おおさか旧優生保護法を問うネットワーク 大阪障害フォーラム(ODF) 旧優生保護法被害大阪弁護団 要望書

更新日:2023年1月20日

要望受理日令和4年7月13日(水曜日)
団体名おおさか旧優生保護法を問うネットワーク 大阪障害フォーラム(ODF) 旧優生保護法被害大阪弁護団
取りまとめ担当課健康医療部 保健医療室 地域保健課
表題優生保護法被害に対する全面救済に向けた要求書

要望書

2022年7月13日

大阪府知事 吉村洋文 様

優生保護法被害に対する全面救済に向けた要求書

おおさか旧優生保護法を問うネットワーク
大阪障害フォーラム(ODF)
旧優生保護法被害大阪弁護団

 旧優生保護法被害では、現在、大阪の5人の原告の方々が国賠訴訟を提起し、2022年2月の大阪高裁で国に対して賠償命令が出されました。判決は、旧優生保護法は「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」という優生思想を正面から目的に掲げ (1条)、 特定の障害ないし疾患を有する者を一方的に 「不良」 と扱った上、生殖機能を不可逆的に喪失させる優生手術につき、本人の同意がなくても法的に許容し、かつ、これを推進しようという非人道的かつ差別的な内容の法律」であり、国家の立法及びこれに基づく施策が、その規定の法的効果をも超えた社会的・心理的影響を与えた、と認定しているものです。
 大阪府下で、旧優生保護法(以下、旧法)第3条・第4条・12条に基づいて障害を理由に優生手術(不妊手術)を強いられた被害者は、大阪府発行の『衛生年報』によれば1,237人以上とされ、都道府県別の実施件数は全国でも3番目に多いといわれています。保健所で優生相談を実施し、優生思想を普及させ、さらには、優生保護審議会で優生手術実行の決定を行ってきた大阪府の責任は免れることはできません。被害者数の多さは、兵庫県同様に「不幸な子どもの生まれない運動」を大阪府が積極的に担ってきたことを物語っています。
 大阪府の責任の重さを鑑み、徹底的に事実関係を把握し、なぜ、過ちが起きたのか、現時点では優生思想に基づく施策は存在していないのか、どう再発防止をすればいいのか、調査・検証を行う必要があります。
 また、旧優生保護法に基づく優生手術による被害は、戦後最大の人権侵害だと言われていますが、被害回復の道のりは遠いのが実情です。
 大阪高裁判決も、国の上告により闘いが継続しています。また、「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下、一時金支給法)の認定に至ったのは、20人余りにしか過ぎません。まだまだ、声をあげることができない方がまだ大勢おられます。被害者が高齢であることも考慮し、一刻も早い、人権回復に向けた取組が必要です。
 そして、被害回復の取組で忘れてはならないのは、被害者の多くは、被害を受けながらも、本人の同意なく、欺罔等も用い強制的に手術が行われたために、旧優生保護法の存在すらも知ることが困難であったということです。また、聴覚障害等の障害により、周囲に相談することすらできなかったという事実もあります。
 一人でも多くの方の被害回復に向けて、被害者に寄り添った取り組みが必要です。全日本ろうあ連盟が独自に調査をすることで、大阪府下で、15人(男性1人、女性14人)の方々が、障害を理由に不妊手術や中絶を強いられたと申し出ておられます。大阪府としても、積極的な被害者の掘り起こし調査の実施、被害者へ有効に届く方法での周知や広報の取組、相談があった場合の障害の状況に配慮した丁寧な対応と支援を実施していただきたいです。
 私たちは、大阪府に対して、国と一体となって優生思想に基づく不妊手術や中絶を推し進めた責任を明確にし、一刻も早い被害者の人権回復、優生思想を乗り越える施策の実施に向けて尽力するよう以下の項目について要望します。

1 旧優生保護法被害等についての調査・検証の実施について
(1)大阪府の責任の重さを鑑み、徹底的に事実関係を把握し、なぜ、過ちが起きたのか、現時点では優生思想に基づく施策は存在していないのか、どう再発防止をすればいいのか、調査・検証を行ってください。また、調査・検証の内容、結果の総括を明らかにしてください。
(2)被害者の救済のために、被害者の特定につながる手掛かりの掘り起こしを行ってください。優生保護法被害の実態を解明するために、一時金法の第21条に基づく国調査を徹底的かつ詳細に実施するよう国に要望してください。またそれと並行して、府独自で調査を行うよう検討してください。さらに府内市町村でも調査を実施するよう奨励し、情報共有等の協力を行うなど、被害者の救済に向け最大限努めてください。
(3)(1)及びに(2)の調査について、すでに府が行った調査を実施個所ごとに明らかにしてください。
 名称(所属名、出先機関名、病院・施設名)、調査実施年月、調査の手法(実地、照会)、内容(書類の探索、職員へのヒアリング、その他)、結果(文書 あり・なし 関連証言 あり・なし)、明らかになったこと
(4)調査の実施にあたっては、以下の視点を踏まえ、幅広く対象としてください。
 旧優生保護法の施行にあたった機関。(健康医療部(本庁)、保健所など)
 当時、入院・入所者等に優生手術を奨励していた可能性のある病院・施設。(当時の府立中宮病院、砂川厚生センター、金剛コロニー、中津整肢学園、障害者更生相談所など)
 一時金の申請者が入所していた施設・病院、優生手術を受けた医療機関。
 旧法の存在を背景に実施された子宮摘出(卵巣・子宮同時摘出を含む)、去勢、卵巣への放射線照射による被害者も一時金の対象となっていることを考慮すること。
 旧優生保護法を根拠とした遺伝的疾患等を理由にした中絶手術も調査の対象としてください。
(5)厚労省が2018年に行った「医療機関・福祉施設における優生手術に関する個人記録の保有状況調査」において、「個人記録がある可能性がある」と回答している、大阪府の4福祉施設、大阪市の4医療機関、枚方市の1福祉施設と1医療機関についての究明調査を実施するとともに、その後の検証経過、結果を明らかにしてください。

2 被害回復に向けての周知・広報の強化について
 一時金支給法が施行されて3年が経過しており、救済に向けての周知、広報が急がれます。被害者が高齢であることも考慮し、効果的な広報を実施してください。なお、実施にあたっては、聴覚障害者、知的障害者、精神障害者等へ届くように情報の提供にあたって十分な配慮をしてください。
(1)大阪府広報紙への掲載に留まらず、テレビ、ラジオ、デジタルサイネージ等、多様なツールを用いて広報を行ってください。
(2)民間病院、施設等を含め、旧優生保護法被害の周知ポスターを掲載してください。
(3)被害者が入所している可能性のある高齢者施設、療養型医療施設、被害者に関わっている可能性が高い地域包括支援センター、居宅介護支援事業所等へ周知を行ってください。
(4)市町村へ協力依頼を行い、要介護認定調査や障害支援区分認定調査時にリーフレットを配付してください。
(5)調査、周知の結果、被害者の連絡先が判明した場合には、申請するように案内してください。
(6)一時金法の5年の申請期限が残りわずかとなっている。人権侵害の程度が著しく重たいということを考慮すれば、申請期限で区切られるのは不公正と言わざるを得ない。大阪府としても、申請期限の延長若しくは廃止を行うように国へ要望してください。

3 一時金の申請にかかる効果的な相談支援の実施について
 平成31年4月24日付子母発0424第1号厚生労働省子ども家庭局母子保健課長通知「『旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律』に基づく一時金の請求等に関する事務の取扱いについて」を踏まえ、被害者の障害者の状況に配慮し、相談・請求をしやすい体制整備を行ってください。
(1)申請にかかる診断書の記載を医療機関に求めたところ、作成拒否がありました。円滑な診断がえられるように、大阪府から各医療機関へ協力要請を行うとともに、相談者から依頼があれば、医療機関を紹介してください。
(2)通知文中の「弁護士会、医療関係者、障害者支援団体等の幅広い関係者の協力を得た相談支援」について、ぜひ、実施いただきたいです。大阪府としての実施に向けての検討状況を明らかにしてください。
(3)聴覚障害者にとっては、相談にいっても対応してもらえないかもしれないと感じざるを得ない現状は大きな障壁になっている。聴覚障害者の相談のための専用の窓口の設置をお願いしたい。

4 優生思想を乗り越える取組の強化
 旧優生保護法下の施策展開の結果、誤った優生思想の伝播が長期に渡り、行政によって行われてきました。障害の有無によって命の価値や人間の尊厳に分け隔てしない正しい考え方を啓発し、学ぶ場を積極的に設け、インクルーシブな社会を形成する施策を展開する責務が行政にあると考えます。
(1)大阪府障害者計画の見直しにあたって、優生思想を乗り越える具体的な取組を盛り込んでください。
(2)大阪府職員研修においても、優生思想に基づく考え方を是正し乗り越えるための人権研修を実施してください。
(3)人権擁護、障害者問題等にかかる府民啓発行事において、旧優生保護法問題の周知や優生思想を是正する内容を積極的に盛り込むようにしてください。
(4)「旧優生保護法被害者等に寄り添うとともにその必要とする施策を推進し、もって優生思想を決して認めることなく、誰もが疾病又は障害の有無によって分け隔てられることのないまちづくりを推進することを目的」とした明石市の「旧優生保護法被害者等の尊厳回復及び支援に関する条例」(略称:旧優生保護法被害者等支援条例)を参考にして、大阪府として、府の責任を自覚し、できる限りの支援を行うことの具体化として、被害者支援のための条例制定を検討してください。

  <大阪障害フォーラム(ODF)加盟団体>
一般財団法人 大阪府身体障害者福祉協会 (※)
一般財団法人 大阪府視覚障害者福祉協会
公益社団法人 大阪聴力障害者協会 (※)
NPO法人 大阪府中途失聴・難聴者協会
社会福祉法人 大阪府肢体不自由者協会
一般社団法人 大阪脊髄損傷者協会
大阪頸髄損傷者連絡会
社会福祉法人 大阪手をつなぐ育成会 (※)
大阪精神障害者連絡会 (※)
公益社団法人 大阪府精神障害者家族会連合会 (※)
ピープルファースト大阪
大阪府重症心身障害児者を支える会
公益社団法人 日本てんかん協会大阪支部
一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会大阪支部
一般社団法人 大阪知的障害者福祉協会
認定NPO法人 大阪精神医療人権センター
障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 (※)
障害者(児)を守る全大阪連絡協議会(障連協) (※)
きょうされん大阪支部
大阪「生活の場・事業所」連絡会
一般財団法人 大阪市身体障害者団体協議会 (※)
NPO法人 大阪市難聴者・中途失聴者協会
NPO法人 堺障害者団体連合会(堺障害フォーラム)
社会福祉法人 大阪市手をつなぐ育成会
NPO法人 大阪難病連 (※)
NPO法人 大阪盲ろう者友の会
NPO法人 デフサポートおおさか

(※) は「大阪障害フォーラム世話人団体」

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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