2007シンポジウムパネルディスカッション 1

更新日:2009年8月5日

(5)パネルディスカッション1

【テーマ】 「食品偽装問題」「食の安全への取り組みと正しい情報の入手」
【パネリスト】 
・大川智恵子さん(コープ自然派事業連合理事長)
・早乙女晴子さん(味の素株式会社お客様相談センター課長)
・中美恵さん(マクロビオティッククッキングティーチャー)
・日佐和夫さん(東京海洋大学大学院教授・農学博士)
・淡野輝雄(大阪府健康福祉部食の安全推進課長)
【コーディネーター】 
・梅田淳さん(フリーアナウンサー)
パネルディスカッション1ステージ写真

 食品偽装問題

梅田
 さて、去年は食品の偽装問題が大きな社会現象となりました。本日ご来場いただきました消費者の皆さんは、「だまされた」という気持ちでいっぱいだと思います。
 私自身も番組の関係上、東京大阪を行ったり来たりしていまして、つい先日もニュースに出ていた幾つかのブランドのお弁当を4つほどいただきました。別にどうもなかったのですが、ニュースを見ると「だまされた」と思ってしまいます。
 このような食品偽装の問題が起こってしまうのはなぜなのか、パネリストの皆さんにお話を伺いたいと思います。
 まずは、マクロビクッキングスクールの先生であり、主婦でいらっしゃる中さんに伺います。このような問題が起こってしまうのは、何でなんだろうとお考えになりますか。


 食べ物が命をつくっているという感覚が、失われているのではないかという気がします。食べ物が、電化製品のような、機械のような感じになってきている。食べ物は、私たちの口から直接入って体をつくっていくものですが、食べ物を作っている工程や、食べ物を買ったり売ったりするときの環境が変わってきています。
 昔、私は祖母に「食べ物というのは人をよくするものなんだよ」と教えてもらっていましたが、その「人をよくする」というところがなくなってしまっている気がします。だから、機械のように命とは関係のないものとして扱われるようになってしまっている。私たちは食べ物をつくるときに、食べてくれた人がどんな顔になるか、主人が喜んでくれるかなとか、子供が喜んでくれるかなとか思いながらつくりますが、それがだんだん見えなくなってしまっている。「食べている人がどうなるのか」という視点がなく、食べ物が「物」としてでき上がっていくことが、そういう現象をつくってしまったのではないかなと思います。

梅田
 なるほど。お母さんのおっぱいで生まれ育って、離乳食になって、三度三度の食事。なぜ朝食をとるのが当然であり、三度三度食事をとることが大事なのか。命をつくっているからなんですね。

パネルディスカッション1ステージ写真
 
中:
そうですね。それが食事を作る人にとっては一番大切なことかなと思います。

梅田
 家庭内でのお子さんとの向き合い、家族のお話し合いの中でそういうことが生まれるのが望ましいわけですね。それが少し乱れているところがあるんでしょう。
 では、食品を作る工場では実際どのような問題を抱えているのか、これは興味があると思いますが、今日は食品の品質管理に詳しい日佐先生にお話をいただきたいと思います。

(会場スクリーンでスライドを使用。以下同じ)
製造年月日、賞味(消費)期限例    .過去の偽装表示は、生産者が被害である    .偽装表示が多く見られる流通取引形態     「買い取り方式」と「売上げ仕入れ方式」    .小売業の消費者意識の先読み    .工場現場と家庭との賞味期限の解釈の違い    .賞味(消費)期限設定の功罪の議論不足    .加工食品の原料原産地表示が食品偽装(表特示管理ミス)の増加とコストアップを招く
日佐
  まず、品質管理の面では製造年月日や賞味あるいは消費期限の表示が非常に重要になってくると思います。
 その一方、過去の偽造表示の事例は、生産者が被害者であったと言えます。問屋さんは、何日につくった商品を何日に小売に持って行かなければならない。その時、商品の日付は何日でなければならない。それでないと小売に受け取ってもらえないという面があります。
  特 に、年末のかまぼことか、短期に大量に消費されるシーズン性のある食品については、製造年月日の偽装は日常茶飯事であったという過去の
歴史がございます。

 昨今の流通取引形態には、「買い取り方式」と「売り上げ仕入れ方式」があります。「買い取り方式」は、メーカーがつくったものを全部小売業が買い取ります。ところが、「売り上げ仕入れ方式」は、メーカーが店頭に並べたものを売れただけ買い取り、売れ残りはメーカーに返品します。こういった流通取引形態が、偽装表示の背景としてあったんだと。だから、メーカーだけの問題ではなく、フードチェーン全体で考えなければならないという点を、消費者の方にも十分認識してほしいと思います。
 もう一点は、小売業が消費者の先読みをして、メーカーの体制を十分理解していないこともあるのではないかと。返品製品の扱いという部分でも、返品の再生は私自身は必ずしもだめだと考えていません。ただ、返品されたものを再生利用するときに、品質や安全性に影響があるものか、それをきちっと考えて再生をしないとだめなのではないかと。
 豆腐の例を申し上げますと、1,000個注文があったときにメーカーは1,200個ぐらい作ります。というのは、1,000個をきちっと作ることはできないわけです。こういったことが、表示の管理ミスによる偽装表示の増加やコストアップの背景にあるのではないかと思っています。そこの部分をどう取り扱うかということについては、メーカーと小売業だけで決められる問題ではなく、皆さんで決めていかなければならないだろうと思います。
 消費者も、食品が作られるプロセスの実態をきちんと知って、その中で妥当性のある表示というものを今後考えていかなければならない。何でもかんでも知りたいということも非常に重要なんですけれど、そういう観点からも考えて、コストと中身、その中身が本当に必要かということも考えていただきたいと思っております。

梅田
 食べる物のジャンルによって、消費者がわがままになったりそうじゃなかったり。例えば、うまいラーメン屋とか老舗のそば屋が、今日は材料がなくなった、もう売り切れたから店を閉めると言っても、並んでいる人はくやしいな、でももう一回行こうかなと逆に興味をそそられる。でも、スーパーで商品が無いと、もうちょっと作っといてよ、食べたかったのに、と。それは消費者のさまざまな思いとも言えますが、わがままな部分も多少あったりします。生産者に対して、これがプレッシャーになっているという部分があるのかもしれませんね。
 では、今度は早乙女さんに伺いますが、実際にお客様と対話をする、お客様相談センターにいらっしゃって消費者の意見をダイレクトに吸い上げるわけですが、今のこの問題についてどう思われますか。

早乙女
 こういった偽装問題が出てきてしまうのは、食品が世の中にあり余る中で、食品メーカー自身も競争社会に巻き込まれて、企業が目指すものが見えなくなってしまっている経営者といった存在があるからではないかと考えています。
 「お客様のために」と、企業の創業者の方は、世の中にいいものを出したい、貢献したいという思いで会社を始めていると思いますが、いつの間にか「お客様のために」が「自分たちの会社のために」というように、組織が大きくなったり仕事が大きくなっていくところで、「自分の仕事のために」という視点に変わってしまって、最終的にお客様のことを考えた商品をお届けすることができない体質になってしまったからではないのかなと感じています。
 おかげさまで、弊社も来年100 周年を迎えまして、その長い間に積み重なった作り手側の論理というものが、世間の常識やお客様の常識とかけ離れていないかを自己点検していくことが重要ではないかと考えております。
 弊社の中でも、今、お客様相談センターにいろいろな声をいただきますので、一つ一つの声を真摯に聞いて、企業活動を改善していこうという取り組みが盛り上がってきております。企業の中でも、そういった自浄作用が求められている世の中なのかなと感じております。
梅田
 なるほど。企業経営者トップが消費者の声をわからなくなってしまうぐらい、企業の規模が大きくなったり見えなくなったりしている部分があるんだよと。これはテレビ局にも最近多くて、某番組の情報問題以降、コンプライアンスということを言われるようになって、テレビ局にも視聴者からダイレクトに意見を受け入れる部門があるんですけど、最近テレビ局も、ものすごく態度が変わりましたね。
 企業の目指すものが見えなくなる経営者の存在というのが、一つ問題なのかと。
 それでは、次に大川さんに伺いますが、なぜこのような問題が起こっているのか、お願いします。

大川
 ご質問にお答えする前に、一言だけ今回のギョーザ事件に関しまして述べさせていただきます。私たちコープ自然派は国産派宣言をしていまして、取り扱いの8割が国産品です。今回のギョーザ及びその関連商品というのは取り扱いがなく、問題はなかったんですけれど、やはり同じ生協の組織に参加する者として、全国の消費者の皆さんに大変ご迷惑をおかけしました。このことを一言おわびさせていただきたいと思います。
 なぜ食品偽装が起こるのかということですけれど、私が考えますのに3つあると思うんです。
 それぞれ皆さんがお答えくださったのに近いですが、経済性、効率、利益といったものが優先されて、企業の倫理や社会的責任(CSR)、安全性が後回しにされている。そんな社会の問題が一つあると思います。

パネルディスカッション1ステージ写真 
2点目は、食のグローバル化です。私たち消費者の方から食べ物の製造過程、どこでだれがどのようにつくったのかというのが見えなくなってしまっている。そのことによって知識が非常に乏しくなっていますし情報もない。そんな中で、味覚や鮮度といったものを見分ける力もなくなっていると思います。

  3点目が食品の安全行政。例えば表示にいたしましても、JAS法であれば農水省、食品衛生法であれば厚生労働省というように別れていて複雑ですし、遺伝子組換えの表示も非常に不十分です。
 2、3年前、国民生活センターで「遺伝子組換えでない」という豆腐を買って全部調べましたところ、6割が遺伝子組換えで反応が出ていました。それは違反しているわけではなく、5%までは使っていても不使用と表示できるというような、そういった法律の問題もあるかと思います。以上の3点です。

梅田
 今我々は本当にデリケートになっていますので、それで情報を求めにいこうと思うとまた複雑なことに出会うんですね。
 それでは、行政の立場からは一体どうなのか、淡野さんのご意見を伺いたいと思います。

淡野
 先ほど梅田さんの方から、去年からいろいろな食品偽装の問題があふれてきたとお話がありました。たまたま、去年から起こっている事件については健康被害がほとんどなかったのですが、健康被害がなかったらいいということではございません。
 今、いろいろなご意見が出ましたが、食品安全基本法でも当然のことながら、その製品をつくっておられる事業者の方が一義的に責任ある製造、加工をしていただくとなっていますが、やはり製造者、事業者の方だけではなく、我々行政もできるだけ正確な情報を速やかにお流しする。そして、ふだんの監視・指導、それから検査に今以上に力を入れていくべきであると。
 そして皆さん、事業者の方も消費者の方も我々も含めて勉強をしてレベルアップを図っていくこと。これが必要なのではないのかと考えております。

梅田
 なるほど。府議会を見ておりましても、いろいろな問題が取り上げられる中で、この食品の問題、健康の問題をばっちりやっていただきたいなと私も大阪府民として思っています。
 さあ、パネリストの皆さんから、さまざまなご意見をいただきました。食品偽装が多発するのにはさまざまな要因が考えられるわけですが、事業者の努力に頼るだけではなく、それぞれの立場の人が自分に何ができるのかを考えて協力していくことが、食品の偽装をなくすことにつながるのではないかと思うわけであります。
 私も消費者の一人として積極的に協力していこう、テレビ・ラジオ等でもそういうメッセージを伝えていこう、それが私の一つの役目だなと思っているんですが、そのためには正しい情報を知ることが必要だと思います。
 テレビ・ラジオも間違った情報を若干流す場合があったり、大げさにやり過ぎたり、騒ぎ立てたりし過ぎる傾向があるんで、これは自粛しなければいけないと思いますが、ここでまた新たな疑問が出てくるわけです。どのように正しい情報を入手していけばいいのかと。
 次のテーマは、「食の安全への取り組みと正しい情報入手について」というお話を伺ってまいりたいと思います。

 食の安全への取り組みと正しい情報入手

梅田
 さて、昨今のマスメディアによる過剰な報道、これは今申し上げたとおりですが、食に対する不安があおり立てられているのが現状だと思います。ですが、実際には食の安全への積極的な取り組みもさまざまな形で行われているのも事実なんですね。その中で私たちは、正しい情報をどうやって自分自身で確認すればいいのか、食の安全への取り組みと正しい情報はどのように得ることができるのか、中さんから伺いたいと思いますが、いかがでしょう。


 主婦の立場では、正しい情報というのはほんとに難しいといつも思います。私が大切にしているのは、作り手がわかるということです。お豆腐だったらお豆腐屋さんに行って買うとか、私の小さい頃のような時代がまた来るといいなと思っているんですが、そうでなかったとしたら、そこに信頼できる人を自分で見つけていかないといけない。誰かに頼るのではなく、お店なら通って人間関係をつくることで、例えばスーパーに行ってもそこのスーパーの生鮮売り場の方とお話ができるようになるという賢い主婦になっていきたいと思っています。
 同時に、企業の方には、そういう人を育てていただきたい。情報を正しくきちっとお客様に伝えていただける方を各売り場に置いていただくことを、ぜひお願いしたいと思います。
 私も、梅田さんがおっしゃったように、悪いところばかりがクローズアップされて、きちんとつくっていらっしゃる方がクローズアップされてないことがすごく多いと思います。だから、そういうところをクローズアップできるような仕組みというものができ上がっていってほしいと思います。
 その反面、きちんとしたものは大量にはつくれないという問題もあります。流通の仕組みを変えて、信頼できる人から信頼できる物を買う、生産者までが見えるような図式ができ上がるといいなと思います。

梅田
 スーパーに行っても物ばかり見ていて人を見ていない。商店街が懐かしい。魚屋のおっちゃんや八百屋のおばちゃんの顔を見て買い物することが少なくなってしまっている。スーパーばかりになったということですよね。


 そうなんです。だからコミュニケーションができていない。コミュニケーションをなるべくしていきたいなと思います。

梅田
 そんな信頼できる人間関係を築いていければいいなと私も思いますが、今度は大川さんにコープ自然派事業連合がどのような取り組みをされているのか伺いましょう。

大川
 生協の場合は、流通側と消費者である組合員側ということで、2通り情報の入手の方法があります。
 流通の方では、農作物ですと、どんな農薬を使用したか、肥料は有機肥料なのか化学肥料なのかというような「栽培履歴」を出していただきます。メーカーの場合には、「商品仕様書」というのを書いていただきます。
 例えばみそラーメンであれば、みその大豆、小麦、そういったものの産地や、どういうつくり方をしているかというところまで書いていただいています。

工場見学写真 これは、ケチャップとかソースの工場に消費者が直接行って、自分たちの目で確かめる風景です。
学習会写真 次は、逆にメーカーの方が出向いて、組合員あるいは職員に商品の学習会をしています。
ソース写真 その結果、こういった商品案内になります。ジュースもソースも両方とも有機認証を受けた野菜を原料にしています。「GM」とか「GMO不使用」と書いておりますが、これは原料の、しょうゆの大豆が遺伝子組み換えを使っていませんという表示です。
食パン写真 国産小麦を使ってパンを焼くと、膨れなくて大変難しいのですが、国産小麦及び国産バターを原料にすることをこちらが指定し、パン工場の職人さんの大変な努力によって、とてもおいしいパンができました。
 これは自然派オリジナル仕様で、その横に「GMO、えさの一部不分別」と書いてあるのはバターのことです。バターを絞ったミルク、その牛のえさの中にちょっと遺伝子組換えかどうかわからないものがあるという表示です。でも、ここまで表示をする必要は法的にはありません。
梅田
 「そんなん表示するから余計に不安になる」ということはないんですか。

大川
 全部表示をしてますので。特に私どもの組合員は、アレルギーやアトピーの方が安心して買えるということで、こういう情報を入手できるのを喜んでいただいています。

田植え体験の写真大川
 次に、自分たちで学習して、選ぶ目を身につけたいということで、料理講習会や田植え、稲刈りなどをやっております。これは田んぼの生き物調査です。農薬を使った田んぼと無農薬の田んぼを調べますと、無農薬の田んぼにはたくさんの生き物がいて、その生きものたちが田を耕して土を豊にしてくれる。それでおいしくて安全なお米ができるということを実際に体験して学んでいく。
 こういった取り組みは、私たちが食から遠ざかってしまったものを、もう一度取り戻して、自分の目で確かめる作業に通じると思います。

梅田
 これは大事なことですね。ありがとうございました。
 さて、企業による独自の取り組みがさまざまある中で「ISO(※)」という言葉をよく耳にするようになりました。
「ISO」というのは国際的な基準ですが、日佐先生から今の「ISO」の現状をお話いただけますか。
(※ 「ISO (国際標準化機構):国際間におけるモノやサービスの流通を円滑にするための品質保証規格を定めている民間組織。)

日佐
 その前に、企業はあくまでも効率と利益を追求する団体です。それを追求してなぜ悪いのか。利益を上げることと社会的責任とは別個の問題です。利益を上げないと再投資もできない。一般的な企業の場合は利益レベルが10%ぐらいありますが、中小の食品企業は5%もない。そのことも考えなければならない。

日佐先生ステージ写真  欧米比較で考えても、日本の企業の利益率は低く、国際競争力に負けてしまう。問題は、上げた利益を何に使っているかであって、そこをきっちりしないと、すべて製造メーカーが悪いという話になります。製造物責任法はありますが、販売物責任法はありません。定価が据え置きされて、開発経費と同じような異常なコストアップになっているわけです。
 要するに「安全」というのは、コストがかかっても損をしても、企業はやらないとだめなんです。「安心」は営業戦略ですから、安心を担保するためには単価が上がってもいいわけです。その辺を消費者は考えていないんです。
ISO における安全    .ISO/IET GUIDE 51:1999    安全面ー安全面を規格に含めるための指針    .ISO/IET GUIDE 50:2002    安全側面ー子供の安全の指針    .ISO22000時20分05    (食品安全マネジメントシステム)    .ISO/TS22003(FSMS の認定及び認証機関に対する要求事項)    .ISO/TS22004(FSMS 適用のための指針)    .ISO22005 (トレーサビリティ)    .ISO22006(農作物に対するQMS の適用指針)  「ISO 」の現状についてですが、「ISO 22000」はフードチェーンに関係するすべての段階を対象とした食品安全マネジメントシステムの国際的な規格です。それと若干関係がある「ISO2 2005」のトレーサビリティーという部分があります。
ISO/IET GUIDE51 での安全の概念    .絶対安全の概念はない    .許容できるリスクの確保    .受容できないリスクの排除    .受容できるリスクの達成    .費用対効果によるリスクアセメント日佐
 ISO の安全の概念というのは、「絶対安全の概念はない」ということです。
許容できるリスクの確保、受容できないリスクの排除、受容できるリスクの達成、費用対効果によるリスクアセスメント(リスクの査定)。
HACCPHACCP 導入の4つのキーワード導入の4つのキーワード      5S、整理、整頓、清掃、清潔、躾、HACCP     整合性、工場全体     透明性、マニュアル=契約書     記録 チェックリスト=品質保証書     不具合 危害・欠陥 その中で「HACCP (※)」は、「安全な衛生管理手法」と理解をしていただければいいと思います。この中の4つのキーワードとして、工場全体の整合性をとりなさい。不具合には対応を講じなさい。透明性というのはマニュアル、これは契約書等をきちんと作りなさい。記録というのはチェックリスト、品質保証書ですね。こういうことをきちっとやらなければならない。その背景に5S( 整理、整頓、清掃、清潔、躾)があると理解していただければいいと思います。
(※HACCP(ハセップまたはハサップ):食品の製造工程全般を通じて危害の発生原因を分析し、重要管理事項を定め、一層の安全確保を図る科学的な管理手法で、国際的に有用な衛生管理の手法と認められている。)
ファイナルチェック(最終製品の検査)での科学的分析検査の位置づけロットを代表しないファイナルチェックの現実、検出不可能な検査の実施などでの安心感プロセスチェック(工程段階の検査)のモニタリングとしてのファイナルチェック ファイナルチェック(最終製品の検査)をしたら、皆さん安全と考えておられますが、これは当てになりません。
 ロット(まとめて同種の製品を生産する場合の生産単位)を代表しないファイナルチェックの現実というのは、例えば農薬です。野菜に対して農薬をまくときは、ある程度ばらつきがあります。ばらつきがある中で検査だけやって安心しているというのは非常に不安なんです。
 検出不可能な検査の実施というのは、BSEです。
 では、何をするのがいいのかというと、プロセスチェック(工程段階の検査)をきちっとして、それをモニタリングするということでのファイナルチェックをやらなければだめです。プロセスを論じずに、ファイナルチェックだけで安心しているのが問題だろうと思います。
モニタリングチェックシステムの変更ファイナルチェックからプロセスチェックへ(HACCP 、ISO22000 、GAPコンセプト)しかし現状は従来のファイナルチェックプラスプロセスチェック 現状はどうなっているかを申し上げますと、ファイナルチェック(最終製品の検査)からプロセスチェック(工程段階の検査)へということで、HACCP、ISO22000、GAP(適正農業規範)などで規定があります。
 しかし、現状はファイナルチェックプラスプロセスチェックで、ダブルでチェックすることによって、またコストかかることになります。
サケ漁船の写真 これは北海道のHACCP対応のサケ漁船です。
定置網でとったサケの写真日佐
 船の船倉の中に氷を入れて、定置網でとったサケをそのまま入れています。
氷の容積の分、漁獲量が3割落ちます。
漁船での作業の写真 この漁船では、高い台の上で作業をしています。普通、魚は長靴と一緒のレベルのコンクリートのところで作業しますが、安全のためにこういうシステムでやっている。これだけコストをかけても、まだ最終製品で検査をかけるために数千万のコストがかかる。それでも値段を上げるなと言っているわけですね。
こういったことを、少し考えなければならないでしょう。
すべての輸入国に求めるものファイナルチェックとプロセスチェック:戦略特定輸入国に求めることは、食糧安保の危機となる消費者・企業が、チャイナフリーを求めることは、民間レベルで国際協定であるWTO協定、SPS 協定を無視したことになる。 すべての輸入国に対して、ファイナルチェックとプロセスチェックを戦略的に考える必要があります。国産を振興するためには、輸入相手国に対してダブルでチェックをかけ、価格競争力をつける。こうしたことを政府は全くやっていない。
 消費者、企業がチャイナフリー(中国産不使用)を求めることは、国際協定であるWT O協定やSPS協定を民間レベルが無視したことになります。消費者や企業自身がグローバル的なコンプライアンス(法令遵守)をやってないと考えられると思います。

梅田
 日佐先生は、消費者へのメッセージ、いろいろもっと考えて欲しいとか、冷静な目を持ちなさいという部分も大きいということですね。

日佐
 基本的には、農場から箸(消費者)までなんです。フードチェーンはそれぞれの段階でいろんな人が考えていかなければならない。メーカーだけ、小売業だけでは決められない。箸の人(消費者) の影響力もある。そのかわり、消費者が農場やメーカーや流通に対して、もう少し冷静に意見をされればどうかと。その中でやはり、先ほど話がありました「顔の見える関係」が、必要になると思います。

梅田
 なるほど、わかりました。ありがとうございました。では次に早乙女さん、お願いします。

パッケージ写真早乙女
 私どもも、お客様から「自分たちが食べている商品を選ぶために、情報を見せてほしい」というお声をたくさんいただいています。
 先ほど自己チェックの話をさせていただきましたが、ご意見を企業活動に反映させるため、一昨年前からパッケージの中に「よくあるお問い合わせ」ということで、わかりやすいアレルギーの表示や片仮名での原材料、何のためにどういったものから作られているかという情報をきちんと記載する。また、製造所固有記号(製造者氏名・製造所の所在地を表す記号)では、わかりにくいということで、「○○工場で製造しています」という表示に徐々に変更しています。お客様からの「情報を共有したい」という声に対して、企業として応えることによって、「顔の見える」というところまではなかなかいきませんが、信頼関係を作っていきたと考えております。

HP画面
早乙女
 また、すべて情報をパッケージ上で公開するのは難しいので、ホームページを使っております。こちらは冷凍食品です。ギョーザですと豚肉はカナダ、アメリカ、日本など。細かい原材料の産地などの公開も始めています。
 こういった情報を公開することによって、先ほど中国バッシングの話もございましたが、中国のものを使っているから安全ではないとかいうことにつながらない、賢い消費者の判断をぜひお願いしたいと思っております。逆に、積極的に情報を公開している企業を選んで、互いに信頼関係を作っていける社会になればいいと考えております。

梅田
 企業から発信されている情報についてご発言をいただきましたが、大阪府ではどんな情報提供をなさっているのか、淡野さんにお願いします。

淡野
 大阪府も含めたすべての自治体では、消費者や事業者の方々へのわかりやすい情報提供に、日々頭を悩ませています。パターンとしては二つあります。一つは事件が発生していない普段の状態での情報提供です。今、大阪府のホームページでも、多彩な内容を盛りだくさんに掲載しています。我々厚生労働省の所轄だけではなく、農林分野や健康食品などの情報にもリンクしています。家にパソコンがない、パソコンの使い方がわかりにくいという方については、本日ロビーにいろいろなパンフレット、リーフレットを置かせていただいておりますので、こういった紙媒体で知っていただきたいと思います。

 もう一つは、事件が起こった場合の緊急時の情報提供です。この前のギョーザの事件もそうですが、我々が一番心配しましたのが、消費者の皆さん方の冷蔵庫に残っていないか、学校給食で使われていないか、高齢者の方や障がい者の方の施設など、大規模な調理場をお持ちの施設で使われていないかということでした。
 もし使われていたら非常に大きな被害が広がりますので、まず新聞社などへ報道提供させていただき、大阪府のホームページにも掲載する。そして、土日にも全保健所を開けまして、府民の方々からの電話相談に対応できるように、少しでも不安感を払拭するために対応させていただきました。
 普段の場合と緊急時の場合を使い分けて、できるだけわかりやすく速やかに正しい情報をお伝えするよう、心がけております。

梅田
 さまざまなメディアを使って、どんどん発信していただきたいですよね。行政の皆さんにそれをお願いしたいし、橋下知事はその方向で動いてくれると私は期待をしております。

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このページの作成所属
健康医療部 生活衛生室食の安全推進課 食品安全グループ

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