高次脳機能障がい支援ハンドブック 第二編 福祉制度や種々のサービスについて

更新日:2023年10月17日

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第8章 家族支援

 高次脳機能障がい者の家族は、

・本人との接し方、関わり方が分からない。
・どこまで回復するのか希望が持てない。
・今後の見通しが立たない。
・家族関係がぎくしゃくする。
・制度を利用するための手続きが煩雑でどこに行けばいいのか分からない。
・交通事故で裁判になっても高次脳機能障がいがどこまで認められるのか分からない。
・主たる介護者が高齢になった場合、誰が代わって面倒を見てくれるのか不安。

といった不安を持っている。

 こういった不安により、本人を支援している家族も日々ストレスにさらされている。家族の中でのそれぞれの役割に大きな変化が生じ、家族は、病前・事故前の本人とのギャップに戸惑う。本人は記憶障がいや気づきの障がいのために病識が持ちにくいことも多く、そういった場合、家族は本人と接する中で気持ちが落ち込みがちとなる。
 家族は本人の支援に携わりながらも、周囲には障がいの深刻さがなかなか理解されないことも多く、例えば、知人等に相談しても真摯には受け止めてもらえず、ストレスを抱え込んでしまう。また、家庭内での本人の生活を支援するだけでも手一杯な上に、並行して煩雑な手続きに奔走することで更に負担がかかる。世帯主の事故や病気をきっかけに今までの生活が一変してしまうことも多く、経済的不安を抱えながら日々を送っている家族も多い。
 以上のような状況に対して、高次脳機能障がい者の家族負担に関する調査でも、実際、家族負担の重さが指摘されている(半数以上にうつ傾向あり)。家族が置かれている状況や負担から導かれるニーズとして、

(1) 家族・生活の維持という基本的なニーズ
 経済的問題や介護負担など、家族や生活の形をどのように考え、対応していくか
(2) 本人の回復や適応のための役割ニーズ
 本人のリハビリや生活・社会適応のために、どのように家族が役割を持てるか
(3) 家族が自身の健康や安心を求めるニーズ
 家族自身の健康や本人との関係をうまくとる力を持つこと

 といった3つがあげられる。

これらのニーズを満たすためには、

・情報提供支援(適切な情報提供と今後の具体的なロードマップを示す)
・代替的支援(医療・福祉・介護サービスで家族の代わりが可能なものを利用する)
・経済的支援(助言や手続きの支援を行う)
・心理教育及びスキル獲得支援(障がいの内容や対応法について伝える)
・心理的ケア(心理的にも疲弊している家族自身へのケアを行う)
・主体的活動へのサポート(家族会への参加や立ち上げを支援する)

 などの家族支援を提供することが考えられる。これらの支援に関して、一機関ですべてを提供することは難しいため、複数の機関が役割分担することが必要になる。
 また、支援を提供するタイミング(受傷直後、入院中、地域生活の開始時などで、求められるニーズや家族が受け止めやすい内容は異なる)や伝え方(家族の理解を確認しながら伝える・メモにして残る形にして伝えるなど)も留意する必要がある。
 本人を支えている家族が疲弊し、孤立してしまわないよう関係機関が連携し適切な支援を行うことが大切である。また、専門家からの支援だけでなく、同じ経験を共有できる他の家族と話をすることも家族の安心感に強く寄与すると思われる。そのため、家族の思いを安心して受け止めてもらえる場として家族会(『第9章当事者・家族会』参照)を紹介することも必要と考えられる。

 家族が手をつないでいる絵

このページの作成所属
福祉部 障がい者自立相談支援センター 身体障がい者支援課

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