人権学習シリーズ ちがいのとびら 感情とエンパワメント

更新日:2016年2月9日

感情とエンパワメント

 「Aさんは好きだが、Bさんはきらい」というのは差別になるのでしょうか? それと人権とはどうかかわっているのでしょうか? 「多様性を尊重する」とは、AさんもBさんも好きになることなのでしょうか?
 『いろいろな気持ちがあっていいですよね』といいながら、実際に私たちは、そのさまざまな感情にどう向き合い、認め、扱っているのでしょうか。だれでも「好き」、「きらい」があります。でも、無理に「きらい」を「好き」にならなければいけないことはありません。また、「きらい」だからといって、その人を傷つけてもいいということにはならないのです。

 人権教育を進めていくときに、個人個人が自分とのかかわりを抜きにしては始まりません。差別やいじめ、あらゆる暴力がいけないことは、誰しもがわかっていることです。それを「わかった、わかった」と頭で考えるだけではなく、感情・感覚からとらえて考えていかないと解決の糸口は見えないのです。
 「いじめはよくないとわかっている」のに、なぜいじめが起きるのでしょうか? 子どもたちからは、「いじめはないけど、いやなことはいっぱいある」「けんかはしないけど、むかつくことはたくさんある」という気持ちを聞くことが多くあります。子どもたちは、このいやな気持ち、むかつく気持ちに対して、それを良い悪いと判断してしまうことで、自分の気持ちをどう表現していいのかわからないまま、見えない行動、無用な言動に発展させてしまい、その結果として、多くの問題を抱えてしまうことになっているように思います。おとなも同じで、「しつけ=怒る」と思っているおとなはしつけができなくなっているのです。
 多様性を尊重する人権教育では、個々の感情の違いについて知っていることが必要です。感情は、人が生きていくために重要な力を表します。この多様な感情を恐れず、否定せずに受け入れ、相手を傷つけない感情の扱い方を身につけることが大切です。

 感情は人が自然に持つものです。感情は生きていくための大きな力(パワー)でもあるのです。そのパワーをエンパワーするような環境をつくり出すことで人は活力を維持していくのです。パワーをエンパワーする環境とは、自分の力(パワー)が自然な状態をつくり出し、受け容れること、そして思考や行動を通じてそのパワーを表現する環境のことです。多様な感情を受け容れられると、エンパワーする環境がつくり出されます。エンパワメントは感情を自分自身で自覚することができ、意識と行動の枠を広げ、本来ある自分の存在そのものを肯定し、可能性を高めます。多様性を尊重する環境づくりに、この感情とエンパワメントは最も重要です。

●エンパワメント
差別など社会的抑圧により弱い立場に立たされた人など、すべての個々人がその内在する能力、行動力、自己決定力を取り戻すことです。




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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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