大阪府保険医協会 要望書

更新日:2022年10月21日

要望受理日令和4年8月22日(月曜日)
団体名大阪府保険医協会
取りまとめ担当課府政情報室 広報広聴課
表題大阪府への要望書

要望書

大阪府への要望書

2022年8月22日
大阪府保険医協会

1.新型コロナウイルス感染症対策の強化も含めた緊急時への備えの強化(発熱・検査センター設置等)、大阪府の職員体制、医療と公衆衛生分野の強化

(1)公的な検査センター、公的な発熱外来センターの設置を
 大阪府保険医協会は、新型コロナウイルス感染症への対応として、この2年間、大阪府に対して医療機関の実態を伝え、個人の診療所では通常診療に加え、ワクチン接種、検査、発熱外来、陽性者への対応など全てを行うことは困難であり、行政の責任での公的な検査センター、発熱外来センターの設置を求めてきた。東京都では医師会がセンター方式の発熱外来設置に向けて調査を行っている(8月16日時点)。大阪府もこうした取り組みを参考にし、常設の公的センタ―設置を至急検討すること。

(2)緊急時に府民の命と暮らしの救済に応えられる公衆衛生分野の職員配置を
 今、大阪府が力を入れるべきは、カジノIR誘致でなく、府民の命を守ることを重視した政策である。この間の新型コロナ対策で人材不足が起こるたびに、外部委託に頼る場当たり的な対応に終始し、府民への速やかな支援が行えない事態となった。臨時(委託)職員に専門的な知識がないために医療現場では混乱が起き、感染者への対応が遅れるという事態を生んだ。この事態を打開するためには、保健所職員など公衆衛生分野の府職員を増やすことである。危機管理を経験し教訓を蓄積した人材は今後の大阪府の医療・公衆衛生行政の力に必ずなる。保健所職員など公衆衛生分野の正規職員を増やすことを強く求める。

(3)新興感染症の危機管理に耐えられる保健所の機能・体制強化を
   大阪健康安全基盤研究所の再編を(府立公衆衛生研究所と大阪市立環境科学研究所をもとに戻す)
 大阪の死者数の多さは、医療機関側の課題というより、感染者を増やさない対策、つまり行政の責任が大きい。2010年の「新型インフルエンザ対策総括会議報告書」には感染症危機管理に関わる体制の強化として「感染症対策に関わる危機管理を専門に担う組織や人員体制の大幅な強化、人材育成」の必要性を説き「感染症対策に関わる人員体制や予算の充実なくして、抜本的な改善は実現不可能」と指摘している。また、今年5月に発表された奈良県立医科大学の論文でも保健師の数が多いと新型コロナの罹患率は少ないとの研究結果が出されている。これらで指摘されている通り、保健所の人材確保と強化は喫緊の課題である。なお、大阪府は今年度若干の保健師数を増やしているが、感染拡大の一番多い大阪市の対策は遅れている。大阪府として大阪市の保健所体制の強化についても積極的に関わっていくべきであり、2017年に一元化した府立公衆衛生研究所と大阪市立環境科学研究所をもとに戻し、政令指定都市大阪市として公衆衛生行政に責任を持てる体制に再編することを強く求める。

(4)入院医療体制の整備と地域医療構想の見直しを(急性期病床の維持)
 大阪府の新型コロナ対策について、医療現場の実情にあった対策と各医療圏の保健医療協議会で出されている「地域医療構想の見直し」を求める意見を反映させた施策を求める。真の“平時からの取り組み”が重要と、いろいろな国の審議会などで指摘されているが、“平時”の医療供給体制に余裕がないことは大阪府医師会の茂松会長(当時・2021年12月の講演)も指摘している。急性期病床の削減を基本とする「地域医療構想」について国に見直しを求めるよう働きかけるとともに、大阪府においても、今回の新型コロナの病床逼迫、一般救急医療の逼迫を教訓にし、地域の医療実態にあった病床確保計画を強く求める。
 なお、この間、旧住吉市民病院に関する要望では、大阪府の管轄でないことから回答が見送られているが、大阪府と大阪市は広域行政一元化を条例で決めていることから、旧住吉市民病院の跡地問題についても責任ある回答を求める。

2.すべての人が安心して受けられる医療制度の構築

(1)75歳以上の患者負担軽減のために老人医療費助成の再構築を
 10月1日より75歳以上高齢者の医療費2割負担が実施されようとしている。大阪府は2021年3月をもって老人医療費助成を廃止したが、今回の負担増は多くの高齢者に影響を及ぼし、受診抑制による健康への影響も国会審議で指摘されている。大阪府の高齢者の命と健康を守る上で、高齢者を広く対象にした老人医療費助成制度の再構築を強く求める。

(2)子ども医療費助成制度の拡充を
 大阪府内市町村では高校卒業までの医療費助成が増えているが、府の基準は就学前と基準がとても低くかつ、所得制限もある。兵庫県は中学校3年生まで助成制度があり、所得制限はあるが、0歳児の所得制限はない。全国的に制度内容の拡充がされている子ども医療費助成制度について、大阪府もせめて対象を小学校卒業までとするなど制度を拡充すること。

(3)「重度障がい者医療制度」の拡充を
 大阪府の福祉医療費助成の再編で障がい者・難病患者の医療費助成制度が「重度者」に限定された。このことで従来対象者だった中度・軽度の障がい者・難病患者の方は医療費助成制度の対象から外された。そもそも障がい者・難病患者の世帯は経済的にも厳しく、医療費助成の対象から外されたことでさらに暮らしを追い詰めることになり、影響は非常に大きい。大阪府として対象から外された方の調査を至急実施し、現在の重度障害者医療制度を拡充させ、中度・軽度の方も助成制度の対象にすること。

(4)妊産婦医療費助成制度の創設について、大阪府母子保健運営協議会等での協議を
 妊婦の保険診療における自己負担部分の助成制度は、都道府県レベルでは日本産婦人科医会の調査では4県となっている。同会が2019年に出した提言では「成育基本法が掲げる妊娠期から切れ目のない支援のために、妊産婦にも社会の暖かい援助があるべき」とし「とりわけ妊娠中から出産において何らかのご病気になられ治療を要する方々には(略)大変心強い助けになります」と指摘している。大阪府において妊産婦の医療費助成を創設に向け、大阪府母子保健運営協議会等で調査・研究することを強く求める。

(5)府としても生活困窮者が速やかに医療機関に受診できる施策の強化を
 コロナ禍による失業、休業等で困窮している世帯が増えている。これは大阪府内各地域で行われている食料支援などの活動状況を見ていても明らかである。大阪府も独自に府民の暮らしに関する調査を実施するなどして実態をつかみ、生活困窮者への支援を強化することを強く求めるとともに、失業などで無保険状態となっている方が医療を受けられるような対策を求める。また無保険状態となっている方が医療を受けられるように、無料低額診療を実施している医療機関を積極的に広報するなどの対策を取るとともに、無料低額診療事業を保険調剤薬局へも適用するように国に強く求めること。大阪府においても府内の薬局で調剤処方された場合、調剤費の全部または一部を府が助成することを検討すること。
 なお、生活保護受給者に対してケースワーカーがマイナンバーカードを取得させ、現在の医療券発行からマイナカードに切り替えるよう迫る事例が出されているが、国民の自己決定権を侵害するという点において罰則による誘導と等しく問題であるので、直ちに是正すること。

(6)国民健康保険料の軽減を
 コロナ禍の被害を受けている自営業者・フリーランス・非正規労働者はすべて国民健康保険(国保)に加入しており、暮らしが逼迫している方にとって、国保料引き下げは最も効果的なコロナ対策である。統一国保料を強行するのでなく、市町村の裁量に応じた軽減対策を認めること。また、多くの市町村が単年度黒字を出しながら次年度に繰り入れず基金に積み上げ、保険料の値上げを行なうという事態となっている。大阪府国保統一化により市町村の国保が重大な影響を受けていることから、2024年度の完全統一を見直すこと。

3.安心して住み続けられる大阪府の実現を目指して

(1)介護保険サービスの改善
 コロナ禍で介護人材の不足問題は顕著に現れている。介護人材の確保は喫緊の課題である。人材不足を解消し、介護施設・事業所の労働条件改善のために、府独自の処遇改善助成金を制度化し、国に対し、国庫負担方式による処遇改善制度を求めること。また、介護保険から外された要支援者の訪問介護・通所介護などの市町村総合事業への移管について、サービスを必要とする方が今まで通りサービスが受けられるように指導するとともに財政支援を行なうこと。また、介護サービスからの「卒業」を迫るなどサービス低下を招く強引な運営については強く指導すること。

(2)認知症対策への公的援助の拡充を
 大阪府の地域医療計画を作成するにあたって、今後単身の認知症世帯が増えることが見通されている。府内の各地域で認知症の方やその家族が気軽に相談や情報交換等を通じての孤立予防などのために認知症カフェ開設の取り組みが広がっている。この取り組みをさらに進めるために、府独自で認知症カフェへの補助金を創設することとあわせて、各市町村の活用状況について把握し、活用が遅れている自治体に対して活用を促す対応を強化すること。

(3)直ちにカジノ誘致を撤回すること
 大阪府はカジノの利用者について年間1600万人と見積もっている。年間売上は5200億円、うちカジノで4200億円見積もっている(「ゲーミング」としているがギャンブルによる収入を8割も見込んでいる)。大阪市会の参考人聴取でカジノ事業者は「98%は問題なくゲームができる」としたが、これは2%はギャンブル依存症になるということであり、その規模は数万人にもなることが予想される。そもそも既存のパチンコなどのギャンブルで解決できていないギャンブル依存症という疾患に対して、新たな原因を作り大阪府が依存症者を出すことを前提にしたカジノIRを誘致することに、府民のいのちと健康を守る医師の団体として、認めるわけにはいかない。カジノIR誘致を撤回すること。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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