令和4年度職員採用試験〔行政・警察行政(大学卒程度)〕の問題 論文 【法律・経済分野】

更新日:2024年1月24日

※令和6年度より試験科目を変更します
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※ユニバーサルデザインの観点から、体裁や符号の使い方などについて、実際の出題とは異なる表記に変更している部分があります。 

憲法

以下の事例を読んで、設問に答えなさい。

事例
 集中豪雨に伴う一級河川の氾濫(以下「本件災害」という。)により多数の県民が犠牲となったA県では、被災に伴って生活が困窮する世帯に対して、臨時特別支援金(以下「本件支援金」という。)を支給するための条例案が審議されている。
 収入の減少が著しい世帯に広く給付する案も検討されたが、財源に限りがあること、収入の調査に時間をかけるとすみやかな給付が実現できないこと、被災遺児の養育支援が喫緊の課題と目されること、A県の調査によれば世帯の生計は主として男性によって支えられるケースが多いことを理由として、現在の条例案では、本件支援金の支給対象を、被災により父を失った世帯(以下「被災母子世帯」という。)に限定している。
 なお、本件支援金の額は1月につき2万円、支給期間は1年6月としている。
 県議会では、被災遺児の養育支援に特化した給付金とすることについて合意が得られたものの、「被災母子世帯」への限定をめぐっては見解が対立し、被災により母を失った世帯(以下「被災父子世帯」という。)の排除を平等原則(憲法第14条第1項)違反とする批判も提起されている。これに対して、条例案の提出者は、金銭給付に関する立法裁量は広く認められるべきであって、憲法違反の懸念は当たらないと反論している。

《設問》
 本件支援金の支給対象を「被災母子世帯」に限定し、「被災父子世帯」を排除する条例案の適否について、憲法第14条第1項の観点から詳しく論じなさい。
 なお、参考となる最高裁判所の判例があれば、論述にあたって適宜言及すること。

行政法

以下の事例を読んで、(1)、(2)の問いに答えなさい。

事例
 Aは、P県内において、パチンコ店Bの営業を行っている。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)第13条第1項は、パチンコ店を含む風俗営業者は、午前0時から午前6時までの時間の営業を禁止している。また、同条第2項の委任を受けたP県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の第6条は、P県内のパチンコ店については、さらに午前6時から午前10時まで、午後11時から翌日の午前0時までの営業を禁止している。
 Bの開店時間が午前10時前のことがしばしばあるという情報を得て、その事実を確認したP県公安委員会は、所定の手続をとった後、Aに対し、風営法第26条第1項に基づき、40日の営業停止命令(以下「本件処分」という。)を出した。
 なお、P県公安委員会は、「風営法に基づく営業停止命令の基準」(以下「本件基準」という。)を設け公にしているところ、同基準によれば、営業時間違反の量定は「20日以上6月以下の営業停止命令。基準期間は40日。」であり、「営業停止命令を行う場合は、基準期間によることを原則とする。」とされていた。また同基準は、過去3年間に営業停止命令を受けた者に対しては、再度の処分の際に量定を加重する旨も定めている。

(1)Aが本件処分を争い、取消訴訟を提起したとして、同訴訟の係属中に営業停止期間の40日が経過したとする。この場合に、当該取消訴訟をなお適法に維持できるかについて、本件基準の法的性質に注意しつつ論じなさい。
(2)Aは、これまで風営法違反を理由に処分を受けたことがなく、本件で問題とされた違反内容も、5分ほど開店時間が早かったという軽微なものであった。またAは、本件処分に当たり実施された聴聞手続において強く反省の姿勢を示し、業務の改善計画についても具体的に述べていた。それにもかかわらず、本件処分においては、それらの事情が何ら斟酌された形跡がなく、基準どおりの40日の営業停止命令が出されたことに、Aは強い不服を有している。
 かかる不服の観点から本件処分の違法性について論じなさい。なお、本件基準には、処分の軽減事由を具体的に定めたような規定は設けられていないことを前提にしなさい。

〔参考条文〕
〇風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
 (目的)
第1条 この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。 
(営業時間の制限等)
第13条 風俗営業者は、深夜(午前0時から午前6時までの間をいう。以下同じ。)においては、その営業を営んではならない。(略)。
 一・二(略)
2 都道府県は、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があるときは、前項の規定によるほか、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、地域を定めて、風俗営業の営業時間を制限することができる。
3・4(略)
(営業の停止等)
第26条 公安委員会は、風俗営業者若しくはその代理人等が当該営業に関し法令若しくはこの法律に基づく条例の規定に違反した場合において著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるとき・・・・・・は、当該風俗営業者に対し、当該風俗営業の許可を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて当該風俗営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
2 (略)

〇P県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例
(ぱちんこ屋等の営業時間の制限)
第6条 ぱちんこ屋等を営む風俗営業者は・・・・・・、午前6時から午前10時まで及び午後11時から翌日の午前0時までの時間においては、その営業を営んではならない。

民法

以下の事例を読んで、(1)、(2)の問いに答えなさい。

事例
 AとBはいずれも大阪市内に居住しており、Aは、Bに対して、売買契約に基づく売買代金債権(以下「本件債権」という。)を有している。本件債権の弁済期は、2022年6月19日とされているが、Aは、同年5月頃、本件債権を第三者に譲渡することによって金銭を得ようと考えた。
 まず、Aは、同年5月9日、沖縄において、Cとの間で、本件債権をCに譲渡するという内容の契約を締結した。その翌日、Aは、Cとの間で本件債権の譲渡契約を締結した旨が記載された内容証明郵便(以下「甲郵便」という。)をBに対し作成し、沖縄の郵便局から送付した(甲郵便の日付印は同年5月10日とされている。)。
 次に、Aは、同年5月10日に大阪に戻り、同日、Dとの間で、本件債権をDに譲渡するという内容の契約を締結した。その翌日、Aは、Dとの間で本件債権の譲渡契約を締結した旨が記載された内容証明郵便(以下「乙郵便」という。)をBに対し作成し、大阪の郵便局から送付した(乙郵便の日付印は同年5月11日とされている。)。
 季節外れの天候不良が原因で、同年5月11日早朝から飛行機等の交通機関が運航を停止してしまったことにより、沖縄からの郵便物は同月13日夕方に大阪に到着した。このような事情もあり、乙郵便は同月12日に、甲郵便は同月14日に、それぞれBのもとに到達した。

(1)Dが、AとCとの間で本件債権を譲渡するという内容の契約が締結されたことを知らなかった場合、本件債権は、CとDのいずれに帰属するか論じなさい。
(2) Dが、AとCとの間で本件債権を譲渡するという内容の契約が締結されたことを知っており、かつ、Cに損害を与えようという意図を有していた場合、本件債権は、CとDのいずれに帰属するか論じなさい。

経済原論

 独占企業の価格戦略に関して、次の(1)から(6)の問いに答えなさい。

(1)第一種価格差別(完全価格差別)について、価格設定の方針を説明しなさい。また、単一価格を設定する場合と比べて生産者余剰が拡大する理由を説明しなさい。
(2)第二種価格差別について、価格設定の方針を説明し、具体例を1つ挙げなさい。また、単一価格を設定する場合と比べて生産者余剰が拡大する理由を説明しなさい。
(3)第三種価格差別について、価格設定の方針を説明し、具体例を1つ挙げなさい。また、単一価格を設定する場合と比べて生産者余剰が拡大する理由を説明しなさい。
(4)価格差別を行う企業が購入者による転売を禁止する理由を説明しなさい。
(5)次の記述の真偽について、その理由とともに説明しなさい。
    「価格差別の便益を得るのは、当該独占企業のみである。」
(6)価格差別が違法とされるのは、どのような場合か、説明しなさい。また、その理由について、余剰分析の観点から説明しなさい。

財政学

次の(1)、(2)の問いに答えなさい。

(1)現代の一般的な租税原則について説明し、さらに地方税にはどのような固有の原則が求められるか、論じなさい。
(2)高齢化の進展が、国と地方の財政支出にどのような影響を与えるか、論じなさい。

経済政策

 次の事例を読んで、(1)から(4)の問いに答えなさい。

事例

 大学生Aさん、Bさん、Cさんの三人が共同で使っている研究室がある。この研究室では1時間あたり100円で空気清浄機を動かすことができる。空気清浄機を1日あたりx時間動かすことに対する限界評価は
 Aさん:50−2x
 Bさん:40−8x
 Cさん:60−15x
になっている。

(1)限界評価の意味について説明しなさい。
(2)空気清浄機を動かすことがAさん、Bさん、Cさんの三人にとって公共財になっていることを説明しなさい。
(3)リンダール均衡における、1日あたり空気清浄機を動かす時間を求めなさい。
(4)フリーライダー問題について説明しなさい。

経営学

次の文章を読み、(1)から(3)の問いに答えなさい。

 事業活動の多くは、会社という仕組みを通じて継続的に行われる。会社の代表的な形態の一つが株式会社である。株式会社では会社の資産を株式という証券に分割し、(a)市場取引が行われることが多い。株式の所有者が会社の所有者とみなされ、株主と呼ばれる。株式会社は資本の証券化によって広く出資を募ることができるので、大規模な事業化が可能となる。しかし株主が増えるほど、株主全員が会社の経営について深い知識を有することはより困難になる。したがって経営資源の分配などの意思決定は専門的な経営者に委ねられる。これを所有と経営の分離という。
 会社は誰のものとみなすか、という問いに対する答えは、所有者(株主)と経営者、その他と関係者の間の綱引き次第で変わりうる。会社とは株主に利益をもたらすための道具だという考え方を株主用具観という。株主用具観では、会社がどれだけ株主に配当をもたらし、株式の市場価格を高めるかということが主要な問題となる。他方では会社は従業員のものだという従業員用具観や、(b)会社は経営者のものだという経営者用具観という見方も存在する。
 さて、会社は誰の道具でもなく、みんなのもの(制度)だという見方もありうる。これを会社制度観という。会社を制度とみなせば、地域社会や経済活動など、全体のために大きな役割を果たしており、それが存続し一定の成長を続けることが最も重要だということになる。(c)日本においていわゆる長寿企業が多く存在することと、会社制度観とは無関係ではないと考えられる。

(1)太字部(a)に関して、かなりの事業規模であっても、株式を自由に取引させないようにしている会社があり、非上場会社や非公開会社などといわれている。その目的としてどのようなものが考えられるか論じなさい。
(2)太字部(b)に関して、この見方にもとづく経営の成果として重要だと考えられるものを複数挙げなさい。
(3)太字部(c)に関して、ある調査によると、日本の長寿企業は、業種別では清酒製造業が多く、地域別では北陸地方や東北地方で長寿企業の全体に占める割合が高かった。これらの地域で清酒製造業がどのような役割を果たしてきたと考えられるか、会社制度観の観点から論じなさい。


このページの作成所属
人事委員会事務局 人事委員会事務局任用審査課 任用グループ

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