人権学習シリーズ 同じをこえて その「ちがい」は何のため? 女性専用車両で考える特別な措置/3

更新日:2023年3月24日

人権学習シリーズvol.6 同じをこえて その「ちがい」は何のため? 女性専用車両で考える特別な措置。めやす30分

3. その「ちがい」は何のため?―女性専用車両で考える差別と平等―(60分)【メイン】

[個人作業1](5分)

動き(プログラムの流れ)

ポイント

◎ワークシート1を配付する
1)ワークシート1に、事例(AからF)が6個記載されています。これらの事例は、全て、現在、日本で実際に行われている、女性に対して特別に行われている措置です。

一例をあげると、Fのカードには、「F鉄道会社は、長距離特急の指定席に、女性だけが利用できる女性専用席を設置した」と書かれていますが、これは、2007年から特急雷鳥(サンダーバード)で、車両の一部に女性専用の座席を設置するという特別な措置が行われていることなどを意味します。「その『ちがい』は何のため?」というタイトルは、それぞれのカードについて、なぜ、このような特別な措置が行われているのかを考えてみようとするものです。

2)まず、事例AからFを読み、一人ひとりで考えてみてください。

3)「あなたの判断1」については、下記のとおり○を付けてください。

「その違い(特別な措置)は必要です。社会にとってあった方が良い。」と考えた場合は、「必要」に○を付けてください。

「その違い(特別な措置)は不必要です。社会から無くすべきだ。」と考えた場合は、「不要」に○を付けてください。

いずれも当てはまらない場合は、「?」に○を付けてください。

4)「あなたの判断2」については、下記のとおり○を付けてください。

「その違い(特別な措置)を考えた背景には何らかの実態的差別がある。差別や格差の是正を目的としているのだろう。」と考えた場合は、「ある」に○を付けてください。

「その違い(特別な措置)を考えた背景には、実態的差別は関係しない。他に何らかの目的があるのだろう。」と考えた場合は、「ない」に○を付けてください。

いずれも当てはまらない場合は、「?」に○を付けてください。

●「必要」「不必要」「ある」「ない」の2つの軸について、ワークシートの説明文を用いて、ていねいに説明する。

●理解しにくい場合は、具体例を用いて説明することもできます。

例1:映画館のレディースデイは「不要」である。なぜなら、女性だからといって、映画代も払えないような時代ではないから、「差別の実態はない」のである。

例2:女性専用車両は「必要」である。なぜなら、通勤・通学時間帯の電車では痴漢が多発しているからである。痴漢とは相手の意に反して性的接触を行う犯罪的行為であり、加害者の多くは男性であり、一方、被害者の多くは女性である。
つまり、痴漢行為の背景には、男性が女性を人格を持たない性的存在として扱う傾向を持つという「差別の実態がある」と言える。

[個人作業2](5分)

動き(プログラムの流れ)

ポイント

◎ワークシート2を参加者に配付する
グループ討議をする前に、自分の考えを確かめることが必要です。ワークシート2も個人作業用で、一人ひとりに配付されています。AからFの6項目について、それぞれ、ワークシート2の座標軸のどのあたりに位置するか考えて、記号を書いてください。

●ホワイトボードにモデルを例示しておくとわかりやすい。

【座標軸の図】縦軸と横軸が中央で交差している。横軸の左に「背景に差別の実態は無い」右に「背景に差別の実態がある」、縦軸の上に「必要」下に「不必要」と記載されている。事例A〜Fが座標軸にランダムに位置している。

[グループ討議](20分)

動き(プログラムの流れ)

ポイント

1)ペアを組み合わせて4人グループを作ってください。

2)皆さんに「司会者」「報告者」「記録者」「盛り上げ役」のいずれかの役割になっていただきます。報告者は、後でグループの話し合いのまとめを発表していただきます。記録者は、模造紙(座標軸)を作成してください。盛り上げ役は、ある時は聴き役になったり、ある時は反対意見を述べてみたりして、グループの話し合いが活性化するようにお願いします。

◎模造紙をグループに1枚配る

3)役割が決まったら、皆さんで協力して準備をしましょう。事例カードを6枚に切り分けてください。次に、模造紙を4つに折り、ワークシート2(座標軸)と同じように、十文字に線を引いてください。

4)では、司会者を中心に、6枚の事例カードを模造紙(座標軸)のどのあたりに置いたらよいか。グループで話し合ってください。

【実際にかかれた座標軸の例図】縦軸と横軸が中央で交差している。横軸の左に「背景に差別の実態は無い」右に「背景に差別の実態がある」、縦軸の上に「必要」下に「不必要」と記載されている。事例A・C・F・G、は「背景に差別の実態はある」「必要」に位置している。事例E、Hは「必要」に位置している。一方、事例B・Dは「背景に差別の実態はある」「不必要」に位置している。また、A・C・Eはのりもの系(被害者がいたからできたもの)としてグルーピングされ、F・G・Hは職・支援系にグルーピングされ、B・Dは割引系にグルーピングされている。

5)6枚の事例カード全てについて、全員の合意形成ができたら、貼り付けてください。

6)貼り付けられた6枚の事例カードをグループ分けして、水性マーカーで囲んでください。また、グループの特徴を、タイトルにして記載してください。

●全員の合意形成ができた頃に、のりを配付するとよい。

●グループの特徴をタイトルにする作業が滞った場合は、以下のように例示する。

例:○番と○番のカードの事例は、差別の実態はなくて、儲けの為だから「女性集めて収益UP!」にしました。

●タイトルは、マーカーなどを用いて、大きく書くように指示する。

[グループごとの発表](15分)

動き(プログラムの流れ)

ポイント

「事例カードの座標軸上の位置」「事例カードのグループごとの特徴」「グループ内で話し合ったことの中で特に紹介したいもの」について、2分程度にまとめて報告してください。

予想される意見
・女性だけが優遇されているのは逆差別ではないか
・特別な措置をするから、新たな差別を作ることになる
・痴漢の被害者がいるのだから、女性専用車両は必要
・男性の痴漢冤罪被害を防ぐためにも、女性専用車両は必要

●ホワイトボードなどに模造紙を貼り付けて、全員が見えるようにする。

●できれば、全ての模造紙が見えるように掲示する。

[事例カードについてのコメント](15分)

動き(プログラムの流れ)

ポイント

1)各グループの模造紙(座標軸)には、それぞれ、特徴がありましたね。自分で考えていたものと同じ考え方のものもあれば、異なる場合もあったと思います。大切にしたいのは、グループで意見交換をする中で、他の人の体験や考え方を知り、吟味し、自分の考えが確かなものに高められたり、自分の考えが変容していくプロセスを体験することだと思います。

2)今から、解説資料を配付し、それに基づいて説明します。
解説資料を配付する。
  資料の1番が、今日、私が考えた座標軸です。BとE、CとD、AとFの3つのグループに分類し、それぞれに位置を決めました。

  資料を見ながら、聴いてください。

3)BとEは、経営者が利益追求のために、集客サービスとして進めている措置です。資料の2番をご覧ください。「レディースデイは逆差別だ」という意見を聞くことがありますが、この映画館の場合は、実にさまざまな集客サービスを行っており、レディースデイはその一つでしかないことが分かります。

  経営戦略上の女性対象サービスは、その企業が女性客のさらなる拡大を目的として行っているのですから、社会的正義に照らして「あるべき・なくすべき」を論じる問題ではないと言えます。例えば、「女性には、ランチにデザートをサービス!」を行っているイタリア料理店と「12才以下の子どもさんには、クリスマス・プレゼントをサービス!」を行っているハンバーガー屋さんがあったとして、前者が許せなくて、後者が許せるという問題ではないといえます。

4)CとDは、就職率、平均収入、職業上の地位など、著しく低位にある女性の実態を背景に、格差是正を図るためにとられた措置です。D県の事業の場合、ドメスティック・バイオレンス(DV)の当事者や生活保護を受けているシングルマザーなど、社会的、経済的に困難な状況にある女性たちの自信回復や、就労などによる社会的自立を目的にしています。資料の3番をご覧ください。一般家庭に比べて母子家庭の平均所得は半分以下です。こうした著しい格差を解決するために行う特別な措置のことを、積極的差別是正策(アファーマティブ・アクションまたはポジティブ・アクション)といいます。資料の7番にあるように、国際的な人権基準により、こうした特別措置は差別とはみなされません。

●各グループの発表で出てきた意見を活用しつつ、コメントする。

●参加者は、メインアクティビティを通して、自分の考えに気づき、また、他者の体験や考え方に学ぶことで自分を客観化する。

●ファシリテーターは、コメントの時間に、参加者に新たな知識、認識を提供する。参加者の気づきを深め、認識を変容させる時間なので、必要な知識・情報は明確に伝える。

5)AとFについては、まず、被害の実態について確認するところから始めましょう。大阪府立大学の学生対象の調査では、女子学生のうち4人に1人が痴漢被害を経験していることが分かっています。更に、資料5によれば、大阪府立大学女子学生の9割弱が、痴漢被害の不安解消のために何らかの対策を取っていることが分かります。また、内閣府の調査によれば、5割の女性が痴漢被害にあっており、痴漢行為の7割は電車内で発生していることが分かっています。このように、今、女性たちは、本来、安心・安全でなければならない公共交通機関において危険な状態・不安な気持ちに置かれているのです。

また、コラムは、地下鉄御堂筋線で起きた事件に関する文章です。

痴漢行為を注意した女性が、逆に暴行を受けるという痛ましく、許しがたい事件ですが、大阪ではこの事件をきっかけに、女性専用車両の導入が進みました。また、資料7番の条文にあてはめて考えると、「女性専用車両は、女性に対する性暴力である痴漢行為の多発という事態を解決するための暫定()的な特別措置であり、差別とみなしてはならない。女性専用車両は、痴漢行為の撲滅という目標が達成されたときに廃止されるものとする。」と表現するのが妥当だと考えられます。Fの事例については資料6番をご覧ください。よって女性専用車両導入は、女性が安心して行動するために必要な措置といえます。

さて、皆さんの疑問に応えることができたでしょうか?

●コラムはできれば読み合わせをした方がよい。

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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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