第117回大阪府原子炉問題審議会会議録

更新日:2020年11月13日

 第117回大阪府原子炉問題審議会の概要について

 

日  時  平成23年8月10日(水)午後2時〜3時55分

 

場  所  大阪府庁新別館南館8階大研修室

 

議  題 

(1)役員の選任について

(2)京都大学原子炉実験所定例報告について

(3)京都大学原子炉実験所の安全性等について

(4)その他

 

出席者  審議会委員27名中24名が出席

(欠席:神藤委員、伯井委員、松浪委員)

 

事務局等  大阪府、京都大学原子炉実験所、地元市町

 

 議事に先立ち、審議会事務局(大阪府政策企画部企画室)から、議事進行の説明と委員の紹介が行われた。

 また、南会長から、本審議会委員の大阪府漁業協同組合連合会会長 白井孝尚氏が7月31日にご逝去されたことの報告があった。

 

議題1.役員の選任について

  審議会規則第5条第2項の規定に基づき委員の互選による副会長が2名のところ、現在は1名であるため、もう一名の選任が行われ、今井豊委員(大阪府議会議員)が選任され、今井副会長からの挨拶が行われた。

 

議題2.京都大学原子炉実験所定例報告について

    定例報告に先立ち、森山所長から、挨拶と実験所陪席者の紹介が行われた。

  この後、配布資料をもとに、森山所長から最近の研究状況、中島研究炉部長・臨界装置部長から原子炉の運転状況と平成23年度の共同利用研究等の採択状況について、高橋放射線管理部長から環境放射能の測定結果について、それぞれ次のとおり報告が行われた。

 

 (報告内容)

(イ)森山所長から、配布のパンフレットをもとに、最近の研究状況について次のとおり説明が行われた。

(1)アトムサイエンスくまとりの中から、KURの低濃縮ウラン燃料による運転再開までの道のりのこと、KUCAの大学院学生実験のこと及び複合原子力科学研究のこと。

(2)基礎研究が拓く新たな産業の芽の中から、微量元素の放射化分析のこと、中性子回折・散乱のこと、中性子ラジオグラフィのこと、ホウ素中性子捕捉療法のこと及びFFAG加速器の開発のこと。

 

(ロ)中島研究炉部長・臨界装置部長から、配布資料の「大阪府原子炉問題審議会への報告書(その1)」をもとに、次のことについて説明が行われた。

(1)KURの低濃縮ウラン燃料による運転再開のこと。

(2)報告対象期間(平成22年6月〜平成23年5月)におけるKUR・KUCAの運転状況、役割等のこと。

(3)平成23年の法律に基づく施設定期検査に合格し、KURは平成23年6月3日付け、KUCAは平成23年6月1日付けで合格証が文部科学大臣から発給されたこと。

(4)平成23年度の共同利用研究及び研究会の採択状況のこと。      

【配付資料】

  ・大阪府原子炉問題審議会への報告書(その1)

  原子炉の運転状況(平成22年6月〜平成23年5月)

  平成23年原子炉の施設定期検査の状況

  平成23年度共同利用研究及び研究会の採択状況

 (ハ)高橋放射線管理部長から、配布資料の「大阪府原子炉問題審議会への報告書(その2)・(その3)」をもとに、京都大学原子炉実験所における環境放射能測定報告(平成22年4月〜平成23年3月)に関し、次のとおり説明が行われた。

(1)実験所では、原子炉施設の排水口及び排気口から放出される放射能の量や濃度及び敷地境界での線量評価の結果について、6ヶ月に1回、監督官庁である文部科学省へ報告していること。

(2)これらに加えて、実験所と熊取町、泉佐野市及び貝塚市との間で締結している安全協定に基づき、実験所の周辺地域での放射線の積算線量を測定していること及び実験所周辺の環境試料に含まれる放射能の濃度を年2回測定していること。

(3)実験所では、自然に存在する放射性物質だけでなく、それよりもはるかに低い濃度の人工の放射性物質もその核種毎に分けて測定していること。このような核種別測定の結果を一覧表にしており、原子炉施設からの新たな放出と思われる核種が検出されたり、放射能の量や濃度が増加しているようなことはないこと。また、実験所外の周辺9カ所における放射線の積算線量についても、自然放射線によるバックグラウンドレベルを示していること。

(4)環境試料中のうち、土壌や底質については、全国的にも検出されている核実験による放射性物質以外に原子炉の運転に由来すると思われる人工の放射性物質は検出されていないこと。また、野菜等の植物については、自然に存在する放射性物質しか検出されておらず、その濃度の変動も全国的な調査で明らかになっている変動の範囲内であること。

(5)実験所周辺の環境中における放射能及び放射線は、自然放射能及び自然放射線のレベルであり、一般住民の方々にご心配をおかけするようなレベルではないこと。

【配布資料】

  ・大阪府原子炉問題審議会への報告書(その2)

    京都大学原子炉実験所における環境放射能測定報告

   (平成22年4月〜平成22年9月)

  ・大阪府原子炉問題審議会への報告書(その3)

  京都大学原子炉実験所における環境放射能測定報告

   (平成22年10月〜平成23年3月)

 

議題3.京都大学原子炉実験所の安全性等について

 中島研究炉部長・臨界装置部長から、このたびの福島第一原子力発電所で発生した原子力災害を踏まえ、原子力発電所との比較、研究用原子炉(KUR)の安全性への対応状況等について、配付資料・参考資料をもとに、次のとおり説明、その後、吉村大阪府危機管理室長より追加説明が行われた後、意見交換が行われた。

 

 (原子力発電所との比較等の報告内容)

1.研究用原子炉(KUR)と発電炉の違いについて

 利用目的が異なること、また、運転状態としても、熱出力がKURは最大で5000KW、福島第一原発は最大で329万KWであり、KURは発電炉の約600分の1での規模であること。さらに、運転中の温度、圧力、燃料の量、燃料に対する炉心タンク内の水量比率についても大きく異なること。これらの違いや運転時間の差が、停止した後の冷却時間の差につながること。

 発電炉は崩壊熱がたまっているため冷却に時間がかかってしまい停止することが難しいが、KURは短時間で冷却状態にできるため、安全であること。

2.KURの燃料と構造について

 KURに利用する燃料棒、制御棒の構造、仕組みについて。

3.原子炉安全確保の3原則について(停止・冷却・閉じ込め)

 停止:核分裂の連鎖反応を止めること。制御棒の中に含まれるホウ素が中性子を吸収し、核分裂を止める。KURの制御棒は電磁石で吊り下げらており、停電すると電磁石が切れて制御棒が入る。また停電にならずとも、制御棒を入れることもできる。出力に対し十分な制御棒があるので、すぐに止めることができる。

 冷却:通常は冷却のために水を循環させているが、炉心タンクの中に水が入った状態であれば冷却できること。水が炉心タンクから抜けないように備えを行っており、万が一、水が漏れてしまった場合にもあらゆる手段で注水し、燃料が露出することがないようにしていること。さらに、一番厳しい運転状態であったとしても、3日間冠水していれば問題ないことを検証している。

 閉じ込め:これまで説明した停止、冷却ができれば放射性物質が出ることはないが、万が一放射性物質が出た場合には、炉室全体の換気を止めて閉じ込めることができる。換気が必要になった場合にも、ヨウ素を吸着できる特殊なフィルターを通して換気を行う。

4.東電福島第一原発事故を受けての対応について

 福島原発事故では、津波により非常用ディーゼルや配電盤等の電気系統が動かなくなったため、冷却できなくなった。

 福島原発事故を受け、電源がない場合でも原子炉の安全を確保するように要請されているが、KURでは、停止、冷却(冠水)のための電源は不要であり、電源がなくとも安全に止めることができる。なお、KURは、標高60メートルにあるので、津波の被害にあうことはない。

 また、電源がなくなった場合でも自主的に電気を供給できるよう、非常用ディーゼル発電機やバッテリー式の無停電電源を準備しており、もうひとつの小さな原子炉であるKUCAとも、相互に給電・受電ができるようなシステムをバックアップとして用意している。

 さらに、今回の事故を受け、耐震性を持った防火水槽や可搬式の消防ポンプ、可搬式の電源についても準備中である。

 これらの機器の整備状況については国の検査及び自主点検も実施しており、特に重要な機械については、毎月点検を実施している。

 

 (対応状況の報告内容)

1.電源機能等喪失時における炉心等の健全性について

 文部科学省から「平成23年福島第一・第二原子力発電所事故を踏まえた電源機能等喪失時における炉心等の健全性評価」について実施の指示があり、非常電源を含む全電源機能が喪失した場合のKUR炉心における燃料の健全性等を評価した結果、健全性は維持されることを確認しました。

2.機器及び設備の点検並びに今後の安全強化について

 大阪府知事及び熊取町長、泉佐野市長、貝塚市長からの「原子力事業所に対する申し入れ」を受け、次のとおり対応しました。

(1)地震等による緊急時対応のための機器及び設備、緊急時の電源確保、情報伝達体制、緊急事態応急対策等について点検を行った結果、特に問題がないことを確認しました。

(2)今後の安全強化の対応として、安全性及び信頼性の維持・向上に努めるとともに、新たな安全対策の必要性が判明した場合は速やかに対策を講じます。また、今回の原子力災害を踏まえては、全電源喪失時の対策を強化するため、炉心タンクからの漏水に備えて耐震防火水槽及び可搬式の消防ポンプを設置するとともに、炉心の状況を把握するための計装設備用の電源として可搬式発電機を整備することとしています。

 

【配付資料】

 ・京都大学原子炉実験所の安全性等について

  ・京都大学研究用原子炉(KUR)の安全性について(参考資料)

 

  (関西広域連合からの申し入れについて)

 吉村大阪府危機管理室長より、大阪府が参画している関西広域連合では関西の安全確保に向け、情報提供の徹底などを目的とする原子力に関する協定を締結するよう関西電力、四国電力、中国電力株式会社に申し入れを行っており、その一環として、さらに地域の安全性の確保を図るために近日中に京都大学に対して申入れを行う予定であることを説明。

 

 

[発言(幸田委員)]

 本審議会は、京都大学原子炉実験所における原子炉の安全性や、防災対策の適否を直接審議するという場ではありませんが、折角の機会でもあり、府民の監視機関でもあると思いますので、原子炉の安全性について数点お伺いしたいと思います。

 まず一点目は安全性の問題です。今ご説明頂きましたが、京大の原子炉は、低出力、常温低圧で発電用の原子炉とは全く異質であるとお聞きしました。また、文部科学省における研究炉等安全規制検討会試験研究用原子炉施設耐震安全性評価妥当性確認ワーキンググループ等のご発言も承知しているところです。さらに本審議会でも、安全対策については、二重三重の備えを行っていると伺っております。

 ただ、もう一度確認させていただきたいが、原子炉というのは、本当に安全に緊急停止できるのか、また、緊急停止したら本当に安全と言えるのか。原子炉だけでなく、色々な機械もあるので、複雑な機械の耐震性はどうなのか、このようなことが問題になるのではないかと思います。福島で事故が起こったときに、原子炉の緊急停止に成功したということだったが、緊急停止は本当に成功したと言えるほどに安全にかつ確実に行えるのかどうか、いわゆる制御棒が作動せずに原子炉が停止しないという事態は発生しないのか。

 それから福島でも緊急停止は成功したが、その後、深刻な事態がどんどん起こりました。そのような場合、KURではどういったことをされるのか、その中で特に冷却における冠水の機能が本当にどんな場合でも維持できるのか。例えば新潟県の中越沖地震で柏崎原発では火災が起こったが、そのようなことが起こらないのかについてもご説明を頂ければ有り難い。

 二点目は、想定外という言葉がよく言われるが、今頂いたご説明の前提が崩壊するような想定外の想定の事態が起きればどうなるのか、またそれに対する対策はあるのか確認しておきたい。

 三点目は、様々な安全対策を実施されているというふうにお聞きしているが、その安全性は誰が担保するのかということ。

 例えば原子力発電所はストレステストを行うと言っているが、研究用原子炉についても安全性を検証するということが必要と思うが、それをどういうふうにして担保していくのか。

 安全性、想定外、安全性の担保の三つについてご説明を頂きたい。

 

[発言(南会長)]

 緊急停止というものは、それが安全性を保証するものなのか、想定外の事態、それに対する対応・プロセス、さらには安全対策というものを誰が担保するのか、どう検証するのか、といったことだったと思いますので京都大学から説明お願いします。

 

[説明(中島研究炉部長・臨界装置部長)]

 まず、ちゃんと止められますか、制御棒が入りますかということだと思いますが、KURは単純な構造で制御棒が上から垂れ下がっているだけなので、例えば地震の場合には震度3位で勝手に落ちてしまいます。制御棒は、常に燃料の間に一部分入った状態で運転をしていて、完全に燃料から引き抜けることはなく、大体真ん中位までは入っているか、それより少し上に出る位の状態なので、入ることに失敗することもありません。制御棒は4本用意しており、安全評価上は最大1本入らなくても問題ないように定められているが、実質的な運転からすると、1本でも入ってくれればちゃんと止まる。そういうことからすると制御棒がうまく入らないということはあまり考えなくてもよいと思っている。

 想定外というのは二番目のことで回答したい。冷却については、かなり多重性を設けた冷却システムを持っていて、基本的にはタンクから水を漏らさないことが一番で、そのためにも、耐震バックチェックでも、最新の知見を入れた一番厳しい地震条件でも炉心タンクとその下にある直下の弁は壊れないということは確認している。万が一それが壊れた場合でも何らかの複数の手段で炉心に水を入れられる手立てを持っている。ここでは冠水維持と言っているが、内部的な評価では、とにかく何らかの方法で燃料に水をかけ続けていれば結構であり、海外での実験事例もある。そういう意味では十分に冠水維持、冷却機能は維持できるのではないかと考えている。

 ただ想定外、想定を超えた場合はどうなるのかとの厳しいご質問ですが、例えば制御棒が入れられないことがもし起きるのかと。我々は起きないと言い切りたいと言うか、言っても過言ではない位には自信を持っているが、バックアップ的なものとしては、ホウ酸の粉を常に炉心の上に置いており、いざというときには人手で水の中に入れることも考えており、安全評価の中でも対応として記載している。そういう意味では制御棒が入らない場合の対応ということでも、想定外だから、ということはないと思っている。冷却のところでも配管等が全部壊れた場合でも、炉心までは何らかの形で、ホースなりでも水を引っ張っていける対応も現在準備しているところ。今、安全評価でお墨付きを貰っているような機器がもし全て駄目になったとしても何らかの手段で停止あるいは冷却は可能になると考えている。

 最後の安全担保ですが、基本的には法律上、研究用原子炉は文部科学省の規制のもとでやっており、今回の運転についても文部科学大臣の合格を頂いて運転しており、文部科学省のお墨付きを頂いていることになる。

 配付資料の文部科学省からの指示についても、文部科学省のアドバイザー会合という専門家を集めた会議の第1回目で我々の考え方を説明し、大丈夫だろうとのお墨付きは頂いている。今報告書を作っているところでWEB等での公開はされていませんが、そういった手続きを取っているところです。

 

[発言(南会長)]

 時期が時期ですので、危惧されている状況に基づいた三点の厳しい質問がありました。京都大学の答えが十分かどうか、即座に認識し難いところがありますが、想定外というときに、どこまで想定できているのか、いないのか、十分な対応をしているとの答えになっていなかったような気がします。想定外に対する安全性を求めるということは非常に難しいことだと思いますが、これまでの経験に基づいて物事を処理するだけではなく、日本国内でそこまで考えることはないかもしれないが、例えばテロが起こったときに対しても、どう安全が確保できるかなどの検討も必要かとも思います。ただ今の説明は、考えられることは考えたということから一歩も出ていないと思います。想定外への対応については原子炉実験所の中でさらに議論を進めて頂きたい。

 質問は、一つ目は水から燃料棒は出る状況は起こらないということで、福島原発とは根本的に違うと、燃料、質量、重量も規模の程度から違うので、福島原発で起こっているようなことは起こらないということは、ある程度の専門性に基づく説得力のある説明だったかと思います。

 三番目の安全担保の話に対しては、今は、文部科学省からのお墨付きを貰っているという答えしか無いかもしれないが、正直なところ世間は認めない。報道にもあるように、既設の組織からのお墨付で今までは十分であったとしても、今回のことが起こった段階では機能していないということがはっきりしている。その点でKURとしては文部科学省からお墨付きを貰ったから担保できているということは十分な答えになっていないだろうと思う。そういう想定も是非ともして頂いて、現状、それ以上のことを答えて下さいとは申しませんが、今後の対応としては、幸田委員からのご指摘・質問に対しては先程の答えはある程度の論理性はあるが、このやり取りではい分かりましたということにはならないということを踏まえていただきたいと思います。

 幸田委員からの質問に対する答えとしては、京都大学としてはよく考えていただきたいと思います。

 

[発言(重光委員)]

 幸田委員の方から原子炉実験所に対して質問があり、それなりの回答があったが、その内容は、非常に膨大な、安全性について、どの程度正当なものなのかどうかということを審議することはこの時間でできるような内容ではないことは皆さんご存じのことと思います。

 この幸田委員の質問がどのような経緯で出ているかは分かりませんが、原子力発電所の事故が起こってから数ヶ月経っている。大阪府が災害防止の最高責任者であるとするならば、原子炉実験所がどういう安全性を満たし、どういう見直しをしたということの詳細を数十時間あるいは数日かけて詳細な説明を受けないと理解できない。それをこの場でその概要を分かるように説明して下さいとは非常に無理な話であって、会長がおっしゃったが、想定外をどの程度考えて、どう見直しするかはそれぞれ検討されているでしょうが、それをこの場で全ての委員が理解できるようにと言われても数時間の間でできるものではない。

 それは改めて大阪府は独自にその内容を審査して、安全審査のやり直しなのか、大阪府の方で京大の審査が正しいのか正しくないのか判断するような突っ込んだ調査と対応をされて、どこが問題なのか明確にしてこの審議会に報告するのが筋ではないかということが一つ。

 もう一つは、関西広域連合から京都大学と安全協定を締結すると言われたが、京都大学は熊取町とは既に協定を結んでいる。今まで大阪府は京都大学とそういう原子力安全協定を締結していなかったところ、関西広域連合は新たに安全協定を締結すると言ったが、それはこれまでとどう違うのか、大阪府の立場はどう違うのか、この二点を説明して頂きたい。

 

[発言(南会長)]

 重光委員からのご指摘は、この場だけで納得できる説明は、短時間では無理なので十分な対応を取った上でここに報告すべきということが一点目、二点目は危機管理室から説明頂いた件に関して、関西広域連合が京都大学と新たな協定を結ぶのは、今までの大阪府の対応と何が違うのかを教えて頂きたいということですね。

 

[説明(春名企画室課長)]

 事務局の企画室を担当しています春名でございます。

 もちろん短時間ですので、きちっと細部にわたった回答は難しいと思います。ただ、今日、このような形で質問のやり取りを行って頂くことは非常に意義があるものだと感じております。ただ重光委員がおっしゃったように、きっちりとした回答や考え方を整理するには時間が必要ですので、改めてご報告させて頂きたいと思っています。

 

[説明(吉村危機管理室長)]

 二点目に関してご説明申し上げます。大阪府としての協定書としては、京都大学のほかにも事業所があるので、そこを含めて問題が発生した場合において相互応援する形での協定書は締結しております。

 今回、関西広域連合として協定の締結を申し入れるということで、先程京都大学からご説明いただいたように京都大学の実験用の原子炉の場合は、従来の考え方にありますように、府県を超えて広範囲に大きな影響を与えることは今までは考えにくいということでしたが、先程もありましたように何が起こるか分からないということで、広範囲への影響というようなことも十分考えて対応する必要があるとして、大阪府よりも広域な組織として、そういう観点から情報提供を中心に京都大学と協定を結びたいと考えておりまして、内容については今後京都大学と協議をして参りたいと思っています。

 

[発言(今井副会長)]

 今日の午前中、泉州方面和歌山北部で震度4の地震があり、貝塚で震度2か3だったが、その後すぐに何人かから熊取の原子炉実験所は大丈夫かという電話があった。先程の説明では震度3位で制御棒が落ちると言ったが、今日はどうだったかわからないが、阪神淡路大震災のとき震度5ないしは5強で建物の一部が損傷したと聞いたが、どれくらいの想定で建屋が設計されているのかを聞きたいのが一点。

 もう一つは、使用済燃料の問題はアメリカの方でと言われたが、アメリカはいつまで引き受けてくれるのかが気になった。日本の使用済燃料は後8年位で満杯状態になると聞いているので、それぞれの原子力発電所で内部処理するらしいが、使用済燃料がアメリカに何時まで引き取ってもらえるのか、その後どうされるのか分からなかったのでもしよければその二点について伺いたい。

 

[説明(釜江中央管理室長)]

 地震のことなので、私の方から説明します。

 今朝の地震は私も感じましたが、原子炉実験所の震度は2だったということで、電話をして全く被害もなく異常はなかったことを確認しました。

 神戸の地震のとき、原子炉実験所の震度観測では熊取町は震度5強でした。少し被害があったと言われましたが、私の認識では原子炉施設に関して地震被害はなく、地下の水のライフライン、地下の埋設配管の枝管などが少し破損したということはあったように記憶しているが、原子炉施設について何らかの損傷があったということは、私自身も現場調査もしましたし、そのようなことはなかったように認識している。

 今回KURの耐震バックチェックとして中央構造線帯断層でM7.8から8位がどこかで起こるという想定のもとに色んな評価をしましたが、評価の結果としては、震度というとシンプルな指標で誤解を招くこともありますが、建物に対しては震度6強、そのレベルでひびが少し入る可能性はゼロではないが、建物は機能が要求され少しひびが入っても中の本体、冷却系配管などが全く健全であれば、今回のような原子炉事故に至らないという評価をしている。特に6強ということでそういう状況になる可能性はあるが、現状の我々の評価では、それによる施設への影響としてはないと確信している。

 

[説明(森山所長)]

 使用済燃料の件、説明させて頂きます。

 昨年度KURが低濃縮ウラン燃料で動き始めて、昨年度の審議会のときに今後の計画については当分の間動かして行きたいと申し上げたが、当分の間とは10年間と説明している。というのは、研究用原子炉は全国の大学の研究者が必要という以上運転をしていきたいと考えており、燃料の問題はこれに対処していかなければいけない。

 おっしゃるとおり、現在はアメリカへの返送というものが運転の条件となっていて、使用済燃料の処理についてはアメリカに返送するという形の許可を得ている。そのアメリカへの返送は、後4年か5年位運転したものについては引き取って貰えることになっている。ただ、アメリカがそれを延長してくれるかどうかについては今後の交渉によるところがあり、その交渉はできるだけ早く始めたいと我々自体は考えている。これは世界の政策による面があり、日本の中では京都大学あるいは国内の研究用原子炉、特に東海村の方にある日本原子力研究開発機構の原子炉も一緒、世界的には他の国も一緒という状況であり、できるだけ国内・国外との連携をとって、アメリカとの交渉を今後働きかけていきたいと考えている。

 先程より色々ご意見を頂きました、安全性や想定外などについては、我々自身も想定外ということはどういうことか、福島原発の事故がある意味では進行中でもあり、今後色々な面で検証、その他行われることによって、どういうことが問題だったか、どういうような対処が必要だったか、更に色々な側面から検証されるものと思っている。

 我々自身も研究者の集団なので、我々自身の中でもしっかり情報を集めて分析し、海外の動向も見据えて、想定外の考え方、あるいはどういう担保の仕方があるかということも含め、自分達でやって行きたいと考えております。もちろん、公的には文部科学省のもと今後どのような指示があるか分かりませんが、指示が有れば速やかに対応して行きたいと考えております。姿勢だけでも示しておきます。

 

[発言(西野委員)]

 一点だけ確認しておきたいが、先程広域連合と協定を結ぶという話がありましたが、まず有事の際の責任の所在は何処にあるのか。その後の対策は誰が陣頭指揮を執るのかよく分からないのでその点はいかがでしょうか。

 

[発言(南会長)]

 責任の所在は何処にあるのかということですね。

 

[説明(森山所長)]

 事象ということでは今回のことがある意味では参考になるかと思います。外部への影響があると判断されるかどうか、その量がどれくらいかどうかによって、速やかに報告することになっております。それ以前にも現在のところは原子力協定によって、大阪府を含めた関係自治体へ速やかにFAXを流すようにしている。先程申し上げたいわゆる10条事象とか、15条事象ということになれば、オフサイトセンターという所で対策本部ができて関係者が集まり指揮を執っていくことになると思います。後は大阪府の方から補足説明がございましたらお願いします。

 

[説明(吉村危機管理室長)]

 事故の責任ということになれば原子力事業者さんの方に責任があると思います。

 ただ、事故が起こった場合の対応について、先程森山所長から少し説明がありましたが、万一事業所で事象が発生した場合は事業者の方から直ぐに国や関係市町村に対して通報することが義務付けられており、その通報があった場合には、事故の度合いによって対応が違いますが、事業所で事象が発生した場合は事業所の直近にあるオフサイトセンターに国の原子力災害の現地対策本部を立ち上げます。また大阪府や関係の市町村も同様に現地対策本部を立ち上げ、そのメンバーが協力して対策を行う協議会を設置して対策を講じます。具体的に申しますと、付近の住民の皆さんの救援であるとか避難であるとか、あるいは警察の協力を得て交通規制をするとか、住民の皆さんが避難される際に消防等に協力いただくとか、場合によっては医療対策も必要になりますので、オフサイトセンター内で関係機関が調整した上で実施することになる。ただ、責任ということになれば、基本的には事業所にあると考えている。

 

[発言(重光委員)]

 責任のことを言われるが、東京電力の場合、原子力施設が安全か否かは、事業所が申請して国が審査し、国が安全であると認めた上で運転をしている。国の安全審査に問題があれば国の責任、電力会社に瑕疵があれば電力会社の責任であると明確であります。ただし、最終的には国が安全であるということを認めた上で原子力発電所は運転している訳ですから、京都大学原子炉実験所が安全であるということを申請して国が認めたということであれば、国の審査が間違っていれば国の責任、京都大学に問題があれば京都大学の責任であり、事業者の責任であるというのは間違っていると思う。

 もう一つ、災害発生時にオフサイトセンターが設置されて原子力災害合同対策協議会が開催されるかは国の法律に縛られている。極端な場合に500μSv/h、10時間いれば5mSvの線量。先程事業所からの報告があったが、モニタリングポストが大阪府内に沢山あり、そのモニタリングポストの測定値がその値になった場合に活動が開始されることになる。そういう遅い時期に、今の福島でも数マイクロシーベルトで子供達を退避させようとなっているのに関わらず、国全体がそうだが、大阪府の災害対策本部は5μSv/hで設置しようと、原子力災害現地対策本部が活動するのは500μSv/h。

 このような状況であることを大阪府が責任を持って検討しなければいけない。今は国が決めているから大阪府もそれでという状況。そのような状況では大阪府が広域連合として、大阪府が安全を確保しようとするのであれば、大阪府独自で災害が起こったときにどういう活動をどうするかを明確に示さなければいけない。

 幸い大阪府は5μSv/hになると調査活動を開始することを明記しているので良いですが、原子力災害防災対策本部が活動するような所はちゃんとなっていない。オフサイトセンターに集まってやりますよと言ってもこんな線量の高い所に行って活動を開始したとしても効果はない。これは何処に責任があるか、大阪府ですよ。大阪府で災害が起こったときにどうやって活動するかは大阪府自身です。大阪府原子力防災計画が定められていて、この中味を見直すのは大阪府です。それをやらないといけないのに、この中で審議するのであれば、大阪府は次回までに今の原子力災害防災対策本部はどういうところに問題があって、どう見直そうとしているのかということをこの席で説明する責任があると私は思う。そうしないと熊取町は大阪府がこんなもんやからこれで良いとなる。大阪府で原子力災害が起こったら一番責任があるのは大阪府である。オフサイトセンターは国から原子力災害の専門家が派遣されているが、はっきり言って頼りない専門家が派遣されてきている。そういう人が何か起こったときにちゃんと指揮して対応できるかというとできない。大阪府・熊取町が体制を持ってやらないとできない。大阪府に一番責任がある。それをちゃんとしないといけない。

 この問題で各事業所が安全性について説明し、討議することは大事です。災害が起こったときにどうなるのか、今日は議題に入っていないが、次回できれば早い機会に見直して貰わないと。大阪府として今のままの防災計画で対応していたらもし事故が起こったらとんでもないことになると思っていますで、是非ともテーマとして取り上げて頂きたいと思います。

 

[発言(中西委員)]

 先程広域連合で協定を結ぶという話があったが、そういったことは事前協議が必ず必要だと思います。唐突に勝手に結んでくれるのであれば良いが、直接関与している自治体に何の連絡もなしにいきなり結ぶというのは何事かと思う。やはりもっと真摯に大阪府としては対応すべきだろう。この審議会にも事前報告するのであれば、こういう協定書の内容になるなど事前協議をした上で臨んで頂きたい。広域連合がどうかは知りませんが、そういう問題ではないだろう。基礎自治体をもう少し大切にして貰わないと一番迷惑がかかるのは基礎自治体ですので是非大阪府の態度を再度改めて頂きたい。

 

[発言(南会長)]

 本日の議題の中には含まれていない事柄に議論が進んでおりまして予定の時間もきています、だからといって打ち切るということでもないですが。今熊取町からのご指摘は、自治体と大阪府との間のコミュニケーションが不足していることが露呈したということ。そのあたりに自治体としても大きな不満があったと理解いたします。

 行政としての大阪府の位置付けが基本にあると思うので、この場で始めて聞くという状況はまずいことですので今後そのあたりは修復いただきたい。また、必要があればこういう場しか議論をする場はないと思いますので、次回から、それ以降でも責任の問題も含めたここでの議論が必要かと思います。

 

[説明(吉村危機管理室長)]

 地元の市町村の皆さんとコミュニケーションをしっかり取って対応することはそのとおりでございまして今後も注意して行きたいと思います。関西広域連合で事業所に対して申し入れをするということにつきましては、そのことを決定する前に地元の市町村には我々の方から連絡をしております。今後もコミュニケーションを取ってまいりたいと思います。

 

[発言(田中熊取町住民部環境課長)]

 熊取町環境課の田中です。大阪府から連絡をされたと言われたが、広域連合から協定の申し入れをしますというだけで、昨日5時過ぎに連絡が入った。そんな話はしたことないですが。

 

[発言(南会長)]

 今の問題は、原子炉問題審議会の場に相応しい議題ではなく、おそらく、言われた人それぞれのお立場があって収まりが付かなくなるということを恐れています。

 審議会の議題とは若干ずれたと思いますので、重光委員のご提言に対しては、いずれの時点でどこまでいけるか分かりませんが、それは取り組むべきであるということを皆さんで確認して特に発声がなければ時間ですので終わりたいと思います。

 

[説明(春名企画室課長)]

 最後に一言だけ。審議会の運営を担当しています企画室の春名でございます。

 本審議会は原子炉実験所が建設される際に関係者の総意を踏まえて設置されましたが、例えば紛争等がありましたら審議いただくことを目的としておりまして、直接、原子炉の安全とか、防災対策については、重光委員も仰っておられたように、直接審議して決定するということは相応しくないと思います。

 ただこういった場ですので、実験所の報告に対して様々に意見交換をして頂くことは非常に重要なことと思っておりますので、今日頂いたご意見についてはきっちり整理させて頂いて、また改めてご報告ということにさせて頂きたいと思っています。

 本日は貴重なご意見頂きましてありがとうございました。

 

[発言(中西委員)]

 やはり、京大の原子炉は研究用であって、我々は原発と原子炉の研究とは全く異質なものとの認識がある。異質なものの研究施設としてのご理解がなく、原発でこういう問題が起きたから原子炉の研究所も一緒にまとめようということを、再度どうなのかと認識いただいた上で協議していただいた方がいいと思う。我々は全く違うものと認識しています。

 

[発言(南会長)]

 熊取町長から積極的な発言を頂きました。この場は原子炉実験所の進行状況の報告を受けて意見交換をする場であるという原点に立ち返る整理は大切で、原発の話と一緒に議論することは相応しくないという貴重なご意見をいただきました。

 そういうことを踏まえて、事務局で今日皆様から頂いたご意見を整理した上で次回以降の審議会に臨みたいと思います。よろしくお願いします。特になければ予定の時間を大幅に過ぎてしまいましたのでこれで終了させて頂きます。どうもありがとうございました。

 

議題4.その他

特に質疑はなかった。

                                                           以上

                        

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