部落解放同盟大阪府連合会 要望書

更新日:2022年12月23日

要望受理日令和4年10月4日(火曜日)
団体名部落解放同盟大阪府連合会
取りまとめ担当課府民文化部 人事局 人権擁護課
表題大阪府2023年度予算編成にあたって
部落差別解消・人権行政の推進に関する要望書

要望書

2022年10月4日

大阪府
知事     吉村 洋文 様

大阪府教育庁
教育長  橋本 正司 様

部落解放同盟大阪府連合会
執行委員長

大阪府2023年度予算編成にあたって
部落差別解消・人権行政の推進に関する要望書


 部落差別の解消と部落問題の根本的解決、人権尊重社会の実現にむけて、人権施策等の推進にご尽力されておられますことに、あらためまして敬意を表します。
 さて、現在、被差別部落の地名リストを掲載した書籍出版や個人情報をネット上に公開するのはプライバシーの侵害であるとして、部落解放同盟や全国の被差別部落出身者235人が原告となり、神奈川県川崎市の出版社「示現舎」を相手に訴訟が行われています。昨年の地裁判決では「全国部落調査」が公表されれば結婚や就職で差別を受ける恐れがあるとして、原告大半のプライバシー権が認められました。今夏よりはじまった控訴審で原告側は、部落出身者として人権侵害されない「差別されない権利」保障を主張しています。
 ご承知のように、大阪府内の被差別部落の所在地情報(被差別部落とみなされる地域等も含む。以下「所在地情報」という。)が、インターネット上で流布・公開されたまま野放し状態です。あわせて、同和地区(住民)に対する根強い忌避意識等を背景に、不動産取引事業者や自治体等に「同和地区の所在地」を尋ねたり、問い合わせたりする差別行為は跡を絶っていません。
 この間、大阪府では、「同和地区の所在地情報」は社会的差別の原因となるおそれのある情報であると、時代を先取りして「大阪府個人情報保護条例」に基づく「要配慮個人情報」に位置づけていました。しかし、今般、国による個人情報保護法制の一元化により、同和地区の所在地情報が「要配慮個人情報」に該当しないとの見解が示されたことは非常に残念です。
 「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」では、興信所や探偵社等を対象にした差別調査行為とともに、土地(大阪府域内の土地)の取引に関わって事業者が営利目的での土地差別調査行為を規制しています。
 被差別部落住民の「差別されない権利」を保障するためにも、あらためまして「同和地区はどこか」を調べる行為を規制するだけでなく、依頼する行為も防止する手立てが必要と考えます。
 一方、大阪府議会2月定例会において「大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例(以下「インターネット上の人権侵害解消条例」という。)」が可決。4月1日より施行されました。その中で、私どもが注目しているのは「インターネット上の人権侵害解消条例」附則2号で「知事は、この条例の施行後一年を目途として、インターネット上の誹謗中傷等の人権侵害の防止及び被害者支援等に関する実効性のある施策、学識経験を有する者等で構成される当該施策に関する検討会議の設置及び府の組織体制について検討を加え、その結果に応じて必要な措置を講ずるものとする」と明記されたことであります。
 国においては、誹謗中傷等に対する侮辱罪の厳罰化等が図られるとともに「改正プロバイダ責任制限法(以下「改正法」という。)」が10月1日に施行されたところでもあります。単なる「国と地方の役割分担」ではなく改正法では十分カバーできない懸案課題等はもとより、今後の法制度の改革等につなげていくことを見すえて、「インターネット上の人権侵害解消条例」の具体化を強く求めるものであります。
 大阪府知事との政策懇談会では、被差別部落における「土地差別問題」の解決と部落問題解決のための施策等の推進等をテーマに意見交換いたしました。地方分権の進展、中でも公共施設等の集約・統合化は各自治体財政の問題と密接に関わる重要課題であると理解・認識した上で、隣保館等の公共施設の統廃合や同和向け公営・改良住宅の建て替え等に伴う余剰地及び未利用地の売却、公的不動産を利活用にあたっては、「人権と地域福祉」「住民自治」の視点を住宅まちづくり政策に位置づけるよう要望いたしました。
 部落差別解消と部落問題の解決のための地域共生社会づくりへ、貴庁としてリーダーシップを発揮していただくよう、引き続いて意見交換等をお願い申し上げる次第です。
 つきましては、2023年度予算編成にあたって、貴庁として部落差別解消行政及び人権行政の推進と充実を求めるため、下記のとおり、要望いたします。

要望項目

(1)部落差別の解消、部落問題解決のための住宅まちづくり施策等の推進に関して
1>府内の自治体にあっては地方自治体の財政の悪化と、公共施設の老朽化・維持更新コストの増加等とも伴って、公共施設の再編が進められているところも少なくない。被差別部落においても隣保館や青少年施設、福祉施設等の再編・統廃合、公衆浴場の廃止に加えて「同和向け公営・改良住宅」の老朽化に伴う建て替え・住み替え・大規模改修などが顕著となっている。下記の諸点に関して見解等を示されたい。
(a)被差別部落の住環境の改善に協力することにより公有地(公的不動産)となってきた歴史的経過をふまえ、被差別部落の隣保館など公共施設、公営住宅等の建て替えや再配置、集約・統合化にあたっては、地元住民の意向及びまちづくりの将来構想を見すえた方針・計画の策定が大切と考えるが、府としての基本見解を明らかにされたい。
(b)大阪府水平社創立から100年。長期にわたる差別や排除、貧困に抗ってきた被差別部落には「お互い様の関係」や「相互扶助」など暮らしの文化が根づいている。そんな中、住民自治活動への参画促進など地元まちづくり活動などの意向をないがしろに、被差別部落にある未利用地等が売却・再開発されたりすることにより「新たな住民摩擦」が発生。加えて、公営住宅の入居募集では、被差別部落の公営住宅では入居拒否などの事案も発生・発覚している。今後の部落差別解消のための施策に推進にあたって、府内当該自治体及び関係団体と連携して実態等を把握する必要があると考えるが、大阪府の見解を示されたい。
(c)昨年の基本回答において、改正社会福祉法に基づく包括的な支援体制の整備にあたり「隣保館や大阪府総合相談事業交付金を活用した相談事業を受託する団体・機関などが、多機関協働の支援機関」として、「(当該自治体の)重層的支援会議への参画、他の支援機関と連携して包括的な支援体制が構築されるべきもの」との見解が示された。このことに関連して下記の諸点について見解等を示されたい。
1)今年3月の厚生労働省社会・援護局関係主管課長会議でも「重層的支援体制整備事業の実施に際しては、福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティセンターとしての役割を果たしている隣保館や生活館との連携を十分に図っていくことが重要」と強調され、重層的支援体制整備事業実施計画のガイドラインにおける「地域の支援関係者等」に隣保館や生活館が含まれているとの見解が示された。当該の自治体で重層的支援体制整備事業及び同事業への移行準備事業の実施等を検討するにあたり、隣保館を所管する部局と地域福祉を所管する部局に対して、大阪府としての見解とあわせて周知を徹底されたい。
2)あわせて、当該自治体における「地域福祉計画」の改定にあたっても、厚生労働省及び大阪府の見解等の趣旨を周知して、隣保館及び隣保事業が果たしている役割や機能等についても明確に位置づけるよう積極的に働きかけられたい。
3)以上、被差別部落における地域福祉の推進に係る観点を、上記(a)に提案したまちづくりの将来構想を見すえた方針・計画や被差別部落における住宅まちづくり施策の基本的な考え方として明確に位置づけることが重要と考えるが、大阪府としての見解を示されたい。
2>上記の問題は、何も被差別部落だけにみられる現象ではないと考える。とりわけ、大規模な開発が進めば地価とともに住宅家賃も高騰、低所得者世帯が住み慣れた地域で住めなくなるといった事態(ジェントリフィケーションへの対策)も懸念される。日常生活圏域(小学校区や中学校区)を基本とした包括的な支援体制の確立と、排除ではなく共創の住宅まちづくり政策が連動して推進されていくことが、貧困や社会的孤立といった社会的課題の解決にむけた地域共生のまちづくりに通じるものと考えるが、大阪府の見解を明らかにされたい。
3>公共施設等の統廃合により生み出された公的不動産の売却にあたってはあらためて「共生社会の再構築・再生」を念頭におくべきであり、当該地域にある多様な立場の人たちとの連携と協働による地域(まちづくり)計画の策定を働きかけたり、周辺地域住民への説明会をしたり、人権と地域福祉の視点を取り入れた「総合評価型の入札制度」の検討が望ましいと考えるが、大阪府としての見解を明らかにされたい。
4>以上の見解をふまえて、府内自治体の都市整備部局(あるいは総合計画所管部局)や福祉部局、人権部局に対して、大阪府としての基本的な考え方をとりまとめて周知を徹底されたい。

(2)部落差別の解消、部落問題解決にむけた施策等の推進に関わって
1>昨年8月に発覚した栃木県のA行政書士の不正取得事件に関連して、大阪府の調べによると、A行政書士名義による職務上請求された件数は府内全体で296件であった。現時点では「不正取得」と解されるのは1件とのことだが、私たちは興信所や探偵社に売り渡していた可能性が極めて大きいと懸念する。A行政書士名義の職務上請求された296件の個人に「不正取得された疑いがある」と告知して、さらなる真相糾明に取り組むことが重要と考えるが、府の見解を示されたい。
2>デジタル関連法の成立などをふまえて個人情報保護法が改正された。今回の法改正により、個人の権利利益を害する恐れが大きい、漏えい等の事態が発生した場合等に個人情報保護委員会への報告及び本人への通知。あわせて安全管理のために講じた措置について公表等も義務付けられている。個人情報保護法制の一元化に伴い、戸籍等の個人情報を取り扱う機関として安全管理のための措置を充実・強化すべきである。少なくとも第三者請求については「取得された本人にすべて通知する制度」が必要と考える。大阪府としての認識と見解等を明らかにされたい。
3>今回の個人情報保護法制の一元化に伴い、「大阪府個人情報の保護に関する法律施行条例」に改正された(9月議会で予定)。下記の諸点について回答されたい。
(a)「全国部落調査」復刻版出版事件(現在、係争中)等をふまえて、ネット上において「被差別部落の所在地情報」が流布されている中、特定する個人の住民票等と結合させることにより、被差別部落出身者かどうかが「判断」されるといった「部落差別の現実」に対し、どのような対策を講じられるのか、大阪府としての見解と方針を示されたい。
(b)「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」を改正し、「被差別部落の所在地情報」を問い合わせたり、尋ねたりする行為を防止することが可能かどうか検討されたい。あわせて、他府県の者等が大阪府内の「被差別部落の所在地情報」を調べるといった行為についても防止することができないか検討されたい。

(3)「大阪府インターネット上の誹謗中傷と差別等の人権侵害のない社会づくり条例(以下「インターネット上の人権侵害解消条例」という。)」の具体化に関して
1>インターネットやSNSなど(以下「インターネット等」という。)で人権侵害情報を発信したり、誹謗中傷したりする行為等を防止する手立ての一つとして、教育・啓発の強化も重要と考える。下記の諸点について回答されたい。
(a)GIGAスクール構想の具体化に伴う学校現場における人権教育の推進と充実に係る課題等について明らかにされたい。インターネット等での人権侵害等の加害者および被害者を生み出さない教育等の推進にむけて、学齢期に応じて系統立てて学習することができるプログラムなどを、すべての生徒が受けられるよう条件整備等を図られたい。
(b)携帯電話会社などと連携をとってスマートフォンの新規購入や買い替え時に啓発リーフレットの説明・配布など、経済団体、消費生活センター、教育機関、地域コミュニティ、市町村等と連携をとった社会教育・社会啓発における情報モラル教育を抜本的に強化するための方針・計画を策定されたい。
2>「被害者支援に関する具体的な対応策」に関して、下記の諸点について見解等示されたい。
(a)ネット上で誹謗中傷・人権侵害を受けた際の解決手段は「削除請求」「発信者情報開示請求」「損害賠償請求」である。被害者の保護・救済支援に関して、二次被害の防止や心理的・精神的なカウンセリング的アプローチが継続して受けられるなど人権の回復にむけた相談・支援体制の抜本的な充実と強化に取り組まれたい。あわせて裁判手続き及び損害賠償請求等の係争中における被害者保護及び支援策についても検討されたい。
(b)改正プロバイダ責任制限法に基づいて自主規制に取り組むプロバイダが「人権侵害にあたる」と認定しないケースも大いに想定される。被害者からの相談内容を吟味し、代行して開示要請を行ったり、勧告したりすることができる「機関」の設置を検討されたい。
3>インターネット上の誹謗中傷及び差別等の人権侵害への対策(以下「人権侵害対策」という。)に関して、下記の諸点について見解等を示されたい。
(a)人権侵害の防止対策の一つとしてモニタリング活動を位置づけ、府内各基礎自治体と連携をとって「削除請求」案件等について集約・集積する体制を整備されたい。
(b)府民等が求める「削除請求」「発信者情報開示請求」に係る手続き等について、府内各基礎自治体と連携をとって研修等を実施し、基礎自治体レベルでの取り組みを積極的に推進・支援されたい。
(c)上記1>から3>の項目に係る取り組みを積極的に推進・強化するため、大阪府HPより「誹謗中傷・人権侵害を受けた被害者が可能な限り自身でアクションを起こせるようポータルサイトを整備し、人権侵害等の防止及び被害者支援に取り組む姿勢を積極的にアピールするとともに、被害を受けた府民等が自身で「削除請求」等のシミュレートが行えるようサポート情報等を発信されたい。
4>以上の取り組みを強化・充実するため「インターネット上の人権侵害解消条例」の強化・改正を検討されたい。

(4)男女平等社会の実現、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」の具体化に関して
1>「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(以下「困難女性支援法」という。2024年4月施行)」に関連して、今後、どのような取り組みを行おうとされるのか、見解等を示されたい。
2>年金の減額に加え、医療費負担の増額、物価高騰等の影響が生活を直撃している。とりわけ、ひとり親の女性や高齢女性の生活に深刻な影を落としている。私たちが実施した「コロナ禍における暮らしのアンケート」では相談窓口の整備や就労にむけた支援の必要性が明らかとなった。大阪府男女共同参画プラン(2021から2025)の改定を踏まえ、「困難女性支援法」の具体化にむけて「困難な問題を抱える女性」の実態把握を検討されたい。
3>「困難女性支援法」により、包括的な援助を役割として担う「女性支援センター」とつながって、日常生活圏域(小学校区など)で高齢女性等がいつでも気軽に相談することができる窓口の整備を図られるよう検討されたい。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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