大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第77号)

更新日:2009年8月5日

第一 審査会の結論

実施機関は、本件異議申立ての対象となった部分公開決定において非公開とした部分のうち、「8 職員体制」の「資格1 知更相(知的障害者更生相談所)での任用資格」欄中チェック欄の部分を公開すべきである。

実施機関のその余の判断は妥当である。

第二 異議申立ての経過

1 平成14年5月7日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定に基づき、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「平成12年度厚生科学研究特別研究事業 法改正に伴う身体障害者更生相談所及び知的障害者更生相談所のあり方に関する研究 知的障害者更生相談所業務に関する実態調査(控)」の公開請求(以下「本件請求」という。)をした。

2 同年5月20日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、「知的障害者更生相談所業務に関する実態調査」(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、次の(1)の部分(以下「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、公開しない理由を次の(2)のとおり付して異議申立人に通知した。

(1)公開しないことを決定した部分

 「8 職員体制」のうち、知的障害者更生相談所での任用資格欄中チェック欄の部分及び個人的資格の保有状況欄

(2)公開しない理由

条例第9条第1号に該当する。

本件行政文書(非公開部分)には、個人の個人的資格の保有状況等が記載されており、これらは個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。

3 同年5月28日、異議申立人は、本件処分を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件処分を取り消し、全部公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 異議申立書より

(1)知的障害者更生相談所の実態について

法改正に伴う新たな役割を果たすことは困難であり、求められる障害程度区分の判定や市町村支援を行うことは不可能に近いといえる。(H12年度厚生科学特別研究事業 法改正に伴う身体障害者更生相談所及び知的障害者更生相談所のあり方に関する研究より引用)従って支援費支給制度に伴う支援(市町村への支援及び本人の地域生活、施設での生活の支援)を求められた場合、知更相として職員の増員とその資質向上が必要である。

(2)障害認定の意義

知的障害児・者に人間らしく生きる権利を保障する諸活動を効果あらしめるための手がかりとして役立てるものでなければならない。障害認定は知的障害の原因及び病態の把握や治療および療育などの支援の方針を定め、それにもとづいて福祉サービスの必要性を判断することにある。社会診断、心理診断および医学診断をそれぞれ細目にわたって実施したうえで各担当者の合議にもとづき総合的に判断することが期待されている(精神薄弱者判定要領:厚生省社会局昭和39年第10章 診断及び判定方法 P35〜80)。

(3)大阪府職員の研究・調査の取組

H11年度厚生科学研究 保健福祉総合研究事業の知的障害者の障害認定の基準と入所判定に関する総合研究に大阪府職員の方が参画している。分担研究の更生相談所における障害認定と入所判定基準のあり方に関する研究をされた分担研究者は中央子ども家庭センターのA様です。

ア 障害特性に対する専門性の確保の必要性を指摘

イ AAMR・ICIDH−2について言及している。

ウ 障害認定に対する不服請求等について言及している。

エ 大阪府における知的障害者更生相談所業務の内容

オ 障害認定は障害を有する本人及びその家族が必要とする各種サービスを適切に把握し提供するためにおこなわれる。

ア〜オは異議申立人が注目した項目であり、全体の研究内容を提示したものではありません。

(4)個人の個人的資格の保有状況について

知的障害者福祉司の業務は、専門的立場に立ち知的障害者の福祉に関する相談や処遇、事務、また関係職員に対する技術的指導・助言などを行うこととされている。「知的障害者更生相談所実態調査」の中で資格に関する項目が立ててあるのは、専門的な知見があるかないかの1つの指標になると考えられるからである。業務を適切に遂行する為に自らの判断で資格を保有する為に勉強されたという解釈もできると思います。知的障害更生相談所職員になったから専門的知見があるというのではなく、職務の性格上、勉強しなかったら本人・家族支援・障害認定が出来ないという認識を職員の方々がされていると思われます。

(5)大阪府として更生相談所のあり方に関する見解を提示する必要性について

法改正に伴う身体障害者更生相談所及び知的障害更生相談所のあり方の研究の中で、何が問題なのかが指摘されている。研究内容について情報は入手されているのだからその対応策を提示すべきである。研究の結論について反論があれば、反論すべきである。大阪府の知的障害者相談所の実態を公表し、H15年からの契約方式による障害者支援に対応する準備はなされていると主張されるべきである。べきであるという表現を使用しているのは、厚生労働省の児童相談所運営指針の中で児童相談所における相談援助活動の体系・展開が図で表示されていて、基本的には、更生相談所と同じ視点から相談援助活動をしているからです。第5節職員・研修等(7)において職員は内部の研修のほか、各種研修会、研究会、学会等へ積極的に参加、施設等における研修等により新しい処遇技法の獲得等に努めるとあります。更生相談所職員についても同様です。

府として更生相談所業務を上記の観点から理解しているからこそ職員が資格を取るについての支援をしている。質問事項も更生相談所にかかわる資格についてのものである。具体的にいえば、社会福祉士、臨床心理士とその他です。知的障害者更生相談所業務内容の質を問うているのであった。個人の私生活に係る質問はありません。専門職として保有していた方がいいのではないかと思われる資格についての調査と考えるのが適当だと考えます。

(6)全国の知的障害者更生相談所の実態調査(控)に関する情報公開への対応とその内訳

ア 入手した実態調査(控)は2/3程度知更相は全面開示処分である。

イ 資格保有についてもバラツキがある。

ウ 知的障害認定についてもIQ70〜90までのバラツキがある。

エ 自閉症を考慮するかどうかもバラツキがある。

(7)個人のプライバシーに関する情報

個人の権利利益の中心となるプライバシーの概念は法的に未成熟であり、その範囲も個人によって異なり類型化することは困難である。だから個人に関する情報であって特定の個人が識別されている行政文書は原則として不開示とすることとしているという立場については同意するものであります。私は公開しないこととした部分が原則に該当するかどうかを検討することとします。

一般的にいえば、公表を予定されている情報あるいは公表を期待されている情報であり、公にしても社会通念上個人のプライバシー等の権利利益を害するおそれはなく、仮に害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲にとどまるものと考えられる。つまり公開することが不開示とすることによって保護される利益に優越して必要であると認められる情報は開示することになる。

公務員の職に関する情報は、行政事務に関する情報としてはその職務行為に関する情報と不可分の要素であるから全面開示になる。知的障害の分野においては、臨床心理士、社会福祉士という資格は、その資格を保有している人は積極的に保有していることをアピールしています。他人に知られたくないと思っている人はいません。多くの専門職にある人々はその資格を得る為に非常に努力されています。

上記のように考えれば、大阪府は具体的な個人状況を例示して他人に知られたくない情報であるという証明をすべきであると考えます。

2 反論書より

(1)知的障害者更生相談所について

業務内容については弁明書通りでありますが、これからの知的障害者更生相談所は市町村を積極的に指導援助し、知的障害者が住みなれた身近なところで生活できるようにすることが重要な役割となる。例えば地域で生活している自閉症者を支援していくことが求められている。(平成13年10月23日全国知的障害更生相談所長会議での厚生労働省の見解)

(2)職員体制

業務内容について職能判定を行うこととしているが、職能判定員を配置していない。知的更生相談所が行う職能判定と障害者職業センターあるいは職業カウンセリングセンターの行う判定とは目的内容が違う。(昭和61年度厚生省心身障害研究、心身障害の判定指標の開発に関する研究―精神薄弱者の職能判定の基準および方法)

(3)本件行政文書について

弁明書の中で、本件行政文書は、「知的障害者更生相談所業務に関する実態調査」について実施機関が大阪府知的障害者サポートセンター所長名で全国知的障害者更生相談所協議会会長あてに回答することについての意思決定をするための起案文書に添付された回答案であるとしているが、知的障害者更生相談所協議会長あてに回答するものではない。埼玉県総合リハビリテーションセンター相談部あてに回答しているはずである。(平成13年2月16日付 身体障害者更生相談所・知的障害者更生相談所実態調査について(依頼))

(4)厚生科学研究費補助金による厚生科学特別研究事業について

この事業の申請者は個人であり埼玉県職員としての身分を有していない。申請者を特定する為に住所、氏名、生年月日のみの記入である。大阪府知的障害者サポートセンターは個人へ回答している。一方、本件の開示請求者は個人である。個人ということについては同じである。対応にバラツキが生じている原因は厚生科学特別研究事業を誤解しているからである。(平成12年9月1日付 厚生科学特別研究計画書)社会福祉法や地域分権一括法に則した知的障害者更生相談所の体制整備、運営を行うための資料となり行政的にも有用な研究である。

(5)報告書はどのように利用されたのか。

弁明書において報告書を利用して大阪府知的障害者サポートセンターの体制整備、運営をどのようにするかの言及がありません。更生相談所の現状と問題点を検証するために実施された調査だから報告書を作成したということで作業が終わったということにはならない。報告書を読めば知的障害者更生相談所の問題(改善すべき点)が把握できる。全国知的障害者更生相談所長協議会の機関紙「知更相」と照合すれば、個別の知的障害者更生相談所がかかえている問題も把握することができる。「知更相」26号に個別の知的障害者更生相談所職員配置状況表がある。報告書の全国知的障害者更生相談所の設置形態・所長の職種ならびに職員の人員配置状況一覧には特定できる情報はないが「知更相」と照合することにより特定できる。

近畿地区知的障害者更生相談所職員研究協議会(平成12年11月10日)へ大阪府知的障害者サポートセンターは「1 成年後見人制度に伴う今後の知的障害者更生相談所の役割について、2 知的障害者福祉法の一部改正に伴う知的障害者更生相談所の機能・役割について」という議題を提出し意見表明をしている。平成14年現在においては、成年後見人の役割、任務責任や知的障害者更生相談所」の機能・役割が明確になりつつある。弁明書には法改正前の考え方実績を提示したということで、改正後の知的障害者更生相談所の機能・役割については何の説明もせず知的障害者更生相談所の現状を自閉症者の成年後見人に対して明らかにすることができたとする立場をとっている。それゆえ報告書は利用されているとは言い難い状況にある。

(6)「知的障害者更生相談所業務に関する実態調査」用紙を作成した方の考え方

「職員の個人情報としての側面を有するが、業務との関連もあり、公開しても実質的に職員の不利益とはならないと考えられる」と考えていると推察できる。厚生科学特別研究事業計画書の中で「調査に当たっては、調査の趣旨について、特に個人情報のわかる事項については、十分に説明を行う」としている。長崎県で開催された全国知的障害者更生相談所所長協議会幹事会の中で厚生科学特別研究事業について説明がなされている。

(7)実態調査についての態度について

実態調査の回収率は97.2%であり回答を拒否した知的障害者更生相談所もあったということができる。調査に回答するかどうかということは各知的障害者更生相談所の判断にまかせられている。

(8)公務員と大阪府知的障害者サポートセンターの職員は同じか?同じ条件で比較することができるのか?

大阪府知的障害者サポートセンターの職員は業務遂行能力を有していることを証明する必要がある。「現状」と「問題点」を現場の視点から検証するための調査項目を開示しないとした大阪府知的障害者サポートセンターは何らかの方法で職員体制は十分であるという証明をすべきである。なぜならば、報告書の結論として大部分の知更相においては貧弱な職員体制のため業務が十分に遂行できない状況にあると考えられるとしているからである。「職員の公務に就くまでの学歴等は個人に専属する情報であり、たとえそれが公務員に関する情報であったとしても一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報である」と主張しているが、知的障害者サポートセンターの職員としてはどうなのかという主張がされていない。知的障害者サポートセンターの職員は専門的知見を有していると主張しているのは大阪府であり、厚生労働省である。適切な職員配置がなされているかどうかをチェックする為には開示が必要である。外部の人間からみて大阪府知的障害者サポートセンターの職員は専門的知見を有していることがわかるようにしておく必要がある。実態調査項目の中の「学歴」の意味は知的障害者サポートセンター職員の基本的知識を有するかどうかの一つの指標であった。一般社会通念上使用されている「学歴」の意味ではない。

(9)専門的知見の内容を向上させることについて

大阪府は「臨床心理士の資格は職務を遂行する上で保有することが望ましい資格である」と認めている。そして必須とされている資格ではないとも主張している。全員が保有していなければならない資格ではないが、知的障害者サポートセンター職員の中に誰も資格を保有していないことがわかれば知的障害者サポートセンターとしての業務の質は問題にされる。知的障害者サポートセンターの職員だから専門的知見を有するということではない。専門的知見を有する職員がいるからこそ知的障害者サポートセンターへ相談するのである。そして相談の質が職員によって違うことがあってはならない。

現実問題として一般論ではあるけれども、臨床心理士の資格を有する職員とそうでない職員の差はあります。相談する知的障害者、家族、成年後見人の立場になって資格を開示するかどうかの判断をしてほしいと思います。支援の必要性とその支援をすることの困難性の高い知的障害者への対応に関する相談の場合は臨床心理士の資格を保有している職員が対応すべきであると考える。外部へ職員の資格保有状況を開示しないと職員間の競争が発生しません。相談の質が問題とされることがない状況が続くことになると思います。年間の相談受付件数がどうなっているのかという視点からではなく、相談することによって本人がかかえている日常生活上の困難性を低くおさえることができたのかという視点からの評価が必要である。日本自閉症協会が実施している相談事業の相談員の紹介には、○○大学教授、○○センタースーパーバイザーで臨床心理士資格を有するとある。現在の知的障害者支援の分野において臨床心理士の資格を保有することは必要なこととして認識されつつある。

(10)第9条第1号についての解釈・運用基準について−解説部分に関して−

解説4には次のような説明がされている。「一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められるもの」に該当せず、公開することができる情報の例として(6)公務員としての職務に関連する情報が例示してある。臨床心理士の資格の保有については知的障害者サポートセンター職員としての職務に関する情報である。社会通念上知的障害者サポートセンターの現状を知る為には個人の資格であっても業務に関係する資格は開示される必要がある。開示されても実害は発生しない。「一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められる」かどうかが客観的に明白である場合を除き当該個人から意見を聴取するなどにより、慎重に取扱い客観的な判断に努めることにする、としている。本人も開示を拒否していると意見を聴取して主張すべきである。

(11)結論

以上のとおり、本件についての実施機関の決定は条例の趣旨を理解していないもので、運用・解釈に誤りがあり違法、不当です。「実施機関は全面開示決定をすべきである」との答申を求めます。

第五 実施機関の主張要旨

  実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 知的障害者更生相談所について

(1)設置根拠

大阪府知的障害者更生相談所は、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第12条第1項の規定に基づき、大阪府健康福祉部の所管する相談所に関する条例(昭和59年大阪府条例第6号)第2条の規定により、昭和35年に設置された知的障害者の相談・判定機関である。

(2)業務内容

大阪府知的障害者更生相談所は、知的障害者福祉法、同法施行令及び「知的障害者更生相談所の設置及び運営について《昭和35年6月17日社発380号厚生省社会局長通知》(以下「厚生省社会局長通知」という。)」に基づき、次の業務を行っている。

ア 知的障害者に関する問題につき、家庭その他からの相談に応じる。

イ 18歳以上の知的障害者の医学的、心理学的及び職能的判定を行うとともに、これに付随して必要な指導を行う。

ウ 必要に応じ、巡回などの方法により前項の業務を行う。

エ 知的障害者福祉司に対し、技術的指導を行う。

オ 福祉事務所及び援護施設等と密接な連絡をとるとともに情報の交換を行う。

カ 知的障害者援護に必要な統計資料の整備と技術的指針の研究を行う。

キ 知的障害者援護事業従事者が参加するケース研究会を企画実施する。

ク 保護者、福祉事務所に対して判定書を交付する。

(3)職員体制

本件行政文書である「知的障害者更生相談所業務に関する実態調査」が実施された、平成  12年度中の大阪府知的障害者更生相談所における職員の配置状況は次のとおりである。

ア 常勤職員

(ア)所長(ケースワーカー) 1名

(イ)次長兼地域サポート課長(ケースワーカー) 1名

(ウ)心理サポート課長(心理判定員) 1名

(エ)ケースワーカー 7名

(オ)心理判定員 9名

(カ)行政職 1名

(キ)精神科医(兼務) 1名

イ 嘱託職員

(ア)医師(精神科) 3名

ウ 非常勤職員

(ア)心理判定員 5名

2 本件行政文書について

(1)本件行政文書は、「知的障害者更生相談所業務に関する実態調査」について、実施機関が大阪府知的障害者サポートセンター所長名で全国知的障害者更生相談所協議会会長あてに回答することについての意思決定をするための起案文書に添付された回答案である。

当該調査は、「厚生科学研究事業補助(厚生科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生等に関し、行政施策の科学的な推進を確保し、技術水準の向上を図ることを目的とした研究に補助する。)」を受けて実施した事業で、「法改正に伴う身体障害者更生相談所及び知的障害者更生相談所のあり方」を研究課題とし、更生相談所の現状と問題点を現場の視点から検証するために実施された調査の一部である。なお、これら全国の知的障害者更生相談所からの回答文書は、個別の知的障害者更生相談所の特定が行われることがないように統計的な処理が行われ、その結果は報告書として公表されている。

(2)本件行政文書は、「1(ローマ数字) 組織・体制」、「2(ローマ数字) 管轄区域の状況について」、「3(ローマ数字) 更生相談について」、「4(ローマ数字) 療育手帳制度について」、「5(ローマ数字) 施設入所者の措置費重度加算にかかる重度認定について」、「6(ローマ数字) 知的障害者援護施設入所調整会議について」、「7(ローマ数字) 市区町村、施設等への専門的技術的援助について」、「8(ローマ数字) アドボカシーへの取り組みについて」及び「9(ローマ数字) その他」の九つの項目で構成されている。

本件非公開部分は、「1(ローマ数字) 組織・体制」の「8 職員体制」のうち、「(3)知的障害者福祉司等の配置状況等について」及び「(4)心理判定員の配置状況等について」の記載内容の一部であるため、これらの調査票について以下で述べる。

ア 「(3)知的障害者福祉司の配置状況等について」

調査票「(3)知的障害者福祉司の配置状況等について」は、まず、相談所全体の状況について記載する「専任常勤  人、兼任常勤  人、非常勤・嘱託  人、合計  人」欄が置かれ、その下に、職員ごとの状況について、次の(ア)〜(ク)の項目を記載する表形式の回答欄が置かれている。そして、実施機関においては、専任常勤であるケースワーカー8人の状況について、各々の欄のうち該当する部分に回答内容を記載し、当該調査に対する回答文書を作成したものである。

なお、当該様式中には、職員の氏名等、直接特定の個人が識別できる情報を記載する欄はなく、実施機関において作成した回答文書の中にも、個人の氏名等直接特定の個人が識別できる記載はない。

(ア)専任常勤、兼任常勤及び非常勤・嘱託

「専任常勤」、「兼任常勤」及び「非常勤・嘱託」のうちからチェック欄にレを付すことにより選択する。

(イ)専門的担当領域 知更相判定業務における主たる業務

「施設入所判定」、「療育手帳判定」、「生活相談」、「職業相談」及び「他(  )」のうちからチェック欄にレを付すことにより選択し、「他(  )」を選択した場合は、さらに(  )内にその内容を記載する。

(ウ)知更相経験年数

「福祉司」及び「CW」のうちからチェック欄にレを付すことにより選択した上で経験年数を記載する。

(エ)業務経験年数等(常勤本務)

「身更相」、「児童相談所」、「福祉事務所」、「施設病院」、「その他」の各欄が設けられており、「身更相」、「児童相談所」、「福祉事務所」については、それぞれ「福祉司」、「CW」(ケースワーカー)のうちからチェック欄にレを付すことにより選択した上で経験年数を記載する。また、「施設病院」については、経験年数を記載し、「MSW」(メディカルソーシャルワーカー)に該当する場合はチェック欄にレを付する。さらに、「その他」については具体的な業務種別はあげられておらず、経験年数を記載する。

(オ)資格1 知更相での任用資格

「社福主事2年以上(社会福祉法に定める社会福祉主事たる資格を有する者であって、知的障害者の福祉に関する事業に2年以上従事した経験を有するもの)」、「大学で大臣の指定科目を修め卒業(学校教育法に基づく大学又は旧大学令に基づく大学において、厚生大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者)」、「養成校卒業(知的障害者の福祉に関する事業に従事する職員を養成する学校その他の施設で厚生大臣の指定するものを卒業した者)」及び「前各号に準ずる者(前各号に準ずる者であって、知的障害者福祉司として必要な学識経験を有するもの)」のうちからチェック欄にレを付すことにより選択することとされており、この欄のうちいずれを選択したかが明らかになることにより、当該職員が公職に就くまでの学歴等が明らかになる。

なお、当該欄の選択肢は、知的障害者福祉法第11条で「知的障害者福祉司は、事務吏員又は技術吏員とし、次の各号のいずれかに該当する者のうちから、任用しなければならない。」として列挙されている5つの任用資格から「医師」を除くものが記載されており、いずれか一つに記載があるべきものである。

(カ)資格2 採用時資格

「福祉職」、「心理職」、「一般行政職」及び「その他(  )」のうちからチェック欄にレを付すことにより選択し、「その他(  )」を選択した場合は、さらに(  )内にその内容を記載する。

(キ)資格3 個人的資格の保有状況

「社会福祉士」及び自由記載のうちからチェック欄にレを付すことにより選択し、自由記載を選択した場合は、空白部分にその内容を記載することとされており、社会福祉士の欄のチェックの有無又は自由記載欄のチェックの有無や記載内容が明らかなることにより、当該個人の社会福祉士資格の保有状況又は他の資格の保有状況や内容が明らかになる。

(ク)兼任の場合、職務に占める知更相業務の割合

「おおよそ  %」の記載欄が設けられており、数値を記載する。

イ 「(4)心理判定員の配置状況等について」

調査票「(4)心理判定員の配置状況等について」は、まず、相談所全体の状況について記載する「専任常勤  人、兼任常勤  人、非常勤・嘱託  人、合計  人」の欄が置かれ、その下に、職員ごとの状況について、次の(ア)〜(ク)の項目を記載する表形式の回答欄が置かれている。そして、実施機関においては、専任常勤8人、非常勤・嘱託5人及び専任常勤、兼任常勤、非常勤・嘱託の別が記載されていない者2人の合計15人の状況について、各々の欄のうち該当する部分に回答内容を記載し、当該調査に対する回答文書を作成したものである。

なお、当該様式中には、職員の氏名等、直接特定の個人を識別し得る情報を記載する欄はなく、実施機関において作成した回答文書の中にも直接特定の個人が識別できる記載はない。

(ア)専任常勤・兼任常勤及び非常勤・嘱託

「専任常勤」、「兼任常勤」及び「非常勤・嘱託」のうちからチェック欄にレを付すことにより選択する。

(イ)専門的担当領域 知更相判定業務における主たる業務

「施設入所判定」、「療育手帳判定」、「生活相談」及び「他(  )」のうちからチェック欄にレを付すことにより選択し、「他(  )」を選択した場合は、さらに(  )内にその内容を記載する。

(ウ)知更相経験年数

「  年」の欄が設けられており、経験年数を記載する。

(エ)業務経験年数等(常勤本務)

「身更相」、「児童相談所」、「福祉事務所」、「施設病院」、「その他」の各欄が設けられており、該当する欄の「  年」の箇所に、経験年数を記載する。

(オ)資格1 知更相での任用資格

「心理学専攻(学校教育法に基づく大学、又は旧大学令に基づく大学において、心理学を専攻する学科を卒業した者)」、「知障等2年以上(知的障害者福祉司その他社会福祉事業従事者として2年以上その職務を行い前号に準ずる学識経験を有すると認められる者)」のうちからチェック欄にレを付すことにより選択することとされており、この欄のうちいずれを選択したかが明らかになることにより、当該職員の公職に就くまでの学歴等が明らかになる。

なお、当該欄の選択肢は、厚生省社会局長通知で「心理判定員又は職能判定員の資格」として列挙されているものが記載されており、いずれか一つに記載があるべきものである。

(カ)資格2 採用時資格

「福祉職」、「心理職」、「一般行政職」及び「その他(  )」のうちからチェック欄にレを付すことにより選択し、「その他(  )」を選択した場合は、さらに(  )内にその内容を記載する。

(キ)資格3 個人的資格の保有状況

「臨床心理士」及び自由記載のうちからチェック欄にレを付すことにより選択し、自由記載を選択した場合は、空白部分にその内容を記載することとされており、臨床心理士の欄のチェックの有無又は自由記載欄のチェックの有無や記載内容が明らかなることにより、当該個人の臨床心理士資格の保有状況又は他の資格の保有状況や内容が明らかになる。

(ク)兼任の場合、職務に占める知更相業務の割合

「おおよそ  %」の記載欄が設けられており、数値を記載する。

(3)本件非公開部分について

本件行政文書のうち、本件非公開部分は、「『8 職員体制』のうち、知的障害者更生相談所での任用資格欄中チェック欄の部分及び個人的資格の保有状況」であり、具体的には次の部分である。

a 上記ア(オ)及び上記イ(オ)の記入欄のうちチェック欄の部分

b 上記ア(キ)及び上記イ(キ)の記入欄の全部

3 条例第9条第1号に該当することについて

(1)条例第9条第1号について

条例第9条第1号においては、

ア 個人の(省略)学歴、(省略)等に関する情報(事業を営む個人の当該情報に関する情報を除く。)であって、

イ 特定の個人が識別され得るもののうち、

ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの

に該当する情報が記録されている行政文書を公開してはならないと規定している。

(2)上記(1)アの要件について

本件非公開部分に記載された情報は、知的障害者更生相談所での任用資格、及び個人的資格の保有状況として、職員個人の学歴及び資格の保有状況が記載されているため、上記(1)アの要件に該当する。

(3)上記(1)イの要件について

先に述べたとおり、「(3)知的障害者福祉司等の配置状況等について」及び「(4)心理判定員の配置状況等について」には、職員の氏名等直接特定の個人が識別できる情報は記載されていない。

しかしながら、特定の個人が識別され得る情報とは、当該情報のみによって、特定の直接個人が識別できる場合に加えて、一般人が容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって特定の個人が識別され得る場合を含むものである。

本件行政文書のうち、「(3)知的障害者福祉司等の配置状況等について」には、専任常勤であるケースワーカー8人について、職員ごとの状況を個別に記載しており、「(4)心理判定員の配置状況等について」には、専任常勤8人、非常勤・嘱託5人、専任常勤、兼任常勤、非常勤・嘱託の別が記載されていない者2人の合計15人の心理判定員について、職員ごとの状況を個別に記載している。

そして、それぞれの調査票の「専門的担当領域」の欄には、職員一人ひとりの知的障害者更生相談所における主たる業務(施設入所判定、療育手帳判定、生活相談、職業相談など)に関する情報が記載されており、「知更相経験年数」及び「業務経験年数(身更相、児童相談所、福祉事務所、施設病院、その他)」の各欄には、福祉司、CW(ケースワーカー)、MSW(メディカルソーシャルワーカー)などの種別及び経歴年数が記載されている。

実施機関の職員が知的障害者更生相談所、身体障害者更生相談所、児童相談所等の勤務公署にどのような態様で、いつからいつまで勤務していたかに関する情報は、公務員としての公職歴に関する情報であり、既に公にされているか、あるいは公にされることが予定されている情報である。そして、現に広く一般に公表されている大阪府職員録においては、所属名、役職名、事務吏員・技術吏員の別及び氏名が記載されている。また、当該調査の対象である知的障害者更生相談所に配置されているケースワーカー及び心理判定員は上記のとおり極めて少数であり、各人の公職歴も一様でないことから、容易に特定の個人が識別され得るものである。したがって、本件非公開部分は、一般人が容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって特定の個人が識別され得る情報であり、上記(1)イの要件に該当する。

(4)上記(1)ウの要件について

ア 「知的障害者更生相談所での任用資格」に記載された部分について

本件非公開部分のうち「知的障害者更生相談所での任用資格」欄は、2(2)で述べたとおり、「社福主事2年以上(社会福祉法に定める社会福祉主事たる資格を有する者であって、知的障害者の福祉に関する事業に2年以上従事した経験を有するもの)」、「大学で大臣の指定科目を修め卒業(学校教育法に基づく大学又は旧大学令に基づく大学において、厚生大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者)」、「養成校卒業(知的障害者の福祉に関する事業に従事する職員を養成する学校その他の施設で厚生大臣の指定するものを卒業した者)」及び「前各号に準ずる者(前各号に準ずる者であって、知的障害者福祉司として必要な学識経験を有するもの)」のうちからチェック欄にレを付すことにより選択することとされており、いずれを選択したかが明らかになることにより、当該職員の公職に就くまでの学歴等が明らかになる。

職員の公務に就くまでの学歴等は個人に専属する情報であり、たとえそれが公務員に関する情報であったとしても一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報である。

以上のとおり、これらの情報は条例第9条第1号に該当する情報であることから、当該記入欄のうち、チェック欄を公開しないこととした。

イ 「個人的資格の保有状況」に記載された部分について

本件非公開部分のうち「個人的資格の保有状況」欄は、2(2)で述べたとおり、調査票「(3)知的障害者福祉司等の配置状況について」にあっては、「社会福祉士」及び自由記載のうちからチェック欄にレを付すことにより選択し、自由記載を選択した場合は、空白部分にその内容を記載することとされており、社会福祉士の欄のチェックの有無又は自由記載欄のチェックの有無や記載内容が明らかなることにより、当該個人の社会福祉士資格の保有状況又は他の資格の保有状況や内容が明らかになる。また、調査票「(4)心理判定員の配置状況等について」にあっては、同様に、臨床心理士の欄のチェックの有無又は自由記載欄のチェックの有無や記載内容が明らかなることにより、当該個人の臨床心理士資格の保有状況又は他の資格の保有状況や内容が明らかになる。

これらの資格は、職務を遂行する上で保有することが望ましい資格ではあるが、当該公務を行う上で必須とされている資格ではなく、個人的に保有している資格である。そして、個人的な資格の保有状況は個人に専属する情報であり、たとえそれが公務員に関する情報であったとしても一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報である。

以上のとおり、これらの情報は条例第9条第1号に該当する情報であることから、当該記入欄全体を公開しないこととした。

なお、当該欄には、自由記載できる空白部分が設けられているが、回答が記載されている部分のみを公開しないこととすれば、当該部分に記載のない職員は、個人的資格(社会福祉士又は臨床心理士を除く。)を有しないことが明らかになるため、空白部分を含めて当該記入欄全体を公開しないこととしたものである。また、当該欄に記載されている回答は、調査票様式として当初から印刷されている「社会福祉士」及び「臨床心理士」の文字に重なりあって記載されている部分があり、容易にかつ公開請求の趣旨を損なわず分離することができないことから、「社会福祉士」及び「臨床心理士」の文字も含めて当該欄全体を公開しないこととしたものである。

4 結論

以上のとおり、本件についての実施機関の決定は、条例の趣旨を踏まえたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 知的障害者更生相談所について

(1)設置根拠及び業務内容について

知的障害者更生相談所とは、知的障害者福祉法(昭和35年3月31日法律第37号。以下「法」という。)第12条第1項の規定に基づき、都道府県に設置が義務付けられている機関であり、その主な業務は、同条第2項において、次のとおり定められている。

ア 知的障害者に関する問題につき、家庭その他からの相談に応ずること。

イ 18歳以上の知的障害者の医学的、心理学的、及び職能的判定を行い、並びにこれに附随して必要な指導を行うこと。

なお、同条第3項において、「知的障害者更生相談所は、必要に応じ、巡回して、前項の業務を行うことができる。」とされており、同条第4項において、「知的障害者更生相談所に関し必要な事項は、政令で定める。」こととされている。

また、「知的障害者更生相談所の設置及び運営について(昭和35年6月17日付け社発  380号 各都道府県知事宛 厚生省社会局長通知)」(厚生省社会局長通知)においては、「更生相談所の行うべき業務」として、「更生相談所は、知的障害者の福祉についての家庭その他からの相談に応じ、知的障害者の医学的、心理学的及び職能的判定とこれに附随して必要な指導を行い、更に知的障害者福祉司に対して技術的指導を行うことを目的とするものであるが、これらの業務以外の業務についても、それが知的障害者の援護の利便に役立つものについては、これを運営上の業務として採り入れ実施すべきものであること。」とし、9の業務を掲げている。

(2)知的障害者福祉司について

法第10条は、「都道府県は、知的障害者の福祉に関する事務をつかさどる職員(以下「知的障害者福祉司」という。)を置かなければならない。」とし(同条第1項)、「知的障害者福祉司は、福祉事務所の長の命令を受けて、知的障害者の福祉に関し、主として、次の業務を行うもの」とされている(同条第3項)。

ア 福祉事務所の所員に対し、技術的指導を行うこと。

イ 第13条第1項第2号に規定する業務(知的障害者の福祉に関する相談に応じ、必要な調査及び指導を行うこと並びにこれらに付随する業務を行うこと)のうち、専門的技術を必要とするものを行うこと。

そして、知的障害者福祉司として任用されるための資格、いわゆる任用資格については、法第11条において、次のとおり定められている。

法第11条 知的障害者福祉司は、事務吏員又は技術吏員とし、次の各号のいずれかに該当する者のうちから、任用しなければならない。

一 社会福祉法に定める社会福祉主事たる資格を有する者であって、知的障害者の福祉に関する事業に2年以上従事した経験を有するもの

二 学校教育法に基づく大学又は旧大学令に基づく大学において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者

三 医師

四 知的障害者の福祉に関する事業に従事する職員を養成する学校その他の施設で厚生労働大臣の指定するものを卒業した者

五 前各号に準ずる者であって、知的障害者福祉司として必要な学識経験を有するもの

(3)ケース・ワーカー及び心理判定員の資格について

知的障害者更生相談所における職員については、厚生省社会局長通知の「第一 五 職員の資格」において、その構成の標準的な考え方が示され、所長の資格、心理判定員又は職能判定員の資格及びケース・ワーカーの資格がそれぞれ記載されている。

ケース・ワーカーの資格及び心理判定員の資格は、次のとおりである。

ア ケース・ワーカーの資格(厚生省社会局長通知 第一 五 3に記載)

(ア)知的障害者福祉司又は社会福祉主事の資格を有する者

(イ)前号に準ずると認められる者

イ 心理判定員の資格(厚生省社会局長通知 第一 五 2に記載)

(ア)学校教育法に基づく大学、または旧大学令に基づく大学において、心理学を専攻する学科を卒業した者

(イ)知的障害者福祉司その他社会福祉事業従事者として2年以上その職務を行い前号に準ずる学識経験を有すると認められる者

(4)大阪府における知的障害者更生相談所の設置について

大阪府においては、法第12条第1項に規定に基づき、昭和35年11月に大阪府知的障害者更生相談所(現在の名称)(以下「知更相」という。)を設置し、法等に基づき、下記の業務を行っている。

ア 法第12条関係

(ア)知的障害者に関する問題につき、家庭その他からの相談に応ずる。

(イ)18歳以上の知的障害者の医学的、心理学的及び職能的判定を行うとともに、これに付随して必要な指導を行う。

(ウ)必要に応じ、巡回して、前項の業務を行う。

イ 厚生省社会局長通知関係

(ア)知的障害者福祉司に対し技術的指導を行う。

(イ)福祉事務所及び援護施設等と密接な連絡をとるとともに情報の交換を行う。

(ウ)知的障害者援護に必要な統計資料の整備と技術的指針の研究を行う。

(エ)知的障害者援護事業従事者が参加するケース研究会を企画実施する。

ウ 知的障害者福祉法施行令(昭和35年4月18日政令第103号)第1条関係

(ア)保護者、福祉事務所に対して判定書を交付する。

そして、平成12年度における職員体制は、「第五 実施機関の主張要旨」の1(3)のとおりである。

なお、大阪府においては、知更相の愛称を「大阪府知的障害者サポートセンター」としている。

3 身体障害者更生相談所・知的障害者更生相談所実態調査について

平成13年2月、各都道府県・政令市、身体障害者更生相談所長及び知的障害者更生相談所長に対し、全国身体障害者更生相談所長協議会会長及び全国知的障害者更生相談所長協議会会長である者を筆頭者とする3名から、「身体障害者更生相談所・知的障害者更生相談所実態調査」(以下「本件実態調査」という。)の依頼文(以下「本件依頼文」という。)が送付された。

本件依頼文によると、本件実態調査は、平成12年4月の地方分権一括法が施行され、身体障害者・知的障害者更生相談所はその専門的・技術的機能について市町村等に支援を振り向けることが期待されていること、加えて、社会福祉事業法等の改正による社会福祉基礎構造改革により、身体障害者・知的障害者更生相談所にはこれまでの措置方式から利用契約方式への改革に伴う新たな役割が求められていること、さらに、知的障害者の措置権も町村に委譲されることが予定されているという大きな変革の時を迎え、身体障害者・知的障害者更生相談所の現状の事務体制、認定業務導入の可能性、改善点などを至急把握し、時代の要請に応えるために必要な更生相談所の課題を整理し、更生相談所の現状と問題点を現場の視点から検証することを目的に実施されたものである。

なお、本件実態調査は、厚生科学研究の振興を促し、もって国民の保健医療、福祉、生活衛生等に関し、行政施策の科学的な推進を確保し、技術水準の向上を図ることを目的とした研究に補助する「厚生科学研究事業補助」を受けて実施された事業である。そして、この報告書には、「調査票原本では知更相の名称や記入者などを実名記載としたが、本研究班において、業務上のプライバシーに関する内容については、施設の特定が行われることのないように十分配慮することを申し合わせた。また、資料は事務局にて厳重に管理すること、集計資料は本調査以外の目的には用いないことを確認した。」旨が記載されており、同報告書には、知的障害者更生相談所の職員体制について、個々の知的障害者更生相談所の名称が特定されるような内容は見当たらない。

4 本件行政文書について

本件行政文書は、実施機関が、本件実態調査に関し、全国知的障害者更生相談所協議会会長あてに回答することについて意思決定を行うために起案し、知更相の所長まで決裁をとった際に起案に添付された回答案である。

本件行政文書には、次の調査項目の内容及びこれに対する回答が記載されており、本件非公開部分は、下記項目のうち、『「1(ローマ数字) 組織・体制」の「8 職員体制」の「(3)知的障害者福祉司等の配置状況等について」及び「(4)心理判定員の配置状況等について」の項目』(以下「本件調査項目」という。)に記載された情報の一部である。

そして、当審査会で審査したところ、本件行政文書のうち、本件調査項目以外の調査項目に記載された内容は、本件非公開部分の判断に直接関わらないと考えられるため、以下、本件調査項目に記載された主な情報及び本件非公開部分について述べることとする。

  [調査項目]

1(ローマ数字) 組織・体制

1 設置形態

2 更生相談所長

3 併設施設の運営主体

4 実際に用いられている知更相の名称

5 現在の組織について、知更相業務を行うときの利点や不利な点などの問題点

6 児童相談所や身体障害者更生相談所等の関連施設を統合して、総合的に運営することについての意見

7 施設・整備の状況

8 職員体制

(1)所長の勤務形態等

(2)更生相談所業務に携わる医師の配置状況等について

(3)知的障害者福祉司等の配置状況等について

(4)心理判定員の配置状況等について

(5)職能判定員の配置状況等について

(6)看護婦・保健婦の配置状況等について

(7)職員の資質の向上への取り組みについて

2(ローマ数字) 管轄区域の状況について(平成12年3月31日現在)

3(ローマ数字) 更生相談について

4(ローマ数字) 療育手帳制度について

5(ローマ数字) 施設入所者の措置費重度加算にかかる重度認定について

6(ローマ数字) 知的障害者援護施設入所調整会議について

(1)「(3)知的障害者福祉司等の配置状況等について」の調査様式

「(3)知的障害者福祉司等の配置状況等について」の調査様式(以下「本件調査様式1」という。)は、知更相における平成12年度の職員のうち、本件調査様式1の対象となった職員、すなわち、知的障害者福祉司として任用された者のうち、ケース・ワーカーとして勤務している専任常勤の職員8名に関して、主に次の項目について調査したものであって、個々の職員ごとに、調査項目と回答が表形式で記載されている。

当審査会において確認したところ、個々の職員の氏名は記載されていないことが認められた。

本件処分において非公開としたのは、次の項目のうち、オ(「資格1 知更相での任用資格」)及びキ(「資格3 個人的資格の保有状況」)の各項目の欄に記載された情報の一部であり、次のア、イ、ウ、エ及びカの部分は全て公開されている。

ア 勤務形態

勤務形態について、次の項目のチェック欄にレ点を付すことにより選択することとされている。本件調査様式1に記載された8名については、全て専任常勤の項目にレ点が付されていることが認められる。

a 「専任常勤」

b 「兼任常勤」

c 「非常勤・嘱託」

イ 「専門的担当領域 知更相判定業務における主たる業務」

知更相判定業務における主たる業務について、次の項目のチェック欄にそれぞれレ点を付すことにより選択することとされておいる。

a 「施設入所判定」

b 「療育手帳判定」

c 「生活相談」

d 「職業相談」

e 「他」

ウ 「知更相経験年数」

次の項目のチェック欄にレ点を付すことにより選択した上で、知更相における経験年数を記載することとされており、個々の職員ごとに具体的な年数が記載されている。

当審査会で確認したところ、回答として記載された年数は一様でなく、8名の職員につき7通りの年数が記入されており、ほぼ全ての職員についてその年数が異なっていることが認められた。

a 「福祉司」

b 「CW」(ケースワーカー)

エ 「業務経験年数等(常勤本務)」

過去の業務経験について、次の施設ごとにそれぞれの経験年数を記載するものであり、個々の職員ごとに具体的な年数が記載されている。

a 「身更相」

b 「児童相談所」

c 「福祉事務所」

d 「施設病院」

e 「その他」

なお、上記aからcについては、「福祉司」及び「CW」(ケースワーカー)のチェック欄が設けられており、dについては、「MSW」(メディカルソーシャルワーカー)のチェック欄が設けられている。

当審査会で確認したところ、この調査項目に対する回答内容は、対象となる8名の職員において全て異なっていることが認められた。

オ 「資格1 知更相での任用資格」

知更相における知的障害者福祉司としての任用資格について、個々の職員ごとに、次の項目のチェック欄にレ点を付すことにより選択することとされている。本件処分においては、この調査項目について、次の各項目の選択肢の内容の部分は公開し、レ点を付すチェック欄の部分のみが非公開とされたものである。

なお、次のaからdの項目は、次のとおり、それぞれ、上記2(2)で述べた法第11条の第1号から第5号に定める知的障害者福祉司の任用資格のうち、第3号の医師を除いたものに該当するものである。

a 「社福主事2年以上」

法第11条第1号の「社会福祉法に定める社会福祉主事たる資格を有する者であって、知的障害者の福祉に関する事業に2年以上従事した経験を有するもの」に該当する。

b 「大学で大臣の指定科目を修め卒業」

法第11条第2号の「学校教育法に基づく大学又は旧大学令に基づく大学において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者」に該当する。

c 「養成校卒業」

法第11条第4号の「知的障害者の福祉に関する事業に従事する職員を養成する学校その他の施設で厚生労働大臣の指定するものを卒業した者」に該当する。

d 「前各号に準ずる者」

法第11条第5号の「前各号に準ずる者であって、知的障害者福祉司として必要な学識経験を有するもの」に該当する。

当審査会で確認したところ、記載されたすべての職員について、上記aからdのいずれかにレ点が付されていることが認められた。

カ 「資格2 採用時資格」

個々の職員の採用時の職種について、次の項目のチェック欄にレ点を付すことにより選択することとされている。

a 「福祉職」

b 「心理職」

c 「一般行政職」

d 「その他」

キ 「資格3 個人的資格の保有状況」

個々の職員の有する資格を記載するものであり、2つのチェック欄が設けられ、そのうちの一つには、「社会福祉士」が選択肢として記載され、もう一つのチェック欄には何の選択肢も示されず、自由に記入できるようになっている。

本件処分においては、この欄の全ての部分が非公開とされている。

当審査会で確認したところ、職員によってそのチェックの状況は異なっており、自由記載の欄に具体的な資格の名称が記載されていることが認められた。

(2)「(4)心理判定員の配置状況等について」の調査様式

「(4)心理判定員の配置状況等について」の調査様式(以下「本件調査様式2」という。)は、知更相における平成12年度の職員のうち、心理判定員である職員15名に関して、主に次の項目について調査したものであって、個々の職員ごとに、調査項目と回答が表形式で記載されている。

当審査会において確認したところ、個々の職員の氏名は記載されていないことが認められた。

本件処分において非公開としたのは、次の項目のうち、オ(「資格1 知更相での任用資格」)及びキ(「資格3 個人的資格の保有状況」)の各項目の欄に記載された情報の一部であり、次のア、イ、ウ、エ及びカの部分は全て公開されている。

ア 勤務形態

勤務形態について、次の項目のチェック欄にレ点を付すことにより選択することとされている。本件調査様式2に記載された15名については、専任常勤8名、非常勤・嘱託5名及び記載がない者2名であることが認められる。

a 「専任常勤」

b 「兼任常勤」

c 「非常勤・嘱託」

イ 「専門的担当領域 知更相判定業務における主たる業務」

知更相判定業務における主たる業務について、次の項目のチェック欄にそれぞれレ点を付すことにより選択することとされておいる。

a 「施設入所判定」

b 「療育手帳判定」

c 「生活相談」

d 「他」

ウ 「知更相経験年数」

知更相における経験年数を記載することとされており、個々の職員ごとに具体的な年数が記載されている。

当審査会で確認したところ、回答として記載された年数は、15名につき9通りの年数が記入されていることが認められた。

エ 「業務経験年数等(常勤本務)」

過去の業務経験について、次の施設ごとにそれぞれの経験年数を記載するものであり、個々の職員ごとに具体的な年数が記載されている。

a 「身更相」

b 「児童相談所」

c 「福祉事務所」

d 「施設病院」

e 「その他」

当審査会で確認したところ、この調査項目に対する回答内容は、対象となる15名のうち3名については記載がなく、記入のある12名の職員において全て異なっていることが認められた。

オ 「資格1 知更相での任用資格」

知更相における心理判定員としての資格について、個々の職員ごとに、次の項目のチェック欄にレ点を付すことにより選択することとされている。本件処分においては、この調査項目について、次の各項目の選択肢の内容の部分は公開し、レ点を付すチェック欄の部分のみが非公開とされたものである。

なお、次の各項目は、それぞれ、上記2(3)で述べた厚生省社会局長通知で定められている心理判定員の資格に該当するものである。

a 「心理学専攻」

厚生省社会局長通知の「学校教育法に基づく大学、又は旧大学令に基づく大学において、心理学を専攻する学科を卒業した者」に該当する。

b 「知障等2年以上」

厚生省社会局長通知の「知的障害者福祉司その他社会福祉事業従事者として2年以上その職務を行い前号に準ずる学識経験を有すると認められる者」に該当する。

当審査会で確認したところ、記載されたすべての職員について、上記a又はbのいずれかにレ点が付されていることが認められた。

カ 「資格2 採用時資格」

個々の職員の採用時の職種について、次の項目のチェック欄にレ点を付すことにより選択することとされている。

a 「福祉職」

b 「心理職」

c 「一般行政職」

d 「その他」

キ 「資格3 個人的資格の保有状況」

個々の職員の有する資格を記載するものであり、2つのチェック欄が設けられ、そのうちの一つには、「臨床心理士」が選択肢として記載され、もう一つのチェック欄には何の選択肢も示されず、自由に記入できるようになっている。

本件処分においては、この欄の全ての部分が非公開とされている。

当審査会で確認したところ、職員によってそのチェックの状況は異なっており、自由記載の欄に具体的な資格の名称が記載されていることが認められた。

5 本件処分に係る具体的な判断及びその理由

実施機関は、本件非公開部分に記録された情報が条例第9条第1号に該当すると主張するので、条例第9条第1号に該当するか否かについて以下検討する。

(1)条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限に配慮をしなければならない旨規定している。

このような趣旨をうけて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、

イ 特定の個人が識別され得るもののうち、

ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

(2)これを、本件非公開部分について検討する。

ア 本件非公開部分は、先に述べたとおり、本件実態調査の回答様式に記載された情報のうち、次の部分である。

(ア)「知的障害者福祉司等の配置状況等について」の様式(本件調査様式1)のうち、「資格1 知更相での任用資格」欄のチェック欄の部分及び「資格3 個人的資格の保有状況」欄の部分

(イ)「心理判定員の配置状況等について」の様式(本件調査様式2)のうち、「資格1 知更相」での任用資格」欄のチェック欄の部分及び「資格3 個人的資格の保有状況」欄の部分

これら本件非公開部分は、本件調査様式1の対象となった職員が知的障害者福祉司として任用された際、どの任用資格に該当していたのか、本件調査様式2の対象となった心理判定員がどの資格に該当していたのか、あるいは、これらの職員が個人的にどのような資格を保有しているのかを具体的に明らかにする情報であり、いずれも、条例第9条第1号の個人の経歴、社会的活動等に関する情報であることが認められる。

そこで、これらの情報について、条例第9条第1号の「特定の個人が識別され得るもの」であり、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当するかどうか検討する。

イ まず、本件非公開部分が「特定の個人が識別され得る」情報に該当するか否かを検討する。

一般に、「特定の個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって、直接特定の個人が識別され得る場合に加えて、一般人が容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって、特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。また、照合すべき他の情報の範囲については、当該情報が公開されることによって生じるプライバシー侵害の内容や程度、あるいは侵害が発生する蓋然性の程度等に照らし、総合的に検討されるべきである。

当審査会において確認したところ、本件調査様式1及び本件調査様式2(以下「本件調査様式」という。)において、具体的な個人の氏名は記載されておらず、本件行政文書の他の部分にも、これら調査の対象となった職員の氏名の記載は認められない。

しかしながら、本件調査様式には、知的障害者福祉司8名と心理判定員15名について、専任常勤などの勤務形態や知更相での経験年数、さらには、過去の施設別の業務経験年数が、それぞれ具体的に記載されており、これらの情報を総合して職員ごとにみると、その内容は、先に述べたとおり、個々の職員ごとに全く異なるものである。そして、これらの情報は本件処分において既に公開されているところであって、これらの情報と広く一般に公表されている大阪府職員録等の情報と結びつけることにより、本件調査様式に記載された職員について特定の個人が識別され得ることは明らかである。

よって、本件非公開部分は、条例第9条第1号の「特定の個人が識別され得る」情報に該当すると認められる。

ウ 次に、本件非公開部分が、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当するか否かを検討する。

(ア)まず、本件非公開部分のうち、次の部分(以下「資格該当チェック欄」という。)について検討する。

a 「知的障害者福祉司等の配置状況等について」の様式(本件調査様式1)のうち、「資格1 知更相での任用資格」欄のチェック欄の部分

b 「心理判定員の配置状況等について」の様式(本件調査様式2)のうち、「資格1 知更相での任用資格」欄のチェック欄の部分

ところで、知的障害者福祉司であるケース・ワーカー及び心理判定員は、法及び厚生省社会局長通知によると、先に述べたとおり、それぞれ、必ず法又は厚生省社会局長通知に定められたいずれかの資格に該当することによってその業務を行うものである。すなわち、知的障害者福祉司であるケース・ワーカーは、法第11条各号に示された5つの資格のいずれかに該当することによって、はじめてその立場において、専門の業務を行うことができるものであり、心理判定員についても、厚生省社会局長通知に示された2つの資格のいずれかに該当することによって、はじめて心理判定員としての専門の業務を行い得るものである。そして、本件調査様式1に記載された知的障害者福祉司であるケース・ワーカーと本件調査様式2に記載された心理判定員は、それぞれ、法第11条に定める資格又は厚生省社会局長通知に定められた資格のいずれかを満たした上で、平成12年度に知更相における専門的な業務に携わっていたものであり、言い換えれば、これらの職員は、その経歴の内容の一部がほぼそのまま業務を行う資格となる職種である。

そして、資格該当チェック欄について公開・非公開の判断を行うに当たっては、このように、本件行政文書に記載された職員が、公務員の中でも、その業務に携わる上で特定の資格に該当していることが必須条件とされている職種のものであること、これらの資格が職員の経歴をその内容とするものであること、そして、これらの職員が該当している資格と当該職員が行う専門的業務の内容が極めて密接に関わるものであることなどを十分踏まえる必要がある。

実施機関は、資格該当チェック欄について、「いずれかを選択したかが明らかになることにより、当該職員の公職に就くまでの学歴等が明らかになる。職員の公務に就くまでの学歴等は個人に専属する情報であり、たとえそれが公務員に関する情報であったとしても一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報である」と主張する。

確かに、本件調査様式1における資格該当チェック欄を公にすることにより、個々の職員が、大学を卒業しているのか、いわゆる養成校を卒業しているのか、あるいは、知的障害者福祉司として必要な学識経験を有するものとして任用されたのかなどが明らかとなる。また、本件調査様式2における資格該当チェック欄を公にすることにより、個々の職員が、大学を卒業しているのか、あるいは、これに準ずる学識経験を有すると認められた者であるのかなどが明らかとなる。そして、社会一般において、大学を卒業した者と、いわゆる養成校を卒業した者、あるいはこれらに準ずる学識経験を有するものと認められた者とが、様々な局面において全く同様の捉えられ方をされるものではないことを否定するものではない。

しかしながら、先に述べたとおり、これらの職員が知更相においてケース・ワーカー又は心理判定員として勤務する以上、これらの職員がそれぞれ法等に定める4種類又は2種類の資格のいずれかに該当していることは明らかである。そして、資格該当チェック欄に記載された情報は、個人の経歴に関する情報であるとはいえ、先に述べたとおり、当該職員の専門的業務に極めて密接に関わるものであり、職員がその業務を行う正当性を具体的に示す情報であって、当該職員が知更相にケース・ワーカー又は心理判定員として勤務していた限りにおいては、職員の経歴が業務を行う資格となっているものについてその該当する資格の内容を具体的に明らかにすることの必要性を否定することはできないものである。

以上を総合すると、資格該当チェック欄に記載された情報は、条例第9条第1号の「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」とまでは認められないものと言わざるを得ない。

(イ)次に、本件非公開部分のうち、上記(ア)を除く次の部分(以下「本件個人的資格保有状況欄」という。)について検討する。

a 「知的障害者福祉司等の配置状況等について」の様式(本件調査様式1)のうち、「資格3 個人的資格の保有状況」欄

b 「心理判定員の配置状況等について」の様式(本件調査様式2)のうち、「資格3 個人的資格の保有状況」欄

当審査会で審査したところ、本件個人的資格保有状況欄のうち、具体的に例として示されている社会福祉士及び臨床心理士のチェック欄については、各職員によってそのチェックの状況が異なっており、職員によっては、自由記載の欄には、資格の名称が具体的に記載されていることが認められる。そして、自由に記載された資格の内容について審査したところ、福祉関係の資格に加え、福祉の分野に直接関わらない資格の名称も具体的に記載されていることが認められる。

ところで、本件個人的資格保有状況欄に記載された情報は、本件行政文書に記載された職員が、個人的に取得した資格の保有状況を具体的に示すものである。そして、知的障害者福祉司であるケース・ワーカー及び心理判定員について必須とされている資格は、先に述べたとおり、法及び厚生省社会局長通知に列挙されたもののみであり、各様式に例示されている社会福祉士及び臨床心理士は、これら必須とされている資格に含まれているものではない。また、本件個人的資格保有状況欄のチェック欄については、そのチェックの状況により、特定の職員が社会福祉士又は臨床心理士の資格を有することを明らかにすることに加え、特定の職員がこれらの資格を有しないことをも併せて明らかにするものである。さらに、本件個人的資格保有状況欄については、記載した内容全てが具体的に明らかになることを前提として記載されたものと断定することはできないものと言わざるを得ない。

以上を総合すると、本件個人的資格保有状況欄に記載された情報は、本件行政文書に記載された職員が、業務上必須とされるものではない資格について個人的に取得したものの名称が具体的に記載されたものであり、その中には福祉の分野に直接関わらない資格の名称が具体的に記載されていること、また、これらの情報が広く明らかになることを前提として記載されたものと断定することはできないことなどから、公務員に関する情報であるとはいえ、条例の基本原則である「個人のプライバシーの最大限保護」を踏まえると、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。

エ なお、異議申立人は、本件非公開部分について、異議申立ての理由においては、「一般的にいえば、公表を予定されている情報あるいは公表を期待されている情報であり、公にしても社会通念上個人のプライバシー等の権利利益を害するおそれはなく、仮に害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲にとどまるものと考えられる。つまり公開することが不開示とすることによって保護される利益に優越して必要であると認められる情報は開示することとなる。公務員の職に関する情報は、行政事務に関する情報としてはその職務行為に関する情報と不可分の要素であるから全面開示である。知的障害の分野においては、臨床心理士、社会福祉士という資格は、その資格を保有している人は、積極的に保有していることをアピールしています。他人に知られたくないと思っている人はいません。」と、また、反論書においては、「臨床心理士の資格の保有については知的障害者サポートセンター職員としての職務に関する情報である。社会通念上知的障害者サポートセンターの現状を知る為には個人の資格であっても業務に関係する資格は開示される必要がある。開示されても実害は発生しない。」旨を主張している。

しかしながら、本件個人的資格保有状況欄に記載された情報は、その中に福祉に関係する資格の名称が含まれてはいるが、職員があくまでも個人的に取得した資格に関するものであり、また、本件個人的資格保有状況欄のチェック欄については、そのチェックの有無により、特定の職員が社会福祉士又は臨床心理士の資格を有することを明らかにすることに加え、特定の職員がこれらの資格を有しないことをも併せて明らかにするものであることは、先に述べたとおりである。そして、当審査会で審査したところ、公務員に関する情報であることを考慮しても、先に述べたとおり、条例第9条第1号において公開が禁止されている情報に該当すると言わざるをえず、異議申立人の主張は認めることはできない。

6 結論

以上のとおりであるから、本件非公開部分のうち、資格該当チェック欄に記載された部分については、本件異議申立てには理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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