人権問題に関する府民意識調査報告書(分析編) 人権問題に消極的な態度・意識を分析する 6.まとめ

更新日:平成24年3月28日

人権問題に関する府民意識調査検討会委員
奈良教育大学名誉教授 中川喜代子

6.まとめ

 分析に当たって、(A)人権問題に関する生活態度、(B)差別や差別の解決に関する態度・意識 の2つのスケールを作成したが、両者の間には必ずしも強い相関関係がない、つまり、同じ「H」グループであっても、スケールが違えば同じ設問に同じような反応を示すわけではないという結果となった。大阪府民の人権意識、人権感覚がそれほどきちんと「腰が据わった」ものではなく、建前で回答する傾向にあり、しかも人権問題に関する意識・関心が高いと思われるグループでさえもそのレベルに留まっている、というのが、この調査で筆者が改めて実感したところである。

 最後に、今後の人権教育、人権啓発の課題として考えることを何点か述べておく。

1.現在の啓発事業は、人権に関する問題意識や認識のレベルが均一でない、“ごちゃまぜ”の聴衆を対象に行われることが多いが、これを、できるだけ平均化された対象に系統立ったシステマティックなカリキュラムによる学習機会を提供するという方向に改めていかないと、建前だけは分かるが、人権問題についてのオピニオンリーダーを創出することは難しいであろう。
 他方、インターネットやテレビ、新聞などのマスメディアを情報の入手経路とする割合も相当あることから、系統立ったシステマティックなカリキュラムの提供と並行して、人権というものは大事なものであることを、絶えずマスメディアを有効に活用して、一般的に広くPRし啓発していくことも必要である。

 

2.同和問題については、建前と実際の行動とが必ずしも相関しないものの、認識はかなり定着したと思うが、その他の人権問題、毎日の生活の中で自分に直接関わるような、もっと身近な様々な人権問題について、必ずしも正しい認識を持っている人は多くない。
 筆者の経験でも、子どものニート、引きこもり、虐待のような身近な問題をテーマに講演を行うと非常に反応が鋭い。そういうものを人権啓発の内容にもっときちんと取り込んでいくことにより、自ら真剣に人権というものを学習しようという人が増えてくるであろう。 

3.学校教育における人権教育は極めて重要ではあるが、指導者の力量形成を目指す取組みがこの10数年は停滞しているのではないかという危惧を強く持っている。
 各地で行われる地方公共団体の職員の意識調査でも、40歳代後半以上の人は同和問題などに対して比較的正しく反応するが、40歳代前半以下の若年層については、同和問題についての知識自体が不十分な傾向が指摘されている。これを「断層」と考えると、教員あるいは教員志望者に対する人権教育についても「断層」があり、教員自身の人権問題に対する認識や態度についてもかなり“鈍感”になっているのではないかと感じている。
 ヨーロッパでは、義務教育段階で人権についてきちんと学習させるという基本的方針のもとに系統的・継続的に取り組んでいるが、わが国においてもこのような視点で人権教育を見直すことが必要なのではないかと思う。

 4.人権についての学習・啓発活動のこれからの目標を、差別をしない/差別を許さない市民を養成するにとどまらず、<人権文化が息づくまちづくり>に積極的に関わろうとする意欲的態度と実践的な活動に結びつく有用な技能(スキル)を身につけた人材−コミュニティづくりの“仕掛け人”−の養成ということに基本的な視点をおいて、人権啓発の実践計画やカリキュラムを策定し、広域的な呼びかけと学習環境の整備を図っていくことが求められている。
 子どもの虐待をはじめ、DVや家庭内暴力、ひきこもり・登校拒否、シルバーハラスメントや孤独死など、私たちの周りに多発しているさまざまな社会病理的現象が地域住民のネットワークによって未然に発見され、適切な対応がなされる地域社会、人びとの相互扶助のネットワークによって真に人権が尊重されるコミュニティづくりのモデルを、まず同和地区を核とする、より広域的な地域の人びとによる積極的な交流から創造・構築し、発信してほしいと願っている。なぜなら、部落には差別撤廃への長年の取組みによって培われたつながりと蓄積されたノウハウがあり、他方、これを取り巻く地域の人びとには、人権学習によって人権文化が息づくコミュニティづくりの仕掛け人にふさわしい知識・態度・スキルの体得が期待されるからである。
 人権文化溢れるコミュニティづくりという目標に向かって、地区内外を問わず、人びとがなんのこだわりもなく心を開き、ともに汗を流して協働することが、問題解決への大切な一歩だと考えている。


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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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