平成21年度 大阪府戦略本部会議 地域医療再生に関する意見交換会 議事概要

更新日:2015年8月5日

  • と き 平成21年7月31日(金曜日) 11時から12時15分
  • ところ 特別会議室(大)
  • 出席者
     (有識者)  遠山 正彌  大阪大学医学部教授
             澤  芳樹  大阪大学医学部教授
             木村  正  大阪大学医学部教授
     (医療機関) 小川 道雄  市立貝塚病院総長(病院事業管理者)
             種子田 護  市立泉佐野病院総長(病院事業管理者)
             三島 秀雄  阪南市立病院院長
             松岡 哲也  府立泉州救命救急センター所長
     (大阪府)  知事、綛山副知事、政策企画部長、総務部長、健康医療部長 ほか

地域医療再生について(意見交換)

【政策企画部長】
 本日は、経済対策の一環である国の「地域医療再生臨時特例交付金」の活用のために、府県が定めるべき「地域医療再生計画」の検討にあたって、関係者のご意見を伺う場として設定をさせていただいた。この計画は、二次医療圏単位での医療の課題を解決するため、施策を定めるもので、今年10月までに国に提出する必要がある。
 
有識者として、地域医療についてのご提言をいただいたということで、知事から紹介された、大阪大学の医学部教授、遠山先生、澤先生、木村先生。そのご意見に関する地域で、現場の医療を支えていただいている、貝塚、泉佐野、阪南各市の公立病院及び府立泉州救命救急センターの責任者の皆様方をお招きした。
 
まず、健康医療部から、資料1に基づいて説明をお願いする。

※健康医療部から資料1に基づき説明。
  
特にまとめとして、
   
・相対的には、大和川以南の各二次医療圏の医療機能が脆弱な状況
   
・とりわけ泉州医療圏は、地域医療の核となるべき市立病院が、
    医師不足等により一部診療科の休止を余儀なくされるなど切迫した状況で、
    積極的な取組みが必要
   
・大阪府としても泉州地域を公立病院改革の最重点地域と位置付けている
   
・同様の課題認識のもと、泉州南部の各病院において、現在、
    病院間の機能分担、経営のあり方等について、鋭意検討・協議中
  
である旨を説明。

【政策企画部長】
 こうした点を踏まえ、特に地域医療の機能が脆弱な泉州南部について、阪大の先生方のご意見を、木村先生からご紹介をいただく。

【知事】
 お忙しい中、朝早くからありがとうございます。今回の会議の趣旨は、庁内で色々な検討をしていても、いろいろ外からの意見も聞かせていただきたいということ。
 
健康医療部がいろいろ計画を検討しているが、今回、遠山先生をはじめとして、違う視点からの意見をお聞きしたいということで、今日の会議を設定させてもらった。また、現場の病院の先生方からのご意見もいただきたいと思っている。
 
今度の国の予算、100億円の交付金を獲得して、よりよい医療圏にしていきたいと思う。行政は、組織の統合ということに関しては、反発が出るところがあるが、将来のためになるのであれば、やっていかなければならない。現場の声で、どうしてもだめだと言うのであれば、そういう道は探ることができない。今日は、私が最終的に判断をする上で、忌憚のない意見交換会にさせていただきたい。

【木村教授】
 
この案はあくまで私的な案とお考えいただきたい。この地域の病院に医師を比較的多く派遣している診療科の教授たちと意見を交換してまとめたものではあるが、そのことを前提にお聞きいただきたい。

※以下、資料2に基づいて説明。

【政策企画部長】
 遠山先生、澤先生から補足をしていただくことは。

【澤教授】
 地域医療の10年後、将来のあるべき姿を考えた上でも、また、私達、医師を派遣する立場、それから今後の将来を担う医師を教育するという立場からも、地域医療の崩壊ということを考えた場合には、選択と集中しかない。大きな病院で器が整備されても、そこでの研修の密度が落ちてくると、若い人は行きたがらない。ところが、そこを活性化していただくと、そこでの研修が成り立つ。若い人は別にその地域に行きたくないのではなくて、病院の機能に対して行きたくないと考える。
 
今回は、国の制度をぜひうまく活用していただいて、この地域で成功例を出す。これを大阪として示していくということが非常に意義の深いこと。泉州地域にとっても、住民にとっても非常に意義が大きい。かつ、医学教育にとっても、将来を担う医師が喜んで行く、そういうことが成り立っていく。
 
日本は保険制度が充実している分だけ、百貨店方式のようにどの病院も競い合って、同じようなシステムを採り、どの施設にも同じようにCTやMRIがあるが、欧米ではそんなシステムではない。やはり高度な施設を整備するなら、ある程度大きな医療圏の中に一つ整備する、それが合理的なやり方だと思う。
 
そういう意味では、ここの医療圏が一つの医療センターとしてまとまって、それぞれの機能を発揮してくれると、住民に対しても、また新しい医師への教育にも、うまく回転が回って、いい方向に行くと思っている。
 
木村先生から提案させていただいた意見をぜひ取り上げていただいきたと思う。

【遠山教授】
 
まず大事なことは、医師不足。これについては、お二人から話があったように、若手の研修医にどれだけ魅力のあるメニューを提供できるかというところだと思う。今の3病院ではたしてそれができているかというと、できていない。まずは統合しながら、それぞれの特徴を持って、3病院統合したからこそ、これだけの研修体制を組むというメニューを出さないことには、三つ、いわゆる古いタイプのコンビニがならんでいるようなもので、立ち行かない。若手医師をひきつけるという意味からもそれをお願いしたい。
 
もう一つ、泉州は大変広く、三つの自治体以外にも恩恵を被っているところもあると思う。泉州全域で、統合した組織が基幹病院であるという意識を持っていただき、各市町村がこの病院に対して、全面的なバックアップをしていただきたい。医師会の方も協力していただきたい。後方支援は、国立大阪南医療センターや近畿大学がサポートを確保していただけると思う。
 
3つめは医師の待遇。これを申し上げると医師会の先生方に怒られるが、専門職の方が、普通の開業医の先生よりももっと評価されてもいい面がある。大変低い待遇であると私は思っている。場合によっては、病院の一般の職員の方よりも低い待遇である。専門性・貢献度、そういうことをきっちりと評価してあげてほしい。いつまでも使命感だけで生きていけといっても生きていけない。生活もあるし、40歳くらいになって燃え尽きてしまって、中堅の部長クラスがやめていくというのが、今、公立の病院で起きている破綻の現象。そういうことのない待遇をお願いしたい。
 
最後は、泉州という地域を生かした特徴、関空があることなどを踏まえ、何か特徴のあるメニューが加えられたらいいと思っている。
 
この3病院1センターが一体となって合理化をきっちりと図っていただければ、地域の方にも、これから卒業する学生さんにも、それから医師にも、皆さんにとって前向きな方向になる。特に市町村の方々の英断を。

【政策企画部長】
 
医療機関の経営統合・機能分担、それから活性化・魅力作り、医師不足への対応など、さまざまなご意見・提言をいただいた。地元の先生方を含めてご意見、ご議論をお願いしたい。

【知事】
 
特に、経営形態を統合し、独立行政法人にするという考えに対して、現場の院長先生、総長先生、所長さんのお考えをぜひお聞きしたい。忌憚のないご意見を。

【小川 貝塚病院総長】
 
私は、4月に就任したところで、単年度黒字を達成するようにということでやってきた。職員ががんばってくれて、6月末現在で累計で15万円黒字。そういうところで、急に方向転換をしなければいけない。その点でやはり難しい点がある。
 
順番として、経営統合が先に出ている。最後はこれは一番重要だとは思うが、最初は、やはり診療機能の集約化ではないか。例えば、木村教授は、私が着任する前に泉佐野と貝塚で産科と婦人科を集約化していただいた。緊急で呼び出されることが減って、医師は非常にストレスが減る。診療機能の集約化というのは絶対必要。私は、熊本で小児科と整形外科をやった。そこでも非常にストレスが減って、小児科の状況は良くなった。経営形態は、それから検討するということがいいと思う。
 
二番目には、例えば、お隣の病院と医師の派遣をしている大学や医局が違うと、「流儀」が違って、うまく人材が一緒になれないこと。そのことをコンソーシアムをつくって各大学から人をきちんと派遣していただけるような仕組みが出来ないか。今までの大学中心のシステムから、この地域にまとめてどういうふうにするか、ぜひ、各大学、医局の壁を越えた体制をつくっていただく。
 
機能集約、コンソーシアム、そして三番目に、診療科をどうするかということになると、どこでも収益性のいい科をとりたいとなるので、最後にやっぱり経営統合をしなければいけないという、そういう順番ではないかと思う。最初に独立行政法人を言われると、議会や職員への説明が難しい。私自身、国立大学の法人化の時に対応をし、それから労災病院という独立行政法人1年目のところに行っていた。現場には、独立行政法人という仕組みに対して拒否感みたいなものがあると思う。大阪発で、別のすばらしい経営形態があればいいが、結局考えてもこれしかない。

【種子田 泉佐野病院総長】
 
今の泉州地域の医療に関しては、需要と供給のバランスが完全に狂っているということが最大の問題。供給側の病院の体制の中で一番弱いのが勤務医師確保。「都会内へき地」と我々は言うが、大阪市内には、たくさん医師がおられるのに、なかなか不便な泉州まで来ていただけない。そのハンディを乗り越えるには、かなり魅力のある組織をつくっていかないとだめ。
 
勤務医はとにかく非常に疲れており、疲労で萎縮して元気がなくなっている。そこにインパクトを与えることが、大切ではないか。医療システムの改変などの何らかのいい組織が出来上がると、それがモチベーションになる。医学教育や診療について、全国的に見て一つのモデルが提示できるのではないか。あそこに行けばこれだけのことが学べる、大学との関係がよかったら、大学と現場の病院をローテーションし、医療レベルを高めつつ、研究も一緒にやっていくということで、世界に発信できるような医療技術を開発する。高い目線からの目標を掲げることも必要となり、画期的なシステムを立ち上げなければ、日本の医療は行き詰ってしまうのではないかと恐れている。
 
独法化については、この4病院の中では、泉佐野病院だけが今、目標として掲げて、それを進めている最中。なぜ独法化にしたかというと、経営形態として身軽になる。医療の世界は、他とは違って、絶えずめまぐるしい変化が起こっている。その変化に刻一刻、1日単位、1時間単位で対応しなければならない。ところが、今の市立病院の仕組みではそれができない。

【知事】
 
独法と、今のままとでは、何が違うのか。

【種子田総長】
 
今のままだと、何事も議会に通さないといけない。決定・実行に半年から1年かかる。その間に制度が変わって、もう次の問題が出てくる。変化に対応するには全然間に合わない。私立の病院と非常に大きなハンディが意思決定と実行スピードにある。
 もう一つは、市に準じた年功序列の給料体系。能力や経験、努力や成果を反映できない。一刻も早く、私のところは独法化をしたいということで、今、独法化に努力している。数年後には、それをスタートするつもり。
 
今回の統合で同じ組織にするとなると、医療という点では、公立病院というよりも、独立行政法人にした方が身軽で、より効果的、しかも住民の方に対するサービスがかなり改善されるものと思う。
 
ただし、大学側には、「あそこへいくと忙しいからつぶされる」、「あそこへ行くと救急をやらせるからだめだ」という考えもある。救急がだめだと言われると非常に困るのは、公立病院としてはぜひそれをやらなければ地域医療を守れない。
 
さらに、勤務医師不足となり、特に産婦人科は医院も数が少なくなり、このままでは到底、安心できる医療が供給できないということを木村教授はお考えになった。統合するしかない。私もそれ以外にないだろうと考えている。普通のお産の病院は結構あるが、そのお産の病院が成り立っているのは、その先にリスクの非常に高い人を引き受ける場所があるから。もし統合ができなければ、あの地域からハイリスク分娩施設がなくなる。我々はそうした不採算医療を担っている。これは公立病院の運営だから、民間と競合しないところをやっていくということが非常に大きな課題で、そこに人を集めるとなると、また、それが大変困難なことが多い。
 
小川総長からも話があったが、同じ人数の医師でも、1箇所にまとまるだけで、精神的にも肉体的にも非常に楽になる。統合すれば、結果的に同じ人数でも、1+1が2でなくて、3にも4にも5にもなって、モチベーションが上がる。それは現場にいるとその効果を身にしみて感じているので、他の科もできれば統合したいと思う。しかし、医師が各大学から派遣されていると、なかなか実現は容易ではない。それぞれの根回しが大変。それをなんとか突破したい。産婦人科統合の場合は同じ教室から派遣されていたので、教授の方針ですぐにできた。ところが大学が違う、医局が違うとなると非常に難しい。それをどうやっていくかというのが、工夫のしどころではないかと、私は考えている。
 
地域を越えて統合すること、それからもう一つは、大学や医局の壁を越えて統合すること、この二つの非常に困難な作業が残っているが、それを克服する莫大なエネルギーという代償を支払っても、やはり統合して独法化した方が、これから10年先、5年先のためには非常にいいことになるのではないかと確信している。

【知事】
 
小川総長も難しいということが前提にある。

【小川総長】
 
難しいけれど、しかし、やらなければいけない。一つの財布にしないと、結局、診療科の取り合いになる。やはり一つの財布にしてやらなければならないと思う。
 
統合については、機能を分担し、整備し、より良くして、医師を集めるという点がまず第一。次に、そのためにクリアしなければならないのは大学間、医局間の壁。これはぜひお願いしたい。三番目に、同一の財布にしようと。

【三島 阪南市立病院長】
 
ちょっと言わせてほしい。阪南は、おそらく外来機能だけで入院機能はなしということだが、私自身の考えでは、そうなったら病院を存続する意味が、そもそもないような気もする。全体の話としてはいいことだが、実際に病院があるということにどう決着つけるかということは、地域住民に対してもどう説明するかという大きな問題があるから、病院長の立場からは簡単にはいいとは言えない。
 
もし統一するのであれば、私は1箇所に集めてやらなければ筋が通らないと思う。例えば、泉佐野と貝塚が二つに分かれて存続するが、阪南は切り捨てようというのは、納得いかない。しかし、実際には3病院はそれぞれ存在していて、立場から言えば阪南と同じ。そこで私としては、要望がある。3病院はそれぞれ形態を変えてはどうか。例えば阪南はダウンサイジングしてでも入院設備をある程度整えたい。特に、小児科と高齢者は今でも入院をなかなかよそへ回せなくて、阪南で担っているところがある。住民からも小児と高齢者の入院はぜひとも確保して欲しいと言われている。医師不足もあるが、これだけはと、いろいろ大学へ応援を頼みに行っている。それを切り捨てて進んでいくことはできない。
 
大筋では、将来的な統合というのは私は当然だと思うし、やむを得ないとも思う。ただ、阪南としてすることがないかというと、簡単に言えば、ダウンサイジングしてでも、やはり後方支援を担いたい。機能統合をした場合でも、高齢者対応ということで、回復期とか亜急性期の患者を阪南が担ってもいいのではないか。ただ、それを大規模にしたらどうしても赤字が出るので、収支償う規模にして、統合する新組織に貢献したい。
 
大きな大学病院のような病院を作ることだけが地域医療をやるということではないと思う。例えば、手術をやっても患者さんを1週間で退院させるのであれば、我々がリハビリや回復期を担わなければならない。包括医療などいうときには、絶対そういう施設が必要だと思う。もう一つは利便性。泉南は広いので、泉佐野とか貝塚へ患者さんを搬送するようになったら、若い人は平気で行けるし、いい病院に期待するけれども、年取った患者さんは行きたがらない、また受け入れてくれない。学問的に高尚な話ではないが、弱者への配慮をしていかないと、いい病院だけ作っても機能しないと思う。阪南だけ入院をやめて、他はどんどんお互い提携してやっていく、では筋がとおらないと思う。そういう配慮はお願いしたい。

【松岡 府立泉州救命救急センター所長】
 
市町村の財政状況を考えると、採算性は抜きにできないが、地域の基幹病院である限り、公益性というのは非常に重要。地域のセーフティネットとして、災害や感染症、救急というのは基幹病院である限りは、切れない部分。
 
一昨年から救急医療の崩壊が取り沙汰され、昨年から大阪府の医療対策課の方々にも多大なご協力をいただいて、情報システムの整備やコーディネート事業など、また泉州地域でも別途、特に二次救急患者さんの搬送システムを構築し、最近は多少なりとも搬送困難例が減ってきているというデータが出ている。
 
ただ、その実態をみると、実は岸和田以北というのは救急もしっかりやっている。300床くらいの病院だが、四つくらいの病院が非常に熱心に救急をやってくださっている。ところが貝塚以南を見ると、いわゆる初期・二次救急の基幹たれる医療機関が、残念ながらないというのが現状。泉州全域で体制を整備したことによって、泉州南部の救急患者さんというのは岸和田を中心とした岸和田以北の病院で、あるいは岬町の方であれば和歌山の病院で、という形でなんとかまかなえてる。今、岸和田以北にかなり加重がかかっている。
 
私は今回の話は公益性の部分で考えると、非常にメリットの高い話だと考える。重症救急は救命センターがチームで診るが、初期・二次というのは非常に雑多な沢山の患者さんが入るので、ある程度大きな医療機関、場合によっては地域全体、郡市区の医師会も取り込んだような形で体制を整備する必要がある。そのためにはある一定のエリアに救急災害の基幹病院たれる病院を準備しておかないと、確実な救急医療体制はできないと思っている。
 
また、救命センター自身、非常に採算性の悪い部門だけを引き受けているが、少し採算を考えると、医師は救命に特化したチームが必要だが、コメディカル(医師以外の医療専門職)であるとか、その他の医療資源はできれば一緒にやれるような体制に入っていくのが、あるべき姿だろうと思っている。
 
この方向の中で救命センターがいずれかの基幹病院と一緒になって併設型となり、その場合は三次救急のみならず、いわゆる救急搬送例に関して、診れるような体制を構築すれば、いわゆるウォークイン、救急外来は、地元医師会の先生方も一緒になった休日夜間診療所のようなものをその機会に方向性をつけていただけると、恐らく非常にいい形の救急医療の提供体制ができるのではないかと考えている。
 
それともう一つ、教育の話があったが、専門領域というのは大学から医師を派遣してもらわざるを得ない状況にあるけれども、私自身はやはり地域でもきっちり人が育てられる環境というものを作る必要があると思う。日本の医療は専門性を追求してきた。これは間違いではないと思うけれども、それとともに救急であるとか、総合診療、全人的な医療、そういう医師も同時に同程度育てていく環境というのが、特に地域医療という意味では必要。泉州南部で人を育てる環境を作ろうと思えば、救急医療をしっかりやって、そこで人を教育できるような環境も必要ではないのかと思っている。
 
救急が統合されていくことは、私自身は大賛成。最終的に経営統合すべきであるということについても、私の意見も一緒ではあるが、それがどういう形態がいいかということに関しては、私の結論はない。できれば本当の意味での「一つの病院」になるというのが非常にわかりやすいだろうと思うが、今の箱ものを維持した形でやるとなると病院が別個になるので、おそらく医療法上の病院としては、別の医療機関ということになるのではないか。ただ、将来的には機能分担をするにしても、当座は、例えば厚生労働省のがん拠点などは一つの地域医療のモデルとして医療群として認定を受けられるような方法というのがあれば、最初各病院がいろんなメリットを享受しながら上手に統合へ向かっていくステップになるのではないか。そもそも地方の県では単独で認定を受けられるような病院はあまりないので、地域群としてがん拠点を展開していくようなことも発想としていいのではと思っている。
 
このチャンスを上手に生かして、統合していく中で、府の方々に強力なバックアップをいただければ、泉州南部の医療体制、地域医療の体制を拡充できると考えている。

【知事】
 阪南の三島院長の経営に対するご意見については。

【松岡所長】
 
救急をやっていて急性期を診る時に、出口問題というのは非常に大事。何とか地域の病病連携の中でやっているけれど、やはり、重症患者さんのために、ベッドを確保しようと思えば、まだ、治療は完結していない状況で、亜急性期を確実に診ていただける医療機関であるとか、そこから在宅へもっていく間、回復期みたいなものを実践していただく、あるいは高齢者が在宅へいく間のいわゆる高齢者の方への医療提供をできる施設が、一つの病院として統合したとしても必要。そういう意味では、さきほど三島先生が仰ったような形で、病院を残して、ダウンサイジングするにしても、専門領域と違う形の機能分担、フェーズによる機能分担ができるのではないかと思う。

【知事】
 
どうでしょう、阪大の先生方は、現場の先生方からのご意見に対して。

【木村教授】
 
入院を受け入れることに関して言えば、入院中の転倒による怪我など、事故に対しても適切な処置ができる体制を取れないと、患者さんからの訴えなどで医療事故として問題化するというのが実情。私は、三島先生のご意見に対しても、患者さんを特定のレベルの重症度の患者さんに絞ってしまうこと、あるいはいろんな科を1人の当直医が夜間対応するというのは非常に大変なので、例えばご高齢の方で、亜急性期の方でということで絞ってしまう形にする方が、医療安全的にはいいのではないか。
 
また、小児科に関しては、入院が要るというのはかなり実は重症。24時間何が起こるかわからないというのが、入院されるお子さんの状況なので、当直の先生がそういう方を診る中で、どんどん悪くなった場合に、患者さんやご家族にご理解いただけるのか、というのが医療側の意見としては出るのではないか。

【三島院長】
 
そうであれば、二つにわけず一つにしたほうがいいのでは。
 
強いところは当然強い、それでやっていける。弱いところはなくなってもいいのだという論理は問題。理屈がとおった正義感がある医療をしなければ、ほころびが出てくるのは事実。大きくしたから医療が黒字になって、つぶれずにやっていけるかといえば、そんなことはないと思う。
 
ただ、こういうふうに統合するときに一番大事なのは、それは統合が賛成と言う意識の一つでもあるが、阪南市も、また泉南市や岬町のような病院がない自治体も資金を出し合って支えるようにして初めてこの案は成り立つということ。そういう配慮をしなければ、皆は納得しないと思う。きめの細かいやり方をしないと、院長の私でさえ納得できないので、職員や住民は納得しないし、話も振り出しに戻ってしまう。
 
私が市長に言っているのは、医師不足の一番の理由は、公立病院でもなくなるという意識。来ていただけるという話がついていても、断られる。現に、松原病院がなくなるという報道が出たら、実は2人ほど来ていただける話がついていたが、すぐ断りの電話が入ってきた。だから、市長には、もし病院をやっていくのなら、ダウンサイジングしてでも、病院を整備しなければ、なくなるという噂は消えない。阪南市で病院を維持するためには、急性期の仕事は泉佐野さんなどに任せて、メインとしては、高齢者と小児科に絞る。後は少し回復期リハとか、後方支援の方を受けようかと。
 
いつまでもこういう状態で病院をやっていくことは不可能と認識しており、目的はものすごくいいことなので、今度の話があったときに、これにのり、最後のチャンスと思って、全面協力はするが、やはり少しは阪南にもメリットが必要。それが正直な気持ち。

【知事】
 
経営統合の中で、プロセスは段階的にという配慮はどうか。

【遠山教授】
 
もちろん最初は経営統合ということで、一つの建物に全部入ればいいと思うが、現状を考えた時に、それでは、地域医療をやってきた各病院が納得しない。最初の段階として、各病院の機能をうまく住み分けて、形として一つになる。しかもそうすると、経費などいろんなことがだいぶ楽になる。阪南には、外来を残されたらいかがかという提案。阪南市の住民との関係などに配慮して、廃院と言わず、むしろ規模を縮小して継続というのを我々としては申し上げたつもり。ただ、いつまでも同じ努力は続かない。三島先生だからこの10年維持できたとしても、次の人になった時にまた、同じような苦労ばかりをしながらやっていくのが本当の姿かというとそうではない。
 
二つ目に、他の自治体との協力という話を申し上げた。これは泉州全体で医師会を含めてバックアップしていくもので、決してどこかの地域だけを優遇ということではなく、皆が一つに、ということ。医療の問題点というのは、患者さんがごく当然のように権利としてサービスを受けているけれども、その下に税金も使い、いろんなところの負担もあってやっていっている。そういったことをちゃんと理解して欲しいという意味で、全泉州として、この新しい経営統合病院をバックアップしてもらわないことには、にっちもさっちもいかないという意味。

【小川総長】
 
木村先生が私案だと言っておられるので、話の中で詰めていったらいいと思う。将来の方向としてどうかということ。
 
ただ、私も三島先生の立場だったら、私は絶対に同じことを言う。だからそれは、これから先生が主張されていったらいいと思う。

【知事】
 
先生方には、常日頃から地域医療を支えていただいて本当に感謝申し上げる。行政は、次の世代、30年後にターゲットを絞って、そこに対してどうあるべきかということを見た上でその方向性に従って向かっていかないといけないと思う。もちろん、ゴールは30年先の理想像を目指しても、現段階ではいろいろ課題があるから、いきなり理想は実現できないが、そこは目指していかなければならない。
 
今日、先生方のお話しを聞いて、モデルというのはすごい重要だと思う。僕の同級生の医師の話を聞いても、泉州にものすごいモデルの病院ができあがったら、皆そこで勉強しようと行くようなことにもなる。僕は専門家ではないので、先生方に議論をお願いしたい。やはり次の世代に向けての30年後どうあるべきかというような目標から、今何をしていかなければいけないかということを考える時、経営統合というのは絶対目指していかなければいけない一つのゴールなのかなという思いはものすごくある。
 
ただ、現場の先生方が真正面からそれはだめだという話だったら僕も考え直さなければいけないのかなと思っていたが、現時点で課題はあるにしてもゴールとして目指していってもいい姿なのかなということであれば、大学間の問題などを調整するのはまさに行政の仕事。大学に集まっていただいたりとか、市町村のご理解、市町村長のご理解をいただくというのは僕の仕事。

【三島院長】
 
私自身は、方向性は正しいと思う。最後は一緒になる、そうしないと生き残っていけないのはわかっている。ただ、そのプロセスを性急にしたら、現場がとても追いつかないのでつぶれてしまう。大きな目では、方向性はいいという認識は持っている。府にもそれは言っていくつもり。

【遠山教授】
 
先延ばしではなくて、ゴールをちゃんと定めて、そこにまい進する、そういう計画にすることが必要。最終的には、新しい法人にちゃんとした権限と力を与えなければ、結局、行政のしがらみがあって身動きができない。我々も、市立病院の先生方も、そういうしがらみをとにかく切って、法人の人たちの努力で、ちゃんとしたいい病院にしていける、いい経営をやっていける、自由度が増えていく、そういう新しい経営形態を作るためには、今は、この道しかないと思う。

【三島病院長】
 
それは考えていて、市もそういう検討はしているつもり。

【知事】
 
今、生き伸びるためだけに調整して、とりあえず今さえよければいいということの積み重ねが、今の日本の現状になってしまった。そこは、課題や困難をどこかで我慢することが必要。どんなことがあるかわからないが、方向性を決めればその手順を決めて調整し、課題を乗り越えるのが行政の仕事。この方向性については、健康医療部はどうか。

【健康医療部長】
 
基本的には、今、先生方を交えて議論をずっとさせていただいていて、方向はほぼ今日の先生方とご意見と同じような方向に向かっていると思う。ただ、三島先生が仰ったように、やはり住民の意見や、議会、首長の考えがあるけれども、基本的にはそこの住民の方が、なぜこういうことをやる必要があるのかということを十分理解をしていただけるよう、きちっと伝えていくということをやらないと、不安感だけが出る危険性がある。そこは手順を考え、各市・町それから我々も含めて十分な説明の時間、説明する機会が必要だと考えている。

【綛山副知事】
 
大きな方向性は、地域医療再生計画の議論として10月ぐらいまでに決めさせていただいて、厚生労働省が100億を交付するということになっているから、我々としては地域の医療の充実に取り組んでいく。ただしその大きな方向性の中で具体に手順を踏んでいくときには三島先生が仰っているように着実に踏んでいかないと,一気呵成に目的のところに達しようとすると地域医療がおかしくなってしまう。議会をどう説得していくか。
 
また、独立行政法人という経営形態は、非常に有用な手段だと思うが、自治体が連携して独立行政法人を作ったという経験はまだ踏んでいない。大阪府自身が5病院を独立行政法人にして、これはあくまでも設立母体が大阪府単独だから達成できて、効果的に動いている。これが自治体間で事前調整したうえで独立行政法人をつくって、そこが統一した経営主体で運営していくということになると、どうか。更に難しいのが、病院のない自治体も参画すべきではということ。府としての問題でもあるが、市町村合併が進むような状況ならいいが、そうでもない。そういう難しい課題もあるが、できれば10月までに方向性を出していただいて。

【健康医療部長】
 
非常に建設的なご提案。今日は各先生方からも忌憚のないご意見を伺ったが、これを参考にさせていただいて、10月までにはきちっとまとめたい。

【知事】
 
やっぱり難しいなと思われるようなことの計画案を出して、はじめて厚労省も、採択してくれるのではないか。

【健康医療部長】
 
やはりモデルとなりうるようなものを示さないといけない。今日の議論はかなりモデル作りのプロセスになった。非常に我々としてはありがたい。

【知事】
 
健康医療部はゴールは経営統合というのはすえているのか。

【健康医療部長】
 
すえている。

【健康医療部】
 
既存のインフラを積極的に活用しながら、選択と集中をするというな絵になると思う。

【澤教授】
 
やはり最終ゴールというか、経営統合は合理化の最終的な手段だと思うので、市町村の足並みが揃いにくいかもしれないが、府の強いリーダーシップでぜひやっていただきたい。
 
ドイツやイギリス、アメリカなど外国は、かなりしっかり行政が地域医療を支援し、体制作りについて関与して、過不足のないようなことをしている。ところが日本はそのままになっている。ちょっとした医師の研修の方法を変えただけでがらっと医療制度が変わってしまう。これは基盤があまりに弱い典型。
 
大阪府では、独立行政法人になってすごく基盤がしっかりし、黒字転換している。難しいと言うのは、小さい単位を意識して言うからであって、大きな二次医療圏を一体として考えるべき。三島先生仰ったのはまさにそのとおりで、どこかが良くなったら三島先生のところが弱くなっているということでは、やるべきではない。二次医療圏がうまくまとまるような行政になっていかないと。それをぜひお願いしたい。

【種子田総長】
 
行政の関与がなければこういうものはまとまらない。泉佐野病院は、入院も外来も市民は40%くらいで、あとは皆、他のエリアから来ている。事実上南泉州の基幹病院。ところがご存知のように、市自体が、今にも再建団体という非常に危ない状態の中で、なぜ、泉佐野市だけがこんなに他の市民まで支えなければいけないのかいうのが、市民の本音である。独法化しても繰り出しを今後共に続けていかなければいけないだろうなという事情がある。ここをいかに解決できるかというのは、やはり行政の努力しかないので、そのあたりをご理解いただいて、全泉州地区がよい医療システムを確立しまして幸せに健康を守れますように祈っている。

【遠山教授】
 
副知事が難しいと言われたけれども、そういう案だからこそ国は計画を認める。他のところがやっているような案だったら認めない。経営統合という方式があるから認められる。ぜひ独法でいくんだということを示していただきたい。
 
住民への説明の話が出た。例えば貝塚はがんが特徴。泉南地域は非常にがんの多いところ。拠点がないから、その代わり、貝塚の医療内容をがんを中心とした時には、泉南地域の方はそこへ行ってくださいとか、経営統合をしてこういう研修体制をつくるからいい病院ができますとか、また、泉佐野はこういう特徴があります、阪南はこうしたらいいですなど、各病院で特別なメニューを用意すると、それが住民の納得につながる。単なる経営統合だけでは絶対住民は納得しない。

【健康医療部長】
 
機能の中身はきちっと、我々も一緒にやらないといけない。
 
ディスカッションをお聞きして、阪南病院の位置づけについては、ほぼ一緒だったと思った。どういう医療をシェアするかというのは、もう少し議論を詰めなければいけないと思う。

【澤教授】
 
急いでやっていただきたい。集約化というか、診療機能をどうするかというのは、大学と3病院を交えて早急にやっていただいて、10月までにということだが、できるだけ早く案をたてて皆さんに納得していただかないといけない。

【健康医療部】
 選択と集中に際して、医局とか大学の利害が出てくる。そこは、大学としての意思統一にぜひご尽力いただきたい。

【遠山教授】
 
組織として泉州だけをサポートというわけにはいかないから、大学として言うのは難しい。それぞれ、医師を派遣している診療科間で、どう調整していくかということなら、できると思う。そこでだめな時に大学と調整されたらいい。今派遣している科をどういうふうにしていくか。そこのところで集まってもらうのが一番いい。

【澤教授】
 
漠然と大学に投げかけられるよりも、むしろ派遣している診療科の科長が集まれば、基本的にはほぼ調整できるのではないか。

【健康医療部長】
 
地域の医師会の協力は、特に一次救急や小児救急で必須と考えており、それは我々府の仕事の一つの課題と思っている。

【知事】
 
せっかくこうやって大学の先生方や現場の院長の先生方に集まっていただいて、議論をしている。なんとか泉州の医療圏で、いいモデルを作って、健康医療部は100億の採択を実現してほしい。部長には大変なプレッシャーになるが。
 
行政としてしっかり調整しながら、次の世代に向けて、大阪が誇れるモデルを。課題はいろいろあるかもわからないが、そこを乗り越えるように、府庁の勢いでがんばりたい。先生方には、今後も忌憚のないご意見をいただきたいと思っているので、よろしくお願いしたい。

【政策企画部長】
 
本日の会議コストは1時間15分で16万1,875円。

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政策企画部 企画室政策課 政策グループ

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