専門家のコラム(8月23日配信)

更新日:2021年8月23日

新型コロナウイルスワクチンを知ろう

地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所理事長 朝野 和典 氏

 ワクチンは、からだの中に弱毒化したウイルスそのものやウイルスの成分(タンパク質)を注射し、からだの中でそれらに対する抗体をつくらせ、その後で侵入してくるウイルスの感染や発病を防ぐことを目的としています。このように、感染に抵抗力をつけることを免疫といいます。
 ワクチンにはいくつかの種類があります。たとえば、冬に打つインフルエンザワクチンはインフルエンザウイルスのたんぱく質を取り出してワクチンとして接種して、インフルエンザに対する抗体を体の中に作らせる不活化(成分)ワクチンと呼ばれます。はしかや風しんワクチンは、感染しても発症しない弱毒化したウイルスそのものを投与してウイルスに対する抗体をからだの中に作らせる弱毒生ワクチンとよばれています。
 新型コロナウイルスに対するワクチンのうち、ファイザー社や武田/モデルナ社製のワクチンは、これまでになかったメッセンジャーRNAを成分とするワクチンです。メッセンジャーRNAはたんぱく質の設計図で、この設計図を注射することで、ウイルスが感染して人の細胞にくっつく部分のたんぱく質(スパイクたんぱく)を人の細胞の中で作らせます。このたんぱく質に対してからだの中で抗体ができ、本物のウイルスが体内に侵入したときに、ウイルスが細胞にくっつかなくすることで感染を予防します(図)。ワクチンを打つことで、感染を防ぐ効果は完全ではないものの、変異株であっても入院や重症化は90%以上抑えることが期待できます。

ワクチンの解説図

 ワクチンを打つことで、炎症反応が体に起こり、発熱、だるさ、接種した部位の痛みが2〜3日続くことがよくあります(80〜90%くらい)。これらの副反応は、1回目より2回目、高齢者よりも若い人、男性よりも女性に多いと報告されています。また極めてまれに強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こることもありますが、すぐに治療をすれば治すことができます。長期的な副作用についてはまだよくわかっていませんが、身体に入ったメッセンジャーRNAは染色体遺伝子(DNA)に入り込むことはなく、細胞の外ではすぐに分解されてしまいます。
 ワクチンを打っても副反応が起こり、発熱やからだのだるさなどかぜのような症状になるのであれば、結果的には新型コロナウイルスに感染しても同じじゃないかという意見もありますが、実際の感染症では重症化する可能性や後遺症の残る可能性があること、さらにはまわりの人にうつすことも考えなければなりません。これらのことを考えてワクチンを打つかどうか決めてください。高齢者や基礎疾患があり重症化するリスクのある人、周囲にワクチンを打てない人がいたり、ワクチンの適用になっていない12歳以下の子供さんがいる人はその人たちを守るためにもワクチンを打つことをお勧めします。

本コラム内の各関連情報

・新型コロナウイルス感染症に関する感染予防対策等に関する情報はこちら
・「専門家のコラム」の目次はこちら

○ワクチン接種後の感染予防対策について

 ワクチンは、新型コロナウイルス感染症の発症を予防できることが期待されていますが、他の方への感染をどの程度予防できるかはまだ充分にはわかっていません。
 ワクチンを接種した方も接種されていない方も、感染予防対策(マスク着用、手洗い、こまめな換気など)の継続をお願いします。

ワクチン打ってもつづけよう、感染予防対策 [PDFファイル/171KB]

ワクチン打っても続けよう、感染予防対策

このページの作成所属
健康医療部 保健医療室感染症対策課 防疫グループ

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