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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第160号)

貸金業変更届出書等部分公開決定異議申立事案

(答申日 平成20年9月12日)

第一 審査会の結論

実施機関は、本件異議申立ての対象となった部分公開決定において公開しないこととした部分のうち、別表に掲げる部分を公開すべきである。

実施機関のその余の判断は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成20年3月11日、異議申立人は、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「株式会社A(以下「本件法人」という。)、大阪府知事(○○)第××××号の現在の営業所所在地、代表者氏名がわかる文書」についての行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同年3月17日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として次の行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、本件行政文書に第三者である本件法人に関する情報が記録されていることから、条例第17条第1項の規定に基づき意見書提出の機会を付与するため、本件法人に対し、「第三者意見書提出機会通知書」を送付した。
    (行政文書の名称)
    本件法人から提出された平成20年3月3日付け変更届出書、3月5日付け誓約書、3月1日付け残貸付債権の状況等に係る報告書
  3. 同年3月21日、本件法人から、次のとおり公開に反対する旨の内容の意見書の提出があった。
    本件法人に係わる全ての関係者及び代表取締役、取締役、監査役、使用人、主任者、責任者他、個人を特定できる個人情報に係わる全ての関係者の住所、氏名、連絡先などの部分
  4. 同年3月27日、実施機関は、条例第13条第1項の規定により、本件行政文書について、(1)の部分を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、公開しないことと決定した部分についての公開しない理由を(2)のとおり付して異議申立人に通知した。
    • (1)公開しないことと決定した部分
      法人代表者の印影、変更届出書における変更後の住所のうち、登記簿に記載されていない部分、代表者個人の携帯電話番号、残貸付債権額及び債務者数
    • (2)公開しない理由
      大阪府情報公開条例第8条第1項第1号に該当する。
      本件行政文書(非公開部分)には、法人の代表者の印影及び残貸付債権額等法人の資産に関する情報が記録されており、これらを公にすることにより、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
      大阪府情報公開条例第9条第1号に該当する。
      本件行政文書(非公開部分)には、個人の住所(登記簿に記載されている部分を除く。)及び携帯電話番号が記録されており、これらは個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。
  5. 同日、実施機関は、本件決定を行った旨及び本件非公開部分を除いて公開することとした理由を付して本件法人に通知した。
  6. 同年4月8日、異議申立人は、本件決定を不服として行政不服審査法第6条の規定により、本件決定の取り消しを求める異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件決定を取り消し、全部公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、次のとおりである。

この情報公開請求の目的は、本件法人の事務所の差し押さえである。よって部屋番号がわからなければ、差し押さえの手続ができない。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 貸金業の登録に関する事務について

貸金業を営もうとする者は、本件法人が直近に貸金業登録した平成15年9月3日当時(以下「登録当時」という。)の貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業規制法」という。)第3条第1項(現貸金業法第3条第1項)の規定により、当該申請法人の営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。

当該申請に対し、登録当時の貸金業規制法第6条(現貸金業法第6条)の規定による登録拒否要件審査の結果、適当と認められたときには、登録当時の貸金業規制法第5条第1項(現貸金業法第5条第1項)の規定により貸金業者登録簿に登録する。登録簿への登録は、登録当時の貸金業規制法施行規則第4条の2第1項(現貸金業法施行規則第4条の2第1項)の規定により、登録申請書様式第1号第2面から第8面までを貸金業者登録簿につづることにより行うこととされている。

また、登録当時の貸金業規制法第9条(現貸金業法第9条)及び登録当時の貸金業規制法施行規則第9条第2項(現貸金業法施行規則第9条第2項)の規定により、貸金業者登録簿は、一般の閲覧に供するものとされている。

登録後に貸金業者登録簿の内容に変更が生じた場合は、貸金業規制法第8条第1項(現貸金業法第8条第1項)の規定により、変更の届出を、また、登録有効期間内に廃業を行う場合は、登録当時の貸金業規制法第10条第1項(現貸金業法第10条第1項)の規定により、廃業等の届出を行うこととされている。

なお、貸金業者が登録有効期間(3年)切れ、廃業及び登録の取消し処分等となったときは、貸金業者の登録を消除しなければならない旨登録当時の貸金業規制法第40条(現貸金業法第24条の6の7)で規定されており、貸金業者登録簿からも消除することとされている。

ただし、登録有効期間切れ、廃業及び登録の取消し処分等となった場合でも、「当該貸金業者が締結した貸付けの契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお貸金業者とみなす」と登録当時の貸金業規制法第44条(現貸金業法第44条)に規定されており、登録の有効期間がなくなった場合でも、みなし貸金業者として法令の適用を受けることとなる。

2 本件行政文書について

本件行政文書は、本件法人から平成18年1月31日付で廃業の届出が提出されているが、上述のとおり、みなし貸金業者として、廃業当時の貸金業規制法第42条第1項(現貸金業法第24条の6の10第1項)の規定により、実施機関に対して提出されたものである。

本件行政文書に記録されている事項は以下のとおりである。

(1)変更届出書

届出日、届出者の住所・郵便番号・電話番号・商号又は名称・代表者の氏名・法人代表者の印影、届出者の廃業当時の登録番号、変更(予定)年月日、変更に係る届出事項(本件においては、代表取締役の変更に伴う氏名、主たる営業所又は事務所の変更に伴う住所、連絡先等の変更に伴う電話番号)

(2)誓約書

届出日、届出者の住所・郵便番号・商号、代表者の氏名、法人代表者の印影、廃業当時の登録番号、貸金業の業務を行わない登記簿上の本店の所在地、貸金業の業務を行う主たる営業所等の店舗名等・所在地、登記簿上の本店において、貸金業の業務を行わない理由

(3)残貸付債権の状況等に係る報告書

届出日、届出者の住所・郵便番号・電話番号・商号又は名称・代表者の氏名・法人代表者の印影、残貸付債権の状況及び債権回収方針(本件においては、残貸付債権額及び債務者数)、債権譲渡の状況、取立委託の状況、帳簿及び個人情報の取扱い(本件においては、具体的な措置状況)

本件行政文書のうち、異議申立人が非公開に反対している部分は、公開しないことと決定した法人代表者の印影、変更届出書における変更後の住所のうち登記簿に記載されていない部分、代表者個人の携帯電話番号、残貸付債権額及び債務者数の部分全て(以下「本件係争部分」という。)である。

3 条例における公開原則について

条例においては、その前文にあるように、「府の保有する情報は公開を原則」、「個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護」、「府が自ら進んで情報の公開を推進」を制度運営の基本的姿勢としている。

よって、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報を公開しなければならないものである。

4 本件決定の適法性について

(1)条例第8条第1項第1号について

事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重・保護されなければならないという見地から、社会通念に基づき判断して、競争上の地位を害すると認められる情報、その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが条例第8条第1項第1号の趣旨である。

同号では、

  • ア 法人等に関する情報であって、
  • イ 公にすることにより、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものは、公開しないことができると規定している。

また、一般に、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理を侵害すると認められるものをいうと解されており、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、事業を営む者に対する名誉侵害、社会的評価の低下となる情報及び公開により団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらわれないものをいうと解されている。

そして、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、当該文書に記録された情報が明らかとなることにより、当該法人等に具体的な不利益が及んだり、社会的評価の低下につながるなどの事実が存在し、それが社会通念に照らして「競争上の地位その他正当な利益」を害すると認められる程度のものである必要があると解すべきである。

(2)本件係争部分が条例第8条第1項第1号に該当することについて

上記(1)ア及びイの要件を本件係争部分についてみると、本件係争部分は法人の代表者の印影及び残貸付債権額等法人の資産に関する情報であり、(1)アの要件に該当することは明らかである。そこで、本件係争部分に記録された情報が、(1)イの要件に該当するか否かを検討する。

本件法人は平成18年1月31日に貸金業については廃業しているものの、法人としては存続しており、これらの情報は、当該法人の財務状況等に関するものであり、金融上、経営上の秘密等に該当し、公開することにより競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものであることは明らかである。

したがって、(1)イの要件にも該当する。

(3)条例第9条第1号について

個人の尊厳の確保、基本的人権の尊重のため、個人のプライバシーは最大限に保護されなければならない。特にプライバシーは、一旦侵害されると、当該個人に回復困難な損害を及ぼすことに鑑み、条例は、その前文において、「個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護」することを明記し、条例第5条において「実施機関は、この条例の解釈及び運用に当たっては、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものをみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」ことを定めている。そして、条例第9条においては、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの

については、「公開してはならない情報」として定められている。

(4)本件係争部分が条例第9条第1号に該当することについて

(3)ア~ウの要件を本件係争部分についてみると、本件係争部分に記録されている情報は、法人代表者個人の携帯電話番号及び自宅住所(登記簿に記載されている部分を除く。)であり、これらはア及びイの要件に該当すると認められる。

また、ウの要件に該当するか否かについて検討すると、当該情報は、公表することにより、特定の個人の電話番号や自宅住所が明らかとなる情報であり、個人のプライバシーに関する情報として保護する必要があり、本件情報の公開によって、当事者の個人の尊厳が傷つけられたり、人格的利益が損なわれたりすることが懸念され、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」と認められるものであることは明らかである。

したがって、(3)ウの要件にも該当する。

(5)異議申立人の主張について

異議申立人は、本件法人の事務所の差し押さえを行うため、代表者個人の自宅住所の公開を求めているが、本件係争部分に記録されている変更後の営業所の所在地については、営業所の所在地であるものの、登記簿に記載されていない部屋番号については、当該法人代表者個人の自宅住所でもあることから、条例第9条第1号に該当し、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものである。

よって、この点について異議申立人の主張を採用することはできない。

5 結論

以上のとおり、本件決定条例の公開事由の要件に該当するものを公開として決定したものであり、何らの違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 貸金業の登録に係る実施機関の事務について

登録当時の貸金業規制法(現貸金業法)は、貸金業者について登録制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めている。

貸金業を営もうとする者は、当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならないこととされており(貸金業規制法第3条第1項(現貸金業法第3条第1項))、都道府県知事は、当該申請について審査の結果適当と認めれば、登録申請書様式第1号第2面から第8面までを貸金業者登録簿に綴ることにより登録を行い(貸金業規制法第5条第1項、同法施行規則第4条の2第1項(現貸金業法第5条第1項、同法施行規則第4条の2第1項))、貸金業者登録簿を一般の閲覧に供しなければならないこととされている(貸金業規制法第9条、同法施行規則第9条第2項(現貸金業法第9条、同法施行規則第9条第2項))。

また、貸金業者は、登録後に貸金業者登録簿の内容に変更が生じた場合は、変更の届出、登録有効期間内に廃業を行う場合は、廃業等の届出をそれぞれ行わなければならないこととされている(貸金業規制法第10条第1項(現貸金業法第10条第1項))。

なお、貸金業者の登録有効期限が切れたとき、又は廃業若しくは登録の取消処分となったときは、都道府県知事は貸金業者の登録を消除しなければならないこととされており(貸金業規制法第40条(現貸金業法第24条の6の7))、この場合、当該貸金業者の情報は、閲覧に供している貸金業者登録簿からも消除されるが、登録有効期間切れ、廃業及び登録の取消し処分等となった場合でも、当該貸金業者が締結した貸付けの契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお貸金業者とみなされ、法令の適用を受けることとされている(貸金業規制法第44条(現貸金業法第44条))。

3 本件行政文書について

本件行政文書は、本件法人が貸金業規制法第42条第1項(現貸金業法第24条の6の10第1項)の規定により、みなし貸金業者として実施機関に提出したものであり、その内容及び本件決定における非公開部分は以下のとおりである。

(1)変更届出書

本件法人が代表者、住所及び電話番号を変更した旨の届出書であり、届出年月日、廃業当時の登録番号、本件法人の住所、郵便番号、電話番号、名称、代表者の氏名及び印影、変更年月日、変更前及び変更後の代表者、住所及び電話番号が記録されている。本件決定においては、変更後の電話番号、変更後の住所のうち登記簿に記載されていない部分(室番号)及び本件法人の代表者の印影が非公開とされている。

(2)誓約書

本件法人の代表者が登記簿上の本店において貸金業の業務を行わないことを誓約した書面であり、作成年月日、廃業当時の登録番号、誓約者である本件法人代表者の住所、郵便番号、氏名及び印影、貸金業の業務を行わない登記簿上の本店の所在地、貸金業の業務を行う主たる営業所等の店舗名等及び所在地、登記簿上の本店において、貸金業の業務を行わない理由が記録されている。本件決定においては、法人代表者の印影が非公開とされている。

(3)残貸付債権の状況等に係る報告書

本件法人が残貸付債権の状況について報告した書面であり、作成年月日、報告者である本件法人の住所、郵便番号、電話番号、名称、代表者の氏名及び印影、残貸付債権の状況及び債権回収方針(自主回収、取立委託、債権譲渡及びその他の債権回収方針別と合計の残貸付債権の額及び債務者数)、債権譲渡の状況、取立委託の状況、帳簿及び個人情報の取扱いについて、具体的な措置状況が記録されている。本件決定においては、変更後の電話番号(代表者個人の携帯電話番号)、法人代表者の印影、債権回収方針別と合計の残貸付債権の額及び債務者数が非公開とされている。

4 本件決定に係る具体的な判断及びその理由

異議申立人は本件行政文書の全部公開を求めているので、以下検討する。

(1)条例第8条第1項第1号について

事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

同号は、

  • ア 法人・・・その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、
  • イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)

が記録された行政文書は、公開しないことができる旨定めている。

また、本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果となると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害や社会的評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきものである。

(2)本件非公開部分の条例第8条第1項第1号該当性について

本件非公開部分に記録されている情報のうち、実施機関が本号を適用して公開しないことと決定した情報は、法人代表者の印影と、債権回収方針別と合計の残貸付債権の額及び債務者数である。これらの情報は、本件法人が行う事業に関する情報であることから、(1)アの要件に該当することは明らかである。

次に、これらの情報が(1)イの要件に該当するかどうかを検討するに、法人代表者の印影については、通常、法人自らが厳格に管理する情報であり、公にすることにより、印章偽造等の不正使用を誘発し、虚偽の契約書等の作成が容易になるなど、本件法人の正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当すると認められる。また、債権回収方針別と合計の残貸付債権の額及び債務者数については、通常、経営に係る詳細な情報として専ら法人内部において管理されている情報であり、公にすることにより、本件法人の正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。

以上のとおりであるから、法人代表者の印影と、債権回収方針別と合計の残貸付債権の額及び債務者数は、条例第8条第1項第1号に該当し公開しないことができる。

(3)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

(4)本件非公開部分の条例第9条第1号該当性について

本件非公開部分に記録されている情報のうち、実施機関が本号を適用して公開しないことと決定した情報は、本件法人の変更後の「主たる営業所又は事務所」として記載されている住所の非公開部分(室番号)と本件法人の変更後の「電話番号等」及び届出者の「電話番号」として記載されている携帯電話番号である。

これらの情報については、実施機関の説明等を総合すると、代表者個人の自宅住所及び代表者個人の携帯電話番号と同一と認められるから、一応(3)ア及びイの要件に該当するということができる。

そこで、これらの情報が(3)ウの要件に該当するか否かを検討するに、これらの情報はみなし貸金業者である本件法人の主たる営業所又は事務所の所在地及び電話番号として届出されたものであり、代表者個人の自宅住所や携帯電話番号と一致するとしても、法人の主たる営業所又は事務所の所在地及び電話番号である以上は、通常、債権者等に広く開示されるべき情報であり、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であるとは認められず、(3)ウの要件に該当しない。

以上のことから、本件決定において非公開とされた本件法人の変更後の「主たる営業所又は事務所」として記載されている住所の非公開部分(室番号)並びに本件法人の変更後の「電話番号等」及び届出者の「電話番号」として記載されている携帯電話番号については、条例第9条第1号には該当せず、公開すべきである。

5 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立ては、別表に掲げる部分の公開を求める部分について、理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

岡村周一、福井逸治、曽和俊文、松田聰子

別表

行政文書の名称

公開すべき部分

平成20年3月3日付け変更届出書

届出者(法人)の携帯電話番号

法人の変更後の主たる営業所又は事務所の所在地として記載されている住所の非公開部分(室番号)

法人の変更後の主たる営業所又は事務所の電話番号等として記載されている携帯電話番号

平成20年3月1日付け残貸付債権の状況等に係る報告書

届出者(法人)の携帯電話番号

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