■ 「だしソムリエ」とは・・・? 「だし」というと、日本料理に使うかつお節、昆布、煮干し、干し椎茸を思い浮かべて、「だしをとる」のは大変とか、面倒とか、そもそもよく知らない…という方も多いと思います。 でも、私たちは、「だし」を日本料理のみに存在するものとは考えてないのです!…かつお節や昆布だけが「だし」の原料とも考えません。 料理に関係する素材…野菜や肉類、鮮魚など、素材から出るものすべてが「だし」になり、「うまみ」になると考えています。そう考えると世界中の料理に「だし」は存在するし、日頃「だし」と考えていないものが「だし」だったりと、意外な発見があって、視野が広くなる気がしませんか? そうです。私たちは、普段から普通に「だし」をとってるし、馴染んでいるのですよ! 例えば、あさりやしじみのお味噌汁を作るときを思い出してください。必ずしもかつお節や昆布は必要ないですよね?それらが、かつお節の代わりに、うまみの下支えをするからです。豚汁だと、野菜と豚肉から、「だし」が出ます。 ■ 「大阪」と「名古屋」のうどん 名古屋といえば、八丁味噌(あの濃い茶色のお味噌です)を思い浮かべるかたも多いのでは? 名古屋人は、八丁味噌を使った味噌煮込みうどん、きしめん、そしてカレーうどんなど、実は、うどん類が大好きなんです。そして、大阪も昔からうどん文化が根付いた土地ですよね。ネットで検索すると人気店が数多くヒットします。大阪に住んでいる方と話していると、うどんに対する愛さえ感じます。 この両者の郷土料理ともいえる「うどん」について、大阪と名古屋が比較されることは、まずなかったように思います。さらに、目には見えにくい「だし」については言わずもがな。でも、「うどん」に使う「だし」について、大阪と名古屋には決定的な違いがあります。何だと思いますか? …それは「昆布」の扱いです。 ■ 理にかなった、「だし」と「調味料」の関係 大阪では米味噌(大豆と米麹で作られた白っぽく甘みのある味噌)と薄口醤油が、名古屋では八丁味噌(大豆100%で独特のコクがある味噌)と濃口醤油(一部では白醤油という小麦をベースにした醤油もある)が、古くから使われてきました。 大阪で好まれてきた薄口醤油や、米味噌を下支えして生かすためには、上品な昆布のうまみとすっきりした鰹節の効いた「だし」がぴったりだったのだと思います。 対照的に、濃いめの調味料を使う名古屋(中部地方)では、昆布文化はあまり発達しませんでした。「味噌煮込み」に代表されるように、濃厚な味噌を生かすべく、宗田節など、かつお節より強めのだしが出る素材を多用する結果となったのです。 ただし、これは、あまりよく知られていないことですが、「濃口醤油」は「薄口醤油」より塩分が少なく、アミノ酸発酵の度合いが高いのです。また、大豆を原料とする「八丁味噌」には、米が主体の味噌よりやはり各種アミノ酸が多く含まれており、これがうまみとして、昆布の役割をしている部分があるのです。 昆布の流通が先か、使う調味料が先か、はたまた水の特徴が先か(関西では、昆布だしが出やすい軟水が豊富でした。)、私は学者ではないので偉そうには語れないのですが、大阪と名古屋の調味料とだしの関係は、大変、理にかなっていると思います。 ということで、名古屋で生まれ育った私は、これまで、昆布だしについての認識が低かったのですが、だしソムリエ協会を始めてから、昆布についても、色々と勉強と料理の経験を重ね、知れば知るほど、昆布の底力を思い知りました。 また、昆布について調べていくと、大阪には、昆布に関連するたくさんの企業や団体が存在することに驚かされました。東京の比ではありません。“昆布修業”のために、大阪にしばらく滞在したいくらいです(笑)。 ■ 庶民の味方「うどん」にこそ、本物のだしを! 正統派の老舗うどん店だけでなく、カレーうどんのお店や、それから大阪風の讃岐うどんのお店にも行きました。大阪では、讃岐うどんのお店でも、昆布とかつおだしがしっかり効いているのがわかり、「う〜ん、東京にはない!この味!このこだわりは!!」と感動しました。東京では低価格チェーン店はたくさんあれど、「だし」にこだわった正統派のお店は少なく、少し残念です。 高級な日本料理店において「だし」をきちんととる、扱うのは当たり前のこと。でも、庶民の味方、日常生活で使うお店の代表格である「うどん屋さん」が、きちんと「だし」と向き合っている、そんなお店が充実してしのぎを削っているのが、大阪の大きな魅力だと思います。だしソムリエ協会としても、そんなお店がもっともっと増えてくれたら、日本全国に広まってくれたらいいなと思います。 これからもっともっと、地元の人に愛されるおいしいお店、値段に関わらず「だしがおいしい」お店に行って、大阪の食の達人(?)を目指したいと思います。きっと、ずっと大阪に住んでいる方とはまた違う角度から色々見ることができるだろうし、新しい発見もできると思います。
| Maki さんのプロフィール だしソムリエ協会代表。愛知県名古屋市出身。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、印刷会社、出版社にて企画・編集の仕事に関わる。 だしソムリエ協会 http://dashi.be/ | |
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このページの作成所属
府民文化部 都市魅力創造局魅力づくり推進課 魅力推進・ミュージアムグループ
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