特定非営利活動法人大阪難病連 要望書(2)

更新日:2023年4月10日

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要望書

【福祉関係】

1、2013年4月から実施された「障害者総合支援法」により難病患者も障害福祉サービスが利用できるようになりましたが、内容的には多くの問題点があります。例えば「障害者総合支援法の骨格に関する総合福祉部会の提言」の多くが取り入れられていないこと。難病患者についても指定難病を中心とする366疾患のみしか認められていないこと。併せて、周知・啓発が十分でなく利用実態が少ないこと。大阪府においても障害者総合支援法の内容の見直しの要望を国に行うとともに、行政として当事者および家族に対する周知・啓発に力を入れてください。
   ※発病時や増悪期には、寝たきりの状態になったり、通院回数が増えるなど日常生活に大きなハンディを背負わされますが、多くの難病患者が身体障害者福祉法や障害年金の対象にならず、就園、就学、就職、結婚など、社会生活のあらゆる面で大きなハンディを負っています。すべての難病患者が安心して生活、療養できるようにするため当面、次の内容を要望します。
 1)「制度の谷間」にいまだに置かれている患者の日常生活・福祉サービスの利用状況について、正確な実態把握を行ってください。例えば、線維筋痛症、1型糖尿病、その他まだ指定難病となっていない難治性、長期慢性疾患の患者は、疼痛、倦怠感などの見た目に分かりづらい症状を常に抱えており、日常生活に相当な制限を受けているにも関わらず、障害者施策において対象外となりがちです。
   このような患者たちが福祉サービスを利用する際の障壁や制限をあきらかにするために、アンケートや各市町村、保健所への聞き取りなど、何らかの形で実態調査を実施し、今後の制度設計や運用に活かせるようにしてください。
 2)血清クレアチニン値が8.0mg/dl未満でも透析導入になれば、すべて身体障害者1級と同等の制度の扱いをしてください。
   ※近年、糖尿病性腎症から透析導入が増加し、透析導入の原疾患の中ではトップを占めています。
     しかし、糖尿病性腎症では導入時の血清クレアチニン値が8.0mg/dl未満の場合が多く、身体障害者認定は3級、4級となる人がほとんどです。2000年4月から認定事務が都道府県に移管されてから、奈良県などではすでに、この措置により透析導入後は身体障害者1級の扱いに認定されています。

2、介護保険関係
 介護保険制度は発足当初より多くの問題点が指摘され、この間に一定の改善がなされましたが、認定調査においても難病患者、障害者に対して考慮されておらず、介護面でも未だに十分な対応がなされていないのが実情です。
 また、近年は持続可能な社会保障制度構築を理由に、要支援者の保険外しが決定される一方、2015年8月から一定の所得以上の人の利用料の1割から2割への引き上げや、老人施設入所者の「食費・部屋代の負担軽減の基準」に資産要件(預貯金)を加えるなど、更なる給付の抑制と受益者負担の引き上げが実施されました。
 さらに2018年8月1日からは「2割負担者」のうち特に所得の高い層の負担割合を3割とするなど制度改定が引き続き行われています。
 大阪府においては、これらの制度改悪に反対し、可能なものは府単独で充実するようにしてください。
 1)2017年4月から実施されている「地域総合事業」による要支援者に対するサービスの打ち切りを行わないよう市町村を指導するとともに、従来からの介護予防サービスの充実と誰もが利用できる地域支援事業および高齢者施策の充実を行ってください。
 2)非課税世帯については保険料、利用料を免除してください。また保険料の基準額をこれ以上引き上げないでください。
 3)施設を利用する際の居住費、食費については自己負担を廃止するか、もしくは減額してください。
 4)認定にあたっては難病患者、長期慢性疾患患者、障害者の生活実態、心身の状態、病気や障害の特質、ニーズなどを正確に把握し、機械的な判定ではなく、利用者が必要充分な介護が受けられるようにしてください。
   例えば、関節リウマチ患者は調子の良い時と悪い時の差が大変大きく、無理をすると症状の憎悪を招くことがあり、また、機能障害や様々な合併症を有しており認定の際には病気の特性を考慮した調査、判定をしてください。そのために現在の調査項目の見直しと調査員、審査員に対する研修を充実してください。
 5)介護に当たっては病気や障害を正しく理解し、変化しやすい心身の状態や療養上の注意事項などを正確に把握した上で、血の通った介護がなされるよう、ホームヘルパーなど職員研修に力を入れると共に、質の高いサービスが提供されるよう、事業所に対する監査、指導を強化してください。
   なお、認定調査員、審査委員、ホームヘルパーなどの研修の際には当事者を参加させ、難病患者から直接話を聴くようにしてください。
 6)障害者は加齢によって障害が重くなることはあっても、軽くなることはありません。にもかかわらず、障害者が65歳になると強制的かつ機械的に介護保険制度に移行させられ、多くの障害者、特に難病患者や視覚障害者が軽度と認定され、ホームヘルパーの派遣時間が大幅に削減されるなど自立や社会参加に必要な支援が受けられなくなります。
   従って以下の点について改善してください。
  a)障害者総合支援法第7条の介護保険優先条項を廃止し、障害者の場合は65歳以降も引き続き障害者福祉制度のホームヘルプサービスが利用できるよう、国に強く要望するとともに、それが実現するまでの間は自治体がサービスを上乗せするなどして、支援の質、量が低下しないように各自治体に助言してください。
  b)政府は制度見直しで、要支援者のうち軽度者を保険給付の対象から外すことを決定していますが、視覚障害者の場合は一種1級の全盲でも現行の介護認定調査で、多くの者が要支援1ないし2と判定されるため、65歳以降はホームヘルプサービスなど必要な支援が受けられなくなる恐れがあります。年齢による障害者差別を行わないよう国に強く要望してください。
    なお、厚生労働省の通知「障害者総合支援法に基づく総合支援給付と介護保険制度との適応関係等について」は強制力がないために軽度者に対しては、ほとんど効果が無いのが実情です。
    厚生労働省は再度、2015年2月18日に「適応関係等についての通知文書」を出しています。
    府は機械的な対応でなく、利用者の実態に合った対応をするように各自治体を強く指導してください。

3、障害者総合支援法関係
 a)一次判定の調査項目は難病患者、内部障害者の障害特性に適したものとは言えず、体調の変動を十分に配慮した回答をしにくいものとなっています。特記事項だけで介護のニーズを判定することは難しく、どうしても内部障害者の介護ニーズが低く認定される傾向となっています。
   認定調査のための聞き取りにあたっては、内部障害者の特性に配慮した留意点を追加し、適切な認定が行われるようにしてください。また、調査項目自体の設問も、内部障害者が体調を崩したときの状態で答えられるような設問形式に改善してください。
 b)障害者総合支援法について、心臓疾患の場合、「重度かつ継続」疾患から外されています。しかしながら、先天性心疾患のように、乳幼児のときから、内科的治療と手術を繰り返しているケースを考えてみると、一律に、心臓疾患を「重度かつ継続」疾患の対象外とすることは適切ではありません。少なくとも重症先天性心疾患については重度かつ継続疾患とすべきです。
   「重度かつ継続」疾患の対象となっていないため、心臓手術の治療費負担が旧育成医療、旧更生医療のどちらの場合にも、旧制度に比べて、過重な負担となっています。
 c)大阪府においても、重症心疾患の心臓手術治療費に対する公費助成措置を実施できるよう検討してください。

4、保険料の大幅な値上げに直結する国民健康保険料の統一化をやめて、各市町村の減免制度を守ってください。また、国庫負担率の引き上げを国に働きかけてください。
  ※市町村国保財政の困難さの主要な要因は、総医療費の60%あった国庫負担率が近年では24%に落ち込むことによって生じたものであるだけに、国庫負担率のアップが急務です。
   それを抜きにした広域化は、ますます大幅な保険料の値上げにつながります。

5、心臓機能障害による身体障害者手帳の取得が3歳未満ではできないとか、手術前では申請できないといった正確ではない説明が身体障害者手帳の担当窓口ですることのないよう十分に指導してください。
  また、心臓病児の心臓機能障害による身体障害者手帳の申請で、その時点での診断において身体障害者診断書・意見書(18歳未満用)の裏面にある養護の区分で、少なくとも1から3か月毎の観察を要し、臨床所見・検査所見・心電図所見で4項目以上が認められるか、または冠動脈造影所見で冠動脈瘤もしくは拡張の認められる場合は、保護者から申請のための診断書依頼があれば「まだ0歳児だから」とか「手術前だから」、「症状が安定していないから」といった理由で拒否することなく、診断書を作成するよう指定医を指導してください。

6、指定難病の患者に対する駐車場利用料金の無料利用および割引利用制度の現状を調査公表し、利用するための手続きを教えてください。
  大阪府の公共施設については駐車場の無料利用ができるようにしてください。
  また、福祉タクシー制度を実施していない市町村に対し同制度を実施するとともに、難病患者も対象となるよう働きかけてください。

【学校教育関係】

1、難病児も楽しく通学できるよう教師の難病への理解が必要です。学校においては、保護者と教師との情報交換が重要であり、具体的にどのような取り組みをされているのか教えてください。
2、難病児が通学できる支援学校の実態を教えてください。

【労働・雇用関係】

1、中高年層はもとより、若年層を含めた難病患者の社会復帰、新規就労の場の提供やサポートは、難病患者が病気を抱えて生きていく上での重要で且つ必要な部分であります。この問題の具体化の端緒を開くには、患者自らの意志と同時に、官民一体となった意識改革や社会制度の体制拡充が不可欠であるという事は言うまでもありません。その意味で、まず府とハローワークとの連携強化及び、各々の心の通った対応が必要な要素(府としては難病患者枠設置の上での職員雇用、ハローワークにおいては難病患者雇用促進啓発活動等)になってまいります。その実践経過、結果が民間企業の難病患者雇用への意識改革、そして雇用へと波及するものと考えております。
 a)すでに、2003年の9月大阪府定例議会においてから今日まで、府職員の採用に関して障害者枠と同等の難病患者枠の設置請願書は採択されておりますし、明石市の場合はすでに実施もされております。しかしながら大阪府での進展の確認は未だできておりません。
   進捗状況、今後の展望、他の対策等のご報告をお願い致します。
 b)難病患者や内部障害者の雇用実態を調査して頂き(新規採用、中途障害者再雇用)、雇用が進展しない問題点や解決すべき課題(雇用形態、職域等)の研究、そして対策の公表をお願い致します。
  ※2018年に提示されました「難病患者のモデル実習の実施」(案)は実習期間が3日間から2週間。その間の交通費や保険等を含め、実習に要する費用は自己負担。実習が終了しても就職できる確約がない、などの理由で実習生の申し込みはありませんでした。

2、視覚障害を持つ難病患者の社会復帰を促進するために、職域の拡大、雇用の促進、訓練施設の整備を図ってください。
  ※例えば、ベーチェット病の場合は、約70%の患者になんらかの視覚障害が発生し、現職に留まれる者、あるいは、復帰できる者は、ごく一部しかありません。気兼ねなく通院や休職が保障され、残存能力を生かして働ける場を公的機関が率先して作ってください。また、府内に中途失明者のための鍼灸、マッサ一ジ等の訓練施設を建設してください。

3、中高年齢の難病患者にも適切な就労の場を与えてください。
  ※難病患者の特に中年以降の患者が多くなっています。一家を支える立場にある患者たちの社会復帰への希望は切実です。適切な就労の機会を積極的に提供してください。

4、難病に対する無理解や社会的偏見により、就職が阻まれることの無いよう啓発してください。
  ※生活のために、仕方なく難病を隠して就職したところ発覚してしまい、遠回しに退職を迫られるということも起こりました。
    難病患者だから働けないということはありません。難病患者であっても、生活費は必要です。働ける者は就職できるよう関係機関に働きかけてください。

5、内部障害者・難病患者の就労を促進するために、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」)について、進捗状況を確認してください。
 1)大阪府下の事業所人事担当者を対象にした内部障害者・難病患者の雇用問題について、理解を深める研修会を実施してください。また、その研修会には、当事者も必ず講師または助言者として招聘するようにしてください。
 2)現行制度の下で、身体障害者手帳の交付の対象とならないために手帳を所持していない難病患者も、「障害者雇用促進法」の対象にしてください。
 3)内部障害者・難病患者の定期的な通院を保障し、病状管理を適切に行い、長期就労を可能にするために、月1回程度の有給通院休暇制度を設け、この制度に伴う事業主に対する助成制度も策定してください。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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