同和対策審議会答申(昭和40年8月) 第3部第4章

更新日:2023年6月21日


 

4.教育問題に関する対策
(1) 基本的方針
 同和問題の解決に当って教育対策は、人間形成に主要な役割を果すものとしてとくに重要視されなければならない。すなわち、基本的には民主主義の確立の基礎的な課題である。したがって、同和教育の中心的課題は法のもとの平等の原則に基づき、社会の中に根づよく残っている不合理な部落差別をなくし、人権尊重の精神を貫ぬくことである。この教育では、教育を受ける権利(憲法第26条)および、教育の機会均等(教育基本法第3条)に照らして、同和地区の教育を高める施策を強力に推進するとともに個人の尊厳を重んじ、合理的精神を尊重する教育活動が積極的に、全国的に展開されねばならない。特に直接関係のない地方においても啓蒙的教育が積極的に行なわなければならない。
(1)「同和教育についての基本的指導方針の確立の必要」
 同和対策としての同和教育に関しては遺憾ながら国として基本的指導方針の明確さに欠けるところがある。
 人権尊重の民主主義教育の推進が、地域格差の解決に役立つことを否定するものではない。しかし戦後の民主教育がその方面に効果をあげつつも、戦後20年の今日、依然として恥ずべき差別が日本の社会に厳として存在していることは反省されなければならない。
 すなわち、憲法と教育基本法の精神にのっとり基本的人権尊重の教育が全国的に正しく行なわれるべきであり、その具体的展開の過程においては地域の実情に即し、特別の配慮に基づいた教育が推進される必要がある。しかも、それは、同和地区に限定された特別の教育ではなく、全国民の正しい認識と理解を求めるという普遍的、教育の場において、考慮しなければならない。このような認識の上に同和教育の基本的指導方針が、国として確立される必要がある。
 なお、同和教育を進めるに当っては、「教育の中立性」が守られるべきことはいうまでもない。同和教育と政治運動や社会運動の関係を明確に区別に、それらの運動そのものも教育であるといったような考え方はさけられなければならない。
(2) 教育行政機能の積極性
 国の指導方針の不明確の現状は、都道府県教育委員会などの対策においていちじるしい格差を生じ、民間教育団体の動きにもまた、さまざまな相違が生じ、その影響は義務教育段階においてとくに著しい。このような格差のある教育行政の存在は同和地区解放に大きな影響を与えるものである。全国的に均衡のとれた行政体制の確立が要望される。
(3) 同和教育指導者の不足と充実
 同和教育は、学校教育、社会教育、さらに家庭教育をふくめたすべての教育の場で進められる。そのさいとくに必要となるのは地区と一般地区の別を問わず、同和問題に関して深い認識と理解をもつ指導者の不足していることである。  同和教育が効果的に進められている地方は、この方面の教育に関心をもつ教育や指導者数に比例するともいえる。すなわち、地方の実情からすると、学校教育にせよ、社会教育にせよ、熱意のある指導者の存在するところが、同和教育は行届いているといえる。  地区住民の生活向上、社会の差別意識の撤廃等は、その根本は深く、かつ広いので、その打開は必ずしも容易でない。とくに解放の基礎となる生活と文化を高めるために、指導者の必要性が痛感される。
(4) 政府機関相互の連絡の調整
 あえて、同和教育ばかりをいうのではない。しかし、とくに同和対策関係諸官庁の横の連絡には、欠陥が多い。
 学校教育における長欠、不就学の処置は、厚生省所管の生活保護ならびに社会保障との関連を必要とし、中学卒、高校卒の就職は、進路指導にともなって、労働省関係の職業訓練、就職斡旋と関係する。社会教育については、社会教育関係団体である青年団体、婦人団体との連繋を密にし、厚生省所管の隣保館などの福祉施設と、文部省所管の公民館ならびに集会所との関係など、調整を要する部面も少なくない。

(2)具体的方策
(1) 学校教育
一)同和教育の目標、方法の明示
 同和教育の具体的な指導の目標、および具体的な方法を明確にし、その徹底をはかること。とくに差別事象等の発生した場合には教育の場においてそれの正しい認識を与えるよう努力すること。
二)学力の向上措置
 同和地区子弟の学力の向上をはかることは将来の進学、就業ひいては地区の生活や文化の水準の向上に深い関係があるので、他の施策とあいまって、児童生徒の学力の向上のため、以下に述べるような教育条件を整備するとともにいっそう学習指導の徹底をはかること。
三)進路指導に関する措置
 同和地区生徒に対する進路指導をいっそう積極的に行なうこと。
 特に就職を希望する生徒に対しては、職業安定機関等の密接な協力を得て、生徒の希望する産業や事業所への就職が容易にできるようにするとともに、将来それらの職業に定着するよう指導すること。
四)保健、衛生に関する措置
 同和地区児童生徒について、集団検診を励行するなど、保健管理および保健指導について特別の配慮をすること。
五)同和地区児童生徒に対する就学、進学援助措置
a 経済的事由により、就学が困難な児童生徒にかかる就学奨励費の配分にあたっては特別の配慮をすること。
b 高等学校以上への進学を容易にするため特別の援助措置をすること。
六)同和地区をもつ学校に対しては、教員配分について関係府県の教育委員会は特別の配慮をすること。
七)教職員の資質向上、優遇に関する措置
a 教育養成学部を置く大学においては、教員となるものに対し、同和問題に関し理解を深めるよう特別の措置を講ずること。
b 教職員(教員、校長、教育委員会職員)に対し同和教育に必要な資料を作成配付すること。
c 同和地区を持つ学校の教職員については特別昇給等の優遇措置を講ずること。
八)学校の施設、設備の整備に関する措置
 貧困家庭の多い同和地区をもつ小中学校および幼稚園の施設設備をいっそう促進するため、特別の配慮を行うこと。
九)同和教育研究指定校に関する措置
 国および府県は同和教育研究指定校の増設および研究費について増額すること。
十)同和教育研究団体等に対する助成措置
 同和教育に関し、教育研究団体等の行なう研究に対し、補助を行なうこと。

(2) 社会教育
一)同和地区における青年、成人、婦人等を対象とした学級、講座、講演会、講習会等の開設、開催を奨励援助し、住民がその教育水準を向上して家庭および地域社会における人間関係の改善をはかるとともに生活を合理化するための機会を提供すること。
二)一般地区における青年、成人、婦人等を対象とした青年学級、成人学級、婦人学級、家庭教育学級、講演会、講習会等において、人権の尊重、合理的な生活の態度、科学的な精神、社会的連帯意識等の課題を積極的に学習内容にとりあげるとともに、地域の実情に即して同和問題について理解を深めるよう社会教育活動を推進すること。
三)同和地区における住民の自主的、組織的な教育活動を促進し、住民みずからの教育水準の向上を助けるために、子供会、青年団、婦人会等、少年、青年、婦人等を対象とした社会教育関係団体の結成を援助し、その積極的な活動を奨励すること。なお、地区の実情等に即して同和問題の理解を深めるよう、同和地区における学校、社会、家庭の有機的な連携をとるよう奨励すること。
四)差別事象がおきた際には、社会教育においてもその事象に即して適切な教育を行うよう配慮すること。
五)同和地区の社会教育施設の効果的な運営をはかるため、当該施設に専任の有能な職員を設置すること。
六)社会教育における同和教育の指導者の資質の向上と、指導力の強化をはかること。
七)指導者の資質の向上のために教育委員会その他の社会教育に関係のある機関においては、地方の実情等に応じて社会教育における同和教育の参考資料を作成し、同和教育に関する指導者研修会等において相互に事例発表、情報交換等を積極的に行なうこと。
八)同和地区における教育水準の向上をはかるために同和地区集会所の整備、充実をはかること。なおその際、隣保館との有機的な連繋に配慮すること。
九)同和地区集会所の設置費国庫補助については、坪単価、補助対象面積、補助対象設備品等の改善をはかること。なお市町村が設置する同和地区集会所の事業費についても国の助成措置を拡充するよう配慮すること。
十)同和地区集会所の運営にあたっては、これを単に住民の公共的利用に供するばかりでなく、集会所みずから学級、講座等、社会教育活動を積極的に展開し社会教育施設としての機能を十分発揮するよう考慮すること。

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府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画グループ

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