貝塚市)からご意見等を賜りながら、進めていく。

 

(5)個人の信頼性確認制度の導入について

  原子力施設では、国際的な規模のテロリズムが頻発する中、テロ対策が重要課題と位置付けされ、国際原子力機関(IAEA)は、各国に対して原子力発電所や研究炉のテロ対策を強化するよう勧告。

   このたび、本勧告を踏まえた国内の関係法令の改正が行われ、職員等を装ったテロリストによる核燃料物質の盗取や施設の破壊を防ぐため、内部脅威対策の強化を目的とした個人の信頼性確認の実施が求められることになった。本制度では、機微情報を職務上知る必要がある者、核燃料物質に関する重要区域に付き添い無しで立ち入ることができる者について、当該施設を管理する事業者に身元確認を義務付けることになる。

  当研究所では、関係法令等に基づき、今年の12月1日までに核物質防護規定の改正、新たな要領の策定、担当事務局の設置など、当該制度の導入に向けた必要な諸手続きを完了する予定。

 

2.原子炉設置変更承認申請(KURの変更)について

(1)変更理由

 KURは平成22年度に燃料の低濃縮化を達成し、平成29年度からは新規制基準に対応した運転を開始し、その後も運転を継続している。

 一方、KURの今後の運転計画や燃料の消費量を勘案すると新燃料の追加購入の必要性もなく、現状保有する燃料の量から判断して新燃料の貯蔵設備や、使用中の燃料に対する一時貯蔵設備のための現状のスペースが特段必要ではなくなっている。

 以上の現状を考慮した結果、今回、核燃料貯蔵設備の貯蔵能力に係る変更申請を行った。具体的には、申請書に記載されている核燃料貯蔵設備の貯蔵能力を実態に即した数量に制限することにより、管理の効率化と合理化に加え、更なる安全性向上を図る。

 

(2)変更内容

 KURの原子炉設置変更承認申請書には、本文中に「核燃料物質貯蔵施設の構造及び貯蔵能力」、添付書類8に「核燃料物質貯蔵設備の構造及び貯蔵能力」がそれぞれ記載。今回の変更申請では変更比較表のとおり、燃料要素のウラン-235  含有量の総量に対する制限値を追記するなどの変更を行う。

 なお、上述のとおり、今回の変更申請は貯蔵可能な核燃料物質の総量に係る記載の追加のみであり、当該変更に伴う工事は行わない予定。

 

(3)「原子炉施設及びその周辺住民の安全確保に関する協定書(安全協定書)」に基づく事前協議の要否等

 本変更申請については、「(2)変更内容」に記載のとおり、施設・設備の増強等の工事は行わない予定で、核燃料物質の総量に係る記載の追加のみであることから、安全協定書第5条のただし書きに該当する軽微な変更と考え、今年の3月にその旨地元自治体(熊取町・泉佐野市・貝塚市)の確認が得られたため、事前協議は不要とさせて頂き、4月25日に原子力規制委員会へ申請。

 

(4)原子力規制委員会による審査の状況

  5月22日の第276回核燃料施設等の新規制基準適合性に係る審査会合において、変更の内容説明、質疑応答が行われ、特に問題なく審査は終了。その後、7月2日に開催された第15回原子力規制委員会(臨時会議)において、審査書案が決定。

 

3.核セキュリティ・サミットを受けての対応について

(1)これまでの経緯

 京都大学複合原子力科学研究所の高濃縮ウラン燃料の内、京都大学研究用原子炉(KUR)の高濃縮ウラン燃料については、平成19年までに全ての使用済燃料を米国に撤去し、平成22年5月からKURでは低濃縮ウラン燃料による運転を行っている。

 京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)では、平成28年の第4回核セキュリティ・サミットにおいて、高濃縮ウラン燃料の米国への撤去と低濃縮化に関する日米合意が行われた。

 日米合意を受け当研究所では、高濃縮ウラン燃料の米国への撤去等に向け、実施スケジュールを策定のうえ、米国並びに国内の関係省庁等との調整を進めている。

 

(2)現状

 1.高濃縮ウラン燃料の撤去について

   昨年の本審議会以降、関係各所との調整、輸送時の警備体制に係る関係機関との連携、その他輸送に伴う諸手続きを進めている。

   また、実際の輸送における安全対策としては、国際基準を満たしたキャスクと呼ばれる専用の輸送容器を使用すること、キャスクへの燃料収納、コンテナへの積み付け、積載車へのコンテナの積み付けのそれぞれの段階において、安全性の確認を行い、国による検査・確認を受けることになる。併せて、輸送中は輸送事業者、規制当局、治安当局等との間で綿密な連絡体制を取って、安全性の確認を行う。

 2.KUCA燃料の低濃縮化について

   一昨年の本審議会でご承認頂きましたKUCAの高濃縮ウラン燃料から低濃縮ウラン燃料への変更に伴う原子炉設置変更承認申請については、今年の5月31日に原子力規制委員会へ申請。 その後、6月17日の審査会合において、審査が始まっている。

  今後、同委員会による設工認審査などを経て、燃料の製造を開始し、年度予算計画に沿って、複数回に分けて新たに低濃縮ウラン燃料を搬入することになる。

 

【配付資料】

    ・資料1 京都大学複合原子力科学研究所の安全性等について

 

 

【発言(辻会長)】

 原子炉施設等の廃止措置実施方針の作成及び公表については、3ヶ月以内(期限内)に公表したので、問題ないということだが、こういったことは早々に行った方がいいと思うが、何か事情があったのか。

 

【説明(中島副所長)】

 他の事業所との横並びとかもあり、廃止措置の内容を決めるのに手間取ったこと、近畿大学さんとも情報交換しながら、足並みを揃えるなどしていたことから、時間を要することになった。最終的には当研究所の内部で決定し、責任を持っての公表しようということで、結果的にぎりぎりになってしまった。

 

【発言(紀田副会長)】

 資料1の6ページの参考で、「高濃縮ウラン燃料等の安全性について」で、「手で持っても大丈夫」という記載があるが、今度転換する低濃縮ウラン燃料になると更に安全になるという理解でよいか。

 

【説明(中島副所長)】

 放射能レベルが低いという意味では高濃縮も低濃縮も同じで、なぜかというとKUCAという小さい方の原子炉は通常出力が1ワットかそれ以下で運転しているので、いつまでも新燃料相当ということで、放射能レベルが低く、安全であることになる。あとはテロに対して高濃縮ウランであれば、核爆弾に転用し易いが、低濃縮ウランになれば転用し難くなるというセキュリティ上の安全性が高まるということである。

 

【発言(松浪委員)】

 KURの運転でBNCTの医療照射が今後週一回の実施予定ということであるが、その回数はどのようにして決めているのか。

 

【説明(川端所長)】

 当研究所は、共同利用研究所としてそのような治療研究を行いたいと希望する先生が現れたら、申し込んで頂いてそれに応じて運転をすることになる。その件数により、医療照射の実施頻度が決まってくることになり、それが概ね週一回ということになっている。

 

 

議題3.京都大学複合原子力科学研究所定例報告について

 

 配付資料に基づき、原子炉の運転状況、令和元年度の共同利用研究等の採択状況、環境放射能の測定結果等について、事項ごとに次のとおり説明があった。

(報告内容)

(イ)堀研究炉部長から、配付資料のとおり「京都大学複合原子力科学研究所の現状報告書(定例報告)」をもとに、次の説明が行われた。

      (1)報告対象期間(平成30年6月から令和元年5月)におけるKUR・KUCAの運転状況、役割等。

    (2)施設定期検査については、KURは令和元年7月17日付け、KUCAは令和元年5月21日付けで原子力規制委員会から合格証が交付。

    (3)令和元年度の共同利用研究及び研究会の採択状況。

(ロ)五十嵐放射線管理部長から、配付資料の「京都大学複合原子力科学研究所の現状報告書(定例報告)」をもとに、京都大学複合原子力科学研究所における環境放射能測定報告(平成30年4月から平成31年3月)に関し、次のとおり説明が行われた。

      (1)研究所では、原子炉施設の排水口及び排気口から放出される放射能の量や濃度及び敷地境界での線量評価の結果について、6ヶ月に1回、監督官庁である原子力規制委員会へ報告。

    (2)これらに加えて、研究所と熊取町、泉佐野市及び貝塚市との間で締結している安全協定に基づき、実験所の周辺地域での放射線の積算線量を測定していること及び研究所周辺の環境試料に含まれる放射能の濃度を年2回測定。

    (3)研究所では、自然に存在する放射性物質だけでなく、それよりもはるかに低い濃度の人工の放射性物質もその核種毎に分けて測定していること。このような核種別測定の結果を一覧表にしており、原子炉施設からの新たな放出と思われる核種が検出されたり、放射能の量や濃度が増加しているようなことはないこと。また、実験所外の周辺9カ所における放射線の積算線量についても、自然放射線によるバックグラウンドレベルを示している。

      (4)環境試料中のうち、土壌や底質については、全国的にも検出されている核実験による放射性物質以外に原子炉の運転に由来すると思われる人工の放射性物質は検出されていないこと。また、野菜等の植物については、自然に存在する放射性物質しか検出されておらず、その濃度の変動も全国的な調査で明らかになっている変動の範囲内。

    (5)研究所周辺の環境中における放射能及び放射線は、自然放射能及び自然放射線のレベルであり、一般住民の方々にご心配をおかけするようなレベルではない。

 

【配付資料】

    ・資料2 京都大学複合原子力科学研究所の現状報告書(定例報告)

 

 

議題4.その他について

 

   特に発言はなかった。

 

 

 

以上

 

 

このページの作成所属
政策企画部 企画室連携課 連携グループ

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