社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 要望書

更新日:2022年9月21日

要望受理日令和4年6月14日(火曜日)
団体名社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会
取りまとめ担当課福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課
表題知的障がい児者とその家族に対する支援策の充実について

 

令和4年6月14日

大阪府 知事 吉村 洋文 様


社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

知的障がい児者とその家族に対する支援策の充実について(要望)

 平素は、知的障がい児者とその家族に対して様々な支援策を講じていただきまして感謝申し上げます。
 さて、令和4年度補正予算および令和5年度当初予算において実現していただきたく下記の項目を要望いたします。
 ついては、令和4年8月末日までに書面にてご回答くださいますようよろしくお願いします。

【権利擁護】 
○障がい者への虐待について
 障がい者への虐待について注目すると、知的障がい児者への虐待が最も多い結果となっています。また、地域的に見ても、大阪府は虐待の多い地域となっています。なぜですか?この状況を大阪府としてどのように把握・理解されていますでしょうか?
 また、私たち家族は、福祉施設での虐待の報道等を目にすると、大変心が痛みます。○○の事件を忘れることができません。障害者福祉施設従事者等による虐待が認定された事業所へ外部委員を招いた要因分析・コンサルの導入を義務化すべきと考えますが、大阪府としてどのようにお考えでしょうか?

○障がい者への差別解消について
 令和3年4月の大阪府障がい者差別解消条例の改正に伴う『事業者の合理的配慮の義務化』について、昨年大阪府から、条例の周知のチラシの配布、差別解消ガイドラインの改訂、福祉サービス事業者の集団指導等での啓発ツールの配布などされたとのことでした。
 私たちは、障がいのある人のことを理解し、また日々身近で支援している障害福祉サービスの支援者の方たちが、合理的配慮について直接に地域社会へ働きかけをしてほしいと望んでいます。
 大阪府が啓発をされた人たちは、私たちが期待する働きかけをしてくれているのでしょうか?それを、ご確認いただける場や機会はありますか?

○家族支援について
 家族支援とりわけヤングケアラーのことが昨今取り上げられるようになりました。知的障がい児のきょうだいは、幼い頃から介護の一部を引き受けざるを得ないヤングケアラーです。大阪府は、きょうだい児をどう支援しようとしているか、教えてください。
 また、知的障がい児者の家族支援は、保護者への支援も重要です。しかし、実情は脆弱で、我が子の障がいに傷つき苦しむ保護者への心のケアがほぼなく、その後の難しい子育ても、成人してからの介護も、家族で頑張るしかないのが現実です。
 脆弱な家族支援の結果、養護者虐待や老障介護問題が起きています。
 大阪府として、知的障がい児者の家族支援に目を向け、必要な施策を検討してください。

○障害福祉サービス等の市町村格差について
 大阪府下における障害福祉サービス等の市町村格差が顕著になっています。
 ついては、次にあげるものが、量と質の両面において平準化され、障がい及び地域福祉の水準が整うよう、広域調整をお願いします。
 また、私たち当事者が自ら市町村に具体的な提案や要望ができるよう、以下の利用方法や利用範囲、運営内容などの昨年度(最新)の状況を、市町村ごとに報告をお願いします。
(1)自立支援協議会の運営内容
(2)ふれあいキャンペーンの運営内容
(3)移動支援事業の運用によるサービス内容
(4)避難行動要支援者に対する個別避難計画の運用

【生活支援】
○強度行動障がい児者について
 現在、強度行動障がいとされる人や子ども(以下「強度行動障がい児者」という。)への支援が十分とはいえない状況が生じております。強度行動障がい児者は、全国的にも「希望しても生活介護事業等を利用できず待機させられる」「短期入所やグループホームの利用を断られる」といった残念な状況です。
 これは、私たちの身近でも起こっていることですが、大阪府は、実態を把握されていますでしょうか。
 強度行動障がい児者とその家族が、適切な支援のもとで安心して暮らせるよう、まずは、府下の強度行動障がい児者の生活実態把握(ニーズ調査)をしてください。
 また、その手法の1つとして、大阪府障がい者自立支援協議会に強度行動障がい児者支援部会を設置してください。
 さらに、市町村自立支援協議会にも働きかけをしてください。

 次に、昨年、「大阪府立砂川厚生福祉センター」の地域でのスーパーバイズ機能の充実を要望しましたが、人員不足により少人数しか対応できないというお話でした。
 一方、お話の中で、行動障がいの背景には、感覚過敏、コミュニケーションの困難性、見通しの持ちにくさなどがあり、その特性に適した環境・適切な支援があれば、安定したという実践も聞きました。
 行動障がいの状態を改善する支援が、たくさんの支援者に広がるよう、養成する取組みを推進してください。
 また、難しい支援である『強度行動障がい児者』を、前向きに受け入れようという意識の高い事業者であっても、基準の人員では不足で受入れ困難な場合もあります。がんばってくれる事業者が、必要な人員を確保し、安定して事業継続できるよう、大阪府独自の加算をつくってください。
 さらに、通所や短期入所等の事業所で受入れを断られた人は、親や家族が家で介護しています。そのヘルプをするのは居宅介護になりますが、介護時間の多さや介護の質の高さが必要となり、積極的に担ってくれる事業所が少ないです。家での介護になる強度行動障がい児者へ、居宅等で短時間でも特別の介護が提供できる大阪府独自の仕組みを、創設してください。

○地域生活支援拠点等について
 私たちには、市町村の取り組みが出来ていないように思われます。また、そもそも拠点の整備状況や機能について、障がい当事者や家族が知らない状況ではないかと感じています。私たち知的障がいの団体では、老齢の親と高齢期になりつつある障がい者本人が暮らす『老障問題』が、差し迫る重大な課題です。
 このような当事者への周知について、大阪府はどのようにお考えでしょうか。
 私たち当事者が拠点等について理解できるようにしてください。
 さらに、緊急時の対応について、相談や短期入所事業が地域で機能するようにしてください。

○相談支援について
 平成24年度から開始された計画相談支援は、私たち知的障がい児者の親にとって「親亡き後も関わり続けてくれる支援者ができる」という期待のもてるものでした。10年たっての現状は、その期待に応えてくれる相談支援専門員がいる一方で、「何もしてもらえない」等の質の悪さに嘆く利用者がいたり、「してほしいのに、見つからない」ため、望まないセルフプランになっている人もいます。
 計画相談達成率は、市町村によりばらつきが見られます。また、自立支援協議会、地域生活支援拠点等も、相談支援の質が担保されてこそ、良い運営ができます。相談支援の質や量は、さまざまなものに影響が出ていると言わざるを得ません。これらについて大阪府のお考えをお聞かせください。
 また、各市町村には、基幹相談支援センターがありますが、無いところもあり、また、あっても土日は、やっていない、委託相談のみなど、私たちには、その有効性が感じられません。基幹相談とは、私たちに何をしてくれるところなのか教えてください。また、大阪府として、基幹相談の評価をどのようにされているのか、支援の内容に不備があった場合は、どのように指導・助言されているのか教えてください。

○防災の個別避難計画について
 個別避難計画について、当事者とその家族は、全く理解できていません。その計画とはどのようなもので、私たち当事者やその家族にどう関係するのか、教えてください。
 また、災害対策基本法が改正されたと聞きました。どのように変わったのか、教えて頂きたいと思います。
 加えて、昨年、大阪府は「計画を作ってほしいと申し出た人全員に作る」と懇談会で約束されました。私たちも申し出たいと思います。市町村のどこに問い合わせればよいのか教えてください。
 また、市町村に広報を積極的に行うよう指示してください。

【制度計画】
○福祉現場の人員確保について
 福祉現場の現状は、良い支援者に支援してほしくても、報酬が低いため、人の確保さえ難しい状況です。大手就職ナビ会社の調査によると「大学等で福祉を専攻していても、実際に福祉分野で就職する人の割合は、3割程度と低い」「福祉系の給与水準が他の業種より、低い」との指摘は、実感せざるを得ません。
 介護福祉分野のニーズは量、質ともにさらに広がりますが、他方少子化の影響もあり働き手は減っていく見通しです。このままでは、福祉に携わる労働力はますます減少し、いずれ事業が成り立たなくなります。
 ついては、介護力(人材)をどう確保していくのか、直ぐにやめてしまう福祉職をどう増やしていくのか大阪府のお考えをお聞かせください。

○グループホームについて
 知的障がい者がグループホームで生活する場合、府営住宅や民間マンションなど共同住宅では近隣との関係において生活しづらいことが往々にしてあります。そのため、おのずと一戸建ての住居などが求められますが、その場合、家賃が高くなるため2級年金では生活できません。
 また、現状は、費用の不足分を親が補填している場合が多く、親がいなくなったあと、本人だけで負担できるほどの所得が保障されていません。
 ついては、親亡きあとも、安心してグループホームで生活を続けられるよう、大阪府の都市型グループホームの特性に対応するべく、大阪府独自の家賃補助制度を創設してください。
 また、グループホームの利用者の通院について、制度的には通院ヘルパーがありますが、軽度の障がい者は使えない、医師の問診に対し症状や普段の様子がわからないので答えられないなどの理由で使いづらく、致し方なく本人の状態や症状がわかっているグループホームの世話人や支援者が、病院の同行をしている状況です。そのため、本来の業務が手薄になり、グループホームの事業運営に支障が生じています。
 ついては、世話人等による通院支援に対し、大阪府独自の加算をつくってください。
 加えて、利用者が満足できるようなレベルの支援を実践し、日々厳しい事業運営を強いられているグループホームの報酬単価が上がるよう、国へ要望してください。

【教育】
○通学区域の設定方法について
 大阪府では、支援学校を大阪市との統合後も整備をすすめ、この程、さらに新設校の整備計画もあるとのことですが、開校により通学区域をどのように設定され、変更になるのか、その手法と計画をお聞かせください。
 また、その際、重要視されているのは何ですか、お聞かせください。
 次に、現在、府立高のうち高等学校については府内全域が一つの学区となっており、生徒自身に合った学校の受験が選択できるようになっています。
 一方、府立高のうち支援学校(高等支援学校を除く)については、居住地により通学する学校が決まっています。
 聴覚支援学校を除く支援学校では、通学バスを有しており、経路の関係もあることから通学区域の設定がされていると思われますが、学校の定員数に受け入れる余地があり、かつ通学手段を児童・生徒側で確保ができる場合には、通学区域によらず府内の支援学校に通学できるようにしてください。

○家庭と教育と福祉の連携について
 家庭と教育と福祉の連携は、厚生労働省、文部科学省いずれも重要課題とし、「トライアングル」プロジェクトに取り組まれています。
 その中で、家庭と教育と福祉の連携を行っている地方自治体の好事例について、箕面市からヒアリングがされていることなどから、大阪府には良い事例があると思ってます。
 放課後等デイサービスと学校の連携について、良い事例をご紹介いただきたいです。(1)小・中学校と、(2)支援学校と、(3)高等学校等とそれぞれについて教えてください。
 また、平成30年には、両省より『教育と福祉の一層の連携等の推進について』の通知が出ています。そこには、学校と障害児通所支援事業所等との連携の強化のほかに、(1)教育委員会と福祉部局、学校と障害児通所支援事業所等との関係構築の「場」の設置、(2)学校の教職員等への障がいのある子供にかかる福祉制度の周知があります。それは、大阪府としてどこまで進んでいるか、現状を教えてください。
 さらに、同通知より「保護者支援を推進するための方策」として(1)保護者支援のための相談窓口の整理、(2)保護者支援のための情報提供の推進、(3)保護者同士の交流の場等の促進、(4)専門家による保護者への相談支援を進めることが求められています。保護者支援については、当団体が古くから丁寧に行ってきていることですので、情報共有や協働をさせていただくことで、推進へのお手伝いができると思っております。これらの現状を教えてください。
 次に、支援学校と放課後等デイサービス事業所等の関係として、支援学校の通学バスは登校時に満杯でも、下校時はガラガラの状況になっています。
 一方、放課後等デイサービスが遠方の支援学校に迎えに行くことに困難を感じている事業所もあります。それらを踏まえ、通学バスの運行について、有効な利用をどのようにされているのか教えてください。

○特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議の通知について
 3月31日付で文部科学省が取りまとめた「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議報告」のうち、「特別支援教育に関わる教師の専門性向上に向けた方策」には、採用段階での工夫として「採用後10年以内に特別支援教育を複数年経験」と明示がされました。
 昨今の教員数不足の課題に取り組む姿勢は評価できますが、特別支援学校を経験すべき現場としながら、特別支援学校教諭免許状の所有が絶対条件とされていないこともあり、専門性を有しない教員による教育活動については、児童・生徒に不利益が生じる可能性があることと、保護者にとっては不安を覚えますので、大阪府での運用をする際には慎重な対応をしてください。

○支援学校の教員の質の向上について
 支援学校における在籍職員の支援学校教諭免許の保持者が、令和2年度で支援学校全体の全国平均が84.9%に対し、大阪府では78.8%に留まっています。
 大阪府では認定講習の開催等により免許の取得促進をされていますが、教育課程及び指導法といった免許取得のための知識伝達に留まらず、児童・生徒の特性に寄り添った対応や家族・支援者への配慮ある対応等も含め、教員の質の向上に向けて更なる取り組みを進めてください。

○令和4年4月27日付け文科省通知について
 文科省初等中等教育局長から障がいのある子供の自立と社会参加を見据えた、一人一人の教育ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、多様で柔軟な仕組みを整備するとして、特別支援学級及び通級による指導の適切な運用についての通知を出されていますが、保護者は、その内容を知り、理解できているのでしょうか。
 ついては、この通知の周知をどのようにされて行かれるのか教えてください。

【コロナ感染症対策】
○感染が拡大した時、利用できなくなったサービスが多かったです。
 昨年の大阪府の回答では、本人及び家族に陽性者が出たとき、「市町村並びに相談支援事業所が、必要に応じて必要なサービスを、保健所と相談する」とのことでしたが、実際にはちがいました。
「本人が陽性。症状が重くても、知的障がいがあるため、医療に受け入れてもらえない。」「母が陽性。本人を介護する人や場所が見つからず。母は重い症状のまま自宅で過ごした。」「本人が濃厚接触。元気なのに、サービスが受けられないから、介護は家族で行った。」など、誰も助けに来ない中、家族で抱え込むしかなかったのです。
 報道では、福祉の法人で陽性者が出たため、事業所の利用制限等をして、陽性者に対応。その様子が「職員が危険を感じながらも看病」「大きな減収」として報じられています。身の危険を感じながらも頑張ってくれた支援者には、心から感謝しています。しかし、一方では、事業所が利用制限したことで、多くの知的障がい者は、必要なサービスを受けられませんでした。「陽性者が出た」ということでのサービスの中止が何度も繰り返され、結果、生活支援や介護は、家族に押し付けられた気がします。
 大阪府は、このような事態をどのようにとらえ、打開していくおつもりなのか、お考えをお聞かせください。

【就労支援】
○ハートフルオフィスの位置付けについて
 当会では、従前よりハートフルオフィスなどでの常用雇用(現在期限付き)を要望してきましたが、そもそもハートフルオフィスの大阪府における位置付けは、どのようになっているのでしょうか。以前、その返答の中でハートフルオフィスは訓練的な意味合いで通過型という説明があったと思います。
 ただ地域では大阪府所管の職業訓練校(障がいがある人向けコース)からハートフルオフィスへの就労が散見されます。職業訓練校より訓練型のハートフルオフィスへの就職は意味合い的にも違和感がありますし、大阪府への就職者を訓練するために、大阪府の公金を使って訓練するのは税金の使い道としていかがなものかと考えています。本人が選択している事とはおもいますが、そういった利用の仕方についてどう考えられているのか伺いたいです。
 ちなみにこの事例は4月に訓練校に入学し、同6月にハートフルオフィスの入職試験を受けられています。(訓練期間2ヶ月)

○企業の障がい者雇用のあり方について
 大企業を対象に、雇用管理を代行する民間サービスが関東から複数大阪へ進出してきています。その大企業においては、実質雇用を委託することで雇用にかかる諸般を省くことができ、障害者雇用率にはカウントできるというものです。これは本来求められる企業における採用とは違い、ナチュラルサポートなどは皆無という仕組みであります。違法ではなく、本人も家族も喜んでいるケースが多いですが、対象者が知的障がい・発達障がいの方が大半を占めており、自分の事を発信しにくい障がい者をターゲットにしていて、本人の人権が本当に守られているのかと懸念しています。
 また、このような雇用のあり方は、共生社会という考え方からも乖離している様に思うのですが、大阪府としてはどのようにとらえているのでしょうか。あわせて、特例子会社もこのサービスを利用しているところが他府県では見られます。ハートフル税制を適用している大阪府では今後特例子会社がこのサービスを利用した際にどのような対応を考えているのかお伺いいたします。

○就労継続A型の運営について
 株式会社が運営するA型について、自社のグループ企業に半年間就職させ、再度A型を利用すると言ったケースが散見されます。就職中の様子がブラックボックスなので状況は掴めませんが、A型が加算を取る為に移籍しているのではないかといった疑念を抱きます。そもそも半年で離職している時点(就職後半年の)で支援は失敗しており、最後に同じ事業所に戻ることについて疑問を感じます。
 そういったA型が増えていることに関して大阪府では指導も含めどう考えているかお聞かせください。
                                                                                                                                                                                                

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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