平成21年度第27回大阪府戦略本部会議 議事概要

更新日:2015年8月5日

  • と き 平成21年12月16日(水曜日) 10時から11時40分 
  • ところ 特別会議室(大)
  • 出席者 知事、副知事、政策企画部長、総務部長等

議題1:府立大学の大学改革案

※府民文化部から資料をもとに説明。

【木村副知事】
・府立大学で学ぶ方、学ぼうと思う方にとっては、学域がどのような分野が中心になっていくか興味があると思う。学長も「理系を中心」にとおっしゃり、その中心が「現代システム科学域」という説明であったが、その中の「環境システム学類」、「マネジメント学類」というのは何か、具体的に学生がどういうことを学ぶのかピンと来ない。

【府立大学理事長・学長】
・新しい試みなのでしっかりキャンペーンしなければならないが、産業界の方は中身を理解してくれており、人材輩出の点では大丈夫と思う。これまでの大学では、理系なら理系の細かいことに特化してきたが、たとえばここで言う環境では、水質、経済、倫理などいろいろ学ぶ。つまり、分野横断的な知識がないと環境政策を企画することはできない。そういうことを訴えている。高校生に対しても、面白いことをやるということを理解してもらうことで受験率は上がるとみている。

【木村副知事】
・たとえば「生命環境科学域」に「緑地環境科学類」とあるが、この関係は。

【府立大学理事長・学長】
・「緑地環境」は緑地環境に関する専門的なものを学ぶが、「現代システム科学域」ではもっと広いところで、理系から文系に到るいろいろな分野を学ぶカリキュラムを考えている。

【木村副知事】
・具体的にこれらは理系なのか。たとえば「社会システム」といった言葉は文科系的なイメージだが。

【府立大学理事長・学長】
・理系の学問でも、文系の知識が無ければ役に立たない。経営的なこともある程度知らないといけない。環境をマネージするために当然倫理や哲学のような考え方も必要。これらを横通ししないと、社会におけるリーダーになれない。ある一定のところは文系のところも融合させる。それを強調したい。緑地環境だけでなく、マネージを含めた全体を学ぶことを希望する人はこちらへ来てくださいとなる。

【木村副知事】
・「環境システム学類」はまだわかりやすいが、「マネジメント学類」の具体的イメージは。

【府立大学理事長・学長】
・カリキュラムは現在編成中だが、一つは政策的な経営工学などのマネージを意図している。慶応義塾大学などでは「システムデザイン」という言葉も使っている。企画力、発想力、プレゼン力、コミュニケーション力などがポイントと考えている。

【木村副知事】
・具体的には、従来経済学部や心理学が担っていた分野をここでやるのか。

【府立大学理事長・学長】
・ここだけでなく全体で担う。いわばまだらのようなカリキュラムを用意して、これまでは、文系は文系、理系は理系としてやってきたものを融合させたい。ある一定程度の文系的知識は必要ということである。

【木村副知事】
・これからチームを作ってということだが、具体的イメージを詰めなければならない。今度は学類別の学生を募集するのか。

【府立大学理事長・学長】
・入試の詳細なデザインはまだできていないが、私の気持ちとしては、「こういうことを大学で学べるか?」という問いに対して、「できます。府立大学へいらっしゃい」という集め方をしたい。

【木村副知事】
・具体的に大学4年間、何をするのかをもう少し出さないと。

【府立大学理事長・学長】
・この取組みは、大学院で既に今やっている。世界的に同じような試みをしているのはほとんど大学院。ある程度知識のある人を集めて融合させるというのは成功している。一番有名なのは慶応義塾大学の「システムデザインマネジメント」という大学院。これを私は学部でやろうと考えている。学部で始めて、最後は大学院でやりたい。

【小河副知事】
・理系に傾くとしたとしても、哲学や倫理などベーシックなところは絶対ないとダメ。先ほどの説明では「それらの分野はどこにでも入っている」と言われたが、本当に簡単にいくのかなと思う。1年なら1年間、きちんとベーシックなことをやっていかなければならない。私も理系だが、後で振り返ると、文系でやってきたことが活きていると感じる。是非そういうこともわかるようにしてほしい。

【府立大学理事長・学長】
・学類の下にそれぞれコース(課程)を作っていく。そこまで見ていただければいろいろな名前がでてくるので「倫理もやるんだな」ということがわかると思う。受験生向けのパンフレットにはそこまで書くので、ちょっと待っていただきたい。自信はある。

【小河副知事】
・今まで「理系に特化した大学になり、文系は切り捨てる」というイメージがあったが、そうではなく、文系部分も取り込むと考えてよいか。

【府立大学理事長・学長】
・現在の規模は大き過ぎるので、ある程度スリムにして融合させる。それがないと理系で偏った学生にしか育てられない。

【綛山副知事】
・私は平成17年度に府立大学の統合を行った際の担当部長だったが、当時は3つの大学を統合し、学部については「足し算」をしたため、学部再編が大きな課題となった。そのため、今回の改革案では学部の「掛け算」と「割り算」をした。「引き算」をしているのではなく、先ほど学長がおっしゃった、マネジメント、コミュニケーション、企画力など、学問なり学生としてベーシックに持たなければならない部分は融合している。そういった形の中で新しい学類を作る。理念としてはそのように理解しているがどうか。

【府立大学理事長・学長】
・そう言っていただくとありがたいが、スリム化ということもあるので、そこも頑張ったと思っていただき、おっしゃる通り、「混在」していたものを、「融合」させると考えていただきたい。

【総務部長】
・この改革が目指すものをどのように表現するかだと思う。先ほどから、「理系中心」「縦割りから融合」という二つのことを一緒におっしゃっているが、どちらを強く主張すべきか。「文系学部が無くなる」という反対意見が多いとのことだが、今伺っていると、無くなるというのではなく、ベーシックな部分としては文系的な要素も学生に身につけさせていくとのこと。そうであるならば、理系中心の改革と強調するのではなく、現在、縦割りで行われているものを横串のトータルとして学生に身につけさせていく、というように説明すれば、クリアになるのではないか。

【府立大学理事長・学長】
・先の戦略本部会議でも指摘があったが、公立大学がこれから生き残っていくためには、「選択と集中」が必要。その中で、府立大学としては理系を強くしていこうという方向を取ったもの。ただ、文系が全部無くなってしまっては知識だけの弱い学生しか育てられない。しかし全部残すのでは従前の改革と同じことになってしまうので、「理系を強化するが、ある一定程度は残す」というのが正しい表現だと思う。
・「現代システム科学域」を思い切って作ろうとしているのは、ここが全学のセンターになるような形で今までそれぞれの学部がやってきた強みを活かせるようにと考えているため。

【政策企画部長】
・前回の戦略本部会議での議論を踏まえ、非常に真剣に議論いただき、大学づくりに動きが感じられる。そこで三点ほど伺いたいが、一点目は公立大学の意義、府が大学を持つ意義、税を投入する意義を改めて府民にどのように説明されるのか。二点目は、府の運営交付金を90億円に縮減するということだが、それについてどのように考えているのか。三点目は、今回の改革で大学の質が上がるというのであれば、授業料をどういう考え方で設定するのがよいと考えているのか。

【府民文化部】
・一点目については、9月8日の戦略本部会議において、我々のほうから問題提起させていただいたものであるため、大学側としては敢えてこの点については触れなかったと考えている。今後、設立団体として府が策定する大学改革指針案において、府が大学を持つ意義、大学に税投入することの意義を明記させていただこうと考えている。
・二点目については、選択と集中による教職員の削減や業務の効率化等により削減が可能であるといった大学の目標値であると判断している。今後の精査が必要であるが、理系中心の高コスト構造の大学へと転換するということもあり、大阪の顔となるような大学にするためには一定の投資額も必要だという範囲の中で考えていきたい。
・三点目については、今回の改革によって個人の満足度が高まるのは確かだが、改革の理念は、地域貢献ナンバーワン大学を目指すなど社会全体の受益を高めるものであると理解しており、質を高めることを即、個人の受益に結びつける議論でもないと考えている。資料にも記載しているように、学生納付金の見直しなど受益者負担の適正化については、今後、大学とともに十分議論していく。

【知事】
・確認だが、受験は「学類」で受けさせるのか。

【府立大学理事長・学長】
・「学類」で受けさせるところと、この下に「課程(コース)」をつくるが、そこで受けさせるところと、いろいろ考えようと思っている。

【知事】
・「学部」というものはなくすのか。

【府立大学理事長・学長】
・そのとおり。「学部」という言葉は使わなくなる。

【知事】
・文系の学部に限らず、全学部について学部という概念をなくすということか。

【府立大学理事長・学長】
・そのとおり。

【知事】
・大きな方向として、研究者を育てる大学なのか、社会をリードする人材育成を目指すのか。

【府立大学理事長・学長】
・本日の資料には学部のことしか書いていないが、研究者や産業界で活躍する人材を育てるためには大学院までやらなければいけない。新しい学域の大学院ができるまでには3年のタイムラグがあるが、そこでも新しいことを考えていこうと思っている。

【知事】
・大学は社会をリードする人材を育成するということに重きを置く。そこが公立大学の使命だということでよいか。

【府立大学理事長・学長】
・そのとおり。

【知事】
・経済学部の卒業生を中心に「現在の学部を残せ」という話が出ているが、社会をリードする人材というものを考えたときに、経済学だけ追求しても社会をリードできない。私は早稲田大学の政治経済学部出身だが、大学で学んだことは知事になって役に立っていない。
・なぜ「学域」ということをやろうとしているかというと、経済学や哲学といったいろいろなものは、ある意味、社会をリードする人材を育てるための一手段に過ぎないから。府立大学で経済学だけを4年間勉強するというだけでは意味がない。新しい府立大学は学生に経済学だけを追及させていくのではなく、新しい「学域」という中で、社会のリーダーになる者が備えるべきこと、経済学や哲学やいろいろな文系の学問をミックスした形でやっていくということか。

【府立大学理事長・学長】
・そのとおり。それがサイエンスだと私は言いたい。

【知事】
・今までの大学の学部というものに凝り固まっている人は「学部」が全てになっているが、もうそういう時代ではないということを明確に発信してもらいたい。
・社会をリードする人材育成ということで、府立大学では経済学だけを看板に掲げてやっても仕方がない。経済学も重要だけれども、それは「学域」の中でいろいろな学問を学んでいくための一つの要素、という打ち出し方をしていただかないと。経済学部中心に相当な抵抗があるので、その人たちに「違うんだ。社会のリーダーになるためには経済学だけではだめなんだ。」ということをしっかりと打ち出して、この「学域」でリーダーになる人材を育てていくということだと理解している。

【府立大学理事長・学長】
・社会ニーズや産業界のニーズでは、知事がおっしゃるような人を求めている。私が考えているのもそういう人材を育てようということなので、そこで皆の気持ちは一致できるのではないかと思う。「○○学部」といった名前にこだわっているときではない。

【知事】
・研究を目的に、研究者を中心に育てるということであれば、経済学を追求することもやっていただいたらいいが、それは別の大学で担ってもらう。

【府立大学理事長・学長】
・その部分はある程度残す必要があるし、あるいは、府立大学の大学院でもできるはず。

【知事】
・日本の大学での人材育成において、今の大学の学部制というもののおかしさというか、経済学部だけを国立大学でやっていて本当にいいのかということの問題提起も含めて、府立大学にモデルを提示してもらいたい。
・教員についても、学部の垣根を取り払って、こういうグループ系で組織づくりをしていくということも非常にいい取組みではないかと思っている。
・研究成果を社会に還元するという部分についても、人材育成と並び、公立大学の使命と考える。そこは意識していただきたい。
・これから大学の体制を整える際に組織内に号令をかけていただきたいのが、決してコストカットのための改革ではないということ。そこをしっかりと大学内に浸透させてもらいたい。結果として効率化を図れるということであればそれは非常にありがたいが、それが先にありきではなくて、社会のリーダーとなる人材育成をしっかりやるために、今回は学部という枠を取り払って、社会に求められるような学域というものから構成し直した、ということをしっかりと大号令かけていただきたい。
・大学の事務局職員のプロパー化ということは、総務部長にしっかりお願いする。あと、知事部局としての大学改革のバックアップ体制というのはどうなるか。

【総務部長】
・それも十分お聞きしたうえで対応する。ただ、職員数を非常に厳しく抑えているので、100%希望にお応えできるかどうか、この場で確約はできない。最大限努力はする。

【木村副知事】
・1、2月の集中的な検討が大事。2月議会での議論が一番の勝負どころだと思っている。できるだけ節目、節目で検討状況を出していくとか、世の中の疑問に答えていく、身内ではなく外に対してどのようにご理解いただくのかというのが大切。

【綛山副知事】
・資料の11頁の人材育成に高専を入れていただき感謝。以前から、高専、府立大学を独立行政法人の同じ枠の中で人材育成すると同時に、ここにはないが、工科高校についても非常に高い技術や授業力を持っているので、そことの接続を図り、府立大学がトップになって人材育成を図っていくということをお願いする。

【知事】
・府立大学はこういう形で新しいモデルを目指していくということについては全面的にバックアップする。体制面その他含めて、必要なことがあればおっしゃっていただきたい。
・繰り返しになるが、昔の方で学部にこだわっている方がどうしても多いので、そういう人達に対して、この新しい時代においては、「学部」ではなく、新しい「学域」というもので人材を育てないと通用する時代ではない、経済学部で経済学ばかり追求していくようなところでは通用しないというようなことも含めて、しっかりとメッセージを発してほしい。大学として考えていただいた「学域」について、私は専門家ではないのでその内容は学長にお任せするが、まさしく「学域」がこれからの社会で求められることだというメッセージを出していただきたい。

【政策企画部長】
・府立大学の大学改革案については、この方向をベースに具体的内容・数値目標などを詰めていただき、大学改革指針案として作成していくこととする。

【総務部長】
・大学改革の方向性は示されたが、この課題とあわせて、府の試験研究機関について、府立大学と統合するのか、独法化するのかどうかという課題があるが、今回の大学の改革案の中では統合ではなく連携という形。今後は、試験研究機関については独法化の方向で検討を進めていくことで、改めて戦略本部会議の議題として整理させていただく。

議題2:大阪センチュリー交響楽団

※府民文化部から資料をもとに説明。

【木村副知事】
・非常にチャレンジングなプランで、水野理事長に頑張っていただいた。来年夏に自立化の見極めとなっているが、数字をみると、23年度以降、協賛金・寄付金収入で4億円となっている。大フィルでも年間2億円ぐらいを青息吐息で集めておられる中でかなり厳しい目標。これが継続的にということになれば、かなりしっかりした大きなスポンサーが必要と思うが、それが見つからなければ、23年度以降の府としての態度はどうするのか。あとは財団に任せるのか。

【府民文化部長】
・今回、府民文化施策に立ったような形でシフトし、財団の経営改革をもっとやるべきとの議論の中で、財団が最終的に自立化の道を選ばれた。見極めの際に自立化できないとなれば、大阪府の支援はありえないと考えており、その時点で財団そのもののあり方、存廃も含めて議論をせざるを得ないと思っている。

【知事】
・「存廃も含めて」と言うが、その時点で「存」はもう無くなってしまう。「廃」だけか。

【府民文化部長】
・府は支援できないので、財団として、たとえば得られた収入の範囲内で規模を縮小するとか、他の楽団と統合するといった選択肢はある。

【知事】
・府の支援はないということで理解していただいているのか。

【木村副知事】
・できるだけそういうことにならないよう、スポンサー探しについても府として協力しなければならないと思っているが、どうか。

【府民文化部長】
・先日の理事会でも議論があった。一度に大きな寄付金をいただくというケースもあれば、小さなオーナー企業を中心に数社がまとまってやっていただくというプランもあるのではないか。厳しい状況なので、企業側に「こういうメリットがある」という営業をしないと難しいだろうと思っている。PRの方法など、企業にメドを付けて財団と一緒にアプローチしようと進めている。

【総務部長】
・この問題の発端は、昨年度改革PTが作成した「改革試案」において楽団の自立化という方向を出したが、直ちに実現するのは困難であるということで、20年度は「府民に支えられる楽団」という方向を模索し、21年度に判断しようということになった。
・21年度に入ると、「府民への貢献」という新しいテーマを出してきて改めて検討することとなった。ところが今回は再度自立化ということになり、来年度もう一度検討することとなった。
・検討期間が次々延びてきているというのが率直な感想。今回出された自立化というのは最後の方向だと思うので、23年度以降の府の支援は無いということを明確に決めて取組みをしていただきたい。

【府民文化部長】
・それを前提にやらせていただく。

【小河副知事】
・理事長が替わられて、一つの方向を決断された。府としてもきちんと寄付金を集めることについて一生懸命応援しないといけない。
・昨日たまたま雑誌でセンチュリーの話を読んだので披露する。辻井伸行さんが10年前、10歳のときに、始めてデビューしたのがセンチュリー交響楽団との共演。もう一度辻井さんとの再演などをしたら話題性もある。ぜひ、そういうことを考えてほしい。

【知事】
・水野理事長はよくやってくれている。こういう方向になればスポンサーの協力は私が責任をもってやっていかないといけない。
・スポンサー集めは厳しいが、イルミネーションでもミュージアムでも皆に声をかけてやろうということになれば寄附していただけた。水野理事長の方向性という、皆が支えていこうよというメッセージ性を出さないといけない。財界だけ通じて寄附を集めるのはもう無理。

【木村副知事】
・集めるのはいいが、寄附集めを継続できるかは、それだけのサービスを提供し続けることができるかにかかっている。そこは財団としてきちんと示していただかないと。

【知事】
・財団も今までと同じ考え方ではなくて、どうやって府民から支えてもらうかをもっと考えて、必死になってもらいたい。今までのオーケストラの流れではないやり方をやらないと寄附は集まらない。他の自治体、交響楽団をもっていない自治体への働きかけも含めて、私もやるが、府もスポンサー集めをしっかりサポートしてほしい。行政との関係で距離感を持っていた企業が、敷居がなくなった途端に集まってきてくれる。しっかり考えてやっていきたい。

【政策企画部長】
・センチュリーの将来ビジョン案についてはこの方向で了承するということでよいか。

【知事】
・「23年度は府の支援はない」ということはどこかに入るのか。

【総務部長】
・予算要求の査定書の中に書く。

【政策企画部長】
・具体の予算は予算議論の中で確定していただく。

議題3:ワッハ上方

※府民文化部から資料をもとに説明。

【府民文化部長】
・部内ではいろいろな意見があった。通天閣さんには大変なご配慮をいただき、移転案としては今でも最善策と考えている。しかし、今回、吉本さんと放送局さんサイドから、ほぼ通天閣と同等の金額で施設を運営することが提案され、また、ワッハ上方の集客、展示魅力の向上について、吉本あるいは放送局が全面的に協力する具体性のある提案が示された。さらに、中身は現段階ではわからないが、25年度以降、新たな官民協力のワッハ上方の事業展開をスタートさせていくことも提案された。こうした提案をいただいた中で、最終の私の判断としては、あえてこれを拒否し、一方で移転費用約2億6千万円を負担して施設を移転するという決断はできないという思い。
・したがって、現地存続の提案を受けて暫定期間の状況をきちっとリサーチし、それを府民が支持するかどうかを評価するとともに、その後の新事業について、どのような展開ができるかということを併せて検討して、新しいワッハ上方の事業を展開していきたい。

【綛山副知事】
・現地存続案では、これまでの入館者数を大きく上回る50万人を集客目標としているが、何年度の目標か。

【府民文化部】
・来年度はどこが指定管理するかはまだ決まっていないが、来年度は基本的には今のままと理解して、23、24年度で新しい展開となる。吉本さんは、ワッハ上方は上方演芸の振興を図る府立施設であり、今後の在り方については民間企業が単独で意思決定すべきではないであろうということで、放送局あるいは府も入った形で、どういう風な新しい公共性のある文化事業を発信する施設とするかということを検討するための暫定期間として2年間を提案されている。吉本さんからは集客を向上させるプランをいただいているし、そういう意味では、23年度に即入館者数50万人を達成できるかどうかということはあるが、23年度の状況を見た上で、集客性については判断していきたい。

【綛山副知事】
・集客が一定担保でき、通天閣案では見極められなかった演芸ライブラリーが今回は継続されるということで非常に魅力的であるが、25年度にスタートするとされている官民共同の新たな文化発信事業、ここに行政の役割としてどう参画していくのか。府として一旦は通天閣移転を選択したのは、行政の役割を「いただいた貴重な資料を展示する」という機能に縮減したため。それを基本として、25年度以降、きちんと吉本さんと協議ができて、官の役割として相応しいものになるのであれば、一つの選択案であると思う。ただ、欲を言えば、なぜ22年度からワッハホールを除いて運営費用を1億円とすることができないのか。もう少し吉本さんに頑張っていただければありがたい。

【府民文化部】
・現在の建物賃貸借契約が来年1年間残っているので、22年度はそのままの額でと考えている。

【政策企画部長】
・この議論の原点は、府としての費用がかかり過ぎるというところから始まった。そういう意味で言うと、トータル費用の少ない現地存続案というのは非常に魅力的であると思う。特に政策課題が目白押しで財源が非常に厳しい状況の中、政策企画部としても他の施策にまわせる経費が出てくるのはありがたい。一方で課題としては、25年度以降のことであると思う。25年度以降の施設のあり方の判断は、24年度中に決定する必要がある。そうなると、評価期間は23年度のたった1年しかない。府の負担や集客の説明があったが、それらの評価ポイントをあらかじめ設定しておく必要があると思うがどうか。

【府民文化部】
・そこまでの準備は現時点ではできていない。あくまで通天閣に移転するか現地存続するかという段階。たとえば、入館者数をどういう風に設定するか、目標をどこに置くのか。まずは23年度の状況を見たうえで24年度に評価することと並行して、新たな文化事業の振興、特に、基本は府民からいただいた6万点余りの様々な資料について、公として保存し上方演芸を振興することが基本であるので、これを維持しながらさらなる情報発信をしていくことを検討していく中で、現地存続となった場合には、評価ポイントの設定が必要であると思う。

【木村副知事】
・費用と集客が論点であると思うが、資料3の裏面「吉本興業からの集客プラン(提案)の内容」の1に「ワッハ上方の入場チケットについては当社グループにて定額にて買い取ります」と記載されているが、ワッハ上方の入場料が無料になるという理解でよいのか。

【府民文化部】
・まだ具体的な話はしておらず、金額をいくらにするかの議論はあるが、たとえば、劇場の観覧券にプラスしてセット販売するということ。

【木村副知事】
・入館者目標を年間50万人としているが、私は今年3回くらいワッハ上方に足を運んだ。この前は「関西文化の日」で入場料が無料であったが、あまり入館者がいないような状況なので、かなりの集客アップを図らないと目標達成は困難であると思う。一方、通天閣は年間110万人の来館者が取り込めるような状況。今回の議論において大事なのは、費用と集客以外にも、これまでの検討の経緯があること。府として明確に通天閣移転案を選択したし、通天閣に対する道義的責任があると思うので、現地存続とするには、通天閣移転案を圧倒的に上回るものが必要であると思う。その一つのポイントが集客である。本当に年間50万人を目標として大丈夫なのか。

【府民文化部】
・50万人は具体的に積み上げた数ではないが、見込みとしては、NGKの来場者が年間80万人の状況で、それをどれだけ取り込めるか。また、放送局の協力などがあるので、50万人が達成できるかはこれらにかかっている。吉本さんとしては、100万人を目指したいと聞いている。

【木村副知事】
・NGKとかbaseよしもとのチケットにワッハ上方の無料券をつければ、かなりの方がワッハ上方にも足を運ぼうという気になっていただけると思う。今回の提案内容は、そこまで協力いただけるということか。

【府民文化部】
・提案内容としては、そういうことであろうかと思う。

【総務部長】
・先ほど政策企画部長から「この問題の発端はカネがかかりすぎること」という発言があったが、そのとおり。大阪府の文化事業予算のほとんどをワッハ上方とセンチュリー交響楽団に投入しているのはいびつだというところが出発点。この間、部内でいろいろ検討いただく中で、上方演芸についての府の役割は、幅広く府民に上方演芸に触れていただくことだと整理され、通天閣移転案がベストであるということを7月23日の戦略本部会議の場で確認した。それなら、「経費が安くなるから現地存続の暫定期間をおく」という結論にはならない。
・もう一つ不安に感じるのは、吉本からの提案内容。暫定期間中に「運営検討会議」を設けるとなっているが、何を検討するのかという目標がわからない。それから、新たな官民協力事業というのも、府として現時点においてこれを政策的にどう評価し、そこに可能性を見出そうとしているのか。今の説明では「そこはわかりません」ということだが、それなら私としては、現時点のこの材料で、どちらの案がよいかという判断はできない。

【府民文化部長】
・できるだけ多くの府民に上方演芸に触れていただくということについては、どちらの案でも共通。今回は集客に取り組み、できるだけ多くの人に現地のワッハ上方に来ていただくというプランを考えていただいている。従来とは違う形で、より幅広い人に見ていただくような工夫を吉本さんや放送局と知恵を出しながらやっていくことになる。
・確かに現時点においては、25年度以降のことが見えない。よって、これに対する評価はできないので、23年度から1年半ほどの間の評価をもとに、それ以降どうしていくのかということを評価したい。しかし、我々の役割についてのスタンスは基本的に変えないという姿勢で臨みたいと考えている。

【木村副知事】
・私の一番の印象は、演芸ライブラリーの扱い。現地存続ならライブラリーが残るが、通天閣移転ではライブラリーがなくなってしまう。この差が非常に大きく、これが現地存続の一番のアドバンテージという印象がある。一番心配なのは25年度以降で、放っておけば、言葉は悪いが完全に「吉本化」し、公の部分がなくなってしまうのではないかという不安もある。しかし、民放さんは全く吉本化された新しいワッハ上方にライブラリーを置き続けることはないと思うので、少なくともこの部分は公としてのサービスの意味合いがある。それがある種保険になって、その間に見極めをするのがこの2年間。だいたい半年ぐらいまでにこのあたりの流れを見極めれば、かなりリスクヘッジできるのではないか。ライブラリーが残っているというのがかなり大きな意味があるということだと思う。

【知事】
・入館料の扱いはどうするのか。

【府民文化部】
・通天閣案の場合は動線の関係もあり、総務部との調整はできていないが、府民文化部としては無料化と考えている。現地存続であれば、普通であれば今のままの400円ということになる。

【知事】
・入場料はどこに帰属するのか。

【府民文化部】
・指定管理者が入場料として徴収し、その収益の中で運営をするということ。

【知事】
・府が負担する1億円とその入場料収入はどう関連するのか。

【府民文化部】
・指定管理の場合は、400円を上限として管理者が自由に料金を設定。そして、実際にかかった経費と収入の差額が指定管理料となる。

【総務部長】
・管理者は入場料だけで費用を賄えないので、その差額が府からの委託料として出す。

【府民文化部長】
・入場料収入が増えればコストは減る。

【木村副知事】
・入場料を1人あたり200円として50万人の来館者があれば、1億円の収入。そうなると府としては管理運営費用を何も払わなくてもよいということか。

【府民文化部】
・極端に言うとそういうこともあり得る。

【知事】
・管理委託料をきっちり決めず、府が支出する金額だけを決めてしまうと、管理者にどれだけ収入が入ってきても、管理委託料を上げていけば差額分は1億円のまま。管理委託料というのは額をきちんと決められるのか。

【府民文化部】
・今回のご提案は、たまたま吉本さんが家主であり暫定的に管理運営主体になるということで、賃借料と管理運営費を合わせて1億円となっている。本来的には、賃借料、管理運営費それぞれに額をご提案いただいた上で委託をする。

【知事】
・指定管理を非公募で行うとなっているが、これは手続き的にどうか。他にやりたいというところを最初から排除するのか。

【府民文化部】
・2年間の暫定期間の中で、吉本さんが集客を図り、賃借料を含めて1億円でやってみて現実性を高めるということなので、我々は暫定期間についてはできれば非公募で吉本さんにお任せしたい。

【知事】
・「その金額でやる」というところが他にあるかもしれないが。

【府民文化部】
・吉本さんの提案は、暫定期間は吉本さんが管理者となるということなので、その前提が違えば、提案内容自体がどうなるかわからない。

【知事】
・1億円で吉本さんがやるという前提にしてしまっているが、その入口の部分で他のところがやるということを排除すべきでない。

【府民文化部長】
・他のところがやる場合は、当然、家主としての吉本さんがそこから賃借料をとることになる。その場合は、こういう額ではなくなるだろう。我々としては、家主としての吉本さんしかこの案を提案できないと思っている。それ以外のところは考えられない。

【綛山副知事】
・現実にはないかもしれないが、もし1億円の範囲内で賃借料と管理運営費を賄っていただける第三者が出てきたとすれば、そこに委託することもあるだろう。

【府民文化部】
・その場合は、吉本さんが家主としてその賃借料で良しとするかどうかが問題。

【綛山副知事】
・その問題はあるが、理論上はあり得るだろう。

【知事】
・そこははっきりしておかないといけない。

【総務部長】
・そこは私も引っかかる。暫定期間は吉本さんが管理する前提だからこの額を提示されたということ。他の指定管理者になった場合は、賃借料もこの額でいけるかどうかもわからない。ということは、25年度以降の官民協力という場合の「民」というのは吉本さんということになる。となると、未来永劫、指定管理者は吉本さんでいかざるを得ないということになるのでは。

【府民文化部長】
・そこはまだ中身が議論されていない。内容次第によってどういう形にするか、その時点で議論すればよい。

【知事】
・やはり賃借料、管理運営費をきちんとわけて示すべき。仮に、適正な賃借料が6〜7千万円くらいになるなら、管理運営費が2〜3千万円くらいになる。それできちんと公募すれば、ほぼ他に引き受けてくれるところはないと思うが。

【府民文化部長】
・そうなると、吉本さんは現在の賃借料2億7,800万円、ホールを無くすとしても1億数千万円を主張されるだろうから、どこも受け手はないだろう。

【知事】
・そうなれば、管理委託料0円でやるということなので。

【木村副知事】
・外形的な手続論として整理しておくべき。
・先ほど総務部長が発言した「未来永劫、指定管理者は吉本になる」という点については、指定管理者の管理期間をうまくコントロールしてそのときに評価すればよいのではないか。

【総務部長】
・暫定期間中は吉本さんが指定管理をするから賃借料を抑えられるということなら、吉本さんが指定管理から外れれば、賃借料は通常通りとなり、このスキームが維持できなくなる。このスキームで25年度以降もいくとなると、吉本さんは指定管理にならざるを得ないのではないか。そこが私にはよくわからない。

【府民文化部】
・その場合は、指定管理者制度を引き続き活用するかどうかも含めての検討が必要。大阪府の果たすべき役割と民でやっていただくべき役割、公の施設としてこの施設を持ち続けるのかどうか、指定管理者制度でないやり方なども含めて検討することが必要と思う。

【木村副知事】
・ワッハの閉鎖もありうるということか。

【綛山副知事】
・移転もあるし、公の施設としての閉鎖もありうるのでは。

【府民文化部長】
・吉本さんが主体となってやる場合は、我々は、寄贈されたものを管理するという役割に徹し、施設は公の施設でなくなるという選択肢もありうるということ。

【府民文化部】
・その段階では、たぶん通天閣に移転という選択肢がなくなるので、その時点での判断をすればということ。

【知事】
・わかりにくいのは、これまでコストの問題だけではなく、入館者の把握などをほったらかしにしていたということ。木村副知事が行かれたときもあまり入館者がいなかったと言うとおり、惨憺たるこの現状を変えるということが大前提。

【木村副知事】
・さっき申した「関西文化の日」の件については言い過ぎだった。お客さんは割と来られていた。

【知事】
・仮にコストが1億円に圧縮されたとしても、入館者が増えないと意味がない。入館者が目標の50万人に達しなければ閉館ということでいいのか。それぐらいの厳しいことをしないと単にコスト比較だけではダメ。
・あと、現在のワッハ上方の展示など中身自体が大いに不満。展示のリニューアルもやってくれるのか。

【府民文化部】
・暫定期間として2年間は、原則、現施設で劇場との連携などにより集客を図っていく予定。
・新しい文化事業は、大阪府と吉本さんとの関係を整理する中で、場合によっては平成25年度に施設のリニューアルを行う議論もありうる。

【知事】
・この1億円を超えない範囲でリニューアルするということか。

【府民文化部】
・それは別の議論。

【知事】
・そうだとすれば、リニューアルをするかどうかは別として、入館者数は目標を設定し、それが達成できなければ「閉館」ということだけは決めて、あとはどうやっていくか詰めてほしい。

【木村副知事】
・目標50万人は苦しい。もう少し詰めたほうがいい。

【知事】
・目標を達成できなければ「閉館」という前提で、目標値をどう定めるか判断してほしい。

【府民文化部長】
・移転か現地存続か、そこの方針がきちんと決まれば、吉本さんと詰めたい。

【知事】
・先にそこが見えないと、方針自体を決められない。

【総務部長】
・「50万人という目標は苦しいので考えた方がいい」という木村副知事の発言はどうか。通天閣に移転した場合の入館者数は110万人ということを部として主張されてきたので、それに見合う数字として50万人という目標を定められているのであれば、これを下げる必要はないのではないか。

【府民文化部長】
・通天閣に移転した場合は入館料が無料。有料か無料かで入場者数は大きく変わる。

【木村副知事】
・その仕組みがきちんと決まらないと目標は出ないのではないか。

【府民文化部長】
・先ほど知事の言われた条件付きで最終の詰めを行いたい。

【小河副知事】
・50万人と110万人を単純に比較することはできないと思う。110万人というのは通天閣を訪れた人が流れてくる人数。50万人という数字についてはきちんと詰めなければいけないが、これまで5万人だった入館者が一気に10倍になる。しかも、通天閣と違ってワッハ上方を目的に訪れるという点で少し違うと思う。ここが決め手だと思う。まずは暫定期間に一生懸命取り組みをして、平成25年度以降のことは、検証の時間も必要なのでじっくりやればいいと思う。

【知事】
・中身に魅力があるかどうか評価しても仕方がない。現在の入館者数が少ないというところからスタートしたので、魅力ある施設に切り替えて、一体何万人の入館者を目指してくれるのかという部分の数字がないとダメ。

【府民文化部長】
・吉本さんは100万人を目指すとおっしゃっていたが、それを受け、府としてどこまでの目標値にするかという詰めはしていない。

【知事】
・目標値を設定しなければ、私が視察したときと同じ状況になってしまう。目標を達成しなければ閉館というようなものがないと必死さがでないと思う。吉本さんと組めるのであれば非常に有難い話だが、運営のところでみえないのが、賃借料がいくらで管理運営費がどうなって、収入が増えれば府の費用が減るのか、それとも管理費に充てられてしまうのかといった部分。

【綛山副知事】
・1億円の内訳と利用料金制を採用するのかどうかをきちんと整理してほしい。

【知事】
・もし吉本さんが入館料を取らずに無料で運営するというのであれば、入館者数は増えるだろうし。

【府民文化部長】
・目標値は確認するが、それをどの場で議論するのか。

【綛山副知事】
・戦略本部会議でもう一度議論。来年度予算が絡むので早急に。

【府民文化部】
・通天閣は随分待ってくれているので早急に結論を出す必要。

【木村副知事】
・停止条件付きで現地存続という方向でどうか。

【知事】
・停止条件付きとはいうものの、条件に従わなかったら終わりということでよいのか。

【木村副知事】
・提示された年間目標が現実的に可能な数字なのか、きちんと確認すべき。

【知事】
・目標値と1億円の内訳を確認してほしい。

【政策企画部長】
・本日の議論を踏まえ、指摘のあった内容を確認したうえで、12月25日に再度議論することとする。

このページの作成所属
政策企画部 企画室政策課 政策グループ

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