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更新日:2014年11月11日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第241号)

森林法関係文書部分公開決定審査請求事案

(答申日 平成26年11月11日)

第一 審査会の結論

諮問実施機関(大阪府知事)の判断は妥当である。

第二 審査請求に至る経過

  1. 平成26年2月13日、請求者は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「諮問実施機関」という。)に対し、「審査請求人に対する林地開発、近郊緑地、砂防指定地内行為許可の是正勧告、及び指導(指示書、是正計画書)、工事中止命令、そして、解除の過去10年分(豊能町の6つの地番を指定)」についての行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同月26日、諮問実施機関から「府農と緑の総合事務所長の職にある職員に権限を委任する規則」第18条の第7号により権限を委任された大阪府北部農と緑の総合事務所長(以下「実施機関」という。)は、本件請求に対応する行政文書に審査請求人に関する情報が記録されていることから、条例第17条第1項の規定に基づき意見書提出の機会を付与するため、審査請求人に対して、意見書提出依頼書を送付した。
  3. 同年3月6日、審査請求人は、(1)の文書について(2)のとおり理由を付して、実施機関に対し公開に反対する旨の意見書を提出した。
    • (1)公開に反対する部分
      平成○年○月○日付け大阪府達み第○号、諮問実施機関による審査請求人に対する、平成○年○月○日付け大阪府達み第○号による中止命令の解除を通知した文書(以下「本件係争文書」という。)
    • (2)公開に反対する理由
      本件係争文書の解除の対象となった豊能郡豊能町a番及びb番に隣接するc番の山林は、Xが所有し、d番の山林は、Yが所有しているところ、c番の土地とd番の土地の境界については、XとYの間で争われ、いまだに境界確定が出来ない状況にある。
      そのために、Yからd番を賃借している審査請求人は、同d番についての崩壊地の復旧工事を行うべく図面を作成して、大阪府に対し、防災措置工事を行うべく申請したが、XはYが主張するd番の山林については、これはc番であり、Xの所有地であると主張し、工事に同意すらしていないために、大阪府はc番とd番の境界が確定されていない段階では復旧工事は認められないとし、a番及びb番についてのみ、崩壊地の復旧工事を認める本件係争文書を出すにとどまり、d番についての崩壊地の復旧工事を認める解除はなされていないために、Y及び審査請求人は、d番の土地の崩壊地の復旧工事を行いたいものの、これが実施できない状況に置かれている。
      ところが、c番の所有者Xは、このようなYの置かれた立場を逆用し、平成○年○月○日付けで、Yに対し、d番の残土の崩落によりc番の土地に大量の土砂が流れ込んでいるので、自らこれを復旧するが、現状に回復するには○円以上もの工事費用がかかるとし、とりあえず○円の支払いを請求する旨の内容証明書簡が送付されるに至っており、将来的には、○円の損害賠償請求訴訟が提起されるおそれがある。
      このような状況下において、本件係争文書が公開されれば、審査請求人は、いまだに、c番はもとより、d番についても大阪府から崩壊地の復旧工事の許可を得ていないことが明らかとされてしまうことになり、Xによる審査請求人に対する○円もの巨額の損害賠償請求訴訟の提起を促すことになってしまい、第三者である審査請求人の利益が不当に侵害され、回復困難な損害を及ぼすおそれがある。
  4. 同月14日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、(1)の行政文書を特定の上、(2)の部分を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、その旨を請求者に通知するとともに、条例第17条第3項の規定により、(3)のとおり公開決定をした理由を付して審査請求人に通知した。
    • (1)行政文書の名称
      • 自然公園法・近緑法・森林法関係指示書
      • 森林法違反行為について(勧告)
      • 森林法に基づく監督処分の手続きについて(通知)
      • 林地開発行為是正計画協議書の提出について
      • 森林法違反行為の是正にかかる中止命令の一部解除について(通知)(本件係争文書)
      • 是正計画書一式
      • 近郊緑地保全区域内行為是正計画書一式
      • 是正計画書について(勧告)
      • 林地開発行為是正計画協議書一式
      • 林地開発行為是正計画協議書について(通知)
    • (2)公開しないことと決定した部分
      法人代表者の印影、法人の取引先の名称、指示書受取人職氏名、個人の氏名、住所及び印影
    • (3)公開決定をした理由
      行政文書公開請求に対する公開・非公開の決定は、条例の規定に則して行われなければならないものであり、本件行政文書(公開部分)に記載されている情報は、公にすることにより当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するとは認められず、条例第8条第1項第1号に該当しないほか、条例第8条第1項各号又は第9条第1号に該当しないため。
  5. 同月28日、審査請求人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第5条の規定により実施機関の上級庁にあたる諮問実施機関に対し審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
    また、同日、審査請求人は、本件係争部分について行政不服審査法第34条第2項に基づき、執行の停止の申立てを行い、同年4月24日、諮問実施機関が執行の停止を決定して、その旨を審査請求人及び請求者に通知した。

第三 審査請求の趣旨

本件係争文書について公開とした決定処分を取り消し、非公開とすることを求める。

第四 審査請求人の主張要旨

審査請求人の主張は概ね次のとおりである。

1 審査請求書における主張

本件係争文書の解除の対象となった豊能郡豊能町a番及びb番に隣接するc番の山林は、Xが所有し、d番の山林は、Yが所有しているところ、c番の土地とd番の土地の境界については、XとYの間で争われ、いまだに境界確定が出来ない状況にある。

そのために、Yからd番を賃借している審査請求人は、同d番、a番、b番、e番についての崩壊地の復旧工事を行うべく図面を作成して、大阪府の是正勧告を受けて、防災措置工事を行うべく砂防指定地内行為是正計画書を大阪府に提出し、崩壊地の復旧工事を行うべく申請したが、XはYのd番の山林との境界を争っているため、大阪府はc番とd番の境界が確定されていない段階では復旧工事は認められないとして、審査請求人の是正計画書の受理も拒んだ。そこで、審査請求人は、再び、d番を除くa番、b番の土地での是正計画書を提出したところ、a番及びb番についてのみ、崩壊地の復旧工事を認める本件係争文書を出すにとどまり、d番についての崩壊地の復旧工事を認める解除はいまだなされていないために、Y及び審査請求人は、d番の土地の崩壊地の復旧工事を行いたいものの、これが実施できない状況に置かれている。

ところが、c番の所有者Xは、このようなYの置かれた立場を逆用し、自ら大阪府に対しては、境界の争いを持ち出して是正措置ができないようにした上で、平成○年○月○日付けで、Yに対し、d番の残土の崩落によりc番の土地に大量の土砂が流れ込んでいるので、自らこれを復旧するが、現状に回復するには○円以上もの工事費用がかかるとし、とりあえず○円の支払いを請求する旨の内容証明書簡が送付されるに至っており、将来的には、○円の損害賠償請求訴訟が提起されるおそれがある。

このような状況下において、本件係争文書が公開されれば、審査請求人は、いまだに、d番についても大阪府から崩壊地の復旧工事の許可を得ていないことのみならず、是正計画書の提出すら行っていないこと(真実は、提出したが受理されなかっただけのことである)が明らかとされてしまうことになり、Xによる審査請求人に対する○円もの巨額の損害賠償請求訴訟の提起を促すことになってしまい、第三者である審査請求人の利益が不当に侵害され、回復困難な損害を受けるおそれがあるとともに、Xという特定の者に不当に利益を与えるなど、事務事業の公正さを著しく損なうことになり、事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあり、条例第8条第1項第4号に該当する。

2 反論書における主張

  • (1)弁明書によれば、「実施機関が森林法に係る開発許可、監督処分の権限等に基づき、違法行為に対する是正指導や中止命令等の事務を行っており、これは条例第8条第1項第4号に規定する府の機関が行う取締り、監督等の事務に該当する」としており、審査請求人としても、この点に異論はない。
  • (2)更に、弁明書によれば、「条例の解釈運用基準によれば、第8条第1項第4号の『事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼす』とは、公開することにより、特定の者に不当に利益又は不利益を与えるなど、事務事業の公正さを著しく損なうことなどをいうとされており、…『おそれのあるもの』に該当して公開しないことができるのは、当該情報を公開することによって、『事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼす』程度が名目的なものに止まらず、具体的かつ客観的なものであり、また、それらの『おそれ』の程度も、単なる確率的な可能性でなく、法的な保護に値する蓋然性がある場合に限られることとされている。
    弁明書によれば、実施機関は、審査請求人が森林法違反を行っており、その違反行為を中止するよう是正に必要な行政指導を行っており、再三の行政指導にも従わず、違法行為を継続しているから、森林法第10条の3に基づく中止命令等の監督処分を行い、更には、罰則を科すために告発へと手続を進めるところであり、本件係争文書を公開したとしても、府の機関が行う森林法に関する取締り、監督等の事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれはない、としている。
    この弁明は、審査請求人が森林法違反の違法行為をしているから、中止命令等の監督処分や罰則を科すための告発への手続を進めており、本件係争文書が公開されたところで、府の機関はこの手続を緩めることなど全くないと言っているだけのことであり、審査請求人が意見書において主張している点、すなわち、本件係争文書が公開されれば、審査請求人が、いまだ、d番についても、大阪府から崩壊復旧工事の許可を得ていない事実のみならず、是正計画書の提出すら拒まれたために、いまだ行っていないことが公開されてしまい、第三者であるX氏から、既に内容証明書簡(審査請求に当たり、添付書類としています)〔添付略〕によって明らかに示された、審査請求人に対する○円もの巨額の損害賠償請求訴訟の提起を促してしまう危険が現実のものとなり、特定の者であるX氏に不当な利益を与え、事務事業の公正さを著しく損なう蓋然性が極めて高い、と主張している点については、全く判断をしていないのである。
    この点の判断こそが最も重要であり、府は審査請求人の主張については、巧妙に判断を避けているのである。
    府の弁明は、審査請求人は森林法違反により罰則の適用を受けるに至るのであるから、民事により○円の損害賠償請求訴訟を提起されたとしても当然のことであって、何ら、特定の者に対して不当な利益を与えることにはならないと言わんばかりであるが、府の弁明は余りにも不当であり、極めて権力主義的な見解であって、審査請求人が府の指導によって森林法違反に関する是正指導を行おうとしている意欲を一方的に削ぐものというべきである。
    更に、弁明書によれば、審査請求人は府からの森林法違反の是正に必要な行政指導を行っているが、再三の行政指導にも従わず、違法行為を継続していると言わんばかりであるが、別紙の〔事実経緯〕〔添付略〕とおり、審査請求人は懸命に是正措置を行う努力を既に実施しているものの、府が求める是正勧告の条件は、一民間業者の事業能力では、到底、実施不可能な厳しい条件を付したものであり、審査請求人は、府との事前協議を求め、一民間業者の事業能力によっても実施可能な条件設定にしてもらうように求めたが、府は、この審査請求人の要請を無視し、提出書類を返却し、かつ、森林法第10条の3による中止命令などの監督処分や告発手続を一方的に進めているのである。
    このような府の姿勢は、果たして許されるのであろうか。貴審査会におかれては、府の姿勢が余りにも厳しく、審査請求人を悪者と決めつけるに等しい対応に基づいた弁明書を書いていることを重視し、審査請求人の主張に対し、公正・公平なご判断を期待するものであります。

第五 諮問実施機関の主張要旨

諮問実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 本件係争文書について

実施機関は、審査請求人が豊能郡豊能町内で森林法第10条の2第1項の許可を得ずに行なっている違法な開発行為に対して、平成○年○月○日付け大阪府指令達み第○号により、命令書の別紙に示した区域において即時中止することを命じた。

実施機関の是正指導に対し、その後、審査請求人から平成○年○月○日付けで林地開発行為是正計画協議書(以下「本件協議書」という。)が提出されたことから、実施機関は、本件協議書に基づく是正工事を実施させるために、豊能郡豊能町a番及びb番の本件協議書に示された区域における緊急性の高い崩壊地の復旧工事及び沈砂地の設置に限って、上記中止命令を解除することを審査請求人へ通知した。この通知文書が、本件係争文書である。

本件係争文書の内容は、次の情報内容で構成されている。

  • 通知本文
  • 記1 解除の対象となる区域
    豊能郡豊能町a番及びb番の林地開発行為是正計画協議書に示された区域
  • 記2 解除の内容
    林地開発行為是正計画協議書に示された、緊急性の高い崩壊地の復旧工事及び沈砂地の設置
  • 記3 解除の理由
    林地開発行為是正計画協議書に基づく是正行為の実施のため
  • 記4 解除の条件
    (1)施行に際しては、原則として防災施設を先行設置するとともに全般的な防災措置に万全を期すこと。のほか是正行為を実施する際の諸条件実施機関は、本件係争文書に記載されている上記の情報については、すべて非公開事由に当たらないとして、公開すると決定した。
    これに対して、審査請求人は、本件係争文書は条例第8条第1項第4号に該当するとして公開しないことを求めている。
    審査請求人が、公開に反対する部分及び理由については、「第四 審査請求人の主張要旨」のとおりである。

2 本件係争文書が条例第8条第1項第4号に該当しないことについて

(1)条例における公開原則について

条例においては、その前文及び第1条にあるように、「府の保有する情報は公開を原則」、「個人のプライバシー情報の最大限の保護」、「府が自ら進んで情報の公開を推進」を制度運営の基本的姿勢としている。

よって、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報を公開しなければならないものである。

(2)条例第8条第1項第4号に該当しないことについて
  • ア 条例第8条第1項第4号は、
    • (ア)府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、
    • (イ)公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものが記録された行政文書については、公開しないことができると規定している。
    なお、上記の(ア)に列挙された事務は例示であり、これらに類する事務に関する情報についても、(イ)の要件を満たす場合には、公開しないことができるものとされている。
  • イ ア(ア)の要件について
    実施機関は、森林法に係る開発許可、監督処分の権限等に基づき違法行為に対する是正指導や中止命令等の事務を行っているが、これは条例第8条第1項第4号に規定する府の機関が行う取締り、監督等の事務に該当する。
    本件係争文書には、実施機関がこの権限に基づき、審査請求人に森林法違反行為に関する是正工事を実施させるため、審査請求人に対する中止命令の一部を解除するという情報(違法行為地内における是正行為の実施場所、是正行為の内容、解除の条件等の情報)が記載されていることから、これは条例第8条第1項第4号に規定する府の機関が行う取締り、監督等の事務に関する情報に該当する。
  • ウ ア(イ)の要件について
    次に、本件係争文書に記載されている情報を公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるかについて検討する。
    条例の解釈運用基準によれば、第8条第1項第4号の「事務の目的が達成できなくなる」とは、取締り、監督等の事務の性質上、それらに係る情報を公開すれば、事務事業を実施しても期待どおりの結果が得られず、実施する意味を喪失する場合などをいい、「事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼす」とは、公開することにより、特定の者に不当に利益又は不利益を与えるなど、事務事業の公正さを著しく損なうことなどをいうとされている。
    また、「おそれのあるもの」に該当して公開しないことができるのは、当該情報を公開することによって、「事務の目的が達成できなくなり」、又は「事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼす」程度が名目的なものに止まらず具体的かつ客観的なものであり、また、それらの「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性でなく法的保護に値する蓋然性がある場合に限られるとされている。
    実施機関は、森林法違反の行為者に対して、その違法行為を中止するよう是正に必要な行政指導を行っており、再三の行政指導にも従わず違法行為を継続している行為者に対しては、弁明の機会付与等の適正手続後に行う森林法第10条の3に基づく中止命令等の監督処分を通じて、是正に必要な行為が実施されるようにしている。
    また、監督処分後においてもなお違法行為を継続する行為者に対しては、罰則を科すために告発へと手続を進めることとしている。
    実施機関は、審査請求人の違法行為に対しても上記手続により進めているものであり、本件係争文書に記載されている情報を公開したとしても、府の機関が行う森林法に関する取締り、監督等の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれはない。
    以上のことから、本件係争文書に記載されている情報は、条例第8条第1項第4号に該当しない。

3 本件係争文書が条例第8条第1項各号及び条例第9条各号に該当しないことについて

(1)条例第8条第1項第1号に該当しないことについて
  • ア 条例第8条第1項第1号は、
    • (ア)法人その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、
    • (イ)公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの
    • が記録された行政文書については、公開しないことができると規定している。
  • イ ア(ア)の要件について
    条例の解釈運用基準によれば、府は、許認可、調査等の事務事業を通じて、法人等及び事業を営む個人(以下「事業者」という。)の情報を収集しており、これらの情報は、事業者から収集したものであっても、原則として公開することとしている。
    しかしながら、事業者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができることとされている。
    本件係争文書に記載されている情報は、前述したとおり実施機関が森林法違反行為により監督処分を受けた審査請求人に必要な是正行為を行なわせるべく、中止命令の一部を解除するための情報であり、ア(ア)の要件には該当しないものであることから、条例第8条第1項第1号には該当しない。

4 本件係争文書が条例第9条第1号に該当しないことについて

(1)条例第9条第1号に該当しないことついて
  • ア 条例第9条第1号は、
    • (ア)個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、
    • (イ)特定の個人が識別され得るもののうち、
    • (ウ)一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの

に該当する情報が記録された行政文書については、公開してはならないと規定している。
本件係争文書に記載されている情報は、前述したとおりで、ア(ア)の要件には該当しないため、条例第9条第1号には該当しない。

5 本件係争文書が条例第8条第1項第2号、第3号、第5号及び条例第9条第2号に該当しないことについて

本件係争文書に記載されている情報が、条例第8条第1項第2号、第3号、第5号及び条例第9条第2号に該当するかについては、本件係争文書には、第三者(個人又は法人等)から公にしないことを条件に提供を受けた情報、府の機関又は国等の機関が行う調査研究等に関する情報、法令の規定により公にすることができない情報や、公にすることにより公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすと認められる情報等は含まれていないことから、いずれの規定にも該当しない。

6 結論

以上のとおり、実施機関による本件処分は、条例に基づき適正に行なわれたものであり、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由

本件係争文書について、審査請求人は、条例第8条第1項第4号に該当すると主張し、諮問実施機関は、同号に該当しないと主張しているので、以下において検討する。

(1)条例第8条第1項第4号について

府又は国等が行う事務事業に係る情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれのあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすものもある。このような支障を防止するため、これらの情報については、公開しないことができるとするのが、条例第8条第1項第4号の趣旨である。

同号は、

  • ア 府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、
  • イ 公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの

は公開しないことができる旨を定めている。

(2)条例第8条第1項第4号該当性について
  • ア 本件係争文書は、府の機関が森林法に基づき行う許可、処分に関する情報であることから(1)アの要件に該当する。
  • イ 次に、本件係争文書が(1)イの要件に該当するかどうかについて、諮問実施機関によって口頭で説明されたところによると、次のとおりである。
    本件係争文書は、森林法第10条の2の規定に基づく許可を得ずに行われた違法な開発行為につき、森林の有する災害の防止、環境の保全といった公益的機能を維持するため、再三の行政指導にも従わず違法行為を継続している行為者に対して、弁明の機会付与等の適正な手続を行った後、同法第10条の3の規定に基づきその開発行為の中止を命じた上で、復旧に必要な行為を行わせるべく、一部区域に限り開発行為の中止命令の解除を通知した文書である。本件係争文書が公にされたとしても、当該違反行為を行っている行為者が違反行為を継続した場合には、罰則を適用するための告発の手続を進めることが可能であるし、今後生じる同種の事務においても、森林法に基づく監督処分の規定やそれを担保する罰則規定を適用することができるので、その目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれはない。
  • ウ 諮問実施機関の説明を踏まえ、本件係争文書を確認したところ、実施機関の条例第8条第1項第4号に該当しないとする主張には理由があり、事務事業を行う上で支障を及ぼすおそれがあるとは認められない以上、審査請求人の主張を採用することはできず、(1)イの要件を満たすとは認められない。
    ところで、審査請求人の主張によると、本件係争文書が公開されると、第三者による巨額の損害賠償請求訴訟の提起を促しかねず、審査請求人の利益が不当に侵害され、回復困難な損害を受けるおそれがあるとのことであり、本件係争文書が条例第8条第1項第1号の法人情報に該当するとの主張を実質的に含むものと解することもできうるので、念のため、この点についても検討することとする。
(3)条例第8条第1項第1号について

事業者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができる、とするのが本号の趣旨である。

同号は、

  • ア 法人(国、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人、地方住宅供給公社、土地開発公社及び地方道路公社その他の公共団体を除く。)その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、
  • イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)が記録された行政文書は公開しないことができる旨定めている。

本号の「競争上の地位その他正当な利益を害する」と認められる情報に該当するかどうかは、当該情報の内容のみでなく、事業者の性格、事業活動における当該情報の位置づけ等にも十分留意しつつ、慎重に判断する必要がある。

(4)条例第8条第1項第1号該当性について
  • ア 本件係争文書は、森林法第10条の2の規定に基づく許可を得ずに行われた違法な開発行為につき、森林の有する公益的機能を維持するために必要があるとして、諮問実施機関が同法第10条の3の規定に基づきその開発行為の中止を命じた後、復旧に必要な行為を行わせるべく、一部区域に限り開発行為の中止命令の解除を通知した文書である。よって、(3)アの要件に該当する。
  • イ 次に本件係争文書が(3)イの要件に該当するかどうかについて検討する。
    審査請求人は、本件係争文書が公開されることにより、特定の者による審査請求人への巨額の損害賠償請求訴訟の提起が促され、回復困難な損害を受けるおそれがあると主張する。
    しかし、仮にそのような訴訟を提起されるとしても、森林の有する災害の防止、環境の保全といった公益的機能からすれば、開発行為を行う以上森林法を遵守すべきことは当然であり、審査請求人が同法に違反したことに起因して発生しうる特定の者による損害賠償請求訴訟の提起等は、競争上の地位その他正当な利益を害するとはいえず、(3)イの要件に該当しない。
(5)その他の主張について

審査請求人は本件係争文書が公開されれば、特定の者に不当な利益を与えることとなり、事務事業の公正さを著しく損なう蓋然性が極めて高いと主張するが、そもそも本件係争文書の公開と審査請求人の主張する訴訟提起や、その訴訟の帰すうとは直接関係があるとはいえず、特定の者に利益を与えるものとは考えられない。

3 結論

以上のとおりであるから、本件審査請求は理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

野呂充、松本哲治、小谷寛子、三成美保

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